色々とまとめました。
さて、めでたくM13のフルスポイラが公開された。個々のカードを見ていても気付きにくいのだが、今回のセットはかなり挑戦的な内容になっている。既に「基本」セットという言い方も不自然なくらいにシステム面でも盛り込まれている内容だが、それ以外にも環境を大きく動かす要素がてんこ盛りだ。まぁ、基本的にここ最近はカードスペックはデフレ方向に進んでいるので「これおかしいだろ!」と叫びたくなるようなカードは入っていないのだが、爆弾が無くとも世界は変わっていくわけで。
最近すっかり構築戦にも縁遠くなってしまったわたくしで恐縮であるが、このセットが一体どのような影響を与えることになるのか、いつものように1つ1つ見ていくことにしよう。当然、ここに記載された情報が正しいものになるかどうかは、自己責任で判断をお願いしたい。
と、色別に入る前に、今回大きく入れ替わったサイクルについて、先に片付けておこう。今回のセットはサイクルで大きく2つの大切なものが失われている。1つは、全ての色に名前を挙げている「タイタン」である。M12の神話レアは各色ともに「プレインズウォーカー」+「タイタン」+αという内容だったのだが、今回はプレインズウォーカー枠だけが残り、後の2枚は各色ごとに全て異なっている。M11で登場し、結果的に全ての色で実績を残した脅威のサイクルであるタイタン。彼らの退場により、6マナ域は再び混沌へと帰る。そして、もう1つ大切なサイクルとして、「対抗色対策カード」のサイクルが失われている。これもほぼ全ての色にとって生命線といえる存在だったのだが、今回のセットは「色どうしの相性の悪さ」よりも「多色」に寄せてある兼ね合いなのか、毎回何かしらの形で収録されていた対抗色ヘイトのサイクルが1枚もない。これもまた、あらゆるデッキのサイドボードに影響を与えることになるだろう。
<白>
○主な退場カード
「ギデオン・ジュラ」「機を見た援軍」「審判の日」「清浄の名誉」「太陽のタイタン」「天界の粛正」「天使の運命」
○主な続投カード
「忘却の輪」
○注目の新カード
「群れの統率者アジャニ」「従者つきの騎士」「警備隊長」「消去」「信仰の見返り」「剛胆な勇士」「熟練の戦術家、オドリック」「セラの報復者」
さて、まずは白だが、退場カードの中でも単なる入れ替わりなのがプレインズウォーカー枠。ギデオンさんが使えなくなるのは惜しいが、最近はそこまで出番のあったカードでは無いし、新たなアジャニが今や遅しと出番をまっているので、ここは面白い入れ替わりといっていい。「太陽のタイタン」や「天使の運命」の退場も一部デッキでは響くだろうが、このあたりのフィニッシャー枠は、他のセットから探してくることで補える部分だろう。
問題となるのは、まずは「審判の日」の退場である。後枠には「次元の浄化」が控えているが、そんなもんが代替品にならないことは誰もが知っていること。当然、この冷遇はラヴニカで新たなラスゴが入る前振りだと考えるべきなのだろうが、万一それすら与えられなかった場合、白は「終末」一本でしばらくコントロールを成立させる必要がある。コントロールといえば、実は大きいのが「機を見た援軍」の退場だ。2つの側面から遅いデッキをサポート出来た素晴らしい1枚だったのだが、こちらもわずか1シーズンで退場である。同時に「天界の粛正」も落ちて除去力、耐久力は確実に低下している。赤い兄貴に殴り殺されないように気をつけたい。
新カードの方を見てみても、面白そうなカードはビート向けのものが多い。書いてあることが色々変な「オドリック」先生に、それをサポートしやすそうな「警備隊長」「従者つきの騎士」といった人海戦術のパーツ、それに空飛ぶ価格破壊「セラの報復者」と、白は真っ向勝負の大軍勢を義務づけられているようである。しかし、それをサポートする「清浄の名誉」が同時にいなくなっているというのだからもどかしい。長らく続いた全体増強の足がかりを失った白は、数で押すのか、質で攻めるのか。しばらくは難しい判断を迫られそうだ。
ちなみに、「続投カード」の枠には鉄板キャラの「忘却の輪」しかはいっていないが、白はまだ続投出来るカードがあるだけマシな方。それくらいに、他の色では環境が揺さぶられている。
残るカードは個人的な趣味も強いが、「信仰の見返り」は何かスーパーコンボに期待。あとはサイドボードに面白そうな「剛胆な勇士」とか。「消去」については「怨恨」次第な。
<青>
○主な退場カード
「幻影の像」「思案」「霜のタイタン」「瞬間凍結」「精神の制御」「取り消し」「非実在の王」「マナ漏出」
○主な続投カード
「否認」「移し変え」
○注目の新カード
