フルスポイラが出揃ったので、出入りによってどの程度このセットがスタンダード環境に影響を与えるのかを、ざっとではあるが見ていくことにしよう。ちなみに、当方なんちゃってプレイヤーであり、あんまり環境についての知識は深くないので、見当違いのことが書いてあっても御容赦願いたい。
<白>
○主な退場カード
・「悪残の天使」「糾弾」「静寂」「白騎士」「神聖の力線」「戦隊の鷹」「テューンの戦僧」
○主な続投カード
・「天界の粛清」「審判の日」「太陽のタイタン」
○注目の新カード
・「天使の運命」「ギデオンの報復者」「堂々たる撤廃者」「忘却の輪」など
白で最も大きな退場カードといえば、「神聖の力線」と「糾弾」という2枚のディフェンス陣だろう。特に「神聖の力線」は他に替えの効かないカードであり、現時点では他のセットにも代替物がない。次のセットで「象牙の仮面(MMQ)」のようなカードが登場しなかった場合、白をメインとしたデッキが赤などを対策する方策は制限されそう。同様に「糾弾」の喪失により、序盤の捌きがやや難しくなる。ミラディン世界で対応しそうなカードが「急送」しかなく、エルドラージが落ちて「失脚」もなくなると、白はいよいよ除去色としての地位を危うくする。
その他サイドボードの名選手「白騎士」「テューンの戦僧」「静寂」が姿を消し、代替物は今のところ無い形。「戦隊の鷹」も1年間好き放題暴れ回っていたがさよならだ。最近めっきり姿を見せなくなった「悪残の天使」も、2年という任期を終えてようやく眠りにつくことになった。全体的に見ると、相手に合わせた細やかな対応力の低下が気になる部分だろうか。
居残り組としては、「審判の日」は当然の継続であり、更に「太陽のタイタン」が残ったことで新しいカードプールを見る楽しみは増えた。軽量除去が消えていくらかコントロール寄りの白が支配的になりそうなので、アドバンテージの塊であるタイタンに期待は高まる。
新規組(復帰組)では、期待感が最も高いのは「堂々たる撤廃者」だろうか。色々とやらかしてくれそうな2マナクリーチャー、今後の白デッキの幅はコイツにかかっている。同様に、「オーラ術師」「メサの女魔術師」などのエンチャント支援があるため、ニュー神話レアである「天使の運命」になにかが起こるかもしれない。何がつらいって、ギデオンさんが続投だから他の色と比べるとプレインズウォーカーにあんまり変化が無いこと。
<青>
○主な退場カード
・「占いフクロウ」「クローン」「ジェイス・ベレレン」「集団変身」「定業」「ジェイスの創意」
○主な続投カード
・「瞬間凍結」「霜のタイタン」「マナ漏出」「否認」
○注目の新カード
・「霜のブレス」「記憶の熟達者、ジェイス」「練達の盗賊」「マーフォークの物あさり」「幻影のドラゴン」「幻影の像」「思案」「彼方の映像」など
退場カードで最大の影響を与えるのは、やっぱり「ジェイス・ベレレン」だろう。神ジェイスが消えて3マナジェイスにとっては我が世の春だったはずだが、そんな時代はほとんど存在せずに退場。唯一無二の3マナプレインズウォーカーが引退して安定したドローソースの選択肢が減るのは実に無念。その他はテーマデッキを支えていた「集団変身」「クローン」のコンビが退場するのがささやかなニュースか。青ユーザーからすると「定業」の退場が一番大きい気もするな。
青は本当に変化が少ない色であるが、その理由はカウンタースペルが全て続投体勢だからだろう。「マナ漏出」「否認」「瞬間凍結」の3枚体勢は不動(あと「取り消し」な)。こうしてみると、基本セットの青ってカウンター以外にあまり存在意義がなかったのか。「ジェイスの創意」や「占いフクロウ」の退場もちょっとは影響するか? 個人的には「心の傷跡」がついに消えてしまったのがちょっと寂しいんだけどさ。
