最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
来た、見た、効いた。グッときた。なんかね、刺さったね。だからさ、最近何回も書いてる気がするけどわたしゃ母子の物語に本当に弱いんだってば! 同じ映画でも「ゆめみる少女」の方が強烈なアッパーカットだとするなら、こちら的確に痛いポイントを抉ってくるボディブロー。後まで引きずるダメージの大きさで言えば、時間の短いこちらの作品の方が大きかったくらい。それくらいに私には効きました。多分シリーズをこれまで追いかけて来た人はみんな観に行ってるんだろうけど、改めて、ちゃんと劇場で観ろよ(って伝えろとパンフに書いてありました)。
<以降、一応ネタバレ伏せ>
というわけで、刺さった作品になってしまったんですが、今作の刺さり方もまた言語化するのが色々大変。前提条件として、私はそこまで熱心な「青ブタ」視聴者でもなかったので、テレビシリーズの展開はディティールを割と忘れてしまっており、なんなら数年前なので「ゆめみる少女」の展開すらちょっと朧げな程度だということはご容赦願いたいが、今作はそこがちょっと曖昧になっていたとしても、前作「おでかけシスター」のドラマがきっちり接続できていれば、充分にインパクトを持つ作品に仕上がっていると思う。わたしゃ昔から「ラノベ」という媒体を過度に軽く見る傾向にあったが、今作のドラマ構成を見るにつけ、本当に責任ある作品づくりをしてくれている作家さんというのはいるものだと改めて襟を正す次第だ。 今作を評するには原作部分、つまりアニメにおける脚本部分と、それを膨らませるコンテなどの作劇・演出部分を分けて話をしたいのだが、これがなかなか難しい。しょうがないので不可分なところを無理やり断ち切って取り上げていくことをご容赦願いたい。 まずは脚本。私はこれまで、あんまり今作を脚本単体で切り分けて評することをしてこなかったのだが、これは「原作未読だし、アニメだけを見て筋立てをあーだこーだいうと失礼かもしれん」という遠慮があったのだが、もういいや、「おでかけシスター」の時にも感じたけど、今作の作者である鴨志田一氏という人は、本当にお話を考えて構築してくれている人だということが信頼できる。前作については「不登校の女子中学生が進路に悩むお話」であり、なんなら思春期症候群なんて変なワードを使わずとも展開できるような単なるホームドラマに見えるじゃん!(でも実際違うじゃん!)という話を感想で書いたのだが、トータルで見ればやはり地味は地味で、これをわざわざ劇場作品として制作するのは相当ハードルが高そうだった。それでも実際にドラマは成立していたし、きちんと作者の目指すものが見えたというだけでも、既に今作への布石を打ち、より大きな流れに決着をつける準備ができていたということなのだろう。 今回はそうして1つの人生のドラマとして描かれた花楓ちゃんの物語の余波が「咲太の物語」として独立したもので、花楓ちゃんが乗り越えた物の大きさが、今度はそのまま兄・咲太の肩にのしかかって来たというお話だ。そして、今回咲太が背負ってしまったものが「大きい」という部分に着目し、その甚大さを小細工なして真っ向勝負の「ホームドラマ」として叩きつけてくれる脚本が強い。テレビシリーズが始まった当初は「はいはい、ハルヒの後追いみたいなもんでしょ」と思っていた思春期症候群に踊らされる青ブタワールドが、いつしか「思春期症候群」という道具立てを最大限に活かして数多の青春ドラマを紡ぎ上げる立派な舞台になっていた。ここまで見越してこの作品世界を作れていたのだとしたら、それはもう、立派な世界創造である。 こうして今回のドラマについて私がやたらに感じ入ってしまうのは、上述の通りに「母子の物語」に弱いというのもあるが、もっと大きなくくりとして、私は「家族の物語」に弱いのである。比較するのもなんか違う気がするのでちょっと申し訳ないが、いうたら「ゆめみる少女」の物語はとても「作られそう」な、陳腐な大枠を持っている。そりゃ誰だって病に冒されて死を待つのみの少女のお話は泣けるだろうし、命懸けで愛する人を助ける男の物語だって御涙頂戴のド定番なので外しはしない。そこにタイムリープを絡めた青春ものなんて、そりゃもうアニメ映画になるべくしてなった、そんなお約束すぎる展開だったのは事実だ(別にそれが悪いと言ってるわけではないよ)。 しかし、今回のお話はそんなド派手な舞台は用意されていない。なんなら、私のような初見組は「あれ? なんで咲太の症候群が発症しているのだ?」と理解するまでにかなりの時間を要するし、もしかしたらそこに共感できず、理解が及ばない人すらいるかもしれない、かなりデリケートな問題。しかし親兄弟がいる身であれば、どこかで伝わり、どこかで自分に引き寄せて考えられるようなどうしようもなく卑近な物語でもある。