「古術師」「ボーラスの占い師」「本質の散乱」「ジェイスの幻」「巻き直し」「呪文ねじり」「空召喚士ターランド」
今回のセット改訂の影響が一番大きいのは、文句なしで青である。現在のメインメタを左右している色であるってのが最大の理由だろうが、「多くのデッキに入る」骨子となるカードが意外な退場を強いられることになったのがでかい。
まず、青といえばカウンター、つまり「マナ漏出」の大往生が、1つ目のトピックス。最近は「魂の洞窟」のおかげで多少なりとも影が薄くなったカードだが、それでも「青で組むならまず4枚」の存在感は健在。これが2年前の「本質の散乱」「否認」体制に戻るので、弱体化は確実だろう。ついでにサイドボードの雄である「瞬間凍結」がいなくなり、実はそのかげでこっそり「取り消し」も消えているという。別に「取り消し」あたりは他のエキスパンションから補充されるから構わないのだが、1つの基本セットでコモンにカウンターが2枚こっきりというのは、かなり斬新なセッティング。バウンスも「送還」だけだし、一体残ったカードプールは何に費やしてるんだ、と思ったら、なんか普通の肉の割合が増えてる気がする。リミテッドでも普通に緑や白と殴り合う青が見られるようになるんだろうか。ちなみに、カウンターの選択肢としてはアンコモンに「巻き直し」が帰還したので、これを使うならば今のような殴りの青は多少かげりを見せるかもしれない。
カウンター以外で最大の喪失は、この1年で散々悪さをしてきた「幻影の像」の存在。こちらも「青をやるならいれておいて損しない」くらいの節操のない能力だったので、追い出されるのは仕方ないところだろう。ただ、これでトラフトさんが調子に乗るのは嫌だけど。
そして、ついにスタンダードから姿を消す「思案」。1マナキャントリップという青の花形スペルが基本セットから失われ、同時に「ギタクシア派の調査」も退場することになる。環境に残るのは「思考掃き」だけという(あと「一瞬の散漫」)。おそらくラヴニカでこの枠は補充されると思うが、それが「思案」よりも強いことは無いと思われるので、青はどうしたって大きな方向転換が求められることになるだろう。全ては「秘密を掘り下げる者」や「瞬唱」の制御のための措置なのか。
「マナ漏出」「幻影の像」「思案」。2マナ以下のこの3枚が失われたことで、青は大きく力をそがれる。代わりに入るカードから興味深いものを探してみると、たとえば「ボーラスの占い師」は色々とやってくれそう。ラヴニカで色が広がることになれば、更にサーチ能力のありがたみは増すことになるだろう。また、イニストラード成分が生き残り続けて墓地が息をしていられるなら、「ジェイスの幻」も面白い存在。やろうと思えば2〜3ターン目から5/5フライヤーで殴りに行けるプランは冗談では終わらないポテンシャル。そして墓地を肥やせるなら「古術師」の受けの広さも悪くない。構築に到達するにはちょっと重すぎる気もするが、生きてることはいいことには違いない。
あとは趣味の枠で、コンボが作れないかと頭がひねれる「呪文ねじり」、そして空一面のドレイクが見られる「ターランド」先生。ホント、「思案」さえ落ちなければねぇ……。
<黒>
○主な退場カード
「組み直しの骸骨」「死の印」「ソリン・マルコフ」「ソリンの復讐」「破滅の刃」「墓所のタイタン」「墓地を刈り取るもの」「グレイブディガー」
○主な続投カード
ー*****
○注目の新カード
「魔性の天啓」「ボーラスの信奉者」「強迫」「悪名の騎士」「闇の領域のリリアナ」「殺害」「もぎとり」「貪欲なるネズミ」「血の署名」「吸血鬼の夜鷲」「吸血鬼の夜候」
個人的愛着の強い黒だが、こちらは意外に損失は少ない。「墓所のタイタン」「死の印」の2大サイクルが落ちたのは他の色と一緒なので我慢するとして、やはり最大の懸念は「破滅の刃」の退場だろう。代わりに「殺害」が入り、黒対決を気にせずメインで投入できるようになったわけだが、それってつまり黒が「黒だから有利」な要素がなくなっちゃったってことで、自分の首を絞めているだけだったりする。まぁ、「殺害」は3マナなので、構築で活躍出来るかどうかは謎なんだけども。あとはワンチャンスを狙う「ソリンの復讐」が無くなったり、既に虫の息のゾンビデッキを支える「墓地を刈り取るもの」が姿を消したりと、特定のデッキががっかりするくらいのもので、そこまで致命的なものではないだろう。黒スキーとしては、これまでほぼ皆勤賞を続けていた「グレイブディガー」がいなくなるのがちょっと寂しいくらいのもの。
