最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
<以下の文章は、放送当時に執筆されたものである>
○第4話「兄貴」 脚本・広真紀 絵コンテ/演出・神保昌登 作画監督・萩原弘光 <あらすじ> ゆずきと去年まで同じクラスだった少年、湯川猛は、最近ちょっと雰囲気が変わった。少し前までは陰鬱そうに長髪をたらし、色も青白く、格好の苛めの対象だった。いつも何らかの怪我をしている彼は、怪我の手当をする保険医には「転んだ」と報告するが、保険医も随分心配な様子。それでも頑なに「誰も関係ない」と言いはり、誰にも迷惑はかけないと言いおいて保健室を去る。自分だけが被害に遭っていればそれでこともなし。それが彼の人生観だった。 彼が変わるきっかけとなったのは、半年前のある冬の日。いつものように苛めグループに呼び出されて森の中で素っ裸の状態で木に縛り付けられ、雪玉をぶつけられていた。いじめっ子の一人が雪玉に石を詰めて投げつけようとしたそのとき、颯爽と現れた男が一人。剣道着をまとい、竹刀を振りかざす男の名前は仁志田晋。近くの大学に通う学生だった。彼はいじめっ子達を一刀の下に伏す。 仁志田は弱々しい湯川を見て呵々と笑うと、もっと強くなれと湯川を励ます。上半身を脱いで肉体美を見せつけながら、将来は検事になって悪を裁いてやる、という夢を語る。文武両道で夢を持つ仁志田を見て、湯川はすっかりその人柄に惚れ込む。 それから、湯川は何かというと仁志田についていくことが多くなった。「強くなりたくないのか?!」という仁志田の説得を聞いて剣道を始め、日に日に自信もついた。回りの人間から見ても、湯川は変わっていった。憧れの仁志田は地元の剣道大会でも優勝し、一緒に剣道の稽古にもつき合ってくれる。湯川の中で、仁志田はまさに人生の目標だった。 そんなある日、湯川は仁志田と一緒にバスに乗っていた。バスの中でも司法試験の勉強を欠かさない仁志田に、湯川は相変わらずの憧れの視線を送る。しかし、そんな日常が、バスの中で動く。バスが揺れたことで、ヤクザものが他の乗客ともめ事を起こしたのだ。ヤクザは平謝りに謝る乗客にも容赦せず、短刀でもって髪の毛をそぎ落とす。他の乗客達は、そんな横暴な態度に困惑しつつも、我が身大事さに声を上げることすら出来ない。湯川はとっさに立ち上がろうとするが、ヤクザの一睨みに萎縮して立ち上がれない。そこでようやく気付き、期待の視線を隣の仁志田に送る。しかし、仁志田は見たこともないような恐怖の表情を浮かべ、ガタガタと震えながら俯くばかりだった。 バスを降り、気まずい空気の中で「気にしないで下さい、しょうがないことですから」と漏らす湯川。その台詞に明らかに取り乱した仁志田は、「軽蔑するならしてもいい。だが、お前と一緒にいたから、お前を危険にさらすわけにはいかなかったから、動くことが出来なかった」と弁明する。そんな様子を見て、湯川は寂しげに「さよなら」と告げて背を向ける。そして、その夜、彼は藁人形を手にし、「仕方無いんだ」と一人ごちて糸を解く。 地獄流しの船上で「確かに俺が悪かったが、他のバスの客だって同罪だろう!」と叫ぶ仁志田。しかし、流されたのは彼1人。 残された湯川は、剣道をやめ、また元のいじめられっ子ポジションに戻った。「僕が少し変わったところで、社会は何も変わりませんから」。保健室でそう報告した湯川は、青空の下で、一人下卑た笑みを浮かべた。 <解説> 2期でも活躍し、小説版の地獄少女の執筆を行った広真紀による脚本。人の生き死にが関わっているので不謹慎ではあるのだが、かなり意識的な「ギャグ話」である。 タイトルからも分かる通り、この話の表面上のテーマは「アニキ」、2ちゃん的表現を使うなら「アッー!」とか「うほっ」だ。色男同士の絡みではなく、一人が薄幸の美少年、そしてもう1人が筋骨隆々のマッチョ兄貴ということで、どちらかというと腐女子好みのBLというよりは純正のゲイ嗜好である。その辺りの演出はかなり分かりやすく作られており、台詞を抜き出すだけでも仁志田の「可愛い顔をしているぞ」とか「女みたいだな」とか、湯川が稽古中に目に汗が入り、「どれ、とってやろう」と顔を近寄らせる描写なんかもあからさま。そもそも目に汗が入ってもとれねーだろ。仁志田は登場するシーンの約半分はもろ肌を脱いでおり、何故か常に筋肉アピール状態である。こんなのに憧れるのもどうかと思うが、昨今の流行を考えればアニキとはかくあるべきなのかもしれない。気持ち悪いけど、ネタをネタとして受け入れれば笑えないこともない。歪みねぇな! で、そんなギャグ部分を差し引くと、今回の地獄流しは「憧れを裏切られたが故の恨み」というのがメインプロットになっている。表層部分だけを見ると湯川の非常に独りよがりな思い込みに見えるのだが、バスの事件での細かな二人のやり取りのおかげで、彼の失望の深さが実にうまいこと伝わってくるように出来ている。具体的に見ていくと、まず、上記の「うほっ」部分が憧れを描くのに一役買っている。あらゆる面から湯川の理想型だった仁志田は、本当に恋慕の対象にすらなっていた(頬を赤らめるシーンが多い)。