最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
アニメシャワー最後の砦にして口直し、第4話。今期屈指の「重たい」時間枠であるアニメシャワー、「シャナ」「Fate」「ホライゾン」と「がっつり重たいバトルで見せる」作品が続くので、この作品まで心底真面目だとどうしようもなくなるところだったのだ。だってさ、1時間半ずっと速水奨のラスボスボイスを聞き続ける時間帯なんだよ。おかしくね? 他にも吉田さん→セイバーの川澄コンボとかもある。でも、この作品だけは出演キャスト陣の雰囲気もがらっと変わるんだ。まぁ、ファンタジーってくくりで言うと、この作品も充分ファンタジーなんですけどね。
で、毎回どこか間違ってるような、それでいて正統派なガチンコアニメっぷりで勝負を仕掛けてくるこの作品だが、今回はオープニングからしてかっ飛んでいる。前回のラストで登場した新キャラ、シャガさん(もう漢字とかワカラン)をフィーチャーしたスペシャルオープニングをわざわざ描き下ろし、シャガさんワールドを全面的にバックアップ。おかげで綺麗に1話完結で1ヒロインの魅力をお伝えすることに成功している。ま、正直言ってシャガさん自体は割とありがちなヒロインだし、そこまで魅力的かと言われるとピンと来ない部分もあるのだが(当方、花ちゃん×梅ちゃんコンビだけで満足なので)、大量のサービスシーンも含めて、今まで作り上げてきた馬鹿馬鹿しい世界観を維持しつつ、至極まっとうなラブコメに仕上がっている。佐藤とシャガさんがツーカーで何度も同じ会話を繰り返すシチュエーションを利用したギャグと告白シーンなんかは、なかなか上手い脚本なんじゃないでしょうか。全体的に見れば本当にそつのない出来だし、個々の要素を抜き出すと、1つ1つの品質は無駄に高いのである。 個人的には花ちゃんのBL爆走っぷりや、梅ちゃんの何者にも変えられないガチ百合超特急っぷりが最大級のご褒美。なにげに佐藤を足蹴にしてる梅ちゃんはものすごい姿勢になっていたりするのだが、ダイナミックな動きもしれっと混ぜ込んでしまえるのがこのはちゃめちゃアニメの良いところ。男友達に「制服貸して欲しい」と頼まれて理由も聞かず平気で持ってきて渡しちゃう花ちゃんもこっそりポイント高い。ちょっとずつヒロインの数が増えてきて1キャラ1キャラの印象が薄くなることが懸念されるが、花さんはこのまま突っ走って欲しいもんです。 そして、今回はなんといってもスタッフが全力で推してきたシャガさんに反応しなきゃいけないんだろう。結果はどうあれ、オープニングが一大シャガさんフェスタになっていたのは見応えがありましたよ。そして、シャガさんの中の人は加藤英美里である。前回の登場シーンで第一声を聞いた時から思っていたのだが、低めの音域で、なおかつ「年上の女性」を意識した英美里の声は、なんだかサトリナと同じカテゴリに入っている気がする。このままそっち方面のニーズに広がりがあれば、あの「姉キャラ」を総ナメにしてきたサトリナ的領域に入ることが出来るかもしれないぞ。普段のきゃっぴきゃぴした英美里の声とはまた違った印象になっているし、もちろんその上できっちりキャラも作ってきている。本当に器用な娘だ。 そして、英美里はお歌も上手いのだな。オープニングがキャラソンだったわけだが、これがまた何度も見て、聞いていると癖になる出来。そう言えば「英美里のキャラソンでオープニングがオリジナル仕様、そのコンテを切るのが板垣伸」という組み合わせは、あの「化物語」5話の八九時真宵版オープニング、「帰り道」と全く一緒の組み合わせじゃないですか。「帰り道」の時には網膜に焼き付くくらいに繰り返し視聴しました。板垣監督が作るフィルムは、本当に根源的な快楽中枢を刺激するみたいで好きなんですよね。今回もシャガさんがカラオケで歌うイメージをベースに、ダンス演出に真っ向勝負しており、これも何度でもリピートしたいクオリティです。たまりませんなぁ。 あ、アニメ本編に全然触れてないや。まぁ、もう突っ込む部分も無くなってきたから、「どんな謎の組織やねん!」とか思わずに、穏やかな気持ちで観ればいいんじゃないかな。ただ、佐藤が目的の弁当の中を見て、その魅力を延々説明するシーンでは、この作品に対して一番持ってはいけない感想を抱いてしまいました。 「もう、そこまでいうなら定価で買ってやれよ……」 PR
一笑一笑、第28話。ほんと、憑き物が落ちたように幸せな顔をした利休を見てるだけで、なんだかものすごい違和感があるのはどうしたことなんでしょうね。なんか白いし、白いし!
