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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 終わらない夢を 鳴り止まぬ歌を 最終話!!!!!!! 何も、言うことはない。

 先週の反省を活かし、今現在この文章をアウトプットし始めたのはまさにリアタイ視聴直後、1727分のことである。その状態でまず書かせてもらうが……石原さん、あんたひどいよ。こんなもん、耐えられるわけがないよ……正直、まだ動悸がひどいです。視聴中はマジのガチでずっと号泣しっぱなしでさ、何度か過呼吸になって危なかったよ。アニメ視聴でここまで追い詰められたの、ほんと久々。こんなん無理だって。単なるアニメの最終話じゃない。過去9年間の蓄積の総決算。そういうデザインにしやがった。そこにはアニメ本編の想いも、盤外のアレもこれも。失礼ながら全部一緒くたにしちゃって。俺の人生の半分ぐらい持ってかれたみたいな、そんな心地。

 ほんとズルい構成だったわね……まさかの3年まとめてプレイバック。ひととせの歌じゃねぇじゃん、みとせの歌じゃん。ほんでこれだけのハイカロリーアニメ、9年の歴史を二十数分に押し込んでみろや、そりゃ名シーンしかねぇだろ。またその詰め方に容赦なくてね……ユーフォに罹患した時間が長ければ長いほど、今回のエピソードは後を引くぞ……こんなもんまとめられるわけねぇんだが……。

 ほんとは全キャラ拾いたいくらいなんだけど、一応「3期の最終話」という定義づけでなんとか形を作っていこう。それでも全カットスクショ必須みたいな超ド級のカロリーだったわけだが……みなさんもきっと今回のお話は号泣しながら見守ったことと思うんですが、最初に涙腺がぶっ壊れたシーンはどこでしたか? 私はね、久石奏が窓を開けたシーン。あの窓はさぁ……そんな露骨なことあるかい……。かつて鎧塚みぞれが開けられなかった窓。久美子が容易く開けて「窓を開けるのが上手」と褒められた窓。その窓を、久石奏はガタガタと苦労しながらなんとかこじ開けた。その様子は当然みぞれとは違うし、久美子とも違う。窓の向こうにいるのは黄前久美子と、黒江真由。奏は必死に「窓を開けよう」ともがいてるんですよ。その結果が今回の総決算をまるっと飲み込む暗示になっている。間違いなく今シーズンのMVPは久石奏。大会本番前の猫パンチも可愛くてなぁ……次の時代のユーフォはお前が引っ張っていくんだ。黄前部長の意思を、そして黒江真由の信念を、次代へ引き継いでくれ。

 そしてなんと言ってもその黒江真由だ。前回で憑き物が落ち、本当の意味で北宇治の一員になれた真由。本当に今回はこれまでと全然違う描かれ方になっててさぁ。4人でカレー食ってるシーンの穏やかなことと言ったら。もはや彼女と他の部員たち、そして久美子との間に「一線」はないのだよね。彼女が紡ぎ上げた麗奈とのソリ、本当にお見事でした。彼女も今期の裏MVPですね。

 あとは3期を象徴する求ってキャラもいるんですよ。彼については本当に「よかったねぇ、よかったねぇ」とそれだけなんですけど。男子三日あわざれば。いや、改めて見ると緑輝もこの3年でちゃんと成長してたけどね。

 演奏後1人涙を流していたのは葉月。そういえば彼女が壇上で演奏してるシーンをちゃんと見られたのは今回が初めてだったのか。万感の思い、彼女こそがこの3年での成長譚を象徴する主人公だったのかも。来年は多分美玲が部でも重要なポジションを担ってくれるだろうから、チューバパートの未来も明るいんじゃないかな。

 そのほかにも回想シーンでのあれこれがあって情報がパンク状態なのでまた改めて視聴しなおしたいとは思いますが……個人的に「マジで勘弁しろ」と思ったのは歴代部長の敗北シーン詰め合わせ。優子ぉ……お前の夢が叶ったんだよぉ。後輩たちがやってくれたんだよぉ……お前の指導のおかげなんだ。ほんとにそこは誇りに思ってくれ。ほんで晴香たちと一緒に会場に来てねぇ田中あすかな。まぁ、お前はそれでいいや。回想シーンのカロリーが高すぎる。

 大吉山はきっちり全部詰め合わせだったのでそれだけで麗奈が麗奈。金賞発表時の3年前との綺麗な対比。周りには一緒に祝福してくれる仲間もたくさん出来た。最後まで「特別」であり続ける彼女が、大好きのハグできるのはやっぱり久美子だけ。

 お疲れ、黄前久美子。ラストシーンの語り口が完璧だったよ。ヘアピンズルいよ。やり切ったよ。幸せだったよ。本当にありがとう。

 
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 武田綾乃……お前………………第12話……アニメ史に残る1話。その選択は、群盲の目を貫く。

 1つ、感想の前に残念な告白があり、ご覧の通り、私は今作をリアタイ視聴できていない。土日がアニメラッシュなので放送順に処理していくとどうしても後日にずれてしまいがちで、本作のように視聴に体力が必要な作品は体調も万全に整えてからでないと視聴が叶わないためだ。そして、どうしようもないタイムラグが故、今回はぶっちゃけ「ネタバレ」を喰らってしまった。厳密には何が起こるかまで知ったわけではないが、そりゃもうTL上が大騒ぎだったわけで、「えっ、なんかあったん?!」と察した状態で視聴する羽目になり、純然たる一撃をノーガードで喰らったわけではない。おかげで視聴時に多少なりとも認知の歪みが生じてしまった感はある。そこはもったいなかった。とはいえとはいえ、覚悟したからとて耐えられる一撃と耐えられない致命打というのがあるわけで……今の世の中、これが出来るのは武田綾乃くらいのもんじゃなかろうか。世間的には「原作者とメディア化が云々」みたいな問題が取り沙汰される気風があるが、こんなもん、余計な心配もなにもない。原作者以外が、こんな選択できるわけがないのだから。

 というわけで、先週まで「多少アニメ用にリライトはされてるけど、まぁ俺は原作知ってるし」というので余裕綽々で見ていた私のような層の慢心を粉々に打ち砕く「原作改変」。何が恐ろしいって、ことここに及んでこの展開を見せつけられて、納得以外の感情が出てこないことである。ここまで数クールにわたって見届けてきた「響け!ユーフォニアム」というアニメ作品の最終回前の展開はこれ以外にないとすら思えてしまうことである。これは作者におもねったおべんちゃらでもなんでもない。それくらいに、ここまでの布石は今回の話へ接続されていた。

