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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 締めた、締まった、最終話。予想以上にきっちりとまとめてきて非常に感心しました。わずか11話とは思えない密度の構成で、よくこれだけの話が作れたものだ。

 もちろん短いなりにちょっとした不満点はあるので先に書いておくなら、化けの皮が剥がれた朔夜さんはちょっと弱すぎた。いや、メンタル面とか、小物臭とかじゃなくて、冒頭、体術で朱ちゃんに負けてしまったのはどうなのよ、っていう。まー、元々ステゴロじゃなくて権謀術数で相手を貶めるタイプだったんだろうから、こういう修羅場はあんまり慣れていなかったのかも。でもこれまでの現場ではあんなに有能そうだったのけども。あと、成り行きで鹿矛囲を殺してしまったのも安易といえば安易。むしろあそこで「常守朱の結末」を強調するならば、諸悪の根源と目されていた鹿矛囲も殺さずに逮捕して「裁く」方が正しい。ただまあ、これ以上重要キャラが生き残って絡んできちゃうと、ますます世界がややこしくなるからな。劇場版を考えると、あくまでこのテレビシリーズのみのキャラと割り切って消しておくのはしょうがない措置か。代わりに酒々井さんが生き残って彼の志を(下手したらすげぇおかしな方向に)引き継いでくれることでしょう。

 今回は最終話ということで終始緊張感の続く素晴らしいエピソードになっており、1つ1つの台詞回しも含蓄に富む印象的なものが多い。せっかくなので、ゾクッときた台詞を時系列順に抜き出して、今回の感想文に絡めていこう。

「法を守ることを絶対に諦めちゃいけない」

 結局、常守朱というキャラクターはこのシリーズ中でも一度たりともぶれなかった正真正銘のヒーローである。先週は多少揺らぎかけたものの、そこは狡噛効果で切り抜け、彼女は最初から最後までこの「遵法精神」を貫き通している。鹿矛囲(達)によるカウンセリングでは、「法の外で動く」という選択肢は存在しないという彼女の断定が、彼女の色相をクリアに保つファクターだと分析されていた。もちろん、ここでいう「法」とは彼女なりの正義であり、シビュラと同一でもなければ、鹿矛囲にも賛同はしない。彼女の力が、最終的にシビュラに変革をもたらす時代のターニングポイントとなったのである。

「黒いものはより黒く、清いものすら黒く黒く染める」

 全て明かされた東金朔夜の生い立ちとメンタリティ。こうして改めて見ると、やっぱりただのマザコン坊やなのである。シナリオ的な立ち位置は「旧世代シビュラ代表」でありながら、色相を積極的に悪化させようとするバグみたいな存在。彼の告白を聞いたシビュラ(東金美沙子)も、喜んで受け入れるっていうよりもちょっと呆れたような顔を見せていたのがなんとも。末期のシーンでは、自身が持つ歴代記録である犯罪係数をぶっちぎって800越え、900に届かんばかりの数字を達成。まぁ、ある意味で今作最大のネタキャラ、可哀想なキャラだったとも言えるか。

「犯罪係数、オーバー300、執行モード、エリミネーター」

 シビュラがシビュラ自身を裁いた、歴史的転換点。相変わらずだが、今作はクライマックスになってシビュラがしゃべりはじめると、日高のり子ボイスの存在意義がぐっと増して画面が締まる。合議を繰り返しシビュラ内部が下した決断は、またも常守朱という一個人の申請を飲み、自らに変革をもたらすことであった。前々から議論はあったともいっており、おそらくシビュラ自身も自己の内在した矛盾については懐疑的な部分があったようだ。もちろん、いざそうした変化を導入した後の問題点についても自覚的であり、このたびの決断はシビュラというシステムが確立してからの、初めての大きな挑戦といえるだろう。まぁ、現時点ではその結果として「自らに内在する色相を悪化させる要因」を除去するという対処療法的なものに留まり、今回だってあくまで「東金美沙子と一部の成員を削る」ことで解決をみただけである。とはいえ、これまで少しずつ蓄え、培ってきたシビュラの「容量」はこれで大きく減ってしまったことだろう。再びの進化のために、シビュラは新たな担い手を求めることになるはずだ。ここで「自分が黒いと言われないように判断基準の方を曲げる」という選択肢も理論上はありえたはずだが、それをやってしまったら当然シビュラの崇高さは地に落ちる。集団としての色相を認識し、そこから「自分はクリアである」ことを維持するための対処というのが精一杯の譲歩案であろう。余談だが、今作1期はエンディングテーマ「名前のない怪物」がシビュラを意味する言葉になっており、今回も綺麗に「Fallen」で「堕天した神」の存在を揶揄するものになっているのは格好いい。

「お前の後輩を取り戻したぞ、青柳」

 ギノさん最大の見せ場。もう、その酒々井さんを取り返したところで絶望しかないんじゃねぇかって気もするが、結局酒々井については安易に殺すのではなく、鹿矛囲事件の語り部、生き証人として、苦闘の生を強要する方向に動いたようだ。ギノさん、酒々井との対決シーンではボーガンを右手で弾く描写があり、ちょこっとだけあのサイボーグアームが役に立っている。狡噛には出番があるのにおやっさんは忘れ去られたような状況なので、こういう演出があるとちょっと救われる。他方、酒々井の方は完全にキチピーじみた表情になっており、鹿矛囲があれだけ満足げに逝ったことを考えると、本当に余計な置き土産になってしまった。まぁ、鹿矛囲からしたら百数十人の同志と違って、酒々井なんてドミネーター強奪のために途中で拝借した道具の1つでしかなかったからなぁ。完全にヤリ逃げ状態である。だが、そんな酒々井さんもラストシーンでは鹿矛囲との絆である右目を押さえながらもまだ生気の籠もった表情を見せており、どうもこのままじゃ終わらない気配を感じさせる。施設の中に消えた雑賀先生に加え、このアマ、ひょっとしたら劇場版でも何かキーになるかもしれません。なお、雛河さんは本当の本当になにもなかった模様。ダイナミックなレッドヘリングだったな。