梓川家の環境があまりにも独特すぎるのは間違いないが、ちょっとした兄弟との接し方、そして親との関係性の摩擦なんてものはどんな家庭にでも転がっているものだ。今作における咲太の立ち振る舞いから、そうした様々な「家族の関係性」のドラマが浮き上がってくるように見える。 今作は、いきなりド頭が海辺のランドセルガールのシーンから始まる。前作からの引きのシーンだが、この時点では咲太はまだ父親から「母親が回復し、花楓と会おうとしている」という話を聞いていない。この時点で超常の一端であるロリ麻衣に出会っているということは、つまり咲太が後半に分析したように「母親に会ったことが直接のトリガーで症候群を発症した」わけではないということなのだ。咲太は花楓との関係性を解決し、妹が立派に独り立ちできた時点で、既にランドセルガールの夢を見ている。この時点で、彼は今回の症候群の予兆を感じており、心の中に「失われた母親への悔恨」は動き始めているのである。そして、それが何故なのかを想像すると、咲太にとっての「兄としての自分」と「息子としての自分」という年相応の悩みが見えてくる。 「花楓との関係性におけるとても良いお兄ちゃん」はスクールカウンセラーの人からも言われている通り、ことさら強調されていた咲太の一面。しかし、そんな咲太が過去に帰ったかのような幼い麻衣(らしき)幻視を見るのは面白い暗示で、「大人になった」咲太を強く押し留める「子供時代」の現出が麻衣の姿をもって現れたとは考えられないだろうか。もしくは、ことさらに自分を「おじさん」と呼んでくるロリ麻衣は、強く「大人」を押し付ける強迫観念的存在と言えるかもしれない。逆に咲太が子供である世界、それは間違いなく「咲太以外の大人がいる世界」であり、親との関係性において、子供はいつまでも子供。母親との関係性を考えるにあたり、咲太はそうして「子供としての自分」を考えずにいられない。母親との関係をあえて断ち、思い出さないようにしている自分というのは、すなわち「子供の自分を押し込めて、無理やり大人であろうとした」ことの反動だ。そうして揺れ動く「子供と大人の境界」こそがまさに「思春期」であり、「妹との関係」「母との関係」という2つのレイヤーで揺れ動いていた咲太を表現するのに「思春期症候群」ほど相応しい道具立てはなく、この2作の映画ほど象徴的な舞台もなかったのだ。 咲太が周りを取り巻く面々に遅れて最後に大きな「思春期」に放り込まれたこと、それこそが「母親との関係性を考え、悩まなければいけなくなった」ことの表れ。咲太が普段からちょっと斜に構えた態度でのらりくらりと誤魔化してきたような方法では、この現象は乗り越えられなかった。彼を救い出してくれたのは、かつて同じ症状に苦しんだ最愛の人・麻衣。かつて咲太が思春期から掬い上げたことで文字通り一足先に大人へと駆け上がった麻衣が、今度は咲太に手を差し伸べて引き上げてくれる。彼女と抱き合ったグラウンドのシーン、本当にこの2人の関係性を動かすのは、あのグラウンド以外にないのだろう。咲太は本当に、桜島麻衣という大きな存在に救われたよなぁ。もしかしたら、歴代アニメの中で一番幸せになってほしいカップルかもしれない。それくらいに、咲太も麻衣先輩も人間的にできすぎている。 麻衣との関係性を示すだけであれば「存在の消去」という現象だけでも充分説得力があったはずだが、今回はさらにそれを飛び越えて「世界線の跳躍」まで経験しているのがアニメ的、ラノベ的に大きな動きの部分。ぶっちゃけこれまでの症候群の中でもエネルギー量の多い現象であり、飛んだ先の世界が割とはちゃめちゃだったこともあって「この世界に飛ぶくだりは必要だったのだろうか?」と多少訝しんでもみたが、ラストまで通して観るとあの「別次元」の存在感はやはり重要だ。咲太にとっての「理想の世界」に近い存在であり、あの世界で「普通の家族のように接する咲太と母親」の姿がはっきり見えたことで、最終的に辿り着くべき「家族」の姿が視聴者にもはっきりイメージできるようになる。あまりに突飛すぎる桜川家の事情のせいで、視聴者目線では「いや、別に母親がいなくてもこれまで生活できていたのだし、咲太はそこまで悩まなくてもいいのでは?」と考える余地が残っていたのだが、世界を飛び、咲太が「if世界の母親」を見て、交流してしまったせいで、誰から見てもはっきりと「咲太の辿り着くべきゴール」が見えてしまう。「進むべき道」が示されたならば、梓川咲太は進むべきなのだ。大仰で突飛すぎる展開を導入しつつ、その結果として「当たり前の幸せ」をことさらに意識させるストーリーテリングの流れも綺麗である。 他にもまだまだ脚本部分の細やかさ、目の向け方で評価したい部分はあった気がするが、とりあえず置いといて今度はアニメとしての構成のお話もちょっと見ていきたい。