 最大の要因はやはり黒江真由という「ラスボス」そのものにある。もはや書いてしまって問題ないだろうが、原作では全国大会のソリは久美子がオーディションであっさり勝ってもぎ取る。念の為に確認したが、その後は真由とも特に変わることなく平然とコミュニケーションをとっており、その「当然のラスト」を何事もなかったかのように受け入れている。まぁ、原作の場合はあすかイベントが関西大会後なので、田中あすかの霊威でもって黒江を蹴散らしたという展開は特に違和感もないものだったし、それはそれで1つの綺麗な物語だった。

 しかし、アニメの場合にはそうはいかない。限られた尺の中、執拗に迫り来る黒江の影。何度も何度も久美子の領域を侵し、奏からは完全に敵認定された「ラスボス」真由。これを打倒しなければ、アニメ世界の「ユーフォ」は完結しない。そしてこの世界において黒江真由を「倒す」方法は何かを考えたら、最後の最後まで久美子がその信念を貫き通し、真由が抱えていた過去の因縁が間違ったものだったと突きつけてやるしかないのだ。久美子が負けたとしても、心から真由を祝福し、彼女の演奏を認める以外にないのだ。

 そしてアニメシナリオの巧みな部分は、こうして唯一の「黒江調伏」の選択が、きちんと久美子の未来につながっていること、そしてさらに、トドメの一撃をよりにもよって麗奈に振るわせることで、高坂麗奈の人生までもを、ここで決定的に描き切ったこと。前回のエピソードで、久美子と麗奈は「別れ」を決意した。その別れは長い人生を考えれば大した問題ではなく、お互いの「特別」はこれからの人生でも続いていくと、そう約束した上での生産的な「別れ」だ。そこに不変の友情が約束されたのであれば、高坂麗奈は久美子と道を違え、音楽に全てを捧げなければならない。彼女がどれだけの犠牲を払っても、それだけは曲げぬという信念が、今回のオーディションに刻まれたのである。確かに辛い決断だっただろう。彼女の人生に大きな後悔も残しただろう。しかし、ここで久美子ではなく、「自分」を選べたことこそが、きっとこの先の麗奈の人生を強く後押ししてくれる。ここで「1番」を選べたことが、彼女の人生をより「特別」なものに引っ張り上げる。

 オーディションシーンの演出の重ね合わせも実に印象的である。何度もフラッシュバックする2年前の記憶。中世古香織と麗奈の対決、号泣する優子。あの時の痛みが、今の北宇治を作り上げた。あの時と違い、今回のオーディションは実力伯仲。「部内を真っ二つに割る」という意味合いは一見すると全く異なる様相だが、その実、「2番」を選択した者の中には、久美子の音をそうだと分かって選んだ人間が確実に存在している。麗奈は「分からないはずがない」と言った。であれば秀一は間違いなく分かっている。以前「久美子が吹いたらいい」と言っていた緑輝も同様だろう。「1番」に挙手した葉月は分かった上で選んだというよりは、純粋に「良いと思った方」に入れたか。美玲も「1番」を選んだ様子。そして最も苦しんだのは久石奏。彼女は、2年前の吉川優子である。誰がなんと言おうと久美子に吹いてほしいと、そう願って「2番」を選んだ。おそらく麗奈たち同様に久美子の音を間違えるはずもない彼女が挙手の際にあれだけ悩んでしまったのは、おそらく「1番の方がうまい」と理解してしまったからだ。それでもなお2番を選んだ、彼女は優子の再来なのだ。その選択が責められるものではないことを、先人は余計なくらいに示している。

 そして、2年前は選ばれる側だった麗奈が最後の決断を下す。久美子は言った。「麗奈に会って私は変わった」と。その麗奈が、ここで2番を選ぶはずがない。その選択が、麗奈の、久美子の未来を決定づけ、そして、ついにあの黒江真由に伝わる。ここまで久美子が頑なに守り抜き、必死で戦ってきた最後の防衛ライン。麗奈の一撃でもって真由を打ち倒し、久美子自身の宣言でもって、全てに片をつけた。これこそが、北宇治吹部のあるべき姿である。その輪の中には、黒江真由が含まれていなければならないのだ。

 もちろん、個人レベルではそう簡単に片付けられる問題ではない。久石奏は、身も世もなく泣きじゃくる。自分の不甲斐なさを悔いただろうか。自らの選択を後悔しただろうか。久美子の教育はスパルタだが、彼女の「強さ」に信頼を寄せてもいる。

 運命の大吉山、麗奈がみっともなく崩れ落ちる。一番大切な友を想い、それでも曲げられなかった自分を憎み、ただただ泣き続ける。これだけ思われている、そのことだけでも久美子にとっては本望だっただろう。「性格の悪い」黄前久美子は、不器用な親友を誇りに思う。

 そしてもちろん、久美子も悔し涙を止めることなどできない。ひと時の迷い、慢心、部長職という激務からの言い訳。おそらくこれまでの1年を思い返せば、後悔などいくらでも出てくるはずだ。すでに下された決定に、取り返す術などない。ただこの感情は、抱えて進むしかないのである。「次の曲」まで。

 
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 「みぞれ目線」で大草原、第11話。いや、そりゃ視聴者みんな分かってたことだけども。わざわざ動画まで使って表現したかったのがそこかよ。ありがとうございます。

 関西大会と全国大会の間をつなぐお話、そして久美子の進路捜索という大きなテーマに1つの決着をつけるお話でもある。ドラマの筋書きとしては狭間のお話ではあるが、それだけに重要な要素が着実に積み重ねられ、非常に印象深いエピソードになった。今回のコンテ演出はベテラン・北之原さん。安定のお仕事ぶりに感謝。

 色々と取り上げたい要素があるが、まずは軽めの素材ながら絶対に無視できないOG組のお話。もう、中吉川の衣装コンセプトのギャップだけで昇天ものの満足感。音楽性が違いすぎるのバンド組んでる2人、その衣装でステージ上がったらどう考えても不協和音にしかならん。デカリボン先輩のブレない趣味はさすがだが、冷静に考えると夏紀の正装もかなり極まったコンセプト。そう考えると希美のチョイスが一番バランスのいいところ(そりゃみぞれだって大好物だろうさ)。かつての盟友の晴れ舞台に浮かれる3人と、そんな仲間たち(のごく一部)との久しぶりの再会にテンションが上がるみぞ先輩。今期初登場だが大学生になっても1ミリもブレない安定感は問答無用の鎧塚ワールド。元気そうで何よりである。