「こうしなきゃ、アタシがクリアじゃなくなるの」

「ここから先へは進みません。全部忘れます」

「わたし、この社会が大好きですから!」

 東金さんが最後の最後で小物な最期を迎えたため、2期オリジナルキャラとしてはぶっちぎりでトップの輝きを放つ結果となったのが、我らが霜月美佳さんである。正直、この東金との対峙シーンは涙が出そうなくらいに好き。狂おしいほどに美佳ちゃんが愛おしい。この物語は常守朱という「完全なる遵法者」を主人公としたものであるが、そんな「強者」である常守と対比的に描かれるべきは、鹿矛囲でもシビュラでも、ましてや東金などでもなく、ひょっとしたら霜月という卑屈で矮小で姑息な人間だったのかもしれない。彼女もまた、「自分を持ち、強く生きる」術に長けた「強者」である。彼女のメンタリティは、どこにでもいる凡庸な人間のそれに他ならず、誰もが霜月美佳になれるチャンスがある。なってしまう危険がある。「社会」と「人」のありようを考える上で、常守という超常的な「人」を描くと同時に、霜月という地べたに這いつくばった「人」もあればこそ、シビュラというシステムの根幹が見えてくるのである。そして、彼女も彼女なりに、このシリーズで大きく成長した。そのことを示すのが、ラストの六合塚さんとのお茶のシーン。

「誰であれ、許す気は無いわ」「同感です」

 こういうシーンもいいよなぁ。本当に、あやねるは最近良い役者になってることがよく分かる、静かな中にも様々な感情、思惑が詰め込まれた一言だ。今後、同じ職場にいる朱ちゃんとはどういう関係を築いていくんだろう。今回冒頭でも「あいつが全部悪い」と息巻いており、このたびの事件でますます同僚との溝は深まったようです。

 こうしてこのたびの鹿矛囲事件は幕を下ろす。1期の時同様、物語としての「結末」というのとはちょっと違うが、「この社会は終わらず、始まったところである」ことがよく伝わってくる幕引き。未来のことを想像すると、楽しみでもあり、恐ろしくもあり。

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 浄化、第10話。長きに渡って描かれてきた有馬公生の苦闘の物語に、ようやく1つ目の決着がついた。Bパートラストの母親の幻影の表情の変化。そのたった1コマのためだけに、まるまる10話が費やされてきたのである。

 ただひたすらに公生の演奏を眺めるだけのエピソード。もつれ始めた演奏は一向に復調する気配もなく、慌てる客、困惑する客、失望する客たちが見守る中、おとずれたのは「演奏中断」という最悪の結末。やはり、わずかな練習期間では、十年にもわたり積み重ねられた母親の呪縛から完全に抜け出すことなど不可能だったのだ。しかし、「中断する」という行為そのものが、彼にとっては大きく2つの意味を持つものになっていた。1つは、呪縛に囚われ続けたこれまでの自分の演奏を一度「断ち」、次のステージへと進む準備段階という意味。そしてもう1つは、同じ「演奏中断」という行為によって公生との関係性を無二のものとした宮園かをりとの接続。コンクールは「賞を取るための場」である。それが、母親にたたき込まれた公生の生き方。そのコンクールで一度でも演奏を中止してしまえば、そのたった1つの選択でコンクールそのもの、そして自分の存在意義すらぶっ壊れてしまう。しかし、そんな場所であるにも関わらず、かつて宮園かをりは笑顔のままで演奏を中止した。そこには、公生が見たこともないような、全く別世界の音楽がある。彼は、母親との演奏に別れを告げ、宮園という新しい世界へ歩を進めるため、一度全てを捨て、演奏を中止することを選んだのだ。

 なげうったものがあれば、そこから返ってくるものもある。再び奏でられた公生のピアノは、決して手放しで上手いと褒められるようなものではなかったようだが、絵見の耳には確かに届いていたし、絶望した武士にも届くものがあった。そこに込められた景色は、あくまでも観客の中の唯一人、宮園かをりにだけ向けられたものである。特訓を重ねたあの音楽室、無防備に寝こける彼女との、不思議な時間。長い無音の映像に白一色の画面など、彼の込めた「想い」は不可思議な引力を持つ画面にも集約されていく。そんな思い出が感謝や思慕と共に音としてあふれ出した。そのことを確かに受け取れた人間は多くはないが、観客たちにもただならぬ何かは届いたようである。

 彼の音を受け取ったのは大きく4人。1人は武士。「3人の人間が演奏しているかのよう」と漏らした公生の劇的な変化に新しい展開を察知している。絵見も彼の見せる景色の不可思議な力を感じており、新たな有馬公生の誕生を確信した。そして当然、宮園かをり。悲願となっていた新たな一歩。公生の歩み始めた姿を見て、彼女は思わず涙を流す。ただ1人、公生が音楽を向けた彼女に、その気持ちはきちんと届いていたようだ。そして、そんな彼女の涙を見て、何とも複雑な表情を見せる椿の様子も注目すべき部分ではある。新たな旅立ちに、回りの面々はどう反応するべきなのか。

 そして、彼の音を聞きつけた最後の1人は、Cパートで登場した謎の女性。これまでの誰とも違い、彼女は公生を「凡才」と呼び、小憎らしく笑ってみせた。さぁ、次なるステップでは一体何が待ち受けているやら。

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 酒々井さんのちょっとイッちゃってるラリ顔がまた素敵ですね、第10話。ほんと、あの声の女はマジできゃんきゃん言わせたい(切実)。

 クライマックスへ向けての答え合わせ回といったところだろうか。これまでゆっくりと着実に動いてきた朱ちゃんが、必要に迫られて急速に各方面へのレスポンスを起こし、それによって事態は主人公である常守朱のところへと収束していく。こうしてみると、なるほど割と脚本部分はカチッとまとまっているのである。その上で今作が1期に比べてやや分かりにくい、無茶な部分が多いと評されることがあるのは、おそらく「槙島を超えるイレギュラー」として設定された鹿矛囲の存在が、流石に実体を持たずに漂いすぎていたためだろう。槙島を登場させ、解決に至るまでが2クールだったのだから、「それ以上」を1クールで収めるのはそりゃ無茶ってもんだ。