続投しているカードに興味を引くものが無いのは寂しいが、つまり新規・復帰組がそれだけ素敵ってことでもある。「強迫」の復活は黒の復権の第一歩であるし、これに「血の署名」が加わり、「もぎとり」まで入った。更に新リリアナなどは黒単推奨で沼の価値をガンガン引き上げている。黒コン好きが今こそ立ち上がるときだ。また、「吸血鬼の夜候」が帰還し、その背後に「吸血鬼の夜鷲」が控えていることも無視できない。現状、黒い吸血鬼はそこまでの陣営ではなくて、全盛期の「恐血鬼」や「吸血鬼の呪詛術士」のような低マナ域を埋める駒がいないのが悩みどころだが、ラヴニカ以降でそうした細かい手駒が増えれば、再びの復権もあるかもしれない。
その他、実は気になってるのが「魔性の天啓」。クソ重たいとは言いつつも、これがあれば「俺の考えた最強のデッキ」が作れる可能性もあるわけで、何かトンデモなデッキに期待したい。低マナ域では「貪欲なるネズミ」が帰ってきたので突っ込みやすくなったし、地味に貴重なプロ(白)持ちの「悪名の騎士」は案外悪くないんじゃないかって気もする。とりあえず「ゲラルフ」さんと「ファイレクシアの抹消者」が使えるうちにリリアナさん率いるハイパー黒単とかやってみたいもんだ。
<赤>
○主な退場カード
「火葬」「業火のタイタン」「ゴブリンの酋長」「ゴブリンの手投げ弾」「渋面の溶岩使い」「焼却」「ショック」「チャンドラのフェニックス」「投げ飛ばし」「嵐血の狂戦士」
○主な続投カード
「ゴブリンの付け火屋」
○注目の新カード
「火翼のフェニックス」「炬火の炎」「群衆の親分、クレンコ」「溶岩震」「心爪のシャーマン」「モグの下働き」「灼熱の槍」「溶解」「雷口のヘルカイト」「野生の勘」
大きな改変の波は赤にも押し寄せている。もう、「主な続投カード」が無理矢理ひねくり出した感満載だ。まぁ、一応ゴブリンデッキは「クレンコ」先生のおかげでぎりぎり可能性が残っていなくもないレベルなので、かろうじて納得して欲しい。
赤で最も大きな改変は、コモン火力の減少である。つまり、「火葬」と「ショック」が退場し、代わりに入ったのが「灼熱の槍」だけという事実。M12ではこれに「チャンドラの憤慨」があり、その枠には今回「金屑化」が収まっている。アンコまでいけば「溶岩噴火」や「炬火の炎」があるので数は並ぶが、リミテッドの場合、赤の代名詞である基本火力がほとんど無いという、前人未踏の巨大迷路をさまよわなければならない。一体どんな環境になるというのだろうか。
その他、「ゴブリンの酋長」と「ゴブリンの手投げ弾」が落ちてゴブリンデッキの可能性が(まぁ、今までも無かったけど)大きく後退。更に赤単ビート構成で活躍した「渋面の溶岩使い」「嵐血の狂戦士」「チャンドラのフェニックス」などの優良ウィニーもいなくなる。変わりの駒は「モグの下働き」が期待出来るのはありがたいが、全体的に細やかさが失われ、純度の高いスライ、バーンの難度はあがったと見るべきだろう。コントロール要素としても、マナカーブの最後尾を勤め上げた「業火のタイタン」がいなくなったのは不安だし、「焼却」という安心カードが消えたことでますます青とのマッチアップが気になる。むこうもカウンターやドローが弱体化したのだから五分五分とも言えるが、お世話になった火力が消えるのは心配なものだ。
代わりに期待出来るカードとしては、真っ先に目につくのは「雷口のヘルカイト」。渋い能力だが、確実性の高い5マナ5点は想像以上にニーズが多そう。また、上述の「クレンコ」親分は書いてあることは充分強いし、「火翼のフェニックス」も、単体で決める力があるので少ないながらも可能性のある1枚。ライバルが「忌むべき者のかがり火」なのが気になるが「溶岩震」だって充分構築級。その他「心爪のシャーマン」や「野生の勘」など、どうも赤のラインナップは中速から低速に向けてのカードが多い。ニコル様が支配するグリクシスコンみたいなデッキが、次の時代の中心になっていくんだろうか。
<緑>
○主な退場カード
「秋の帳」「大蜘蛛」「原始のタイタン」「極楽鳥」「ダングローブの長老」「不屈の自然」「ラノワールのエルフ」「ルーン爪の熊」
○主な続投カード
「エルフの大ドルイド」「帰化」「原初の狩人、ガラク」「酸のスライム」「濃霧」
○注目の新カード
「東屋のエルフ」「境界無き領土」「古鱗のワーム」「エルフの幻想家」「遥か見」「クウィリーオンのドライアド」「怨恨」「スラーグ牙」「自然の伝令、イェヴァ」
緑だって、この変革の中で変わらずにはいられない。まずもって最大のニュースは、「大蜘蛛」が力尽きたというその事実。これにて、Magicの世界には収録され続けた皆勤賞カードが1枚もなくなったことになる。蜘蛛さん、本当にお疲れ様。どさくさに紛れて「ルーン爪の熊」もいなくなってるんだよ。「ショック」も「巨大化」もない状態で、もう、若い世代には何をベースにスタックルールを導入したらいいやら!