 そんな先輩との邂逅で大きな転機を迎えたのが久美子の進路相談。関西大会という大きな山場を乗り越えて多少現実的な問題を見据える余裕ができた(というか現実を直視しなきゃいけなくなった)が、未だ定まらぬ久美子の未来図に親友たちも流石にちょっと不安げ。緑輝はド安定のその才能を武器に早々に推薦入学を勝ち取り、葉月も以前決めた保育士路線のために進学先は決まった。そして麗奈はアメリカへの留学を決めており、彼女の姿勢にもやはりブレはない。この時点ですでに三者三様、この春をもって4人の人生は確実に分たれる。4人で切った巨大なピザのピースは、そうして離れていく4人の未来を暗示したものであるが、葉月たちにはそうした「分断」を憂う気持ちは一切ない。希望に溢れた未来が見えている。

 久美子はギリギリまで音大という選択肢が目の前にぶら下がっている。あれだけ麗奈から熱烈に勧誘され、「私と一緒にいたいならユーフォを続けろ」とプロポーズを受けている状態。はっきり断る要素も見つからず、隣の迷惑な友人に流される形で音大に進むのも1つの選択肢。自分1人では決定打を出せないこの問題に、人生の先輩2人から大きなエールが贈られた。まずは実姉の麻美子。単にコンサート前のメイクをセミプロの手でやってもらっただけだが、やはり血のつながった姉妹でしか出来ない対話というのはあるもので、これまで久美子が溜め込んでいた部長としての鬱憤や、何も決められない自分への苛立ちなどを、ひと足先に大人になった姉にポロポロと漏らしていく。そしてそんな妹の辛さを軽々と受け止め、ひょいと流して魔法のようなメイクを施してくれる麻美子。ほんのわずかな年齢の違いだが、麻美子は大人で、久美子はそうじゃない。しかし、その違いは微々たるもので「大人になるってのはそういうこと」。麻美子の言葉を受けて、久美子の中で進路選択という高い高いハードルがグッと下がったような、そんな手応えがあった。

 そして決定打となるのはやはり怪物・鎧塚みぞれ。先週が田中あすか、今週がみぞれ、この世界を支配する2人の怪物の力をフル活用して黄前久美子の人生は動く。全てを見通し、何もかもを分かったかのようにアドバイスをくれたあすかと違い、みぞれはどこまで行ってもみぞれでしかなく、彼女に見えている世界は相変わらず非常に狭い(エンドカード参照)。しかし、だからこそみぞれにしか見えない世界があり、みぞれの視界には久美子の未来など映らない。視野の狭いみぞれだからこそ、「見えているならわかるはずの世界」が見えない。久美子へと叩きつけた強烈なヘッドショットは、みぞれからしたらそんな当然の世界を伝えただけのことなのだろうが、久美子にとってはあまりに衝撃的な事実である。みぞれは理解しているのだろう。久美子は、この先音楽の世界でやっていく人生を選択しないということを。

 道は絞られた。唯一の心残りはこれで麗奈との関係性が1つ決着を迎えるということ。それが嫌だと麗奈は訴え、とんでもねぇ痴話喧嘩みたいな台詞を久美子に叩きつけるが、久美子の意思はすでに固まっている。彼女は横断歩道で麗奈の「背中を押した」。それは一見すれば突き放すような行為でもあったが、2人の距離は決して離れていない。横断歩道の先、2人の向かう先は分かれている。それでも未来で再び交わることが無いなんて、そんな決めつけをする必要はないのだ。希美とは決定的な別れを経験しても、みぞれは今、笑っていた。2人の未来には、まだまだたくさんの可能性があるのだ。まぁ、よりによってみぞれが登場するエピソードで「大好きのハグ」はやってほしくなかったけど(この2人は今更ハグなんかでいちいち驚かんからええけどな)。

 さぁ、久美子の進路については1つの問題が片付いた。残す最後の課題は、ラスボス・黒江真由との決戦だ。今回も鍵を握ったのは忠犬(忠猫?)・久石奏。ユーフォ3人が直線で並んだ真由との対決シーンは今作らしく露骨なエゴのぶつかり合う緊迫のシーンである。今回の対峙シーンで気になったのは光源の位置である。いつも通り日陰で練習している久美子と、同じゾーンに踏み込んで対話を持ちかけた真由。2人の立ち位置を考えると周りに主だった光源はないはずなのだが、2人は明らかに下から照らされるようなライティングで描写されている。角度を考えると、2人を照らす光を放っているのは、久美子の手にあるユーフォニアムである。日陰なのでいかにユーフォとて反射光は薄いはずなのだが、まるでユーフォ自体が発光しているかのように2人の鬼気迫る表情が照らされる。2人の未来を決めるもの、それは互いに相容れぬ人生観を持ちながら、ただ一心に取り組んできたユーフォという楽器だけ。真由がこれまで再三久美子にぶつけてきたあの行動の欺瞞を奏が看破した。互いに自分のユーフォの実力というものに信頼を寄せ、そこだけは譲れないからこそぶつかり合うエゴとエゴ。

 全てを決めるのは最後のオーディション。ユーフォにかけたその青春に、次週、決着がつく。

 


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 「響け」って、今更だけどいいタイトルだよね……第10話。いろんなところが響き合う、そんな大事な大事なお話。

 物語的にはグッと締められるポイントだし、粛々と受け止めようかと思ったんだけども……ごめんね、今回久しぶりに原作引っ張り出して確認させてもらったよ! これまではもう、「だいぶ前に読んだからディティール忘れちゃってたけど、まぁアニメを新鮮に見られるから再読はやめとくか」って思って流してたんだ。実際、今回確認したら原作では先輩イベントが関西大会の後だったり、かなりいろんなところが原作からいじられてることに気づかされたんで、単純に今回のお話だけで比較することはできないんだけど……。

 それにしたってアニメスタッフゥ! やってくれたな! なんだあの田中あすかは! テメーら頭脳が中世古香織か?! アニメでは尺の関係でいろんな要素を削ってるくせして、やりたいことはやり放題だな!

 原作未読者にはネタバレになって申し訳ないのですが、原作では! 田中あすかが! 中世古香織に! 膝枕とかしてないっ!!! ……以上です。私が伝えたいのは以上です。なんやあの描写は……もう、誰に何を見せつけたいんだ。私の中で「目が潰れる!」という感情と「こんな田中あすかが……こんな田中あすかがァ!」っていう天使と悪魔が激闘を繰り広げてたんですよ。どっちも悪魔かもしれないですが、とにかくもう、脳破壊甚だしいんですよ。しかも今回の田中あすかパート、アングルの取り方がいちいちさぁ……「ソファに横たわった対象を足元からナメて全身入れるカット」とか、普通の構図で描かんやろ。なんなの、ほんとなんなの。はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。