 今回はほぼ既知の事実の確認、予想の範囲内でのシナリオ進行だったわけだが、これまで想定していなかったパーツが2つほど現れ、それはどちらも鹿矛囲に関するもの。そして、1つは「どないやねん」で1つは「なるほど」である。「どないやねん」な1つ目は、今回鹿矛囲が取った行動そのものである。地下鉄占拠から一体どのように動くのかと注目していたのだが、なんと彼は大量の人質をそのまま「人質」として使うのではなく、「大量のドミネーター使用先」のターゲットとして活用したのである。曰く「一度に大量の潜在犯を処理すると、いくら大容量のシビュラでもしんどいから、その時だけバイパス経由でバックアップ回線を使うらしいねん。これでシビュラの場所が割れるよ」という。うーむ、そんな設定は聞いてない。そしてシビュラの弱点、案外分かりやすい。あれだけのシステムを構築し、圧倒的データ量で勝負していたはずのシビュラのくせに、いざとなるとたかだか500人の潜在犯を同時処理するとサーバーが飛ぶらしい。いや、とんでへんけど、とにかく脆弱になるらしい。そもそもそんな脆弱性の情報を掴まれる時点でアカンわけで、鉄壁を自負していたシビュラも案外しょぼかったことが分かる。まぁ、流石にこんなトンデモ反逆者のことまで想定してないだろうし、今まで同様「それくらい鹿矛囲って凄かったんだぜ!」ってことなんだろうけども、正直、あまりに多方面に万能過ぎてひくわ。流石に二十歳そこそこの若僧がどれだけ頭を捻って、全力でコネクションを作って作戦立案したとしても、こんな無茶が実行出来るとは思えない。こんな無茶を可能にしたのは、どれだけ陰でこそこそ悪事を企んでもばれない「透明人間」能力と、協力者を同時に擬似的な「透明」状態にするメンタルケア能力なわけだが、その根幹となるメンタルケア能力がどういう由来のものかがろくすっぽ説明されていないのがね。そこが欠けているせいで、鹿矛囲という存在は、どうしても「真実」になりきれず、切迫感を感じさせるまでのものになっていないのである。

 他方、「なるほど」と思ったもう1つの視点は、「集団としての鹿矛囲」と「集団としてのシビュラ」という対比構造のこと。なるほど、確かにあからさまに提示された要素であったのに、これまで全くそういう見方は思いつかなかった。鹿矛囲が透明になった理由は「群体である」というただ一点であり、それはシビュラにも同じこと。何故頑なにシビュラが鹿矛囲のことを「裁かずに消そうと」していたかといえば、それは「鹿矛囲を裁けば己も裁かれる」という自己矛盾を引き起こしてしまうから。確かに言われてみればそういう話になるのか。実際、鹿矛囲が切り貼りだらけのフランケンシュタインだからといって、実際に存在しているのは1人の人間には違いない。シビュラ様がやろうと思えば、そこに適当な色相を当てはめて「規定する」ことは出来たはずなのだ。それを何故やらなかったかと言えば、シビュラにとっての「人」「色相」とはあくまで個で特定されるものであり、「集団的色相」が認められないから。認めてしまうと、神が神でなくなるから。ふむ、その理屈の付け方は(どこかおかしい気もするが)視点としては面白い。そして、そんなシビュラが自家撞着を引き起こすような問題提起を思いついてしまう鹿矛囲もなかなかすごい。自分の生まれ育ちを振り返り、自分の肉体が東金財団によって作られた「小さなもうひとつのシビュラ」だったことに気付き、己をさらけ出すことによってシビュラそのものを叩く。なるほど面白い。この辺りの「無茶だけどSF的になんかアリ」な部分がもうちょっと分かりやすく提示されてれば、鹿矛囲の目的意識もはっきりして見やすくなっていたのだろうけども。まぁ、あくまで鹿矛囲の行動は「捉えどころのない謎」のままでいてほしかったのだろうし、このくらいの引っ張り方はしょうがないということか。

 で、そんなややこしい状態になってしまったシビュラと鹿矛囲の(ある意味で)親子げんかであるが、普通の人間はそんなこたぁ理解出来ない。一般人代表の美佳ちゃんだって、現在自分が何をやらされて、何が起こっているかなんてさっぱり分かってない。自分が結果的に同僚のばあちゃんを殺したことなんて、さっぱり分かってない。でもしょうがない。それがシビュラを前にしたときの「人間」の限界なのである。しかし、我らが常守朱はそうじゃない。一度はシビュラと対等の位置にまで届きかけた女。いつの間にやら全部調べあげ、いつの間にやら全部理解し、いつの間にやら狡噛さんをスタンドとして呼び出す能力まで手に入れた。おそらく吉良吉影が大ピンチでパイツァダストを発現したように、朱ちゃんも色相がピンチになると自動で狡噛慎也を呼び出す能力を手に入れたのだろう。久しぶりに登場した狡噛さん(の幻影)は、いい事を言うだけ言って姿を消し、壊れかけた朱ちゃんのメンタルは復旧。そして禁じ手である「シビュラと殴り合う」決意に至る。「もう、鹿矛囲のやりたいようにやらせようぜ」ってなもんで。確かに、元々朱ちゃんが愛憎半ばする感情を抱えたシビュラに対して変革を迫る鹿矛囲という存在は、朱ちゃんの中では完全に「敵」とは言い切れないものなのである(まぁ、犯罪者だから敵なのは間違いないんだけどさ)。事態は三つ巴の最終局面へ。シビュラ対鹿矛囲、シビュラ対常守朱。敵の敵が味方になるかどうかは定かじゃないが、今のところ、確実に真っ黒なのはシビュラ側の代表責任者である東金朔夜さんその人である。安定してぶっ壊れた犯罪係数を見せつける変態東金さん、ついさっきばあちゃんを殴り殺してきたばっかりの東金さん。彼はドミネーターで飛び散るわけにはいかない(何しろママですからね)。となると朱ちゃんにやられるのだろうか? 待て次回。

 なお、仮にここで鹿矛囲が死んじゃうと、その後の酒々井さんがどうなるか全く見当がつかないのでそこもワクワクポイントです。鹿矛囲を目の前で殺されてトチ狂ってくれないかしら。どうせ殺すなら、酒々井さんは青柳さんよりもむごい死に方してもらわなきゃいけないからねぇ。待て待て次回。

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 ホラー映画かな? 第9話。むー、しかし引っ張るなぁ。1人の演奏に1話ずつでもすげぇのに、公生は2話またぎだもんな。

