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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 武田綾乃……お前………………第12話……アニメ史に残る1話。その選択は、群盲の目を貫く。

 1つ、感想の前に残念な告白があり、ご覧の通り、私は今作をリアタイ視聴できていない。土日がアニメラッシュなので放送順に処理していくとどうしても後日にずれてしまいがちで、本作のように視聴に体力が必要な作品は体調も万全に整えてからでないと視聴が叶わないためだ。そして、どうしようもないタイムラグが故、今回はぶっちゃけ「ネタバレ」を喰らってしまった。厳密には何が起こるかまで知ったわけではないが、そりゃもうTL上が大騒ぎだったわけで、「えっ、なんかあったん?!」と察した状態で視聴する羽目になり、純然たる一撃をノーガードで喰らったわけではない。おかげで視聴時に多少なりとも認知の歪みが生じてしまった感はある。そこはもったいなかった。とはいえとはいえ、覚悟したからとて耐えられる一撃と耐えられない致命打というのがあるわけで……今の世の中、これが出来るのは武田綾乃くらいのもんじゃなかろうか。世間的には「原作者とメディア化が云々」みたいな問題が取り沙汰される気風があるが、こんなもん、余計な心配もなにもない。原作者以外が、こんな選択できるわけがないのだから。

 というわけで、先週まで「多少アニメ用にリライトはされてるけど、まぁ俺は原作知ってるし」というので余裕綽々で見ていた私のような層の慢心を粉々に打ち砕く「原作改変」。何が恐ろしいって、ことここに及んでこの展開を見せつけられて、納得以外の感情が出てこないことである。ここまで数クールにわたって見届けてきた「響け!ユーフォニアム」というアニメ作品の最終回前の展開はこれ以外にないとすら思えてしまうことである。これは作者におもねったおべんちゃらでもなんでもない。それくらいに、ここまでの布石は今回の話へ接続されていた。

 最大の要因はやはり黒江真由という「ラスボス」そのものにある。もはや書いてしまって問題ないだろうが、原作では全国大会のソリは久美子がオーディションであっさり勝ってもぎ取る。念の為に確認したが、その後は真由とも特に変わることなく平然とコミュニケーションをとっており、その「当然のラスト」を何事もなかったかのように受け入れている。まぁ、原作の場合はあすかイベントが関西大会後なので、田中あすかの霊威でもって黒江を蹴散らしたという展開は特に違和感もないものだったし、それはそれで1つの綺麗な物語だった。

 しかし、アニメの場合にはそうはいかない。限られた尺の中、執拗に迫り来る黒江の影。何度も何度も久美子の領域を侵し、奏からは完全に敵認定された「ラスボス」真由。これを打倒しなければ、アニメ世界の「ユーフォ」は完結しない。そしてこの世界において黒江真由を「倒す」方法は何かを考えたら、最後の最後まで久美子がその信念を貫き通し、真由が抱えていた過去の因縁が間違ったものだったと突きつけてやるしかないのだ。久美子が負けたとしても、心から真由を祝福し、彼女の演奏を認める以外にないのだ。

 そしてアニメシナリオの巧みな部分は、こうして唯一の「黒江調伏」の選択が、きちんと久美子の未来につながっていること、そしてさらに、トドメの一撃をよりにもよって麗奈に振るわせることで、高坂麗奈の人生までもを、ここで決定的に描き切ったこと。前回のエピソードで、久美子と麗奈は「別れ」を決意した。その別れは長い人生を考えれば大した問題ではなく、お互いの「特別」はこれからの人生でも続いていくと、そう約束した上での生産的な「別れ」だ。そこに不変の友情が約束されたのであれば、高坂麗奈は久美子と道を違え、音楽に全てを捧げなければならない。彼女がどれだけの犠牲を払っても、それだけは曲げぬという信念が、今回のオーディションに刻まれたのである。確かに辛い決断だっただろう。彼女の人生に大きな後悔も残しただろう。しかし、ここで久美子ではなく、「自分」を選べたことこそが、きっとこの先の麗奈の人生を強く後押ししてくれる。ここで「1番」を選べたことが、彼女の人生をより「特別」なものに引っ張り上げる。

 オーディションシーンの演出の重ね合わせも実に印象的である。何度もフラッシュバックする2年前の記憶。中世古香織と麗奈の対決、号泣する優子。あの時の痛みが、今の北宇治を作り上げた。あの時と違い、今回のオーディションは実力伯仲。「部内を真っ二つに割る」という意味合いは一見すると全く異なる様相だが、その実、「2番」を選択した者の中には、久美子の音をそうだと分かって選んだ人間が確実に存在している。麗奈は「分からないはずがない」と言った。であれば秀一は間違いなく分かっている。以前「久美子が吹いたらいい」と言っていた緑輝も同様だろう。「1番」に挙手した葉月は分かった上で選んだというよりは、純粋に「良いと思った方」に入れたか。美玲も「1番」を選んだ様子。そして最も苦しんだのは久石奏。彼女は、2年前の吉川優子である。誰がなんと言おうと久美子に吹いてほしいと、そう願って「2番」を選んだ。おそらく麗奈たち同様に久美子の音を間違えるはずもない彼女が挙手の際にあれだけ悩んでしまったのは、おそらく「1番の方がうまい」と理解してしまったからだ。それでもなお2番を選んだ、彼女は優子の再来なのだ。その選択が責められるものではないことを、先人は余計なくらいに示している。

 そして、2年前は選ばれる側だった麗奈が最後の決断を下す。久美子は言った。「麗奈に会って私は変わった」と。その麗奈が、ここで2番を選ぶはずがない。その選択が、麗奈の、久美子の未来を決定づけ、そして、ついにあの黒江真由に伝わる。ここまで久美子が頑なに守り抜き、必死で戦ってきた最後の防衛ライン。麗奈の一撃でもって真由を打ち倒し、久美子自身の宣言でもって、全てに片をつけた。これこそが、北宇治吹部のあるべき姿である。その輪の中には、黒江真由が含まれていなければならないのだ。

 もちろん、個人レベルではそう簡単に片付けられる問題ではない。久石奏は、身も世もなく泣きじゃくる。自分の不甲斐なさを悔いただろうか。自らの選択を後悔しただろうか。久美子の教育はスパルタだが、彼女の「強さ」に信頼を寄せてもいる。

 運命の大吉山、麗奈がみっともなく崩れ落ちる。一番大切な友を想い、それでも曲げられなかった自分を憎み、ただただ泣き続ける。これだけ思われている、そのことだけでも久美子にとっては本望だっただろう。「性格の悪い」黄前久美子は、不器用な親友を誇りに思う。

 そしてもちろん、久美子も悔し涙を止めることなどできない。ひと時の迷い、慢心、部長職という激務からの言い訳。おそらくこれまでの1年を思い返せば、後悔などいくらでも出てくるはずだ。すでに下された決定に、取り返す術などない。ただこの感情は、抱えて進むしかないのである。「次の曲」まで。

 
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