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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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<以下の文章は、放送当時に執筆されたものである>
 
○第13話「六文灯籠」
 脚本・金巻兼一 絵コンテ・藤原良二 演出・うえだしげる 作画監督・PARK SANG JIN


 <あらすじ>
 
 夏の終わり、賽河原市では、年に一度のお祭りである「六文灯籠」の季節が迫っていた。六文灯籠とは、この賽河原が「地獄に最も近い場所」とされることから始まった行事で、江戸時代に贖罪に訪れた罪人達を見た神社の神主が、身代わりとして地獄の六文銭を描いた札と供に灯籠を流したことに由来するという。現在では贖罪ではなく「忘れたいこと」を札に書いて灯籠と一緒に流すという祭りになっており、催しの少ないこの街では貴重な夏のイベントである。夕暮れの河原で佇む輪入道と骨女は、そんな「地獄へ向けた」イベントに思いを馳せる。輪入道が言うには、六文灯籠の夜、川縁の大鳥居の向こうに、少しの間だけ地獄への道が開くという。その夜、地獄から地獄少女へ向けて贈り物が届く。
 
 一方、そんな時期ではあるものの、ゆずき達の夏はせわしない。中学3年生の夏も間もなく終わり、いよいよ受験の準備を始めなければいけない。そんな中でも元気の無いゆずきに、親友の秋恵は「何かあるなら力になるから」と励ましの声をかけてくれる。秋恵と分かれ、1人で項垂れるゆずき。「話せるものなら全て話してしまいたい。でも、話しても仕方がない。自分の中には、地獄少女がいる」。今まで数々の地獄流しを見てきたが、一体、これはいつまで続くのだろう。
 
 場所は変わって、賽河原市の警察署前。署長の高杉憲久が外に出ると、門の前には見覚えのある女性が立っていた。彼女の名前は真山梓。過去の刑事事件絡みで、高杉に怨みを持つ女性。無視をしてパトカーに乗り込む高杉に、真山は「偽善者」と繰り返す。高杉は、ゆずきの親友である秋恵の父親である。母親を早くに亡くした秋恵との父子家庭は、仕事に追われながらもそれなりにうまくいっていた。秋恵も頼りになる父親のことが嫌いではなかったし、父親に心配をかけまいとそれなりに努力もしている。夕食のテーブルくらいしか家族の会話の場も無かったが、高杉にとっては自慢の娘だった。
 
 しかし、そんな秋恵の家庭に入り込んだ人物が1人。「明田川」と名乗る秋恵の新しい家庭教師は、高杉の目を盗んで家庭に入り込んだ、真山梓の偽名だった。言葉巧みに秋恵と親しくなり、信頼を得ていく真山。ゆずきはその顔に見覚えがあった。その女性は、地獄通信にアクセスして藁人形を手にしていたのだ。
 
 ある日、秋恵は真山の自宅に招かれる。うらぶれたボロアパートには、寝たきりになった真山の父親。過去に傷害事件の被害者となって、真山の父親はほとんど植物状態になってしまった。しかし、加害者側は街の有力者の息子だったために、警察は事件をもみ消してしまったという。真山は、加害者も憎いが、それよりも警察が憎い。怨むべきは高杉署長。娘である秋恵の耳元で「偽善者」とささやき続ける真山は、「それでもあなたを憎んだりはしない。悪いのはあなたの父親なのだから」と、秋恵の精神を蝕んでいく。
 
 その夜、秋恵は高校進学をしないことを父親に申し出る。その上で、父が借りている近所のマンションに別居すると言い出す。秋恵は、自分の父親が信じられなくなっていた。しかし高杉はそんな娘の心情など分かるはずも無い。困惑しつつも、秋恵の奇妙な一人暮らしを認めてしまう。当然のことながら、マンションには真山が現れ、秋恵との距離を縮めてくる。
 