 …………………………………………よし、一旦落ち着こ。中世古・田中は同棲してる。それは分かってたんだ。別に耐えられる事象だ。今回のアニメ化にあたり、この2人の愛の巣お住まいがどこにあるかが京アニによってより明確に映像化されるってのは注目ポイントだったんですよね。ちなみに原作の描写では「出町柳駅を降りて、そこから入り組んだ道を歩くこと15分」とのことだったので詳細は想像するしかなかったのだが、今回の描写で確実に鴨川を渡ったことが判明。鴨川より西側のエリアである。京都に明るくない人たちのために説明しておくと、途中で久美子が通り抜けたシャッターの閉じた商店街が「たまこまーけっと」のたまこたちが住んでいる。出町商店街。つまり今回確実に久美子はたまやの前を通っており、もしかしたら京アニ2作品のメインヒロインがバッタリ邂逅する可能性もあったわけだ。そうして商店街を抜けてたどり着いた学生マンション(いうほど学生向けだったか?)ということなので、多分感覚的にはこの辺のエリアに住んでいると思われる。となると普通に考えたらあすかの進学先は同志社か京大、あと京都芸大もワンチャンある。原作だと香織は「看護学校に行っている」とのことだが、付近に看護学校はない気がするので、多分あすかの利便性を優先していると思われる。この辺の学校なら宇治からでも通いで行けなくもないのだが……まぁ、あすかはあの通りの家庭事情だったし、とりあえず大学に入ったら家を出ようと思ってたはずで、その欲求をうまいこと香織がふん捕まえたというのが実態じゃなかろうか。以上、あまりにキモいオタクなりの分析。

 閑話休題、とにかくかつて戦ったボスキャラに助力を仰ぐという激アツ展開から久美子には何かが「響いた」らしく、かつての「性格の悪い」黄前久美子がようやくその姿を取り戻す。そうなのだ、田中あすかを打倒した稀代のモンスター・黄前久美子は決して最初から相談所能力を持っていたわけじゃない。さりげなく人に合わせつつ、肝心なところでは性格の悪さを炸裂させて人心を壊しにいく、その手管がかの怪物田中あすかにさえ届いたのである。そんなかつての激闘を思い出し、あすかは「私は何も負けていない」と嘯いてみせたが、変わってないけど変わった田中あすかの姿に、やはり背後で微笑む中世古香織の影が見え隠れするのである。社会に飛び出したら、人はこうも変わるもんですよ。……赤眼鏡があればいつでも田中あすかは田中あすかですけどね。

 すまんな、今週はどう足掻いても先輩2人に持っていかれる回だったので肝心の関西大会の方は心ここに在らずの状態になりかけたが、そこはアニメスタッフの心憎い演出。なんとあすか宅からの帰り道、久美子が「橋を」「走る」という演出をここで挿入。アニメ1期の名シーン「上手くなりたい」のセルフオマージュであることは明らかで、原作にはない描写。かつては宇治川の上で叫んでいた久美子が、今回は出町橋を駆け抜け、鴨川の流れに決意を示す。これは完全に読み込みすぎなので単なるオタクの妄言なんですが、久美子が決意の眼差しを向けた出町橋の先からの景色は、加茂川と高野川が交わって「鴨川」へと合流するデルタと呼ばれるエリアなのですよ。大きく分断されていた部内の雰囲気を一喝し、全国大会へ向かう大河を成そうとする久美子の心の表れとしてこれ以上のロケーションはないんじゃないでしょうか。まぁ、眼差しの先にある飛び石は、かつてたまこがもち蔵から告白されてショートした場所でもあるんですけどね。

 田中あすかも、多分ルームメイトと夜の鴨川べりを散歩したりするんだろうなぁ……俺も同じ場所に行けば、もしかしたら田中あすかに会えるのでは?(記録はここで終わっている)

 
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 キツいしんどい苦しい辛い、第9話。青春の痛み、成長の苦しみ。みんながみんな、乗り越えなきゃいけない何かがある。

 というわけで今期最大の難所が訪れました。ここを乗り越えればあとは晴れやかな景色が待っているだけなんですが、やはり吹奏楽部という大所帯を運営していく上で、さまざまな主義信条の違い、そして感情をぶつける先がないことへの苛立ちなど、降り積もるものはたくさんあるもので。今回はそれが「滝運営体制への疑問」という形で結実してしまい、部内各所に疑念の声が上がるようになってしまった。これだけ長いこと「北宇治吹部は実力主義」と謳っておきながら、いざ改革に乗り出せばこれだけの不信を招いてしまうというあたり、やはり何かを変えるというのはとてもとても難しい。

 一番厄介なのは、今回の揉め事に「正しい指針」がないことである。顕在化している一番の問題は「滝センが正しいのか否か」ではあるのだが、彼だって神様でもなんでもないただの人間。なんなら指導者としてはまだまだ若造レベルの成長過程にある1人のしがない教師でしかない。そんなもん、ほんとに頼っていいのかどうかは誰にも分からないし、さらに根源的な問題として「音楽の良し悪し」「演奏の良し悪し」などそう簡単に決められるものはない。結局、関係者1人1人が自分の中に何らかの「神様」を打ち立てて、それを信じて従うしかないのである。

 もちろん、これまでずっと部としての方針を主張してきたのであるから、滝支持派というか、何も間違ったことなど無いよ派も一定数いる。今回一番心強かったのはそちらの派閥に大きく寄っている1人が葉月だったことだ。彼女は去年時点ですでに後輩に敗れてステージに立てなかったという過去があり、彼女自身が語ったように、それをバネにして努力し、今年はそれが実ったからこそステージに立てた。ここで滝の判断に異を唱えられては、まるで自分の努力までもが否定されたかのように見えてしまうだろう。葉月自身はそんな僻んだ考え方をしていないとは思うが、「滝が正しかったからこそ自分は頑張れたし、結果は確実に伴っている」と、3年間の経験を基に心からそう発言できる彼女の芯は強い。また、ちょっと意外なところからは釜谷つばめちゃんもそちらの派閥。誰も触りたくないくらいにピリピリ熱々になってしまった久美子-真由間の関係性に、唯一踏み込めたのは同学年のつばめちゃんだけ。孤立無縁になってしまった真由をさりげなくサポートしつつ、そのための動機づけとして「滝先生はきちんと演奏を聞いて決めてくれているのだ」と発言していた。確かに「部長をソリから下ろす」という選択はこれ以上ないくらいに実力主義であることの標榜になり、「どうせ何らかの忖度が発生しているんでしょ?」と諦めたり、たかを括っていた人間がいたとしたらこれ以上ないアンサーになっている。つばめちゃんはしっかりとその点を見ていた。