今作は劇場版3作という変則的な展開になっているのでタイムスケールが他の作品とは色々と異なっているが、特に今回のお話は時間的にもぴったりきた印象があった。劇場作品にありがちな駆け足の忙しなさがほとんど感じられず、かといって間延びしているような退屈さが一切なく、本当に1シーン1シーンにきちんと意味を持たせてある。あまりに技巧的で露骨だったので印象深かったのは、やはり母親との再会シーンの諸々だろうか。花楓が決断し、緊張感のある中での母親の家へ向かう行程。雨が降り出し、全体的に薄暗い中で嫌でも「何か悪い展開」を予期させる画面が続くが、いざ再会してみれば花楓も母親も何一つ影を落とさず、無事に団欒のシーンへと移って大団円。「あぁ、雨はあくまで花楓の緊張感を表すものだったのだな。全ては上手くいき、梓川家はまた一歩正しい道に踏み出せたのだ」と、そう思える展開。 しかし、翌日に咲太が症候群を発症し、内省の結果、すぐに自身の原因に思い当たってしまう。そうして振り返ると、やはりあの雨は後ろ暗さの表れであり、あまりにも大胆にネガティブな感情を表出させていたものだと分かる。そして、その感情を抱えていたのは花楓ではなく、自身が観測者だと思っていた咲太の方だったのだ。じっとりと抱え込んでいた違和感や不安感が、症候群の発症という今作最大のトリガーでもって一気に噴出し、その意味だてが理解できるカタルシスがでかい。また、この一連のシーンは全体を覆うどこか不穏な空気に気を向けさせることによって、咲太の身に起こっていた一番の問題を覆い隠す隠れ蓑の役割も果たしている。もしかしたら気づける人もいたのかもしれないが、私はあのシーンでは完全に花楓の挙動にばかり注目しており、肝心の母親の目線や、もちろん咲太の立ち位置にまで考えが及ばず、その後の展開に驚いたものである。しかし冷静に振り返ってみれば、そりゃ久しぶりの再会で母親が息子に声もかけず、一切の交流を図っていないなんてのは違和感まみれの展開だったはず。それを「作中の咲太と同様に」視聴者に気づかせず、「えもいわれぬ何らかの違和感」として打ち出しておくその周到さに舌を巻く。 あとはやっぱり純粋にお楽しみ要素として(?)今作では咲太と麻衣さんのイチャイチャシーンの細かい部分にまで注目したいですね。エロそうでエロくないラインをついていると思うんですが、もしここでちょっとでも麻衣さんとエロい方向性を繋げてイメージできてしまうと、やはり今回の「ホームドラマ」の空気感ってぶっ壊れちゃうと思うのよね。咲太目線では「本当に全てを受け止めて助け出してくれる麻衣先輩」が必須なのでコミュニケーションはかなり多めになるのだが、そこで単なる「いちゃいちゃ」で終わってしまうと咲太の精神的な成長を裏付けられない。子供が大人に変わることを、今作では「家族」という言葉を使って非常に端的に表しており、キーアイテムの婚姻届が示す麻衣さんとの「家族」関係、そしてラストシーンで咲太・花楓・母の3人で確認しあった「家族」の絆。この2つのステージをどちらも確固たる存在感で描けたからこそ、咲太の思春期は完結するのだ。たった1人で新しい次元を生み出し、咲太の成長を促せた桜島麻衣には改めて称賛を贈りたい。 こうして麻衣さんが不動のセンターヒロインになってしまうと他のヒロイン勢の影が薄くなるのが残念だが……双葉さんが何一つお変わりないようで本当に安心します。まぁ、最近は時勢のせいで「魔導書のコレクションとかしてそうな双葉理央だな……」とか思わないでもないが、彼女も彼女で本当に咲太を信頼し、咲太から信頼されるに足る最大限の助言を与えてくれる。あっちの世界線ではわざわざ目の前でイチャイチャ電話を続ける咲太がいたわけだが……あっちの理央はあの後咲太をどんな目に合わせるんでしょうね。 なんか感じちゃったことが多すぎるのでかなり取り止めのない文章になってしまったが……改めてまとめると、「本当に脚本の目の付け所が素晴らしく、取り上げるべきドラマを実に鮮烈な形で描いてくれた青春小説アニメ」になったと思います。こうした結末にたどり着けるということを理解した上で、テレビシリーズをもう1回見直してみるのもありかもしれん。……いや、原作読めって言われそうだけど……。まぁ、そこはそれ。次作もすでにアニメ化が決定していますので、私はただただ、次のアニメを待ち続けることにします。
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関西在住の、アニメを見ることを生業にしてるニート。必死で好きな声優を12人まで絞ったら以下のようになった。
大原さやか 桑島法子 ーーーーーーーーーー ↑越えられない壁 沢城みゆき 斎藤千和 中原麻衣 田中理恵 渡辺明乃 能登麻美子 佐藤利奈 佐藤聡美 高垣彩陽 悠木碧
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