色々な問題が前回で片付いていたこの世界だが、意外なことに、世間的にはそうも言っていられない状態。東の北条が腹を決めて豊臣への反旗を翻し、豊臣軍は「未開の地」である関東までの大遠征を行うことになった。普段から数寄だ茶の湯だと騒いでいた面々も、この大事には武人としてのつとめを果たさねばならない。自分が産み出した器が歴史に名を刻むまで死ねぬ、と気を吐く織部なんかはある意味ものすごくモチベーションが高いと言えるのかもしれないが、一度は平定された天下において、この新たな進軍は再びの動乱を予感させるものだ。 火種の内実は、豊臣政権下における、利休のスタンスにあった。侘び好きを究めたストイックな利休の姿勢は、既に落ち着いた現在においても、回りの人間には多大な影響を及ぼした後である。また、憑き物が落ちたとはいえ、利休は「フルオリ以上の化け物で馬鹿者」であるから、調子が乗ってきたら誰にも止められない圧倒的な爆発力がある。新たな寺門の寄進や、秀吉に依頼された数寄屋の設計など、その才覚は縛られていた時代を飛び越えて、化け物の名に恥じぬ突っ走りっぷり。これを良しと見て高め合うのが、織部たち数寄者たちだが、これを意に沿わぬ暴走と見て腹に据えかねる人間もいるのである。 秀吉自身は、既に利休との関係性に1つの決着を付けているように見えた。数寄屋の出来についても褒め言葉を残しているし、世継ぎが生まれて上機嫌の状態ならば、一介の茶人のやんちゃなど、気にするようなものでもなかろう。今大切なのは、目の前に控えた戦なのだから。また、そんな秀吉の背中をずっと支えてきた秀長も、改めて利休の重要性を説いている。各大名の信頼も篤い「父親替わり」を、最後まで手放さぬようにと、病床に伏した身で繰り返し訴えている。 そして、そんな秀長が挙げたもう1つの名前が、山上宗二である。秀吉の華美趣味に嫌気がさし、織部の行きすぎた数寄に辟易して京を飛び出した頑なな数寄者。彼がたどり着いたのは、あろう事か敵方北条の懐であった。宗二の身柄をどのように扱うのか、今後の豊臣の世では、1つの指針となる重要案件である。そしてまた、秀長の次に控えた大切な腹心である三成が、利休の覚醒を良く思っていないというのも気になる部分であろう。いつか利休のわがままを抑え込んでやろうという彼の目論見は、一度は秀吉が諦めて通過した心境そのものである。戦の無い時代ならば、数寄も勝手に羽も伸ばせるものだが、そこに武力と政治が介入すれば、単に善し悪しで決められるものではなくなってくる。「怪物」利休をどのように処理するのか。各々思惑渦巻く戦国の世に、まだまだ波乱は続きそうである。 でもまぁ、織部の様子を見ていると、そんな真剣な悩みなんて馬鹿馬鹿しく見えてきますけどね……利休の手柄を聞いて思い切りふくれ面で悔しがる様子や、美濃焼のセールスチャンスに一世一代の勝負を賭けに行く無駄な気合いなど、ほんとにこの人はそっち方面の頭しか回らないんだなぁ、というのがよく分かる。大丈夫、回りにはあなたの理解者ばかりですから。まぁ、家康の息子、後の二代将軍秀忠にはちょっと嫌われちゃったみたいだけどね……そらまぁ、10歳の子供が初対面であんな耳かきのお化け渡されて、興味持てっていう方が無理な話だとは思うけどね……親父さんも無骨者だし。 このアニメを見ていていつも思うのは、こいつらあんまり歳取らないよね。いや、秀吉や家康はそれなりに老けてきているのだが、主人公である織部が全然年を取っているように見えないのである。そして、奥さんも全然衰えてこない。もう、結構いい年なのに、ずっといい女のままなんですよ。織部さん、夜の生活は恵まれてるよねぇ。
チーズカツカレーカロリーたけぇな、第3話。ま、カレー+カツで更にチーズだから、これくらいはいくか。このくらいのボリュームになるとそこそこ単価も高いので、半額だと嬉しいよね、とかあまり関係無いことを思ってみたり。