 他方、やはり少々急き過ぎているかに見える滝の判断に疑問を持つ者は多い。今回は仲良し4人組にもその分裂が起こっており、意外にも釈然としない様子だったのは緑輝。別に彼女は滝が判断することに文句を言っているわけではないが、「久美子と真由の実力はほぼ一緒なんだから久美子の方が良かった」と発言した。この緑輝の発言はまず、客観的に見て「久美子と真由はほぼ実力が拮抗している」ということの提示である。この世界における緑輝が他者を超越した「特権的立場」にあることは何度か触れているが、そんな彼女の口からはっきりと「真由が目立って久美子よりもうまいわけではない」という保証が出たことにより、我々視聴者も問題を考え直さざるを得なくなってくる。「滝は本当に上手い人間から選んでいる」という前提が覆るからだ。自分の経験に根差し、信念を持って滝を評価する葉月と、神のごとき視座から客観でもって滝を批判する緑輝。この2人ですら意見が分かれるほどに、現在の吹部は混沌としているのだ。

 それでは肝心の部長はどうなのか? 久美子はどこまで行ってもお人好しすぎる上に部長という立場にもなまじ慣れてしまったがため、なかなか当事者として事態を客観視するのが難しい。真由からの執拗な(空気を読めない)気遣い発言には流石にイラついてしまったし、方々から耳に入ってくる滝の批判を聞けば、流石に「なんで自分が」という気持ちにもなってくるだろう。こればかりは人としてどうしようもないところである。そこにさまざまな厄介ごとの相談が舞い込めば、いちいち部員1人1人に気を遣って当たり障りのない発言をする必要もあり、おそらく久美子の中でも何が正しく、自分が何を正しいと思っているのかすらよく分からなくなったかもしれない。

 そこで変なかたちの助け舟を出してくれたのは秀一だった。彼は久美子がソリから外されてしまったことで、なんと「拗ねた」。高校3年生の男子が、後輩から心配されちゃうくらいに露骨に、「大人気なく」拗ねたのである。そんな秀一の様子を見て、久美子は笑ってしまった。そう、面倒臭いことを必死に考えて必死に理屈をつけようとしていた自分に対し、秀一は周りの目など気にせずに子供のように感情を露わにして見せたのである。この幼馴染の行動に、久美子の肩の力が抜け、救われたのは事実だろう。まぁ、だからとて解決策が提示されるわけではないのだが、自分の周りには「そういう考えをはっきり持っている人がいる」という事実を再認識し、改めて立ち位置を探るための道標になってくれたはず。何も確たるものがないこの状況で、部長は高校生とは思えないくらいに難しい判断を迫られている。

 そして、頑なに何かを信奉しているように見えて、実は一番揺れてしまっているのは多分麗奈なのだ。彼女の主張は終始一貫しており、「滝先生は絶対、逆らうなんて言語道断」という強硬派として部内でも恐れられている。疑う声は弾圧し、やる気がなければ蹴り落とす。そんなやりすぎとも言える言動で部内の空気をさらに悪くしてしまっている。しかし、彼女とて馬鹿ではない。滝昇という1人の人間が絶対的に正しいなどということはあり得ないことは承知しているはずだ。そして何より、自分が一番信頼していた久美子が隣からいなくなってしまった。今回のオーディション結果に、一番納得いっていないのは本来なら麗奈のはずなのだ。しかし彼女はそんなことを発言することはできない。自分を自分として保つために、全てをまるっと飲み込んで、反対意見を糾弾する。そうして強い立場にいなければ、彼女はすがるものを失って足元がおぼつかないのだろう。だからこそ、久美子の態度が逆鱗に触れるのもわかる。久美子のために、久美子が招いたこの事態のために、麗奈は必死に自分を「正そうと」している。世界の正しさを自分の正しさに沿わせようとしている。しかし久美子はのらりくらりと周りに合わせ、麗奈が必死に守ろうとしている「正しさ」を揺るがせにしているのだ。それが麗奈にとってどれだけ危険なことなのか、分かっていないのだ。

 ちぐはぐなのは間違いない。ただ、どこを見ても単なるエゴからくるぶつかり合いはなく、互いに互いを伺うからこそ、軋轢は起こってしまう。ここを乗り越えてこそ、黄前久美子は名実共に部長になることができる。鍵はどこにあるか。試練は続く。

 追伸:そんな中での久石奏さんの立ち振る舞い、今回も素晴らしかったです。

 

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 この国の日曜アニメは情緒に影響を及ぼしすぎる、第8話。まぁ、私は日曜には見られてないんですが……毎週毎週このメンタルブレイクをくらい続けて、まともに勤労とかできる奴おるか?

 先に取り上げておくと、今回コンテを担当したのは3話でもコンテ演出を任された以西芽衣さんという方。なんだろう、やはりこの人の画作りはじわりじわりとにじり寄るような作劇が秀逸で、京アニのテイストというか、ユーフォのテイストにがっちり噛み合っててとても好き。出来れば何も悩まずに見られるハッピーなエピソードでもどうなるか見てみたいところなんですが……まぁ、今回はそれどころじゃないのでね。

 なまじ原作既読でどういう展開になるか全部知ってるので(まぁ、今回の展開は未読でも予想できただろうが)、ほんとにラストに向けて追い詰めていく展開が地獄。前回多少なりとも攻略の糸口が掴めたと思っていた黒江真由だったが、攻略も何も、あっちは正しいことしか言ってない慈善モンスターである。真っ向からぶつかる以外に選択肢はなく、その結果力負けしたら即死、そういうタイプの厄介極まりないステージだったのだ。そしてこの度、ついに黄前久美子は敗北した。それは部長業という多忙な役職に回されたことが理由だったかもしれないし、性格が悪くても人が良すぎる久美子が、真由という異質な存在にどこか怯んでしまった結果なのかもしれない。少なくとも付け入る隙を与えたのは間違いなく久美子自身である。

 そうして「北宇治の体制」をめぐり、さまざまな部員の思惑が交錯している。一旦オーディション云々を差し置いてそれどころじゃなかったのがコントラバス師弟。求はこないだの一件で一皮剥けてあの久石奏をして「いじりにくく」成長したが、その成長は、避けて通れぬ痛みを伴うものである。以前この世界における川島緑輝の特異性と絶対性について触れたが、そうは言っても彼女だって単なる女子高生。真正面に迫る後輩の悩みになんて、全てにおいて無敵ではいられない。求の痛みと進歩、そしてそれを受けた緑輝の進歩。一夏の経験を超えて、少年少女は強くなっていく。

 オーディションで吉報が訪れたのはチューバ組。前回の結果に涙を飲んださっちゃんがめでたくメンバー入りを果たし、これにて葉月・美玲・さつきの先輩組にすずめちゃんを加えた最強のカルテットが完成。ある意味で一番幸せな形を手にしたパートと言える。それもこれも滝センの編成判断のおかげなのだから、チューバ組は感謝しなければいけないだろう。