 正確には公生1人だけのエピソードではない。前回からのまたぎで絵見の演奏についても改めて触れられているためだ。彼女が出会った幼い日の公生、「ひまわりを咲かせる」演奏が見せる風景。井川絵見という1人のピアニストを産みだした圧倒的な情念の物語。たった1音で彼女はすべての他の可能性を捨て去った。もう、この時点で幼少期の公生よりも幼少期の絵見の方がヤバイ人間だった気はするのだが、それくらいに公生というのは恐ろしい可能性の塊だったということだ。絵見が封印した諸々のツールのことを考えると、きっと彼女はピアノだけでなく、その他のあらゆるジャンルにおいて、回りを凌駕するだけの才能を持ち合わせたマルチタレントだったと思われる。絵を描いても、野球をやっても、きっと彼女は成功したのだろう。しかし、公生のピアノを聞いてしまったのが不幸の始まり。そこからは幽鬼のごとく迫る有馬公生という化け物を相手に、彼女の長い長い苦闘の日々が始まったのであった。当の公生は奏法をスイッチして「ヒューマンメトロノーム」に成り果て、彼女の追うべき背中は長年喪失していた。だからこそ彼女は「いまここにある」公生を否定し、在りし日の思い出をつかみ取りたかったのだろう。だからこその「響け」であり「戻れ」である。彼女の願いは、はたして公生に届いているのか。

 そしていよいよラスボス、公生の登場。彼はこれまでの時間を、宮園と一緒にひたすら練習に費やしてきた。前回の宮園の伴奏の時点で「過去の幻影」との対決は一段落したものだと思っていたが、あのコンクールではあくまでも宮園さんがメインであり、公生には「演奏」そのものが求められたわけではなかった。今回は、観客のすべてが公生の演奏を聴きにきており、公生も「聴かせる」ことを目的としなければならない。1つの作品を提出するという意識が高まることで、再びあの悪夢が蘇る。

 公生の母親については、今回完全に悪霊のような描かれ方になっている。もちろん、彼女のやったことは確実に人道に反するものであるし、公生の人生を、演奏をぶち壊したという意味でも許されるものではない。しかしその反面、やはり彼女は公生の愛する親でもある。幼少の公生は、ただひたすら母親に喜んでもらうために演奏を続けたのだ。友達と遊ぶ時間がなくなっても、むち打たれ、体中が傷だらけになっても、彼は母親のために演奏することをやめなかった。そこには横暴な母親に強制されたお仕着せのものだけでなく、親を思う子供の心も確実に存在しているはずなのだ。「誰かを思って演奏をする」という気持ちは、きっとこれからの彼の人生にも必要不可欠なものであると思う。それは「機械のような演奏」の対極に位置し、彼が宮園かをりと出会って掴んだものでもあるのだから。だとすれば、出来ることなら公生には母親を完全に否定して欲しくはない。母親が間違っていたことはきちんと認めて、それを乗り越えながらも、彼女が息子に残していったものも存在していることを、どこかで思い出してほしい。そこまで出来て、初めて公生は過去を乗り越えられるのではないだろうか。

 そう考えると、今回の演奏はまさに剣が峰。ここで落ちれば彼は今度こそステージには立てなくなるだろう。逆に、ここで母親の呪縛を乗り越え、武士や絵見をも凌ぐ世界を開くことが出来れば、それこそが母親の望んだ「有馬の血」の到達点であるはず。ちゃんと供養してあげられる結末になるだろうか。

 今回の一押しシーンは、こうした公生のドロドロとした母親との関係性も捨てがたいのだが、それでも女の子の表情の方が大事かな。絵見ちゃんが演奏を終え、公生に食ってかかるシーンがたいへん良い。肩で息をしながら、遠慮なくぶさいくな顔を披露する絵見。やっぱり、頑張ってる女の子の必死な表情というのは、それだけで神々しいものです。

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 今作スタッフの描く女性像は素敵過ぎる、第9話。ここに来て、個人的には美佳ちゃんの株が爆あげです。ここまでひどいと本当に素敵。サブタイトルに「全能者」と言う言葉が用いられているが、今作の主人公は、実は作中で一番非才な人間なのではなかろうか。

 予定通りのシナリオ進行。ちょっと鹿矛囲の行動が性急すぎるのが気になるが、まー、1クールで終わるんだろうからこのスピードも致し方ない。困ったときには全部「15年間準備してきたんで」って言われれば一応許容出来る。鹿矛囲のシビュラ転覆計画は、今回「全能者のパラドクス」で表現されていた。すべてに判断を下し、すべての価値を定めるシビュラシステムが「裁けぬ者」が現れた際にどうすればいいか。これが「重たい岩」にたとえられた不能のパラドクス。しかし、これには「免罪体質者はシステムの中に取り込んじゃうよ」という解決方法を図るという。まぁ、解決っていうか、問題の削除である。そして、鹿矛囲の突きつけた第2の矛盾は、「シビュラが自らを裁く際にはどうすればよいか」。酒々井さんを通して手に入れたドミネーターを振りかざすことで、鹿矛囲は擬似的に「シビュラVSシビュラ」の形を構成した上で、更に自軍は色相を保つことが出来る私兵で固め、相手取る執行官側が係数の高い連中という矛盾した状態を作り出す。酒々井のドミネーターを停止する措置すら執ることが出来ないシビュラ(ドミネーターの停止は、自らのシステム不備を認めることに他ならない)に対し、この問題は一見すると無理難題のようにも見えるわけである。

 ただ、今回はお話的に分かりやすくまとめるために「全能者のパラドクス」というお話にまとめて見せたが、実際のシビュラという存在は、このパラドクスに適合するものではないことには注意が必要だ。まず、免罪体質者という「不能」の問題が、そもそもシビュラが全能でないことの証左である。槙島事変の時の対応でも分かる通り、シビュラは免罪体質者相手には「裁く」ことを放棄する。「取り込む」ことはあくまでも副次的バージョンアップが目的であり、それ自体は必要事項ではなかったはずなのだ。この時点で、シビュラはすべてを見定める「全能者」としての存在意義を放棄している。あくまで「倫理」と「法」を司れば良いのであって、そこに求められるのは「全能感」であり「全能」ではないのだ。シビュラ側は流石に制作者集団なのでそのあたりの欺瞞は充分に理解しており、面白半分で免罪体質者を取り込んじゃうのも自己研鑽と暇つぶしの両立であるし、目の前にいる常守朱という免罪体質者を放っておいて外部に接続させているのも余興に過ぎない。