さて、このアホ作品も早くも3話目なわけですが、次第に全体的な構成は落ち着いてきた感があります。今回も、いかにもといった風情の「主人公が自分の活動の本質を確認して、仲間との友情を確認する」というお話。これがバスケットボールや野球だったら、ジャンプでもマガジンでもよく見かけるような、お手本のような少年漫画になるわけです。ただ、この作品の場合はそれがちょっとズレてるだけでね。ひょっとしてこれが、亜城木先生の目指す「邪道な王道バトル」なのか……いえ、違いますね。 幸か不幸か、まだ3話目なのにこの世界の不文律に完全に馴染んじゃっているので、特にこの無茶苦茶なシチュエーションにも疑問は感じなくなりましたよ。「猟犬全員が弁当にありついてるってことは、結局半額弁当っていっぱいあるんじゃねぇの?」とか、「弁当を手にした人間を攻撃出来ないってんなら、スタートダッシュと場所取りだけで勝負が決まるんじゃないの?」とか、そんな突っ込みは微塵も浮かんできません(あれ?)。 そして、この作品のバランスの良さは、そうした「慣れによる刺激の沈静化」と、お馬鹿テイストの分配がきれいに出来ていること。今回も、メインとなるシナリオは「王道っぽい流れ」だったのだが、その前に導入部分として梅との対立を描いた「謎のストリーキング」のエピソードが挟み込まれている。この部分は、全力で振り抜いた馬鹿。燃えさかる焼却炉に全裸で突っ込んで火傷で済むあたり、相変わらず下野ボイスの主人公の頑強さは特筆ものだ。また、作品の売りの1つでもあるご大層な動画部分がこちらのシナリオにも現れており、半裸で全力疾走する佐藤の様子が、回想形式を挟むことによって、何故か2回も語られるという構成。しかも、曲がり角で急カーブする場面は2回でテンポを変えてくるという念の入れようだ。よほど「見せたい」画面だったのだろう。こういうところでいらん刺激を提供してくれるのが、本作のこすっからいところであり、楽しいところである。 あとはまぁ、ヒロイン配分が良い。というか、妄想たくましい花ちゃんが良い。もともと中の人もオタク気質のある「その道の人」でもあるので、BL妄想も含めた下世話な態度が妙にしっくり来るんだな。そのくせ、割り箸を介した間接キスについては意外と鈍感だったり、なんだか微笑ましいところもさりげなく表現されているのだ。それを取り囲む槍水、白梅のキャラもちゃんと立ってるし、ハーレムものとしても案外楽しいのですよ。槍水先輩って、やってることはひどいけど最近じゃ珍しい「普通にいい人」なヒロインなんだよね。 次週からは英美里も登場するのか。なんか、本当に若手花盛りの声優群が少数精鋭でもり立ててくれる作品だなぁ。
年を取ってから怒られるのは恥ずかしいですよね、第27話。ついに訪れた。訪れてしまった、利休の「デレ」。先週分もかなり大きな時代の転機だったように見えたが、ここまで半年間この作品を観てきた身としては、利休の軟化というのは最大の衝撃である。あと1クール、一体何をしたらよいのか……
今回最大の事件は、歴史的には茶々の懐妊なのである。これによって長らく世継ぎ問題で頭と心を悩ませていた「種なし」秀吉は破顔一笑。これ以上ない有頂天状態で、見たこともないような大盤振る舞いで大金をばらまく始末である。この浮かれ気分が利休にも伝染するのかと思ったが、利休は先週起こった丿貫逝去事件のおかげで傷心中。落ち込んで落ち込んで、もう自分がやっていたこと全てが許せないレベル。そのために筆頭茶頭の職を辞するというところまで自分を追い込んでしまった。何をするにもホントに極端なじいさんである。 しかし、ここで複雑なのは秀吉の心中である。大茶湯の際には何としても引きずり下ろそうとした利休の地位。それが、一年を過ぎた今になって向こうから辞めようと言ってきたのだ。本来ならば渡りに船、願ったり叶ったりの状態のはずだが、秀吉の脳裏をよぎったのは、先日見たあの悪夢であった。豊臣兄弟の抱える最大の罪、それを信長を巡る本能寺の一件。そして、そこには利休もずっと一緒に顔を連ねてきたはずなのだ。いや、むしろ当時の関係性で「父親替わり」であった利休の方が、信長の謀殺に荷担した割合は大きいとすら言える。その「主犯」の利休が、突然このタイミングで自分から離れようとしだした。その真意をくみ取ることが出来ない秀吉からすれば、これは単なる「逃げ」にしか見えない。もう、こうなれば侘びがどうだのと言っている状況ではない。一人でも罪を抱えた人間は多いに越したことはないというので、秀吉は、結局利休を手放さなかった。 この意外な裁定に、思わず含み笑いを漏らしてしまう利休。秀吉がずっと自分を煙たく思っていたことは承知しており、よもや引き留められるなどと思ってもみなかっただろう。しかし、いざ申し出を断られてしまった時には、目の前の猿が何に怯えているのか、全て分かったのではなかろうか。今や関白として全ての頂点に立つ小男は、日本で一番、臆病なのだ。そのことは、親代わりで面倒をみてきた利休が一番よく知っているのである。結局、利休と秀吉は、最後まで思惑が合わずじまいだ。 