 しかし、全体の構成人数が変わらない限り、どこかのパートが増えればどこかが削られる。今回一番の悲劇に見舞われたのはまさかの久石奏。どこまでも飄々と、冷やかし半分みたいなテンションで物事に接していた彼女に、ここで1つの裁定が下されてしまった。まぁ、元々奏は要領の良さこそ評価されていたが、実は今まで演奏の実力についてはあまり取り上げられてこなかったんだよな。去年は比較対象として素人上がりの中川夏紀がいたわけだが……「さらに上」が来たこと、そして編成が変わったことでまさかの押し出し。流石の久石もこれには動揺を隠せなかった。この部における「本気」の度合いが上か下かなんて誰にも測れないはずだが、こうして結果は出てしまったのだ。

 今回は結果的に奏に引導を渡すお話になってしまったが、フォローというか慰めというか、そんな彼女の人となりをチラ見せするシーンが多く採用されており、特に求との絡みはなんだかんだ言って最終的に憎めない彼女の愛らしさがよく表れているパート。是非とも「次こそがんばれ」と声をかけ、今まで以上にがむしゃらに本気で取り組んでほしいところである。

 そんな奏に対して平然と「裏表がなくて好きだよ」とのたまう超越存在・黒江真由。約束されしラスボスポジションの彼女は常に「周りの空気」に合わせて自分を調整してきたが、合宿という空気、そして本番間近という部全体の空気に背中を押され、彼女は大きな一歩を踏み出した。「部長が言ってんだからしょうがない」、それが全てである。久美子が言っていたことは全てが事実。この北宇治は絶対的な実力主義を表明しており、部長がそれを曲げることなんてありえない。かつては学年の差による忖度は当然存在しており、かの吉川優子の乱で明るみに出た問題を高坂麗奈が叩き潰すという形で決着を見たはずだが、気づけばあれから2年。あの時の凄絶な空気を知らない1、2年生からしたら、「実力主義の痛み」はまだどこか遠くのお話だったのかもしれない。口では「うまい方がやる」と分かったように言いながら、現実にその裁定を叩きつけられた時、この部がどのように変容するのか。それは、当事者である久美子すら、まだ甘く見ていた部分だったのかもしれない。ソリで名前を呼ばれた時にうっかり返事しそうになってしまった久美子の油断・慢心。それら全てを押し流す黒江の濁流。名前を呼ばれた真由は、その事実を噛み締めた。久美子は、まだそれを乗り越えられていない。様子を見守っていた麗奈さんも「何してんだ久美子」と苛立ち気味である。

 次の曲を始めるために、何を超える必要がある?

 
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 このヒリつく感覚! これこそユーフォ! 第7話! 良いですね、今回は(今回も)ど真ん中のエピソードになりました。やっぱ今期でいうと山村さんコンテ回がいちいちアツいなぁ。

 要素が多すぎて大変なので簡単な扱いで申し訳ないが、私的トピックとして真っ先に持ってきたいのはやはり人類が生まれた源流・中吉川。大学に上がった先輩の陣中見舞い、とてもとても素敵ですね。まったく大人びた印象を与えない我らが吉川優子。リボンのサイズは幾分小さくなったが、中瀬古先輩がまじエンジェルだとするなら、吉川優子はまじアークエンジェルなのである。そしてイチャイチャ鑑定士久石奏が思わずレッドカードを出してしまうほどにえげつない2人のいちゃつきぶり。これだけでもカリフォルニア州の1年分の電力が賄えるくらいのエネルギーを発生させています。中川夏紀、なんでこんないい女になってしまったのだろうか。通好みの裏メニューである「夏×奏」もおすすめの逸品ですよね。

 2人の先輩とダベるのは様々なドラマを生み出してきたいつもの廊下。ユーフォといえばペットボトルですが(?)今回は飲み物じゃなくてアイスを食べている。ここで安易に中吉川でパピコを分け合わないあたりが憎らしい演出で、優子は何故か1人でピノを食べている。多分ピックを振り回したかっただけなのだろう。それじゃぁせっかくのパピコの「分け合う」という性質が活かされないじゃん! と思っていたら、炎天下を歩くダイエット中の久石奏がパピコを加えているというね。あらー、誰と分け合ったのかしらー。

 もう1つ、今期のシナリオで重きを置かれている要素が「久美子の進路のお悩み」。3年生の夏時点で志望校が決まってないってのはまじで焦った方がいい状態だとは思うのだが、黄前さんの「やりたいことなんて見つからん」というジリジリとした焦りはなんとなく共感が持てる。かくいう私はこれまで進路で悩んだことなど1度たりともないのだが、それは目的が明確だからではなく、これまでの人生で進路を選んだことが1度もないからなのである。ずっと保留保留で逃げ道だけを選び続ける人生だったせいで自分から運命を決めた経験が無く、それゆえに「進路で悩む」ことに共感を持てないが「進路が決められない」ことには共感できるという不思議な状態。まぁ、残念ながら原作を読んでるので久美子が最終的に選ぶ道は知っているのだが、彼女がきちんと自分なりに納得できる人生を選べるようになるまで、いくらでも悩める幸せを満喫してほしいとは思う。ご丁寧に夏休みにお姉ちゃんが実家に帰ってきており、かつてあれだけギスギスしていた父親との良好な関係を見せつけることにより、「久美子は何をやってもええんやで」という保証を与えてくれるのが安心設計だ。

 そして夏といえば当然水着回。エロを前面に押し出す方向ではない今作も、一応はお約束として毎年毎年しっかりプールには通ってくれる。今回は高坂さんがあまりにも阿漕なデレを披露して正妻っぷりをアピールしてのプール行きという、流石にカロリーが高すぎて胃もたれするような導入だったが、高坂さんだってやっぱり高校最後の年に思うことは色々とあるのだろう。久美子があの通りに「性格が悪い」ので、どうしたって2人の関係性だと麗奈が面倒ごとを任されることになりますね。まぁ、幸せそうで大変結構なのではないでしょうか。

 記念すべき3学年揃い踏みのプールでは皆好き放題に水着姿をアピールしてくれるが、よりにもよって「緑輝→さっちゃん」と画面に映った後に1年生組が「先輩方はみんなスタイルがいいッ」って言ってるのは嫌がらせなのか、高度なフェティシズムなのか。いや、多分みっちゃんの方を見て言ってるんだとは思うが。1年生組も普通にばいんばいんしてませんでした? 京アニ品質の水着回はしれっと描かれても風紀を乱すので大変よろしくないですね。挙句水着の上下トレードとかいう、「サッカーの試合終了後か!」みたいな血の涙を流しながらのツッコミを入れるしかない所業を容易く行うくみれい。こいつら周りの目を気にするとかいう感覚は一切ないんだよ。だって、2人ともノンケだから(えぇ)。