また、検事になって悪を裁きたい、という分かりやすい仁志田の夢も、「自分が抗っても世界は変わりはしない」という諦観を持った湯川の価値観を揺さぶるには充分なものだったろう。 そんな、1つ1つ積み上げられた理想が、たった1つの出来事から脆くも崩れ去り、それが恨みにまで変わってしまう流れも面白い。バスを降りた時点では、湯川はまだ失望しきってはいなかった。もちろん、相当なショックを受けてはいたが、口に出して言った通りに「しょうがないことだ」と思っていただろう。刃物を持ったその筋のモンに挑みかかるのは勇気ではなくてただの無謀、そう考えれば納得出来なくもない。しかし、そこで返された仁志田の台詞がまずかった。「お前がいたから動けなかった」というのは、誰がどう聞いても言い訳でしかないのはもちろんだが、彼の謳っていた「正義」の脆弱さをこれ以上ないくらいに表出させる。暗に「お前さえいなければ良かった」という文脈にもとれるわけで、雪の森で颯爽と自分を救ってくれた「憧れ」が、あの時の自分とまったく同じ「弱者」を救わなかった理由に、これまた自分という「弱者」を言い訳にしたのだ。これによって、湯川の中にあった「理想」が完全に瓦解する。この「理想の瓦解」は、頂上にあった恋慕の情の裏返しになるわけで、過去にも何件かあった「失恋の恨み」と同じものである。 藁人形の糸を解く時には、湯川は「確かに他に流す人がいるかもしれないけど、僕には関係ない」と言い放ち、最後に「さよなら」と叫ぶ。「正義」に殉じるならば流すべきは町の害悪であるはずのヤクザもの。しかし、彼の恨みは、自分のアイデンティティを散々振り回したあげくに打ち砕いた仁志田という「害悪」に向けられたのである。このあたりの一見不可解な心情も、丁寧な筋立てのおかげですっきりと納得出来るようになっている。唯一すっきりしないのはラストシーンで湯川が浮かべた謎の笑み。この笑いは、台詞通りに受け取るならば「自分ごときが世界を変えられやしない」という自嘲の笑いということになるが、演出家の真の意図は何だったのだろうか。 他にも気になる点をいくつか。まず、「四藁」として新しく加入した山童の存在。今回、用務員としてゴミを燃やす輪入道が、「煙ばかりずっと見ていて面白いのかい?」と山童に尋ねると、彼は「ええ」と心底楽しそうに答える。どうやら元祖三藁と山童の間にはまだ完全な理解は出来上がっていないようだが、山童の「純粋さ」は本物らしい。余談だが、「輪入道も先生をやればいいのに」との骨女の誘いに、輪入道は「先生なんてがらじゃねぇや」と断っている。確かに、過去の地獄コントでも輪入道が先生役をやっているシーンはなかったかもしれない。 また、今回はきくりの動きがまた気になる。きくりは例によってゼンマイ切れでとまってしまうのだが、今回彼女が動けなくなったのは、湯川達が乗っていたバスの目の前。ヤクザものが暴れ出すきっかけとなった急停車は、きくりのせいでで起こったものである。彼女は2期からちょいちょい「悪さ」をしていたが、今回も閻魔の使いとしての悪さを働く気でいるのか。ただ、今回被害に遭った人たちは格別悪人にも見えないので、ひょっとしたら単なる偶然、悪ふざけなのかもしれない。ちなみに、町の人からゼンマイをまいてもらって急発進するきくりの動きはかなり面白い動画だったので、一見の価値がある。誰の原画なのかな。 そして、今回最大のトピックスは、湯川が何度も訪れた学校の保健室にあった。恥ずかしながら、この文章を書くために見直すまで全然気付いていなかった(このエピソードは割と凡庸だと思っていたので、見直すこともしなかったし、視聴時にも注意力が散漫になっていたのかもしれない。要反省だ)。一体何のことかと言うと、保健室にいる養護教諭の先生の存在である。彼女は、明らかに苛めを受けている湯川をしきりに心配し、担任に相談を持ちかけるなどの行動に出ている。まぁ、これだけを見れば普通の「ちょっと生徒思いの先生」というだけなのだが、この先生の登場シーンが実に不思議な演出になっており、何故か、彼女の顔が見えないようになっているのである。表情が映るシーンでも必ず鼻から下のみ、目が映り込まない不自然なカットになっており、顔全体が映るときも、ロングだったり、アングルがおかしかったりして、その顔が誰なのか、分からないように作られている。この先生の正体についてはしばらく後、13話で明らかになる(まぁ、キャストを聞いて気付くべきだったのだが……いや、ひょっとして気付いたけど忘れてたのかな? 流石に分からないはずはないんだけど)。 というわけでキャストの話。今回は、中心となる湯川役には世紀の「受け」プロ、そーちゃんこと保志総一朗先生が登場している。もう、流石としか言いようがない。数多のBL作品であらゆる誘いを受けきるプロ中のプロ。もちろん、ヘタレから少しの間だけ自信を得る湯川の心情面の変化なども巧みに演じ分けており、1話限りのゲストながらも存分にその存在感を発揮している。一方の兄貴、仁志田役には高橋広樹。こちらも実に安定した活躍。多分こちらもBL作品では常連だろうなぁ。ま、俺の中で一番イメージが強いのは「遊戯王」の城之内なんだけどね。 PR |
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