「戦国コレクション」 4→6
これ、最終的にどう評していいのか分からない作品です。何が辛いって、「自分に受け入れられるキャパが無いのが分かってる」っていうのが辛いね。ホントに視野の狭い人種なので、アニメ視聴に他の視点を突然投げ込まれるとそれだけでお手上げになってしまう。古今東西の有名映画パロディって言われても、わたしゃほとんど分かりませんよ。
しかし、それでもかなり思い切ったことをやっているというのは嫌というほど(ホント嫌というほど)伝わってきたのは間違いない。基本的に「何がやりたいのかよく分かる」というのが最大の評価ポイントの人間なので、そのチャレンジ精神は「分からないなりに」敬意を表したいと思う。
いやぁ、最初はどうなることかと思ってたよね。戦国美少女もの+ソーシャルゲームという、救いのなさそうな要素のコンビネーション。どこに応援要素を見いだしたらいいか分からないし、「織田信奈」みたいに絵で見せるでなし、かといって「戦国」の活劇で見せるでもなし。1話目を見て「こりゃあかんな!」と匙を投げても仕方ないレベル。ことこの作品に関しては、1話目で「切ろうかな」と思っていた過去の自分が間違っていたとはこれっぽちも思っていないし、だからこそ切らずに最後まで見られたラッキーに感謝したい。なぁ、こういうのがあるから途中でアニメを切ることが出来ないんだよ。面倒なことしないでくれよ、後藤圭二め。
本作の「意味」が分かりはじめるのは、巷で流れる「どうやらあれって有名映画オマージュのオムニバスらしいぞ」という噂を聞きつけた後から。確かに、言われてみれば1話目ははるか昔、高校だか中学だかの授業中に1回だけ見た「ローマの休日」によく似ていた。そこから続く他の作品も、「なんの脈絡もなく垂れ流している作品」だとすると、あまりにもとりとめが無く、脚本を書いた人間の精神が心配になるレベル。そこに元ネタがちゃんとあるんだ、と言われれば、「良かった、分裂症気味の危ない脚本家はいなかったんだね」となって一安心。そして、「戦国」という要素が無茶苦茶なパロディとして昇華された5話に至って、「ちょっと待て、コメディとかそういう範疇じゃなくて、コレ、おかしいだろ」ということになる。
「どこかおかしいぞ」ということに遅ればせながら気付いた後は、毎回「何が出てくるんだろう」とおそるおそる見るびっくり箱みたいな作品になった。全盛期のミルキィもかくやという恐怖感。このあさってに向けた思い切りの良い企画が、「戦国美少女+ソーシャルゲー」という負の足し算を、見事にひっくり返してみせたのだ。テレビ取材を受けて武士の安全さを訴える塚原卜伝、場末のカフェを盛り立てる松尾芭蕉、コンビニでしおらしくバイトをする前田慶次などなど、「戦国も関係無いし、下手したら美少女すら関係無い」という、とんでもない配置である。そして、それらのミスマッチが「映画のパロディ」ということで更に骨太なシナリオに無理矢理融和させられ、缶詰め工場で働く大谷吉継の物語は涙無しには見られないし、信長を殺した記憶のフラッシュバックに苛まれる明智光秀の葛藤にも息を呑む。砂場の攻防に命を賭ける尼子経久に至っては、ナレーションまで全力でのバックアップ。銀英伝が元ネタとか、しらんわ!
とにかく、ありとあらゆるミスマッチをただひたすら掛け合わせ、視聴者に何を伝えたいのかはさっぱり分からないという怪作が、まさかの2クールで提供されたわけだ。これだけのものを放り投げられて、無駄に捨て置いたらアニメファンとは言えまい。本来ならば原典となった映画も見るべきなのだろうが、それが叶わぬなら、とにかくその脚本が何を目指したのかを想像し、それが映像面にどのような「おかしさ」として出たのかを楽しむ。この難行は、本当に楽しかった。毎回「何を楽しめば良いんだろう」から考えられるアニメって、実はすごいものなのかもしれない。
現時点での評価は、「見たことが無いもの」に対する過剰反応なだけかもしれない。「元ネタも知らないくせに、何を偉そうに語ることがあるんだ」と言われるかもしれない。そして、それに返す言葉も無い。しかし、「何かあったんだ」というその奇妙な「乗せられている感」が、とても楽しかったのです。一本一本のエピソードで切り取って単なるショートムービーとして見ても面白い話数もたくさんあるし、そうした「チャレンジの塊」として、今作は実に刺激的で、「結果を伴う」作品だったのではなかろうか。
ま、おかげで中の人について語りにくいという難点はあるのだが……大久保瑠美は頑張ったと思う。あれだけのキャストの中で、最後までなんとか「信長の物語」を維持し続けたのだから、その頑張りは評価されるべきだ。あとのキャラで気になったのは……北条早雲役の広橋涼さんとか、光秀役のぴかしゃとかが楽しかったです。オムニバスのくせに微妙なところでリンクしてて、「あ、こいつまた出てんのか」みたいなところが見えるのも楽しかったなぁ。
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