 そして六文灯籠当日。ゆずきと秋恵は2人で会場となった河辺に向かい、ゆずきは「地獄少女」と書いた札を乗せた灯籠を流す。秋恵は「父さん」と書いた灯籠を流そうとするも、やはり父親のことを信じる気持ちがどこかにあった。直前で灯籠を流す手をとめ、今一度真実を確認するため、真山の待つマンションへと駆け出す。一人取り残されたゆずきは、川縁の大鳥居が奇妙な光を放っていることに気付く。回りを見る限り、その光が見えているのは自分だけだ。訝しがりながらも鳥居の近くまで進むと、回りには一面の紫煙。薄光を放つ鳥居の向こうからは、数々の灯籠を流していく川の流れに逆らって、ゆっくりと小さな船が現れた。その上には、青白い光を放つ1粒の桜桃。鳥居の下で、ゆずきの流した「地獄少女」の灯籠と船が交錯する。
 奇妙な船を見送ったゆずきは、鳥居の下にぼんやりとした人影を見る。薄煙の中に浮かぶそれは、鏡像に写したゆずき自身に見えた。見入られたように鳥居をくぐろうとするゆずきを、後ろから何者かが引き止める。「行ったら戻れなくなるわよ」。そう忠告するのは、賽河原中学の保険医、柴田。戸惑うゆずきの目の前で、柴田の姿が消える。その途端、ゆずきの脳裏にはあるイメージが浮かぶ。それは親友の秋恵とその家庭教師、明田川。虫の報せに、ゆずきは走り出す。
 
 その頃、秋恵はマンションで真山と一緒にいた。真山の勧めでシャワーを浴びようとする秋恵だったが、突如バスルームに見知らぬ男が乱入する。その背後で薄笑いを浮かべるのは、信頼していた家庭教師、明田川。彼女は、秋恵をボロボロにして高杉に復讐するつもりだった。しかし、間一髪で高杉がマンションに駆け込む。ゆずきが報せてくれたのだ。最後の手段として藁人形を握りしめる真山を、ゆずきがすんでのところでとめる。藁人形をたたき落とすと、真山は唇を噛みながらその場を逃げ出す。ギリギリのところで、地獄流しは回避された。
 
 ショックで動けない秋恵。ゆずきが声をかけようとしても、「帰ってくれ」と嗚咽を漏らすのみ。最悪の事態こそ避けられたものの、彼女の心には深い傷が残ってしまったのだ。自分の不甲斐なさに外を彷徨い、泣き濡れるゆずき。その足は、自然と先ほどの大鳥居の河辺へ向かう。そして、そこで鳥居から出現した不可思議な青い球体に接触する。数ヶ月前にもゆずきに飛び込んだ、あの全ての始まりとなった球体。ゆずきの中に居た閻魔あいは、地獄から送られた「身体」を手にし、ゆずきの中から顕現する。ついに、ゆずきとあいが分化した。
 
 背中合わせに立ち尽くす2人の少女。呆然とするゆずきに、あいは「後はあなたが決めることよ」という台詞を残して、藁人形とともに消え去る。「地獄少女が出て行った。これで全部が元通りになる!」 ゆずきは雷鳴鳴り響く中家路を急ぐ。そして自宅の前には、一番合いたかった親友が待っていてくれた。ショックから立ち直ったらしい秋恵は、ゆずきの帰りを笑顔で迎えてくれた。
 
 抱き合おうと駆け寄る2人。しかし、2人の手が触れ合う直前に、秋恵の身体が宙へ溶ける。その光景は、ゆずきが良く知るものだ。秋恵は、真山によって地獄へ流された。
 
 土砂降りの雨の中、ゆずきが絶叫する。これが、新しい苦しみの始まりだった。
 
 
 <解説>
 
 この「三鼎」も早くも13話。1クールの終わりということで、非常に重要なエピソードがここに刻まれることになる。思えば1期でも13話目には「煉獄少女」という大切なエピソードが入っていたし、やはり折り返し点となるこの話数は、それだけで重要な意味があるのだろう(まぁ、2期はどうでもいい話だったけど)。ちなみにこのエピソードを見た直後に、「よし、全話レビューをやろう」と決意をした。既に昨年の年末のことである(現注:2008年の年末のこと)。
 
 今回のエピソードの持つ意味は大きく2つ。1つは当然、「あいの実体化」というストーリー上の大きな変化。これまでずっとゆずきの中にいたあいが、これ以降は2期までと同様に出動するようになる。とはいえ、この変更が「どのような意味を持つのか」は未だはっきりしない。ゆずきに新たな能力を与えることになるのだが、今回のあいの目的は、一体どこにあるのだろうか。
 