 そして、そんな「不完全な全能感」を操るシビュラに対して、「神の凋落」を目論んだのが鹿矛囲という存在。シリーズ全体を通して彼の「遠大さ」がよく分かるように作られており、今回も「事故の前に転校しちゃったおかげで、人としては存在するけど鹿矛囲の思想に完全に同調できる」なんてあまりにご都合主義な人間が登場。鹿矛囲の辞書に不可能の文字はない。しかも国交省とのつながりがあるってんでこれまで鹿矛囲が用意してきたコネも資材も全部その一本で説明をつけちゃったし、これから起こる地下鉄の事件だって、きっと便利な上役である桒島さんが全部やってくれたに違いない。鹿矛囲の真の能力って、透明人間とか色相操作じゃなくて、この「単にラッキーな周りの環境」なんじゃなかろうか。まぁ、透明人間になった後にひたすら人脈作りに奔走したのかもしれないけども。その程度の1個人の力で大規模テロが起こせる時点で、やっぱりシビュラは「完成形」ではないのである。

 しかし、鹿矛囲にとってシビュラはあくまで「破壊すべき神」には違いない。「決着」をつけるために何をしでかす気なのかは定かでないが、一番手っ取り早いのは、こないだの港の事件の拡大バージョンを実行することだろう。つまり、全国、全世界で同時に大規模な色相テロを起こし、国民総潜在犯状態にすれば、自らの操る色相浄化と相まって、シビュラという尺度は完全に崩壊する。そして、やろうと思えばそれくらいのことは割と簡単に出来そうなのだ。ばあちゃんを拉致られて久しぶりにおこな常守さんは、この鹿矛囲の決死行を止めることが出来るだろうか。まぁ、出来なくても別に問題無いんだけどね。むしろその後シビュラがどう動くか見てみたい気もするし。

 さて、そんな鹿矛囲・常守の対決を裏で操作しているのは、やっぱりシビュラ。というか東金さん。実は「初の人工免罪体質者」だったという今までの流れと真逆の出生を持っていた東金さん。彼が「史上最大の犯罪係数」に至ったというのは、シビュラ側の情報操作なのか、それともどこかで彼が狂っちゃったってことなのかは定かじゃないが、少なくとも今のところ「母さん」であるシビュラとの蜜月関係は続いている。シビュラの申し子である彼にとって、やはり鹿矛囲は致命傷とは言わずとも邪魔なのは間違いない。どうせだったら色々と問題を同時解決しちゃおう、ってんで、面白そうなので朱ちゃんをぶつける手はずを整えた。おそらく公安内に探りを入れてきた桒島にさりげなく協力して、ばあちゃんを譲渡したってことなのだろう。これで朱ちゃんも少しは色相が濁りそう。そして、マジおこになれば前回みたいなへまをやらずにきちんと鹿矛囲を潰してくれそう。いい事づくめのばあちゃん誘拐事件である。ばあちゃん、耳切られて箱詰めの割にのんびりしてたのは、単にぼけたのか、3代続くスーパー免罪一家だからメンタルがごんぶとなのか。どっちにしろ、年寄りいじめる図はあんまり見ていて気持ちの良いもんじゃないな。せいぜい殺されないように祈っておこう。

 そして、こんな面倒な三つ巴の構図を(知りたくもないのに)全部知っちゃった可哀想な美佳ちゃん。もう、冒頭の彼女のレイプ目スタンディングオーベーションの時点で私の加虐センサーが振り切れそう。アイデンティティをボコボコにする精神的加虐の愉悦である。また美佳ちゃんがいい顔するのよね。生き残るために必死で考え、スラスラと口から出てくるおべんちゃらと、全く求められてないのに止めることが出来ない万感の拍手に涙が止まりません。いいぞもっとやれ。ホント、彼女が大活躍する薄い本が凄く楽しみなんですが、個人的には東金さんにねちねちやられるよりもその辺のチンピラにボコられる展開の方が萌えるかな。理不尽に理不尽を重ねたどん底を見せてほしい。美佳ちゃん、酒々井さんという2大被虐キャラを産みだしただけでも、本作は価値あるアニメになったと思います。あ、あと雑賀さんね。あのおっさん、どんどんたがが外れとる。やっぱり潜在犯なんてロクな連中じゃないですね(歓喜)。

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 まったく、中学生は最高だぜ! 第8話。審査員のおっさんの「これが中学生か……」っていう呟き、「このすさまじさのくせにまだ中学生なのか」っていう意味の発言なのは分かってるんだけど、どうしても上記の文脈で聞こえてしまうのです。シカタナイネ。

 まったくもって有馬公生という男はどこまでの化け物だったのか。まるまる1話使って、彼に人生を狂わされた2人のピアニストの悲劇を描いている。かたや、公生に執着し、彼を超える妄念に取り憑かれたおかげでチャンスである海外行きを棒に振ったツンツン頭。かたや、興味のなかったピアノの世界に引きずり込まれたのに、当の公生は路線変更してしまったために憎悪を溜めて彼に復讐を誓う女。まったく、どこまで回りの人に迷惑かけりゃ気がすむんだ。もちろん、そんな文脈ではないのは百も承知。「公生に狂わされた」2人の人生は、溢れ出る熱量でもって、刺激に満ちた濃厚なものになっていたに違いない。

 公生に対してまっとうなライバル心をむき出しにする男、相座武士。幼少の頃からコンクールでは公生に上をいかれ、男の子らしい強い敵対心を持っていた。ただひたすらに「有馬公生」という怪物を倒すために修練を重ね、気付けばその実力は業界でも折り紙付き。数々のコンクールを総なめにして、今や師匠からは「国内に敵はいない」と太鼓判を押されるまでになった。いわば「まっとうな強さを持つライバル」である。しかし、そんなシンプルなキャラ造形の中にも、「中学生である」「音楽はただの殴り合いではない」というリアルはうっすらとにじみ出ており、彼の演奏は何も傍若無人な技能の独演会というわけではない。他人を寄せ付けない圧倒的な音の波で回りを黙らせることは出来るが、そのためには武士は武士なりに心血を注いでいる。舞台に立つ前には吐くほどに緊張もするし、舞台が終われば袖に転げ出て、そこから改めてふるえが起こる。傍から見れば「国内最強」のピアニストも、一歩壇上を離れればただの中学生なのである。そして、そんな彼が命懸けでぶつかるからこそ、その演奏も引き立つというもの。寝こけていた渡をたたき起こすほどに、彼の演奏にはエネルギーが満ちている。もちろんそれは、アニメーションとしても充分伝わってくるほどだ。