 とまぁ、水着回の浮わついた装飾にばかり目が行きがちなお話だが、そんな炎天下のプールで繰り広げられる怜悧で背筋も凍りそうな対決こそが今回の目玉。そう、いよいよもって、黄前久美子が最後の対戦相手・黒江真由へと攻め入る決意を固めた。これまでどうにも距離の取り方が分からず、柄にも無く後手後手に回ってしまっていた久美子。自分の態度が悪かったことについては当然反省しており、なんとか侵攻のとっかかりを探していた。この度のプールをその足がかりにしようと思っていたわけだが、やはり普段と違う景色の中、新しい局面が見えるもので。

 「ぼんやりとした苦手意識」というなかなかに失礼な感覚を抱えていた久美子。その理由として「中学時代の自分を思い出すのだ」という、これまた一見失礼なような分析を行なっている。「過去の自分に似ている」というのはさも相手が未熟であると断じているかのようにも見えるが、もちろん久美子のこの分析は上下の判断ではなく、性質の違いを表したもの。奇しくも「進路が定まらぬ」と悩んでいる久美子には文字通り人ごとではない話で、中学時代の「部活に本気になれないし、特別が存在しない」久美子の空虚さが、真由の背後に垣間見えた。黒江真由を包む薄皮のような障壁、それは「本気具合」だ。

 真由は決して悪人ではない。人のことを考えられるし、むしろ空気を読みすぎるくらい。それでもなお久美子が相容れなかったのは、その前提としての「自分」があるかないか。真由があがた祭りの時から多用していたカメラは彼女の客観の表れであり、レンズを通して見た彼女の世界に、彼女自身は存在しない。世界は常に自分と関係ないところで動いており、そこに自分が干渉する気もない。それが真由の人生観。そのことも別に悪いことではないのだが、真由本人が認識しているように、「本気が無い人間を、他の人間は決して本気で好きにならない」。かつて、中学時代に高坂麗奈が久美子を唾棄したように、特別を目指さない人間に、価値を見出せない。

 黄前久美子は麗奈によって変えられ、今やいっぱしの「特別」である。そんな彼女が真由の本質を認識し、かつて自分が麗奈からいいようにやられたように、その内側に入り込んで掻き回してやろうと思ったかどうかは分からない。しかし、真由の端っこをつかむことが出来た手応えはあったようだ。プールサイドの2人の対話、真由の目には初めて久美子の顔が映った。その名の通りに分厚かった「繭」に、少しだけ綻びが見えたようだ。ほんのわずかなブレではあるが、久美子はそこに何かを見出したかもしれない。

 しかし敵もさるもの、黒江真由は休み明けには改めて自分を立て直し、再び世界と隔絶している。写真の中に自己を投入することを拒否した。並べた写真に「人」は存在しなかった。そしてラストカット、突き抜けるような青い空に伸びる一筋の飛行機雲は、文字通りに久美子との間を隔てる「線引き」となった。この女、強い。

 

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 歴史は繰り返すものか、第6話。そりゃね、高校生活ってのははたから見れば周回プレイにも見えるからね。内部にいる人間にとっては確実な上り坂のはずなんだけど。

 というわけで今年もやってまいりました、運命を決めるオーディション。さらに今年は(通れば)府大会・県大会・全国大会と3回もオーディションがあるということで例年以上に気の重いシーズンである。なんらかの評価が下されるということは当然勝者と敗者が出てくる。そこには悲喜交々のドラマがあり、笑う者、泣く者、笑うに笑えない者など多種多様。これだけの大所帯に育った吹奏楽部であれば、そのドラマの量も尋常ではない。でもまぁ、今期は色々と詰め込んでいかなければならないので全部が全部というわけではなくエッセンスのみを手短に。

 意外なことに、ドラマが大きく渦巻いたのはチューバパートであった。葉月の3年越しの悲願。これまでずっと舞台袖を温め続けた彼女がついにコンクールの会場へ。そしてこの采配が決して3年生になった彼女への温情などではないことが、他の編成から嫌でも分かってしまうというのは皮肉なもの。抜群の実力を持つ美玲は当然合格したわけだが、なんと残るチューバの1枠は1年の釜屋すずめのものに。あれだけ先輩面してたさつきがまさかの落選という衝撃の結果となった。

 この決定について真っ先に異議を唱えたのは美玲。そりゃま、これまで築き上げてきた鈴木コンビの絆を考えれば当然のことだし、彼女の審美眼からすればまさかの初心者起用は意図がつかめなかったというのもあるだろう。純然たる実力が理由であれば、おそらくみっちゃんは文句を言いにこない。彼女はその辺りをきちんとわきまえている人間だからだ。しかし、今回の決定は美玲目線からも違和感があり、思わず部長に談判を持ちかけるくらいではあった。かくいう黄前部長もその辺ははっきりと滝センの決定を飲み込めておらず、遠慮がちながらもきちんと上奏し、見事に正論で返されている。

 今回の一件はさっちゃんにとっては残念以外に言葉が無いが、やはりオーディションというシステム自体が孕む様々な危険性を匂わせている。楽器の実力や大会での必要性なんてものは明確に数値化されるものではないため、コンダクターがどれだけ正当な評価を下そうとも不平不満は起こりうる。その下地として「学年の違い」というデフォのステータスが横たわっているならなおさらのこと。久美子たち上級生はそうしたノイズに耳を貸さずに滝とほぼ同じ目線を持つこともできるが、まだそこまでの信頼が置けていない1、2年生からするとこの不満は高まりやすいと、美玲は伝えてくれている。やはりここまでの大所帯になってしまっては一枚岩ではいられない。3年目にして、久美子はこの問題に3度ぶち当たるのだ。

 オーディション会場、真由が向かったその背中に久美子がフラッシュバックさせるのは昨年の奏の振る舞い。あの時は久美子・夏紀・奏という3人の関係性の中で起こった事件だった。「在籍日数が長い上級生が優先されるべき」「自分は身を引くべき」と考えたお利口少女・奏ちゃんのやらかした失敗は、あの時のあのシーン以外でも、どこかで起こり得た問題である。あの時に全ての感情を大噴出させたおかげでユーフォチームは鉄の絆を構築することに成功したが、そこに新たな要素として真由が加わり、絆の再構成が必要な状態。幸いにして真由は奏ほど浅はかではなかったが、だからとて問題は何一つ解決していない。あれだけ対人関係において正解筋だけを辿ることができる黄前相談所が、真由という異分子に対してはいちいち間違った答えしか出せていないのだ。やはり自身のスタンスに直接影響を及ぼす状況では、いかに黄前久美子とて揺らいでしまう部分はあるのだろう。考えれば考えるほど、意識するなと思って意識してしまうほどに、久美子は真由の扱いを取り違えていく。ついにはあすかに授かったあの曲すらも、彼女の内心をチクチクと刺す不安材料に転じてしまった。今の久美子を見たら、田中あすかはなんと言うだろう。呵呵と笑って背中の1つでも張ってくれるだろうか。