 そして、今回は1クール放送されてきたこれまでの流れの総集編的な意味合いもいくらかある。冒頭「一体どれくらいの地獄流しを見てきたのだろう」と一人ごちるゆずきが過去の地獄流しの依頼人を全てフラッシュバックさせているし、地獄少女と対話するのも今回が初めてのことで、ゆずきの思いがようやくあいに語られることになる。非常に細かい演出だが、冒頭でゆずきがこれまでのことを回想しているのは商店街の街角で、ゆずきが見詰める電気の消えたショーウィンドーは「山岡電機」のもの。2話で山岡美津子が経営していた店である。当然、この時点では全てのシャッターが降りていて、人の気配はない。
 
 また、決定的なファクターとして、被害者があの高杉秋恵である、というのも無視出来ないポイントだろう。過去の地獄少女において、複数の話にまたがって登場したいわゆる「レギュラーキャラ」が流されたのは、紅林拓真編の飯合刑事だけである。飯合が流されたとき(「彷徨(2期25話)」)には、物語もいよいよクライマックスという怒濤の展開だったが、今回はまだ半分が終わった13話目。ここで今までずっとゆずきと行動を供にしてきた秋恵が流されるというのはなかなか衝撃的である。まぁ、1つの街を舞台にして小さな枠の中で話が作られている以上、いつかはこういうことが起こることは分かっていたのだが、今回のことで、ゆずきの心情にも自ずと変化が現れることになるだろう。
 
 そしてもう1人、保険医の柴田の再登場。4話で登場した時には奇妙なカメラワークで決して顔を見せなかった彼女だが、今回は薄暗いながらもはっきりと顔を見せている。その面影、そのくせのある髪。シリーズファンならば忘れることが出来ない、1期のメインキャラクター、柴田つぐみである。1期では実の父親を地獄に流すかどうかをあいに迫られた彼女だったが、どうにか「復讐のむなしさ」を理解し、父を救い、あいの魂にも無視出来ない影響を与えた。その後、父親の柴田一は自らの体験を「真実の地獄少女」という著書に残して蒸発しており、娘のつぐみも同様に行方しれずだった。しかし、「真実の地獄少女」の存在に気付いた飯合刑事のもとに突如現れ、「はじめちゃんを信じて」とのメッセージを残す(「連鎖(2期24話)」)。この時、街路のカーブミラー越しにきくりと会話をし、「あなたが呼んだのね」と問うている。この時のつぐみは、1期の頃よりもいくらか大きくなっているように見えた。既に地獄少女との認識共有は解除されているようだが、2期ではきくりと会話をし、今回もゆずきにしか見えないと思われていた様々な超常現象を視認し、「行ったら戻れなくなるわよ」という忠告までしている。幼少の頃経験した地獄少女の一件以来、彼女も地獄少女絡みで独自に関わっていたのだろうか。すっかり大きくなって保険医として勤務した地が賽河原であるというのも、彼女の意志をにおわせる部分ではある。現状は色々と謎が残るが、どうやらゆずきと閻魔あいがただならぬ関係であることには気付いている様子。過去の自分と同様にあいの視界を共有する少女と、今後は一体どういう絡み方をしてくるのだろうか。
 
 さて、非常に密度の濃い、一杯一杯のエピソードであるが、その重要度に比例して、演出も随分色々と練り込まれている。何と言っても印象的なのは大鳥居でのゆずきとあいをめぐる一連のシーン。ゆっくりと鳥居から現れる船の上の桜桃については言わずもがなだが、これがゆずきの願いを込めた灯籠と交錯して現世に現れ出るシーンは実に印象的。他にもあいの身体が現れるシーンでも同様に「青い光」が印象的に使われており、桜桃の持つ「青」が現世に現れてあいのイメージカラーである「赤」に移行する。
 
 あいは帰還してすぐに山の上の神社に向かい、そこでは四藁ときくりが「おかえり」と出迎えてくれる(きくりは「帰ったか、ご苦労ご苦労!」)。あいは「ただいま」と一言返すだけだが、他の面子の表情を見る限りではようやくの再会、嬉しい顔合わせ、といったところか。ただ、2期では三藁達があれだけ頑張ってあいの地獄流しを終わらせて成仏させようとしていたのに、あいの帰還を喜ぶってのはいささか不謹慎ではある。まぁ、嬉しいのは分かるけどさ。
 
