「琴浦さん」 5→5
今期ダークホースとなった一本。放送前に欠片も期待していなかったことは1話目の感想の時に書いたが、衝撃の1話からあとは下がる一方だろうと高をくくっていたのに、意外にもそこまでテンションを落とすことなく、1クールを走りきったのである。
最大の誤算は、「どうせ1話目の衝撃展開が終わったら、あとはずっといちゃいちゃしてるけだろ」と思ったら、意外にも中身があったということ。基本的には琴浦さんの能力によるトラブルというくくりで良いわけだが、「真鍋が琴浦さんの心を開く」→「森谷によるいじめからの琴浦逃走、捕縛劇」→「琴浦さんの能力による通り魔事件の捜査と危機」という風に、ちゃんと物語の方向性にはバラエティがあるのである。もちろん、そうしたプロットを包み込んでいるのは、真鍋との激甘ラブラブストーリーなわけだが、単なる「ユル萌え」ではなく、真鍋の男前っぷりや琴浦さんのちょっとした弱さ、優しさを出すためにシリアスパートが適度に手綱を握っていた印象。昨今、萌えものにシリアスが入るだけで拒否反応を示すなんて事例も起こっているらしいが、今作のように「とにかく2人の関係性を描くため」という明確な目的意識の下でシナリオが構成されているなら、狭量な人たちも一安心であろう。
もちろん、だからといってすげぇ面白かったかと言われると、そうは思わない。あくまでも原作のユルさ、ショボさは変わらないわけだし、やってること自体は非常に陳腐なもの。最低限与えられた素材を魅力的に見せるために、アニメになるに際して最大限にプラス方向に揺り動かせたんだろうな、というのが正直な感想である。太田監督の安定した仕事ぶりには感心するしかないが、これが「ゆるゆり」や「みつどもえ」より上に行くかと考えると、まぁ、よくてトントンといったところ。ギャグメインで見せる作品ではないので瞬間風速は出ないため、そこまで大きなインパクトがあったとはいえない。
今作を評する上で忘れていけないのは、やはりキャストのお仕事であろう。当然真っ先に出てくるのは琴浦さんの中の人、金元寿子である。また新しいひーちゃんの看板キャラが出てきたことによって、そろそろ諸々のイベントで「侵略?」とか言われなくなってくるだろう。流石にゲソとピカリンじゃんけんばかりを求められるのは可哀想だし。まぁ、今作で何が求められるかと言えば……エロス? そして、周りを取り囲む面々も良い仕事が多く、もう1人の主人公である真鍋を演じた福島潤の立ち位置は絶妙。昨今の男性主人公の中では珍しく、男女ともに敵を作らない、真っ直ぐで恰好いいキャラに仕上がっていた。もちろん、部長役の花澤、室戸役の下野あたりも安定のお仕事。森谷さん役の久保ユリカについては、「マジでこの人がラブライブのかよちんなのかよ!」と驚いた。若いくせにやりよる。そして、個人的に嬉しかったのは最後のクライマックスを作ったあの犯人役での渡辺明乃のお仕事。やっぱり変幻自在で良い声だよなぁ。こんなに便利で達者な声優なのに、今ひとつ地味なスタンスなのは何故なのだろうなぁ。
あ、そだ、この作品のもうひとつの功績があった。「福浦さん」が面白かったこと。一瞬話題になって盛り上がったけど、あのあともちゃんと毎週細かくあらすじの更新してたのが偉い。「(球宴には選ばれなかった……)」とか「エースにあるまじき投球をしていたことがばれてしまい」とか「勝ち星を付ける約束をするが、なかなか付けることが出来ず……」とかな。今年も無事、開幕戦で勝ち星つかずの善久君。誰が興味あるんや、こんな話題!
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