そして、「業」に縛られ続ける秀吉を見て急に楽になったのか、利休は自らを焼き尽くす「業の炎」が消えたことを感じた。そうなってしまえば、まずはこれまでやってきたことの清算をしていかねばならない。大仏堂の建築で「侘び」の新しい融合形を目指し、気軽な意匠の提供を快諾。そして、勝手な思い込みで頭ごなしに叩いてしまった織部には、ちゃんとした謝罪を。肩の力を抜いてあの馬鹿みたいな顔を見れば、馬鹿は馬鹿なりに楽しくて新しいことをやっていたのだと、今更気づかされたのだ。何事も、好きが高じて突き詰めていくと、いつしか「好きだ」「面白い」ということを忘れて、「究めなければ」と必死になりすぎて、当初の目的を忘れてしまう。こういうジレンマってのは、きっと昔からよくあることなのだろう。それが日本人のもつ「オタク気質」の根源なのかもしれない。自分に厳しく、責め立てるよりも、馬鹿馬鹿しくても楽しんでいる者の方が、最終的には正しい道なのであった。 「黒」を離れた利休は清々しいまでの好々爺に変身した。衣装もすっかり色味が落ちたし、茶碗も赤、茶室も明るく、なにやら顔の色まで白くなったように見える。目を開いて微笑む、口を開けて馬鹿笑いをする、二人でせこい商売の話をしてにんまりする。これこそが、堺の大商人から端を発した、千利休の本当の姿なのかもしれない。 今回は、がらりと変わってしまった利休の新しい人生を彩る、これまでと真反対の演出方向が実に新鮮で、茶室のシーンだけでもカルチャーショックを受けてしまうくらいのギャップがある。その衝撃は織部が茶室のにじり口を開けた時のBGMなんかにもよく現れていて、これこそが「次なるへうげものの世界」なのだろう、ということを感じさせてくれるのだ。先週見せた「黒い」世界と、今週見せた「白い」世界。こういうメリハリがきちんと画面上の演出にのってくれるから、この作品は楽しい。織部の幸せそうな顔を見ていると、見ている人間もなんだか幸せな気分になりますよね。 しかし、それだけでは終わらないのも、この作品の難しいところ。「楽しさを見付けて、過ぎたることも面白ければよし」と2人で浮かれる織部と利休とは裏腹に、落書きを見た秀吉の発する言葉には血の気が多い。落書きのような些細な「遊び」でも、それは泰平を乱すものになるのだ、と冷徹な返事だ。はたして、この国で「遊び」を求めたへうげ方は通用するのかどうか。静かに緊迫感が高まっていきますよ。
黒い黒い黒い黒い。第26話。ここまでしばらくは織部のドタバタ空回り失墜劇ばかりが描かれ、コミカルな面が強調されてきた本作だったが、今回は一転、ドロドロと渦巻く様々な負の感情が飛び交い、画面もひたすら黒い方へと転がり落ちていく。こいつぁ久し振りにいい刺激だぜ。
画面が黒くなるということは、その中心に立つのは当然、黒衣の巨僧、千利休である。大茶湯での褒賞を何とか丿貫に受け取ってもらうべく足を運んだ利休だったが、丿貫は相変わらずの侘び好き。地位も金も一切必要無い。そればかりか、長かった自分の人生の終わりを感じ、この当時であれば決して安くないであろう、貴重な書物なども平気で火にくべていく。「その身とともに終わるべし」を信条として、既に身辺整理に入っているのだ。 「あまり感心しませぬ」と口を挟んだ利休であったが、そんな彼を見て、丿貫は少し残念そうな顔をする。過去の利休は、国家の在り方にまで口を出すような人間ではなかったと。己が業を統制しているつもりかもしれないが、その実、業の炎に身を焼かれてしまっていると、丿貫は利休に苦言を呈する。唯一自分と同じ高みから侘びを語ることが出来る丿貫にそう言われても、利休は易々と自らの変質を認めるわけにはいかない。自分の行いが、日の本における侘びの浸透に貢献しているのだと、そう思うことで、突き進むしかない。それが、これまで様々なものや命を犠牲にしてつかみ取ってきた、利休の人生なのだ。 しかし、思い立って立ち寄った帰路の茶席でも、利休は自分の望まぬ方向での「似非侘び茶人」の存在を突きつけられてしまう。丿貫の言うことは本当だったのか。自分がこれまで邁進してきた道は、はたして正しいものだったのか。これまで微動だにしなかった老僧に、初めて揺らぎが生まれる。 そんな侘び茶の世界と同様、戦国乱世もまた不穏な風が吹き始める。天下統一が果たされたとはいえ、未だ豊臣の治世は盤石とは言い難い。北条が密かに反旗を翻さんとしているという噂は国中を走り、大阪とて気安くはない。三成、家康などの諸将が警戒に当たる中、秀吉はついに帝の迎え入れという念願を達成させた。あの信長公をもってしてもなしえなかった「国家の掌握」。