 かたや、公生とは性別も違うし、ピアノを始めた経歴も違うのが、もう1人のライバル、井川絵見。元々ピアノになど興味のなかった彼女をこの道に引きずり込んだのは、幼少期の公生の演奏だった。「公生ママ」に毒されずに好きにピアノが弾けていた公生の演奏は、なんと同い年の幼女の心を鷲づかみ、振り回し、マジ泣きさせるほどのものだったという。一体どんな演奏をしたんだ、ショタ公生。おかげで絵見はその呪縛から逃れることが出来ず、自然にピアニストへの道を進むことに。なんだか唐突な人生行路にも見えるが、考えてみれば「公生のピアノが琴線に触れてしまった」時点でおそらく彼女にも素質があったということなのだろう。自分の心を揺らし、人生を揺らした演奏を追いかけ続けることになるのだが、残念ながらその「有馬公生」は幻影となって消える。残された「譜面の奴隷」に憤りを覚えた絵見は、公生という邪魔な幻影に対して復讐を誓うことになる。今の有馬公生を叩き潰し、自分の人生を自分で改めて切りひらく。それが彼女の目標だろう。その演奏はとても気まぐれで、武士のような絶対的な力は持たないが、その分爆発力に富み、条件さえ揃えばどんなライバルをも蹴散らす必殺の武器に変わる。トリッキーな彼女の産みだす熱を帯びた「木枯らし」が、世界を彼女を中心とした渦へと引きずり込んでいった。

 なんとも強烈な個性を放つライバルキャラクター2人。その紹介だけでたっぷり1話使えるこの構成に感謝である。演奏シーンの迫力もあり、2人の強さ、そして個性が嫌と言うほどに伝わってくるエピソードになっている。特に絵見の持つ歪んだ憧れの念は何とも生々しく、猛々しいものだ。この2人ならば、きっと「聞こえていない」公生にも多大な刺激を与え、新しい世界を進むための原動力になるだろうという期待もある。さぁ、公生はこの2人の先制攻撃に対し、どんな返答を見せるのだろうか。単なるピアノ演奏でこの高揚感は見事である。

 ちなみに、今週一番関心したのは、ロリっ子絵見ちゃんの「マジ泣き」。はやみんの声とは思えないすげぇ声でした。キャスト陣も昂ぶってるなー。

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 これぞシビュラさんの本気、第8話。やっぱり局長の目が光ると何かが変わりますな。縢さんの幻影が未だ辺りを漂っているかのようである。

 予定通りにあっさり明かされた鹿矛囲の真実。そんなんでええんかと思うようなオチだったが、まぁ、無くもないような……いや、無いだろ。その生い立ちだからってスキャンされないのはまずいだろ。シビュラシステムって別に個人の生い立ちは関係無いやんけ。鹿矛囲が生き返ったなら生き返ったときに改めて認識するように調整しろよ。鹿矛囲だって「スキャンされるように努力した」って言ってるんだから。……むー、まぁ、免罪体質すら上回る「透明人間体質」の正解としてはこれくらいがギリギリなのかねぇ。そりゃま、そんなイレギュラー扱いされたなら鹿矛囲さんがキレるのもしょうがないかもしれんな。

 鹿矛囲(の代弁者となった枅岢さん)と雑賀さんの雑談のおかげで色々と過去の設定も明かされており、集団監視システムとしてのパノプティコンの存在と、それが原因となった飛行機事故と鹿矛囲の恨みの根幹。そしてそこにちらつく東金財団の存在。これまで別々に動いていたと思われていたシビュラ・鹿矛囲・東金のすべてが少しずつ繋がっていく。こうして裏側を聞いてみると鹿矛囲の目的意識というのは非常にまっとうな(少なくとも感情的には理解出来る)ものではなかろうか。自分を人間として見てくれないシビュラ、そして事故の原因を作り、フランケンシュタインのごとく自分の身体を作った東金財団。言ってしまえば「今の世の中の全部が憎い」のが鹿矛囲という存在。そして鹿矛囲というのは既に一個人の名ではなく、彼の志を受けた184名の死者と、その代替物としての「身代わり」の集団の総称となっている。彼らは自分を人としてみないシビュラをぶち壊し、そのついでに、仇である東金財団もぶっ潰す狙いである。さぁ、シビュラに認識されず、さばけない大量の「イレギュラー」を相手に、シビュラ様はどのように動くというのか。なお、スキャンされない理由は別にいいとして、鹿矛囲が他人の色相までコントロール出来る能力を持っている理由はめちゃくちゃ適当である。「スキャンされないからこそ禁断の技術も知っちゃったよ」ってそれでいいのか。シビュラはそんなもんがあることを問題視しろよ。

 さておき、そんな特異な鹿矛囲という怪物を産みだしてしまった飛行機事故と東金財団の問題だが、これに別角度からアプローチしていた人間がもう一人。もちろん、我らが霜月美佳ちゃんその人である。東金の部屋への不法侵入からヒントを得た彼女は、東金朔夜という怪人物を探るうちに、知らず知らず引き返せないところまで足を突っ込んでしまっていた。飛行機事故における東金財団の関与にいち早く気付き、そこに産みだされた「もう一人の怪物」である東金本人に行き着く。鹿矛囲は財団の力によって望まず産みだされた怪物であったが、東金朔夜は、財団が望む1つの実験過程で産みだされたものであると考えられる。「色相を保つ鹿矛囲」に対して、「色相を濁らせる東金」という対称性。彼は、かの槙島を代表とする免罪体質というシビュラ最大の難題に対し、「色相を濁らせる」ことで対処しようという1つのテストケースだったわけだ。