 府大会のソリは久美子。そこはなんとか守り抜いた部長の意地。「ここからはずっとソリを2人で吹きたい」。麗奈の無邪気な願いすら、今の久美子には棘に感じられるかもしれない。黄前相談所が最後に解決しなければならない問題、それは彼女自身の話なのだ。

 
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 心臓キュッってなる、第5話。もういろんなカットで本当に痛いくらいにキュッってなる。これまで何シーズンも放送されてきたから忘れがちだが、これだけの作品が何事もないかのように放送されてるのって奇跡なんですよ。ここまでさまざまな粋を集めた結晶がしれっと味わえてしまうのは「致命」なんですよ。そんなことを思い出させる、1つ1つが精神を着実に溶解させていくような、そんなお話。みんな、ちゃんとNHKに受信料払えよ。

 毎年さまざまな出来事が起こっていたあがた祭を舞台に、今年の吹部も煮詰まっていく。その中心にいるのは間違いなく黒江真由。今回はいよいよ彼女を巡っての物語に焦点が絞られていく緊張感が嫌でも感じられる展開。1年生の問題や求の悩みなど、名伯楽・黄前久美子の手によって次々に処理されてきた結果があるだけに、そんな久美子自身が渦中に立たされ、向き合わなければならない問題が出現した時の恐ろしさがじわりじわりとにじり寄ってくる。

 起点となるのは、今年度から採用することにした「オーディション強化制」とでも呼ぶべき新体制。これまでも実力主義を標榜してきた北宇治だったが、この度更なるテコ入れとして大会ごとにオーディションを繰り返すという過酷な決定が下された。麗奈が口火を切るなら「高坂さんまた……」みたいな気持ちにもなったかもしれないが、実際最初に提案したのは秀一。つまり、3年生全体の合意として、そういう空気は流れていたということなのだろう。一番の負担増が懸念される滝センがOKを出したことによってこの方針が正式採用。更なる部活の過酷化に1年生あたりからまた不満も上がってくるかもしれないが、ここでも見るべきは久石奏の周到さ。騒然となるミーティングの中で当たり障りのない質問から「自分は当然部長のご提案に賛成ですよ」という意見をさりげなく加えることで、教室の空気を有無を言わせぬ賛成の流れに持っていった。久美子や麗奈と違って、奏はこういうことを全部計算づくでやってのけるから恐ろしい。しかしそんな久石メソッドにも微動だにせぬ女、それが黒江真由。彼女の心配は、ただただ「またやっちゃいました、が嫌だな……」という懸念。真の実力者たる真由がここで本気を出せば確実に部長の面子を潰す。真由はそう思って善意から及び腰になっているが、その姿勢こそが北宇治の体制を揺るがす不穏分子になってしまうという、何とも皮肉な展開である。

 真由をめぐる問題にはさしもの久石奏も目が曇る。去年あれだけ「実力が無い奴がでかい顔してるのはおかしいやろ」と(心の中では確実に)考えていた奏。もちろん基本スタンスは変わっていないが、そんな彼女でも恩義ある久美子に対しては目が曇る。真由と久美子。現時点での実力はどうなっているのか。奏はおべんちゃらで持ち上げるようなことはしないだろうから、現時点では本気で久美子のソロを疑っていないだろうが、その姿勢がかつて自分が唾棄したものと重なることに、いつか気づくことになるのだろうか。それとも、噂に聞いた巨大なリボンの信念を継承することになるのか。

 もちろん、真由自身もそうした自分の危うい立ち位置は承知しており、何とか既存の部員たちとの関係を深めようと彼女なりに努力している。しかしその静かな圧力の強さに、黄前久美子が初めてその信念を曲げ、思わず真由と対峙することを拒否してしまった。「流されタイプ」の久美子にしては珍しく我欲が勝ってしまったシーンだが、それだけに久美子の中でも真由との関係性は難しいということなのだろう。幸か不幸か、あがた祭の予定については麗奈から突然の「うち今日親いないんだけどサァ」(いるけど)という爆弾発言で辻褄を合わせることはできたが、問題は事実ではなく、「嘘をついてしまった」という久美子の自省の方。真由への負い目ということは、つまりは自分の実力への負い目。最終学年黄前久美子の目標は、このどうしようもないコンプレックスを弾き飛ばすことになるのである。

 祭りの情景をバックに描かれるさまざまな人間模様。求はすっかり憑き物が落ちたように周りの部員との交流を深めるが、もちろん彼の中での目標到達地点は川島先輩である。浴衣姿で当社比351倍可愛くなっている緑輝。少しでも距離を縮めるために、がんばれ男の子。ちなみに元カノ(?)がお祭りに来てすらくれなかった秀一はちょっとかわいそう。ほんとがんばれ男の子。ちなみに奏さんは真っ先に梨々花との約束を確定させています。がんばれ女の子。

 そしてそんな祭りの喧騒から離れての逢瀬となったれいくみ。思い返せば2年前。祭りの醸し出す不思議な喧騒を超え、大吉山に登ったあの日の情景。霊所へと至って繰り広げられた魂の交感は2人の関係性を決定的に変えたが、この度はそんな祭りの「ハレ」をあえて避け、自宅という「ケ」の場所へと辿り着いた。すでに2人にとってこの関係は「特別」ではないのかもしれないが、改めてその頑強さを確認するための重要な儀式。気の詰まることもなく、ただ2人に流れる時間こそが貴重である。ここに今、ユーフォの真髄が宿っている。

 と、ただただくみれいの尊さに頭を垂れていれば良いかと言われると、どうにもそうじゃないのが今作の恐ろしいところで。祭りの会場、喧騒の中で、真由ははるか天上へと舞い上がる2つの火の粉を見ている。あたかも手の届かぬところに至っているかのように見える久美子と麗奈の関係性だが、世に絶対の不可侵などない。少しずつ、少しずつその2人の間ににじり寄る「3人目」の影が見えるだろうか。絶対不可侵だと思われた麗奈の自宅スタジオ内での2人の演奏。偶然ではあるが、久美子の手に抱えたユーフォの色は「銀」である。久美子は自ら、普段あまりやらない行動としてお祭りの金魚を取り、2匹いた水槽に追加の1匹を加えた。ラストカットはおそらくオーディション会場の様子だが、2つ並んだ審査員の机の間には、明らかに割ってはいる構図で受験者の椅子が挟み込まれている。「2」の間に差し挟まる大きな大きな「1」。これが何を意味するのか。特別とは何なのか。たっぷり悩んで、がんばれ女の子。

 
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