それがついに、最も具体的な形で実ったのである。普段ならば手放しで喜ぶべき祝い事であり、実際に秀長は素直に嬉しそうにしていた。 しかし、しゃにむにこの道を突き進んできた秀吉には、たどり着いた頂上にこそ、不安は転がっているのである。「信長にもなしえなかったこと」ではあるが、何故信長が果たせなかったのかといえば、それは間違い無く、あの夜秀吉が信長を討ち取ったためである。自分の天下は、信長の犠牲という巨大な墓標の上になりたっているのだ。一度成してしまったが故に、そこに現れるのは、巨大な信長の影ばかり。 そして、時を同じくして、見事な洒脱さを見せながら、丿貫が帰らぬ人となる。あまりに見事で完成されたその人生の幕引きに、利休は隠せぬ絶望を見せる。語らう相手もおらず、迷いの生じた自らの人生を正してくれる恩師もおらず。あまりに大きな影が頭を覆うのは、利休も秀吉も同じことである。そして、この2人こそが、本能寺を企てた真の黒幕2人。信長という怨霊、丿貫という障害。助けを求めようにも、共謀した2人の天下人は、既に袂を分かった状態。お互いに助けも求められぬまま、ただ内なる悲鳴と戦い続けなければならぬ。数寄の対立などをしてしまったばかりに。 今回は、とにかく「黒い」。冒頭の丿貫邸の絵面からして非常にインパクトのでかいものになっており、正面から光があたる丿貫に対し、常に顔に影をまとう利休の恐ろしさ。窓枠の光の「白」に切り取られ、はっきりと浮かび上がる利休のぬっとしたシルエット。そして燃やした書物の灰が舞うことで幻想的に現れる「黒の魂」の描出まで。徹底的に「黒」にこだわった演出。これが最後に秀吉が見た悪夢のイメージまで繋がり、「呪われし夜」の恐怖を執拗にかき立てる。今回のコンテは「カインド・オブ・ブラック」や「哀しみの天主」と同じモリヲカヒロシ氏という人。癖の強い本作の中でも際立った働きを見せる人だ。 で、そんな真っ黒な世界の中でも、なんとか元気を取り戻そうと走り回る織部の頑張りが一服の清涼剤となります。数寄精神を奮い立たせようと上田と走り回る各所の名品探訪。「鳥獣戯画」は駄目だったけど仁王像なら楽しい。うむ、よく分からない。でも楽しそうだからいいじゃない。家康と仲がよさそうでいいじゃない。今回は家康と三成という関ヶ原コンビが正面からぶつかり合ったり、こそっと重要な場面が多いのだよね。
こいつぁ凹むわ、第25話。ここに来てそれを言いますか、おやっさん……
大茶湯は、突如現れた丿貫と秀吉の劇的な出会いによって幕を下ろした。史実上は、本来長期開催が予定されていた大茶湯が1日で閉幕した理由は謎とされているそうだが、なんとその真相は、丿貫の上申による強引な打ち切りだったのである。まぁ、あれだけあけすけに物をいわれてしまったら、天下人たる秀吉は笑うしかなかろう。実際に秀吉も丿貫の人物像には感銘を受けたようであるし、「面倒だからさっさと帰りたい」という丿貫の狙いと、「利休に変わる茶頭を用意したい」という秀吉の狙いは同時に叶えられることになったわけで、誰も損をしない番狂わせだったわけだ。 そして、これに更に噛み付いてきたのが、鳥の巣フォーリングダウンを喰らってもめげない我らがフルオリ。丿貫や利休に負けたと言われるのは納得がいかず、みっともないとは思いながらの泣きの一回を申請。これも秀吉の思惑と上手い具合にはまったために、無茶とも言える延長戦は承認され、数寄の頂上対決が後日開催される運びとなった。利休の首のすげ替えを狙う秀吉と、あくまでてっぺんを狙う織部の強欲ぶりだけが枯れることなく持続することになった。 しかし、秀吉の企みに待ったをかけたのは、何とも意外な人物、最大の理解者たる弟の秀長であった。利休と秀吉の不仲について、古くから利休を父として慕っていた秀長は良く思っていなかったのである。ここで利休を切り捨てることは侘び茶などの文化側面以外にも影響を及ぼす恐れがあると見た秀長は、最大級のジョーカーであり、絶対的な効果を発揮する奥の手「おかん」を用意し、秀吉の心をへし折った。これにより、利休は今まで通りの地位に生き残ることになったのである。秀吉の鬱憤は溜まりまくっているのだろうが、ようやく「侘び茶ばかりで疲れる!」と本音を吐露し、ぶつくさと文句を言いながら退場していった。利休の側は、既に秀吉の本心など分かりきったことであったために、大した影響もなく、しれっとした顔である。 しかし、そんな時代の転機とは一切関係無いところで空回りしていた男が一人。