 なるほど、「脳の移植・摘出」という東金財団の特許技術は、なにも鹿矛囲のようなフランケンシュタインの怪物を産みだすためのものではない。そのものずばり、シビュラというシステムを運用し、進化させるための根底を成す技術である。東金美沙子という朔夜の母は、特許を取得し、技術発展のためにそのままシビュラの主要構成要素としてこの都市のシステム深くに潜っていたのである。自分の研究から産みだされたシビュラによって、更なる安定運用を目指すために。そして、シビュラだけでも充分に機能するはずだった世界の中で、免罪体質や鹿矛囲といったイレギュラーが登場したときのための「外付け安全装置」としての東金の存在。シビュラを、局長を指して「母さん」と呼ぶ朔夜は、純粋にシビュラの申し子である。彼の任務はシビュラの保護であり、うっかり近づいた愚か者を組み伏したり、鹿矛囲の追跡に尽力したり、シビュラ始まって以来のイレギュラーである常守朱に張り付いたりしているわけだ。むー、デンジャラス。彼らにとっては、鹿矛囲も槙島も常守も、すべて「シビュラに沿わぬもの」という意味では同等の存在。朱ちゃんは今のところシビュラとは共闘態勢を見せているので消してはいないが、彼女をいじくり回し、免罪体質の謎さえ解けてしまえば、もう用済みになってしまうのは避けられないだろう。東金フィーバーはいつ起こってもおかしくないのである。

 で、そんな深淵を除いちゃった可哀想な美佳ちゃん。いや、普通にその謎を同僚である常守さんに報告しておけばここまでひどい目にあわずにすんだかもしれないのだが、彼女が自分だけで掴んだ情報をどう活かしたらいいかと考えて、選んだ答えは「これであのあばずれを左遷しちゃえばあたしハッピーじゃない?」という最低最悪のもの。カフェでノートパソコンを開きながら意気揚々と「カタカタッ!ターン!!」やっている彼女の残念リア充っぷりは見ていて痛々しくなる。最悪の選択と知らずに浮き浮きしてるアホな女の子ってのは、これはこれで萌えるものがありますね。報告書の内容だって、シビュラがあんな存在であるっていうことを一切知らない平和な脳みそであることを除けば、割と的を射たものにはなっていたのだし、決して単なる馬鹿ではないんです。でも、どこまで言っても美佳ちゃんは美佳ちゃん。局長の「やっちゃったなー」みたいな告白の時のぽかん顔とか、その後のびーびー泣きわめく姿を見て気分爽快になった視聴者も多いことだろう。なんとか、最終回までに彼女の汚名返上爆あげ回があるといいですね(まぁ、無くてもいいけどその場合には存分に悲惨な死に方をしてほしいところである)。

 さぁ、いよいよおおっぴらに動き始めた東金、これまでの下準備がすべて揃い、いよいよ最大級のテロに走ると思われる鹿矛囲。2人の悪魔を相手に、朱ちゃんはどうなってしまうのだろうか。いよいよおばあちゃんがロックオンされたのはマジでまずい。年寄りを利用するのはなぁ。

 あ、あと作画なんとかして下さい。なんでそれなりに人気もでた作品の2期目だってのにこうも作画がガタガタになるのか……このキャラ原画って動かすの難しいのかなぁ。

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 どんな悪逆非道なキャラであろうとも、飼い猫を捨てることだけは許されません、第7話。捨てるな、死ぬまで面倒を見るんだ。ちなみに私事ですが、かつて幼い頃に猫嫌いだった祖父が勝手に我が家の猫を捨てる、という大事件があったのです。でも、帰ってきました。負けるな、猫。

 というわけで、サブタイトルの「カゲ」は凛々しい顔の黒猫、チェルシーに象徴される公生の過去の闇である。宮園との出会いである程度は打開出来ていたかと思われた母親との因縁であるが、流石にそう簡単に全撤廃というわけにはいかない。まずは「ピアノを弾く決意が出来る」ところまでの回復であり、そこから更に先、「コンクールでピアノを弾く」となるとまた一段ハードルがあがってしまう。技術的な難しさもさることながら、音楽室で宮園さんと2人だけの空間なら大丈夫だが、コンクールの会場には数々のオーディエンスと、ライバルがいるのである。ライバルたちの目に映るのは、かつての「悪名」である有馬公生。2年前までに培われた母親の残滓である。どれだけ振り払おうとも、回りから次々に過去は訪れる。その重圧を乗り越えるのは、並大抵のことではないのだ。

 チェルシーとの対話において、公生ははっきりと「譜面を追うだけの姿勢」とは決別することを示してみせた。それはかつての自分、つまり母親の幻影と戦っていくことの決意であり、新たな契機となった「宮園イズム」を継承し、初めて手にした「音楽の楽しさ」と改めて向き合う行為だ。未だに演奏中は自分の音は聞こえてこず、ただ演奏するだけでも大きなビハインドを背負った状態から、公生は一体どのような演奏を見せることになるのだろうか。宮園さんの示してくれた「公生の手」の真実はいかに。

 今回はコンクールの演奏開始前で終了するという「タメ」のエピソードだったので大きな動きはないのだが、前回ちょろっと登場した2人のライバルのキャラが大きく取り上げられ、公生にはっきりとした「目指すべき目標」があることを示している。つんつん頭の少年、相座武士は、並々ならぬライバル意識を持っており、それを糧にしたのか、現在では同年代ではトップを走る奏者となっている模様。負けず嫌いでガンガン公生にぶつかっていく姿勢のようだが、はたして「生まれ変わった」公生を見たら何を思うのだろうか。興味深いのは、圧倒的自信に裏打ちされているように見える相座であるが、やっぱり演奏前にはしっかり緊張しているのが分かるところ。そりゃまだみんな中学3年生だしね。そう簡単に演奏を自由自在にコントロール出来るわけではないか。

 そしてもう1人、目力強めの黒髪の女の子は井川絵見。外見はクールだが内面はアツい、なかなか可愛らしい子である。相座とはコンビみたいな立ち位置になっているのだが、この2人だってあくまでライバルどうしには違いない。「有馬公生」という大きな打倒目標が再び眼前に表れたことで、この3人の関係性はどう動いていくのだろうか。

 ちなみに、それ以外の外野では渡が試合に負けて中学校時代の青春に幕を閉じるなんてお話もあった。あの場面で「ヒーローはお前に任せる」なんてサラッと言えるあたりが、やっぱりいい奴。渡は渡で色々と熱意のある良い青春を謳歌してるよなぁ。そして椿と組んだ時のコンビ芸の安定感。今回、コンクールを見るためにいつもように客席に入っていたわけだが、ここで宮園と並んで座るんじゃなくて、間に椿が挟まってるのがちょっと気になる立ち位置なんだよね。普通、椿の立場だったら「一応それらしいカップル」になっているはずの2人は並べるはずなのだが……まぁ、特になにも考えてないだけなのかもしれないけど。前回の一件ですっきりしてしまったためか、今回は椿の内面は一切描かれなかったからなぁ。