新規組では、やっぱり気になるのは新たな5マナジェイスの存在。過去の2タイプと比べてどこまで頑張れるものか。ライブラリをガリガリしたい人は「彼方の映像」をどのように使うのかで勝負を賭けたいところ。「定業」と入れ替わった「思案」は最低限の仕事をしてくれるだろうし、「マーフォークの物あさり」が帰ってきたのでコンボスタイルは調整しやすそう(実はミルデッキにとって一番辛いのは「寺院の鐘」の退場である)。
その他のカテゴリでは、「幻影の像」の軽さはかなり使いやすそう。青が体現する万能性がどのようにデッキに反映されるのかが興味深い。あとは地味に「幻影のドラゴン」のサイズが案外構築でも通用しそうな気がするんだけど。「非実在の王」にチャンスがあれば面白いけど……無理だなぁ。あとはアーティファクト全盛の時代に「練達の盗賊」が渋い活躍を見せそうな気配も。このあたりの新規組がどう絡んでくるかで、全く新しいデッキスタイルも生まれそうな期待があるぞ。
<黒>
○主な退場カード
・「黒騎士」「闇の後見」「脅迫」「リリアナ・ヴェス」「血の署名」「臓物の予見者」
○主な続投カード
・「死の印」「破滅の刃」「魔性の教示者」「墓所のタイタン」
○注目の新カード
・「墓への呼び声」「魂の消耗」「小悪疫」「縫合グール」「苛まれし魂」「ゾンビの横行」など
退場カードを書き出していたら、黒は決定的な2枚が退場することに気が付いた。1つは当然「脅迫」。代わりに「困窮」が入るとはいえ、やはり1マナとダブルシンボル2マナの差は大きく、これまで存在していた「Dark-Blade」のようなコントロール目的の黒タッチが通用しなくなるのは決定的だ。同時に「コジレックの審問」も落ちるため、「蔑み」だけで頑張れる世界になるのかどうかは怖い。そしてもう1枚は「血の署名」。手軽なアドバンテージカードが使えなくなってしまうのは、「黒いデッキ組むと確実に署名が4枚入る」でお馴染みの私はショックである。ついでに「闇の後見」も無くなるし、黒がアドバンテージを取ろうとするとエラい大変である。捨てさせるしかないのかー。「精神腐敗」しかないのかー。
あと、一応吸血鬼デッキが割とお通夜になりそうなのも注意点だが、そもそもゼンディカーが退場して「恐血鬼」や「吸血鬼の夜鷲」が落ちたらそっちは終わりだしね。「臓物の予見者」と「血の長の刃」のコンボも、まもなく見納めです。
継続組は、例によってタイタンが元気なのは朗報だし、除去にも大きな変化が無い。というか、単に「破滅の刃」が残っていればそれでいいだろう。しばらくは「四肢列断」「喉首狙い」のミラディン除去が頑張ってくれるしね。
注目の新カードをピックアップしたいのだが、黒はやたらと懐かしの出戻り組に気になるカードが多い。その中でも何かを期待させるのは、「墓への呼び声」「ゾンビの横行」などが出揃ったゾンビ支援装置の数々だ。「墓地を刈り取るもの」も復帰し、吸血鬼にあらされた餌場を回収し始める可能性も。「縫合グール」の素敵コンボにも期待がかかる。
そしてかつての名脇役「小悪疫」。2マナで出来る明確なアクションであった「血の署名」「ナントゥーコの影」が去るため、阻害手段としての嫌がらせは選択肢たり得るのではなかろうか。黒単コントロールが賑わえば、当然「魂の消耗」の出番も増える。
あと、個人的に気になるのは1マナ1/1アンブロッカブルという破格の性能を持つ「苛まれし魂」。地味キャラには違いないが、今まで黒にはなかった手駒だけに、何かしてくれるんじゃないかという気がするのである。
<赤>
○主な退場カード
・「チャンドラ・ナラー」「燃えさし運び」「稲妻」「紅蓮地獄」
○主な続投カード
・「焼却」「投げ飛ばし」「ゴブリンの酋長」「業火のタイタン」
○注目の新カード
・「血のオーガ」「炬火のチャンドラ」「チャンドラのフェニックス」「ゴブリンの付け火屋」「ゴブリンの手投げ弾」「渋面の溶岩使い」「戦嵐のうねり」