土産物の土器から思いついた「太古の茶の湯」で勝負に出た織部である。侘び茶にピンと来ていない神谷宗湛あたりからは「面白い!」と好評だったドンドコドコドコ土器茶の湯であったが、自分の身辺に片が付き一息ついた利休は、流石に看過できなかったようである。いや、全力で踏み外していく織部を見て、哀れみから見過ごすことが出来なかったというべきか。「面白いことをやっている」と前置きをしつつも、「過ぎたるは及ばざるがごとし」と釘を刺し、最終的には「数寄者ではなく、単なる未熟者である」と斬って捨てた。これまでの数年間で溜まりにたまった「フルオリおかしいだろ」気分が、ようやく形になって現れたのだ。限界まで伸びに伸びきった織部の鼻っ柱は、見事にぽっきりとへし折られてしまった。これまでにたまったものが大きかっただけに、そのダメージは想像以上であった。 数寄というたった1つの拠り所を奪われた織部は、まるで魂が抜けたように別人になってしまった。真面目に武士としての仕事を全うし、息子にも武芸の鍛錬をつけてやる(息子はあまり良く思っていないみたいだが……)。最愛の妻はそんな織部を暖かく見守ってくれているが、やはり生きる気力を失ったような織部を見るのは悲しいものである。 しかし、これも真の数寄者になるための必要なワンステップだろう。心折れ気力の湧かぬ織部は、意匠など無駄とばかりに床の間にも手をいれて簡素なものへと変えようとしている。この何とも物寂しい感情が、利休のいう「侘び」に繋がるというのなら、へし折られた鼻っ柱も無駄ではなかったのかもしれない。主人公が強敵に負けて一度挫折する展開は少年漫画ではお約束だ。そこからのジャンプアップに期待すればこそ、劇的な成長劇が楽しいのである。さぁ、今再び立ち上がるのだ、織部!
具志堅うるせぇ、第24話。これはこれで味わいなの? いや、でも明らかに日本語通じてない感じになっちゃってるぞ。やっぱりネタよりも作品全体のイメージを優先させて欲しいもんだが……
さて、いよいよ開幕した「茶の湯天下一武道会」、北野大茶湯。利休は相変わらずの仏頂面であったが、秀吉は無事にイベントが開催出来て得意顔。自分もこの国の美が理解出来ている、ということを大衆に知らしめることが出来たし、あわよくばここであの不気味な利休を上回る大茶人を見付けて、首をすげ替えてしまえば後の憂いもなくなるって寸法だ。どれだけ表面を取り繕ってみたところで、秀吉と利休の間の埋まらない溝については、双方とも重々承知しているらしい。 利休にはやる気がなく、丿貫だって興味は欠片も無い。となると、この茶会でやる気をガンガン空回りさせるのは、やはり我らがフルオリ(あと細川のバカボンとか)。注意深く敵軍を観察し、何とかこの期に数寄者の頂きへと上り詰めようとあれこれ策を弄する。そして、その結果生み出された侘び茶の極み(??)が、トム・ソーヤもびっくりの天高き茶室であった。集まった市民には評判も上々。とにかくぶっ飛んだところを見せれば勝ち、みたいな分かりやすいインパクトが勝負の鍵だ。ただ、これって見る人が見たら勘違いの極致。感激にわななく息子を思いきりブン殴るのは長益。織部といい利休といい、この人の回りの数寄者は救いようのない連中ばかりなので、遊び人の割には苦労するポジション。利休との対話を通して「ヤバいじじい」と漏らしてみたり、この人の感性が視聴者には一番近いですかね。これまでうまいことはぐらかして生きてきた人生だが、そのせいで見なくてもいいものをどんどん押しつけられているのは自業自得か。 そして、得意満面の織部の茶席にもの申したのは、顔面蒼白、堅物の極みである石田三成。三成は、丿貫説得の際にも織部に面子を潰されており、どっちもどっちな関係ながらもあまり良い間柄とは言えない。「高みの茶席など不敬の極み」と声を荒げる三成はさっさと撤収するように織部に食ってかかり、意地を貫かねばならぬ織部とはとっくみあいの喧嘩に。その結果は当然のフォーリング茶室。「頂きへの一歩」は見事にスタートより下のどん底へ急落である。さすがは織部。僕らの期待した通りにやらかしてくれる。 結局、秀吉の自己満足以外の何ものでもない大茶湯は、誰1人得をしない格好で終了するかと思われた……が、最後の1シーンで、秀吉はあの丿貫と出会った。突如番傘を開き、飄々と茶席の準備を始める謎の老人に、秀吉は一体何を見たのだろうか。以下次回。 ……今回のびっくりポイントは、初登場となった伊達政宗のキャラクターだろう。いや、キャラクターっていうか、声が……レッツパーリィ!
