早いもので、この企画も既に4回目となりました。え? もう一ヶ月近くもやってんの? 新学期が始まって忙しいはずのこの時期に? 大丈夫! 俺の攻略本だよ!
というわけで、今回の課題です。
問い4・以下の条件で、オリジナルの王国カードを作りなさい。
条件1・このカードは、効果の中に「呪い」が何らかの形で使われる。
条件2・アクションカードである。
これまで3回のお題をクリアしてきたわけですが、特に指定もしてないのに、どこのジャンルでも「呪い」という言葉は飛び交っております。このゲームに存在する顕在的なマイナス要因って呪いだけだから、どうしても機能調整の段階で呪いを使うというのが楽なデザインになってしまうんだよねぇ。しかし、やっぱり呪い絡みのカードっていうのは、サプライにあるだけでテンションが下がったりしてしまうので、あまり乱発するのも問題ありだ。何か、「ムカつくけど使ってみたい」と思わせるだけの上手い呪い絡みのカードというものを考えてみたいものだ。さてさて……
1, 発案者【Thraxi】
鍍金細工師/Coatsmith コスト3 アクション
あなたの手札からカードを3枚廃棄する。そうした場合、金貨1枚と呪い2枚を獲得し、手札に加える。
かなり調子に乗ったレベルの「交易場」。攻撃手段としての呪いではなく、大きなメリットを埋め合わせるための呪い活用術だ。確実に初手で手に入るカードなので2巡目から簡単に金貨を手に入れることが出来るようになるが、その分一気に呪いも手に入るため、枚数的な圧縮は出来ず、コイン数のみが圧縮されることになる。2巡目で「屋敷」「屋敷」「銅貨」からの圧縮が成功すれば、コイン数もアップするし、実質的アドバンテージは多少の勝利点のリスクも埋め合わせられる……気がする。ただ、当然の必要条件として、これ以外の圧縮カードが無い場で挑戦するのは無謀。「見張り」や「改良」などの軽圧縮でも充分ケアは出来るだろうし、「執事」がいればどうせ「屋敷」や「銅貨」は廃棄するだろうから、結果はプラス。「望楼」先生ならマジカッケー。ほら、意外と面白そうでない?
2, 発案者【Thraxi】
浄化者/purifier コスト4 アクション-持続
+1アクション あなたの手札を1枚廃棄する。
あなたの次のターンの開始時に、手札を1枚廃棄しても良い。
このカードが場に出ている限り、全てのプレイヤーは山札の一番上を公開したままプレイする。この方法で呪いが公開されたプレイヤーは、それを廃棄しても良い。
呪いを使う、ではなくて「呪いを徹底的に対策する」目的のカード。加えて、ありそうで無かった、徹底的に圧縮することを目的とした持続カードという設定である。その効果は2ターンに2枚と、「見張り」を越える性能なのでかなり優秀だと思うが、手札が減るので序盤は購入などを放棄して徹底的に圧縮仕事をするときにぴったりだ。
ただ、それだけだとやはり強力になるため、呪い世界ではみんなの手助けをしてくれる博愛主義の能力もセット販売してみた。これにより、呪いにまみれた世界にも友愛の精神が広がるに違いない。もちろん、使ったプレイヤーがちゃんとメリットを得られる作りになっているのは配慮した部分です。憎き「魔女」や「香具師」を打倒するのだ!