赤は、ひょっとしたら最も劇的な変化を受けた色といえるかもしれない。もちろんそれは「稲妻」の退場だ。これにより、1マナ火力のダメージは2点に固定され、多くのタフネス3クリーチャーが生きる理由を生み出すことになった。もちろん、スライのスタイルにおけるダメージ効率も下がり、これまでのように常にメタの一角を支配し続けた赤単は、少なくとも変化を強いられるのは間違い無いだろう。地味に「燃えさし運び」なんて優良クリーチャーも落ちるし、そもそもゼンディカーが去れば「板金鎧の土百足」「ゴブリンの先達」が居なくなるわけで、形が変わるのは当たり前の話であるが。更にサポートカードとしては万能の「紅蓮地獄」が去るのも一応の注意点。これで基本セットで保証された全体火力が無くなってしまうのはおっかないが、まぁ、現時点では「金屑の嵐」があるから大丈夫なのかね。
継続組としては、当然の「業火のタイタン」に加えて、最近盛り上がっている「焼却」と「投げ飛ばし」という2枚の火力は命が繋がった。頑張って「欠片の双子」を対策しよう(まぁ、双子の退場も一緒なのだが)。そして「ゴブリンの酋長」も生存したおかげで、今後のゴブリンの隆盛に期待がかかる。
何しろ今回の目玉の1つは「ゴブリンの手投げ弾」だ。これに「ゴブリンの付け火屋」「ゴブリンの火投師」などのクリーチャーが入り、ゼンディカーゴブリンの喪失を埋め合わせられるかどうかは1つの焦点。「渋面の溶岩使い」も帰還し、いつぞやの時代の赤単が
見えてくるようではないか。「チャンドラのフェニックス」「血のオーガ」といった新顔も、軽めのデッキを後押し出来そうで楽しみである。
コントロール志向ならば「戦嵐のうねり」の使い方に期待したい。そして3度目の正直を狙う「炬火のチャンドラ」。これで失敗したら、流石のチャンドラさんも引退を考えなきゃいけないレベル。頑張れ、ほんと頑張れ。
<緑>
○主な退場カード
・「自然に帰れ」「耕作」「獣相のシャーマン」「ガイアの復讐者」「野生語りのガラク」「巨大化」「強情なベイロス」「森のレインジャー」
○主な続投カード
・「酸のスライム」「極楽鳥」「エルフの大ドルイド」「ラノワールのエルフ」「帰化」 「原始のタイタン」
○注目の新カード
・「アラクナスの蜘蛛の巣」「ダングローブの長老」「原初の狩人、ガラク」「ガラクの大軍」「狩人の眼識」「翡翠の魔道士」「始原のハイドラ」「不屈の自然」「栄華の儀式」
緑は皆勤賞の「巨大化」が退場したニュースが寂しさを誘うが、こうして並べてみると「野生語りのガラク」「獣相のシャーマン」と、最も根源的に構築環境を支えた大看板の退場が目に着く。「シャーマン」は必殺の銃弾である「戦隊の鷹」や「復讐蔦」と一緒に退場するので単なる1デッキの消滅を意味するだけだが、元祖ガラクが長年に分かる勤続生活を終えることにより、緑がこれまで容易にこなしていた仕事がちょいとばかり面倒になる可能性はある。大きな穴、というよりは細かな穴が複数空いたような印象だが、これを埋め合わせてのマナベース構築は、一手間かかりそうな仕事である。
その他の軽量マナベースは、継続というよりは一時代前に戻った印象か。「耕作」が「不屈の自然」に戻り、「ラノワールのエルフ」「極楽鳥」が安心設定。秋からは「探検」「成長の発作」などが落ちるため、マナ加速ソーサリー選択は「不屈の自然」1択になるんだろうか。その他は安心の「酸のスライム」「帰化」の対策コンビ、そしてエースオブエース、「原始のタイタン」。タイタンもなんだかんだで仕事はあるんだろうなぁ。
新規組ではやはりニューガラクがどの程度まで値上がりするかというのが注目の的。元祖を越えられるかどうかで今後の緑のスタイルが決まってくるやもしれない。そして緑名物のクリーチャーでは、ファッティ枠で色々と狙えそうな「ガラクの大軍」や、とにかくでかい「始原のハイドラ」。そして呪禁が最も活きそうな「ダングローブの長老」あたりはやや注意。地味に最も活躍しそうなのがハイパートークンマシンである「翡翠の魔道士」ってのも味がある。その他、常に大アドバンテージをちらつかせる「狩人の眼識」はエルフビートなどにも面白いし、これまで緑が一切出来なかった仕事を行える「アラクナスの蜘蛛の巣」も、珍しいカードなので気になる存在。「栄華の儀式」は、かつての「春の鼓動」のように何か爆裂シナジーを形成させることが出来るだろうか? 個人的には青と絡めてライブラリをですね……