結局芸術なんてこんなもの、第23話。フルオリさん、最近ずっとイカしてたのに……久し振りに大コケしましたなぁ……
禁教令の発布により、日の本の美意識は大きく揺れ動いた。本来、美や芸術などというものはお偉いさんが何を叫ぼうと不変の物であるはずだが、現実にはそうもいかず。南蛮渡来の舶来趣味は控えざるを得ず、世に知らしめられたのは千利休率いる侘び茶軍団であった。関白殿の大号令により、日本の茶席は一気に侘びへの関心を高めることになった。 その陰で密かにその意志を貫くのが高山右近。彼は生涯を賭した南蛮趣味を屈することを快しとせず、秀吉からの追放令を甘んじて受けることとした。一方、舶来ものの華美趣味を色濃くしていた長益は、留守居役であったのをいいことに、秀吉の帰還までの間に慌てて屋敷を改装することで何を逃れる。数寄者としてのこだわりもある男だが、織田が滅ぼされたこの世でのうのうと生きていられるのも、この周到さがあってこそだ。とにかく、聚楽第において、南蛮趣味は一時的にその姿を消すこととなる。 しかし、それで世間が侘び寂びを理解したかといえば、残念ながらそう簡単に行かぬのがこの道の険しさ。膝を折って反省したと語る秀吉であったが、その振る舞いは未だ利休の狙い通りとはいかなかった。どれだけ目先の出来事で伴天連を嫌悪しようとも、生まれもっての趣味嗜好はなかなか変わらないもの。「侘び茶を全力で押し進める」と約束した秀吉だったが、その第一声で行われたのは、大茶会の開催号令であった。半分が狙い通り、半分が思惑と外れた形で素直に喜べない利休は、茶席で露骨に難しい顔だ。 そして、そんな時代の動乱の中で、我らがフルオリさんはどうなったか。褒美に貰ったきんきらきんの茶碗は速やかに博多商人に売り払い、今後の金策と流通ルートの確保。そして、侘び茶が隆盛するなら今こそ己と利休の時代とばかりに、高々と鼻を伸ばした状態で聚楽第へと参る。初めて見る数寄者たちの家々を見て、やれ若気の至りだの、やれ悪趣味だのと散々ないいよう。何故ここで利休の茶室を訪れてみなかったのか、ということを考えると、彼が慢心して自分の数寄に酔いしれていることはよく分かるだろう。もしここで利休の狭い狭い茶室のメッセージを受け取っておけば、その後の振る舞いも変わったやもしれないのに。 そして、いよいよ踏み込んだのは、練りに練ってあのノ貫が生み出したあばら屋を再現したという、何ともひょうげた自分の屋敷。数々の創意工夫を得意げに語ってみせるが、市井の人々とは違って、利休は眉根を寄せてそれを見つめる。得意満面の織部はそれを「妬いておる」と勘違いしたが、利休の脳内を渦巻くのは苦言ばかり。あまりに凝りすぎたその風情は、利休の目指した侘びとは、どこかズレたものに到達してしまったようだ。 クライマックスとなるのは、全てを任せた長谷川等伯の手による襖絵。どんな侘び絵が飛び出すかとワクワクした織部であったが、目の前に飛び込んできたのは、極彩色の水玉が乱舞する「てんとう虫の部屋」。狙いとあまりにかけ離れたその風景に、織部は思わず膝から崩れてしまう。恥をかかされ、怒り心頭の織部が等伯を斬って捨てようとしたそのとき、利休は一言、「これは良いもの」。もう、何が良くて何が悪趣味かなんて、誰にもわかりゃしません。織部もここで自らの意志を貫いて等伯を切り捨てておけば主義は一貫したものの、利休が褒めてしまったために、怒りの矛先はどこへやら。結局等伯を攻めることもできず、おのが叱責が間違いだったと認める形に。久し振りの格好悪さは、顔から火が出る恥ずかしさでございました。 フルオリさん……どうしてこうなった……まぁ、やっぱり滑稽なことをしている方が面白い人ですからね。利休は一体、どこまで突き詰めて「数寄」の限界を見るのか、もう本当に分かりません。既に半年観てきてる番組なのに、相変わらず「名品名席」を見ても、骨董品のどこかすげぇのかよく分からないしね。中島誠之助が楽しいから見てるけどさ。ま、織部さんもまだまだその道半ば、ということですわ。それにしても、織部って今いくつくらいなんだろう。まだご夫人と夜の生活が盛んなのが素晴らしいな……