 あ、チャーリーブラウンもいいこと言うよね。

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 問題児しかいねぇな、第7話。なんか、だんだん美佳ちゃんが一番まともな人間なんじゃないかと思い始めている俺がいる。

 前回までが荒事編で、今回は事件の方はちょいと一息、残された痕跡を捜査するパートということなるだろうか。結局、ドローン研究所でのドンパチは公安側が完敗した形となり、奪われたドミネーターは八丁、更に三係は全滅してるし、せっかく見つけた鹿矛囲も朱ちゃんのボーンヘッドで取り逃がしてしまっている。収穫といえば鹿矛囲の根城の1つを見つけたことくらいだが、わざわざあそこにおびき出されての事件なのだから、鹿矛囲だってあそこが見られることは計算の上だろう。「なりすまし」に関しても、既に代議士が捕まったところである程度はバレる想定であるし、今回登場した枅岢という名の医者も、見つかることは予定していたようなそぶりを見せている。一見すると一係のお手柄のように見える成長なんちゃらホロのミッシングリンクも、鹿矛囲からしてみれば見つかっても問題無い手がかりだったということだ。

 「流石にそんな万能の犯罪者なんておらんやろ」と文句を言いたくなるところだが、どうやら鹿矛囲のプランは常識的な犯罪のレベルを超えている。とにかくどこを探してもトラップだらけの状態なのだ。なるほど、ここまで周到に準備した上での計画実行なのだとしたら、常守が振り回されるのもしょうがないのかもしれない。まず、前提条件として「何故か分からないが」鹿矛囲自身はシビュラに認識されない透明人間スキルを有している。航空機事故の唯一の生き残りという出自が関係しているのだろうか。そして、彼は桁外れのメンタルケア技術もある。これにより、鹿矛囲に協力する犯罪者(信者)たちは透明にまではならずとも「見えなく」なることが可能である。更に臓器パーツの合成など、「見えない」のをいい事にこの世界では考えられないような大胆な変異を起こすことも可能であり、数々の「過去の亡霊」を公安回りにも送り込んでいる。一番の驚きは、何と言っても1期からいるはずのあのセラピストのあんちゃんだろう。そりゃまぁ、2期になってからやたら怪しかったわけだが、彼すらも既に計画の一部に含まれていた。はたして1期の頃からそうだったのか……。

 捜査陣とシビュラを包囲する「見つからない子供たち」。その根底にあるのは過去の飛行機事故であるが、さて、これが鹿矛囲という1つの信仰を産みだすに至った経緯はどういったものなのだろうか。彼の目的はまだ謎に包まれたままだが、流石に「失った友人達を現世に蘇らせるため」なんてセンチな理由でシミュレーションホロだらけの犯罪に手を染めているわけではないだろう。彼はシビュラシステムに並々ならぬ敵意を持っているようだし、過去の事故を巡って、なにか一悶着あったのかもしれない。当時の執刀医である枅岢氏も鹿矛囲に協力していることを考えれば、それは事故そのものよりも事故の処理についてのトラブルか? そりゃまぁ、「一度にクラスメイトたち185人を失う」なんてとんでもない経験をしてしまったら、まともな色相なんて維持出来るはずがないだろうし、幼い鹿矛囲を巡ってあれやこれやとシビュラが面倒を起こした可能性は低くないが……。さぁ、どうなるでしょうね。

 そして、そんな鹿矛囲軍団だけでも手におえない状態だというのに、叩けば叩くほどに出るわ出るわの身内の埃。絶賛ハイテンション中の東金さんがその先陣を切ってヤバさを際だたせている。美佳ちゃんの不法侵入など当然筒抜けだったし、朱ちゃんににじり寄るその視線も実に不穏。発掘された過去の人事ファイルには、既に十数年前に執行官として働いていた実績があり、その時代には「すべての担当執行官の色相をめちゃめちゃにし、ドミネーターをぶっぱした」という素晴らしい記録が残されている。そして彼が10歳ではじき出した犯罪係数は圧巻の769。エリミネーター発動条件が300であるから、この数字がどれだけとんでもないものかがよく分かる。しかも10歳児が。やべぇ。なお、彼は20歳になったときに地味にセラピストの資格も取得していたりする。まあ、どっちかっていうと色相を改善するためじゃなくていじくり回すために勉強してたんだろうね。普通に考えると、担当監視官をぶっ壊すのが趣味の「クラッシャー」ってことになるのだろうが、はたしてそれだけの存在なのかどうか。東金製薬との関わり合いも気になるところだ。

 東金だけでも美佳ちゃんはピリピリなのに、残った1人の雛河も案の定色々やべぇ。「重度の鬱病」というところから問題がスタートしているらしく、お薬の力でなんとか制御しつつ、ホロの技術やらなんやらを学んで必死に更正を目指した(かどうかはさだかじゃない)が、当然のように色相は濁りっぱなしで、転げ転げた執行官。当然、「単にそれだけじゃ執行官まで落ちてこない」とのことで……こいつも何かやりやがったね。一番のポイントはやっぱり朱ちゃんのことを「お姉ちゃん」と呼んだ一幕でしょうか。なーんか、ものすごく生臭い匂いがしてくるような……常守さん、変態から人気有りすぎやろ。

 というわけで、美佳ちゃんが一番まともな可能性がぐんぐん上がってきていますよ。今回も「大事な事実が上まであがってなかったのは私のせいじゃないから!」と部下に切れてごまかすいい感じの最低エピソードがありましたが、もう、それくらいの「現実の上司にもあるある」ネタではむしろホッとするくらいですよ。ま、彼女が有能なら捜査がもう一歩二歩先に進んでいたのは間違いないと思うけども。そんな美佳ちゃんが懐いているのは六合塚さんなわけですが……相変わらずの良い濡れ場やなぁ。ええ身体しとる。唐之杜さんとのピロートークはもっと艶っぽい奴でお願いします。あ、でもこのアニメで一番萌えるのっておっさんな気もするな。唐之杜さん、雑賀さんの謎のアダルトトークが捗るのです。今回更に枅岢っていう新しいおっさんも加わりました。メンタルクリニックのおっさんが江原さん、今回のおっさんが菅生さん。キャストもいいところ狙ってくるのよねぇ。そのうち田中信夫とかが暴れ始めそう(願望)

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