<その他>
○主な退場カード
・「脆い彫像」「羽ばたき飛行機械」「白金の天使」「鋼の監視者」「寺院の鐘」「通電式キー」「惑いの迷路」「広漠なる変幻地」
○主な続投カード
・「ドラゴンの爪」「不死の霊薬」「M10ランド5種」
○注目の新カード
・「順応する自動機械」「マナリス」「流転の護符」「真面目な身代わり」「無限の日時計」「早足のブーツ」「埋没した廃墟」
プールは少ないはずなのに、なんだか随分入れ替わりが激しい気がするアーティファクト・土地枠。列挙していくと、「粗石の魔道士」が強くなる「脆い彫像」、0マナクリーチャーの代表「羽ばたき飛行機械」、絶対無敵「白金の天使」、白単金属術「鋼の監視者」、ドロー&ミル「寺院の鐘」、無限の可能性「通電式キー」、異界への扉「惑いの迷路」、便利フェッチ「広漠なる変幻地」などなど。使われたカードもあるし、使われていないカードもあるが、こうした可能性が一斉に消えていくのは何とも寂しい話である。
継続組としては、あんまり数はないけどとりあえず赤単対策の「ドラゴンの爪」が安定。その他ライブラリを虐めたい人間にはつらい「不死の霊薬」、そして最も重要なのは、環境を左右する2色ランドの存続。まぁ、そもそも秋にはフェッチランドや2色ミシュラが落ちるので、色選択の制限は全てイニストラードの土地にかかっていると見るべきだろうが。ミラディンブロックが多色に弱い環境だったおかげで、ゼンディカー退場後はやや色には不自由する世界になるのかもしれない。
退場が多いということは、期待の新人も多いということになるのだが、バラエティに富んでいた退場組に比べると、やや地味な印象。そんな中で安定して起用されるだろうと思われるのは、なんと言っても「真面目な身代わり」だろう。どんなデッキでも使える抜群の受けの広さは、アドバンテージ好きにはたまらないものがある。その他パーミッションキラーといえる「無限の日時計」や、種族デッキを力強くサポートする「順応する自動機械」。コンボ的な可能性が大きな「流転の護符」なんかは一発当てられそうな貫禄がある。渋いところでは、手軽にマナサポートに触れる「マナリス」は案外ありがたい。地味とはいいながらも、過去に使用実績があるアラーラ産オベリスクの上位互換機なのだから。また、今回プレーンな味つけが多かった新装備品の中では、呪禁と速攻をつける「早足のブーツ」が気になるところ。「稲妻のすね当て」もそれなりにニーズがあったわけで、クリーチャーデッキのアクセントとしては面白い存在である。まぁ、もっと鬼のような装備品が山のようにあるのが難だけどね……
全体的に見ると、鳴り物入りのタイタンフィーバーで盛り上がったM11入れ替えと比べると、今回の新セットは「新手のプレインズウォーカー3枚がどの程度環境を変えるか」という部分が焦点となっているため、全体的に地味なセットになっているように見える。やはりサイクル全てが使われたタイタンは化け物カードだったということだ。
何にせよ、基本セットはあくまで基本。過去セットの中でもかなり強い部類だったと思われるゼンディカーブロックの退場がM11の退場と一緒であり、残されたミラディンが新環境イニストラードとどのような絵図を描くか、というのが最大の変動なのだから、現時点ではわずかながら残されたM11とM12の共存期を楽しむのがよかろう。1つだけいえるのは、「あー、獣相のシャーマン買い込まなくて良かった」である。神話じゃないレアであいつだけおかしすぎたからさぁ……何度も揃えるかどうか迷ったんだよね……
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