らしからぬサブタイトル、第21話。この期に及んで惚れたはれたなんてどこで出てくるんだよ、と思ってたら、まさかの家康ですわ。おっちゃん、パッと見の美人さんよりも質実剛健のしっかりした女性がお好きなようで。肝っ玉母ちゃん風のおねね様相手に、無骨な頬をそめておりましたよ。なーんかこの作品らしからぬ雰囲気になっていて、思わず吹いてしまいましたがな。
ただし、残念ながら(?)今回のメインテーマはそんな親父の恋心とは特に関係無いのですよ。久し振りに武士が武士として動き始めた、秀吉の九州遠征に関わるすったもんだがお話のキモ。ここまでず〜っと数寄の方に話がよっていたおかげで、もう下手したら織部が「武士」だってことを忘れちゃいそうなぐらいでしたからね。 タヌキと猿の化かし合い、家康がついに豊臣との和平を結び、関白秀吉はついに東国への憂いを消し去った。そして、ついに念願だった天下統一のために九州に大がかりな兵を動かすことに。これで泡を食ったのが、ぼくらの織部さんだった。最近はすっかり新居の建築やらに使い込んでいたせいで、いざ出陣となると、肝心の兵力が足りない。どうしたらいいかと回りに探りを入れるも、上田は先を見越した堅実なやりくりで準備をしていたし、一番の「同じ穴の狢」である長益は、ちゃっかりお留守番の権利を勝ち取って尻をまくっていた。全てで後手に回ってしまった織部は、面倒なことに頭を使いたくないのに、と苦い顔。でも、武士なんだから体面だけはなんとかしなきゃいけません。 ここで一昔前までの古田左介だったなら、みっともなく慌てたところを、誰か見かねた人に助けてもらう流れになっていたのかもしれないが、大大名織部さんは、ちょっとやそっとじゃ動じません。まず、過去の恩やねねとの色恋でちょっとぐらついた家康をつつき、それで金を引っ張り出そうと算段する。これは一応成功したようだが、今回の出兵には間に合わず、窮余の策にはならなかった。しかし、それでも何とかしてしまえるのがフルオリクオリティ。見切り発車で集合場所に向かう途中、形ばかりの将軍の陣を発見。どさくさに紛れてちょいとだけ兵力をちょろまかした。まさか、こんなに適当に兵卒が動くもんだとは思ってもみませんでしたが。相変わらず能面のような訝しげな表情でジッと睨め付ける三成を、勢いで突破。とりあえずの参加条件は満たすことに成功。 しかし、参加しただけじゃ戦争は終わらない。今度は「家康の息子を活躍させる」「火はNG」「でも肩付きは取り返してね」などの様々な縛りが設けられた戦ミッションが待ち構えている。絶望的な状況の中でも、織部は不思議と絶望しない。上田が耳に入れた情報をもとに、次なる作戦に打って出るのである。そして、ここでも活きるのは自らの「数寄」。本当に、人生においてぶれることがない男である。今回は久し振りに困った展開が多かったはずなのに、特に慌てた様子が無くて、なんだか妙な立ち位置を楽しんでいるようにすら見えるんだよね。強いお人。 そして、武人達が戦争に行っている間は、町に残るのは文化人ばかり。利休は豊臣・徳川の和睦にも一役買い、帝との茶席も無難にクリア。確実に手を伸ばすゴールに届きそうな勢いである。家康をして「油断せずにはいられない茶」と言わしめた麻薬のような茶会の席。一体、何を盛ればそこまでの評価が得られるものなのだろうか。織部よ、そんなところで油を売っている間に、黒の巨人はまた別の次元に飛び去ってしまうかもしれないぜ。 |
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関西在住の、アニメを見ることを生業にしてるニート。必死で好きな声優を12人まで絞ったら以下のようになった。
大原さやか 桑島法子 ーーーーーーーーーー ↑越えられない壁 沢城みゆき 斎藤千和 中原麻衣 田中理恵 渡辺明乃 能登麻美子 佐藤利奈 佐藤聡美 高垣彩陽 悠木碧
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