そして、この変革の中でのもう1つの大事件は「極楽鳥」と「ラノワールのエルフ」の同時退場である。「ラノワールのエルフ」は8版で、「極楽鳥」は9版で一度だけ収録から漏れたが、この2枚が同時に基本セットから姿を消したのは当然史上初。そして、今回「マナ・クリーチャー」として収録されたのは(「エルフの大ドルイド」を除くと)「東屋のエルフ」ただ1体。こんな状態で緑がマナの専門家と言ってしまって良いものか。「原始のタイタン」が抜け、でかいマナのブースト手段は「境界無き領土」へ。はっきり言って雲泥の差。1枚でゲームを作り、ぶっ壊していた「タイタン」が退場するのは健全な変更ではあるのだが、2年間世界を制圧し続けたビッグネームの退場は、確実に世界を変えるだろう。地味に緑が単色デッキを組む時に活躍した「ダングローブの長老」も消え、世界は多色うずまくラヴニカへ。
とはいえ、多色世界がくるとなればそこには必ず緑の姿があるだろう。「不屈の自然」が抜けた穴は「遥か見」が埋めているし、「クウィリーオンのドライアド」は早く栄養を送って欲しくてうずうずしているはず。単体でのファッティの性質も色々きな臭く、アドバンテージ要素の権化である「スラーグ牙」、多色環境なら色々出来そうな「イェヴァ」さん、「絶対に死にたくない!」で有名な「古鱗のワーム」と、ちょいとデッキを作ってみようかな、と思えるカードは豊富。これに実績充分の2枚のガラクも生きているわけで、伸びしろは充分ありそう。え?「怨恨」? わざわざ触れませんよ、そんなもん。
<その他>
○主な退場カード
「順応する自動機械」「真面目な身代わり」(ラッキーチャーム5種)
○主な続投カード
「M10ランド5種」
○注目の新カード
「プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス」「適合の宝石」「金粉の睡蓮」「イーヴォ島の指輪」「トーモッドの墓所」
元々枚数が少ないので大きな変化が無いのがこの部門だが、とりあえずM10ランドの続投で余計なことを考えずにすむのは助かります。そして、基本セットとしての立ち位置を考えた時に一応事件なのは、ついにあのラッキーチャームが退場したことである。これまでずっと「アンコモンの場所ふさぎ」と言われていた5枚が消えることで、視界は多少クリアになったか。一応「ドラゴンの爪」は赤対策で使われる実績があったので、サイドボード候補が1枚へったことにはなるのだが。
その他、一番大きいのは「真面目な身代わり」の退場だろう。同時に「出産の殻」も退場するので大きなシナジーのあるデッキは少ないかもしれないが、とにかく突っ込んでおけるというチートキャラがいなくなったのは多少不便なことに。あと、個人的に種族デッキ好きなので「順応する自動機械」がいなくなったのは寂しいのです。
代わりに入ったカードとしては、やはり「ニコル」様が存在感抜群。確実に環境のスピードは落ちる方向に進むと思われるので、大技一撃の期待も高まる。アラーラを制したボーラス旋風が次のラヴニカでどのように吹き荒れるのかは気になるところだ。その他、「トーモッドの墓所」はナイスサイドボードだし、「金粉の睡蓮」が入ったことで何か面白いデッキの方向性が探れるかも。「適合の宝石」は形はどうあれ手札が2枚増えるのは事実なので、今後の多色環境で何か悪さが出来そうな気も。そして、ラッキーチャームの代わりに収録された指輪サイクルなのだが、1つ1つの効果こそ大したことないものの、コストの軽さが何かと気がかり。特に青の「イーヴォ島の指輪」は与える能力が呪禁だし、青をサポートするっていうのが気になって仕方ない。ミラディンが落ちてみんなの目が装備品から逸れたあたりが狙い目だ。
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