3, 発案者【Mei】
藁人形/Straw Doll コスト3 アクション―リアクション
+1ドロー +1アクション
このカードが廃棄された時、他のプレイヤーは呪いを1枚ずつ獲得する。
他のプレイヤーがアタックカードを使用したとき、手札からこのカードを公開できる。そうした場合、+1ドロー。その後このカードを山札の1番上に置く。
なんか色々と効果があって分かりにくいカード。まず、普通にデッキに入れておくと単なる潤滑油。一応相手のアタックに応じて山札のトップと入れ替わる能力があるため、「海の妖婆」「海賊船」「泥棒」「密偵」などを相手に1枚だけ確定させることが出来るわけだが、このカード自体も潤滑油として働けるわけで、相手は「密偵」で見えたこれを捨て札にすることについてはあまり迷わないだろう。よほど「泥棒」対策がしたい、という時以外には効果が薄い。「身代わりになる」というカード名通りの働きをするにはするのだが、今ひとつ効果の見えないリアクションである。
ポイントは、残されたもう1つの能力、「廃棄されたら相手に呪い」という効果。現時点において、ドミニオンには「廃棄されるための専用カード」というものは存在しない。このカードはその新たな地平にチャレンジした内容になっており、「改築」などで潰すことにより、うちに秘められた呪いが相手に拡散していく。ご丁寧にアタックではない設定になっているので、これを防ぐ手段はないわけだ。とはいえ、カード1枚廃棄して呪い1枚は大したダメージではないし、これを廃棄したということは、場には最低1枚は廃棄のためのカードがあるということ。呪いのダメージくらいはあっさりとリカバリーが可能であろう。名前に準拠した効果にするならば、もう少しリアクションの効果を強めに設定してもよかったのではなかろうか。
4, 発案者【Seachicken】
呪詛返し/Counter Hex コスト4 アクション―リアクション
あなたが呪いカードを獲得したとき、手札からこのカードを公開できる。そうした場合、そのカードを廃棄し、他のプレイヤー全員は、呪いカード2枚を獲得し、自分の山札の一番上に置く。
なんと、純粋にリアクション効果のみを追究した、長年の呪いに対する恨み節の結晶。自分の呪いは拒否しつつ、対戦相手全員の山札トップに呪いを2枚。恐ろしいまでの過剰防衛である。しかも、これがアタックじゃないのでディフェンスが困難であり、自分で能動的に呪いを獲得しに行ったときでも使えてしまうというのだから、流石に問題てんこ盛り。「呪い」を購入すれば問答無用で相手に2枚呪いを叩きつけられてしまうのだ。どう考えても無茶なデザインである。
では、「対戦相手の能力により呪いを獲得したとき」に限定するとどうだろう? 残念ながら、それもアウトだ。まず、このカードでサプライから減る呪いの数を考えてみよう。自分1人がこのカードを持っていたら、自分が獲得する分1枚、そして4人戦なら3人に2枚で6枚。計7枚が一気に追加される。それだけならまだしも、場に2人このカードを持っている人間がいると、なんとサプライ切れまで無限ループするのである。すると、このカードを持っていない残りの2人が10枚近くの呪いを押しつけられて、一気にあぼん。残念ながら、デザインの穴が多すぎた。こんなことを考えさせてしまうくらいに、呪いというのは恐ろしいものなのである。
5, 発案者【Metallica】
禁書/Index コスト4 アクションー呪い(このカードはアクションカードであり、呪い(-2)でもある)
+1アクション +3ドロー
あなたの手札からカードを1枚選び、山札の一番上に置く。
目から鱗のトンデモ発想。確かに、「呪い」は「財宝」「アクション」「勝利点」と並ぶ、れっきとしたカードタイプの1つ。それならば他のタイプ同様に、複合タイプに混じってもいいはずなのだ。さらに、「呪いカードは−1勝利点を意味する」という文言も、ルールブックのどこにも書いていない。それならば「−2点の呪い」があってもおかしくはない。そんなコロンブスの卵みたいな発想の合わせ技がこれだ。1枚で「村鍛治屋」を実現させる剛胆さを持つ最強の4コストアクションながら、これを入れれば入れるほどデッキの勝利点が減りまくっていく。
ただ、このレベルの効果なら、まだまだデメリットは小さい方だろう。実際に「抑留」でトークンが置かれた山から買い物をする機会は案外少なくないことを考えると、1点や2点のマイナスポイントでは、デッキの全体像を構築する強力なパーツを買うことを躊躇わせるだけの効果はない(このカードを1人だけが使う試合をイメージすれば、おそらくこれを使ったプレイヤーは植民地数で他のプレイヤーの1枚以上は上に行けるはずだ)。この設定なら、いっそのこと−3までいけば流石に躊躇わせるバランスになるぐらいだろうか。とはいえ、設定が奇抜なだけに、シンプルな中身はなかなかいじり甲斐がありそう。「新たな呪い」がテーマとなるセットとか、ひょっとしたら訪れる未来かもしれないな。地味に「香具師」の対策とかにもなったりするしな。ちなみに、英語名についてはきっちり目をつぶって欲しい。知らんし。
6, 発案者【Seachicken】
妖魔の牙/Devil Fangs コスト5 アクション―アタック
+X勝利点トークン +Yコイン