 今回は何度か登場する「鳥居」が重要な要素になっており、賽河原と地獄を結ぶ大鳥居と、あいが四藁と再開する山上の神社の鳥居の2つが登場する。河辺にある地獄との接点としての鳥居の方は、あいが地獄流しの船で越える三途の川の物の現世版だろうが、山上の鳥居に関しては、今後の展開からしてあいの住居と現世を結ぶものであると考えられる(その証拠に、鳥居の下にいたきくりはいつもの三輪車に乗っていない)。また、今回のエピソードは電車がトンネルを越えて線路の上を走る主観視点から幕を開けるのだが、この一見何の関係もない1カットも、「街→賽河原」というつなぎのトンネルと、「賽河原→地獄」と繋ぐ鳥居を関連づける意味がある。このあたりは2話で触れたオープニングのカットと同じ意味であろう。
 
 今回は地獄流し自体はある意味ベーシックな復讐劇なわけだが、やはりその一部始終を見ていたゆずきの心情を考えると非常に辛いものがある。ラストの秋恵が消えてしまうシーンのインパクトは強烈で、呆然とするゆずきに雨が降り注ぐ段になると、全ての音が雨音にかき消され、悲痛であるはずのゆずきの叫び声も実際には視聴者の耳には届かない。そしてこのカットで、へたり込んだゆずきの目が一瞬真っ赤に光る、という場面がある。これは非常に重要な部分で、「赤く光る目」はこの世界では当然閻魔あいの象徴である。そして、この時のゆずきは既にあいとの分化を終えているわけで、本来なら「普通の人間」のゆずきの目は赤く光るはずはない。しかし、親友を失った激しい悲しみと、地獄通信というシステムに対する壮絶な憎しみから、ゆずきはその一部を「地獄少女」としたのである。1期の柴田つぐみはあいとの感覚共有を経て「復讐を押し進める者」から「復讐の愚かさを理解する者」に変化し、2期の紅林拓真はきくりの謀略を通じて「復讐の愚かさを信じる者」から「人の心に宿る復讐という思念の強大さに打ちのめされる者」へ。今回のゆずきについては、今のところは「復讐のむなしさを信じる者」であるのだが、親友を失い、自らを「復讐者」とする可能性が生まれた今、一体どのような道を歩むことになるのだろうか。
 
 今回のラストシーンは、秋恵が消え、失意に沈むゆずきが翌日とぼとぼと道を歩いているシーンなのだが、実はこれ、次の14話でまったく同じシーンが出てくる。この時にゆずきがすれ違った少女が、14話の依頼人、柏木秀美なのだ。14話だけを見ると単発エピソードに見えるが、こうして話数の間につなぎのシーンを入れるというのは実に珍しい。改めて今回の話が「新たな始まり」であることがよく分かるというものである。
 
 また、他の話数とのつなぎという意味では、実は前回12話で流れた次回予告も意味深である。この中で輪入道が「またあいつも動き始めたみてぇだ」という発言をしている。結局この「六文灯籠」では輪入道の言った「あいつ」が誰なのかはっきりしない。流石に現世に肉体を得たあいを「あいつ」呼ばわりはしないと思うので、普通に考えるなら、三藁とも関係の深い柴田つぐみのことだと思われる。はてさて、何が起こるやら。
 
 今回のキャストは、復讐に燃える真山梓役には「絶対に許さないッ!!」という台詞がリアルすぎておっかない柚姉ェこと柚木涼香。復讐に燃える女の姿、秋恵を籠絡する百合なおねーさんとしての姿、男を使って若い娘を辱めようとする非人道的な姿、どれもこれもご本人に被ります。ニコ動で動画を見るたびに思うのだが、この人は本当に美人さんです。そして警察署長の高杉憲久役はあの銀河万丈。え〜声。そして当然のことながら、保険医の柴田先生(一応クレジットで名前は出ていない)には水樹奈々。やっぱりこの作品で彼女の声を聞くと身が引き締まります。ちなみに高杉秋恵役の沖香苗とはこの話数でひとまずさようなら。新人にとっては貴重なレギュラー枠だったのに1クールで終わりっていうのは辛いよね(ギャランティ的な意味で)(現注:ご結婚おめでとうございます)。

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