他の全てのプレイヤーは山札の一番上を公開し、そのカードが屋敷または銅貨だった場合、それを廃棄し、呪いを山札の一番上に置く。Xはこの方法で廃棄された屋敷の枚数、Yはこの方法で廃棄された銅貨の枚数に等しい。
なんと、あのMagicでも禁忌とされてきたXYという2つの変数を導入してしまった謎のアタックカード(まぁ、書式を変えればややこしい変数を導入せずとも表示できるのだが……)。狙い撃つのが「銅貨」と「屋敷」ということで、ターゲットは主にゲーム序盤のデッキである。序盤数巡ならばほぼ確実にこの2枚がめくれることになるため、相手に呪いを押しつけつつ、こっそり自分のデッキでその養分を吸い取ることが出来る。コスト5に設定されているので2巡目にプレイ出来る確率はそこそこなので、バランスとしてはそこまで悪くない。中盤以降は基本的にゴミになってしまうというのも、なかなか絶妙な設定であろう。一応「密偵」との相性がいいっていうセールスポイントはあるんだけど、そこまで頑張りたいカードでもないかな。
名前のセンスは微妙にして絶妙だが、この場合の「妖魔」は屋敷や銅貨を積んだ初心者を食い物にするという、割とひどい奴を表すようだ。
7, 発案者【Metallica】
呪い商/Curse Monger コスト2 アクション
+1購入
あなたの手札を公開する。手札の呪いカード1枚につき+3コイン。
今回ベストに選ぶかどうか、悩まされた1枚。こちらもかなり発想としては斬新で、「呪いを嫌がるくらいなら、呪いで楽しむカードを作ればいいじゃない」というコペルニクス的な発想の転換技である。「使い魔」ゲームや「拷問人」ゲームでは、しばしば手札が呪いに染まる。呪いの何が一番邪魔かって、ドローしてもドローしても次のアクションに繋がらず、デッキが空中分解してしまう点だ。それなら、手札に集まる呪い自体に価値を与える役割を作り出せばいい。手札に呪い3枚ならゲンナリだが、こいつ1体いれば、ドローする必要も無いし、デッキを回す必要も無い。そこからいきなり9コインだ。これならば、呪いにまみれた絶望的な状態からでも一発逆転が狙える(かもしれない)。コストが2コインと格安なのも制作者の意志の表れで、どこまで困窮して万策つきたデッキでも、これを1枚買うことから突然の大逆転ストーリーを描ける夢がもらえるのだ……
って、多分実際はそこまでの収入は得られないんだろうけどね。とにかく、腐ってしまいがちな絶望ゲームでも一縷の望みを抱かせるカード、そういう心優しい人材が、今の世界に必要なのかもしれない。
8, 発案者【Mei】
蠱毒/Reduced Venom コスト4 アクション
あなたの手札から好きな枚数のカードを廃棄する。その中で最もコストの高いカードよりも、廃棄したカードの枚数分コストの高いカードを1枚獲得する。その後、廃棄した呪い以外のカードの数よりも1枚少ない数の呪いカードを獲得する。
「鍛造」の亜流カードといえるデザインだが、挙動がかなりややこしい。まず、単純に序盤の手札で「銅貨」×3「屋敷」をこれで圧縮した場合、「屋敷」よりも4コスト大きなカード、つまり「金貨」が手に入る。いきなり強すぎる。が、一応のフォローとして、極端な圧縮を行うと反動もあり、3枚の「呪い」がセット販売される。なるほど、これは重たい。最終的にデッキに含まれるカードの枚数が変わっておらず、上であげたサンプル「鍍金細工師」に似た結果が得られるわけだ。だが、このカードが本領を発揮するのは次の巡目から。なんと、「呪い」を圧縮すればデメリット無しなのである。試しに次の巡目に「屋敷」「呪い」「呪い」「銅貨」と圧縮したとすると、同じように「屋敷」が「金貨」になり、帰ってくる「呪い」は1枚ぽっきり。一気に圧縮に成功したことになる。この動きは相手が呪いをばらまく「魔女」だったときなどにも強く、様々な手札に対応出来るのが利点。少なくとも、「屋敷」1枚だけを廃棄すれば3コストのカードが得られてデメリット無しの「改良」のマイナーチェンジみたいな動きは可能なので、よほどのことが無い限りは無駄が出ないのだ。流石に「改築」「改良」などの類似品と比べて強いように見えるので、コスト4は安すぎる設定なのではなかろうか。
このカードの面白いのは、そのネーミングセンス。最初はピンと来なかったのだが、実際にどういう挙動をするのかをイメージしてみると、最初にばらまかれた小さな毒(呪い)が、次第に凝縮され、強力な武器(高コストカード)へとまとまっていく姿が浮かんでくる。最終的に残されるのが「大毒」ではないのが正確には異なっているが、なかなか凝った演出ではなかろうか。おかげで英語名が適当だ。スマン。
というわけで、今回は以上。今回はやたらと頭を悩ませた参加者が多かった模様。みんなして、やっぱり呪いが好きなんじゃないの。ツンデレさんたちめ。
さて、次のお題はこちら。
問い5・以下の条件で、オリジナルの王国カードを作りなさい。
条件1・自由。
条件2・出来る限り新奇なコンセプトを含んでいること。
一ヶ月にわたって続いてきた企画も、いよいよ次回で最終回。これまでに培ってきた(?)クリエイティビティで、何かナイスで自分色のカードを生み出してみようではないか。是非とも、この「ぼくのかんがえた」シリーズを入れたオリジナルサプライでドミニオンをプレイしてみたいものである。
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