「終わりのセラフ 名古屋決戦編」 5→5
終わった……のか? 終わってないなぁ。何一つ解決してないなぁ。これ、続編あるんですかね? 誰だったかキャストが「アニメが連載を追い抜いた」みたいなこと言ってた気がするが、果たして。
シナリオ面については、この終わり方は流石にもやっとする。そして、そこにいたる過程についても、もやっと、というか胸くそ悪さはめいっぱいだ。何しろ、ポジティブな出来事が何一つ起こっていないのだ。序盤の「優ちゃん大丈夫?」から幕を開け、シノア隊の面々は人間達の醜い姿をことある事に叩きつけられ、勝てない相手との絶望的な試合ばかりを組まれる。対する吸血鬼側は我が世の春かというとそうでもなくて、こっちはこっちで内紛が蠢き、人間側の怪しげな動きに一喜一憂させられる。ミカもそんな中でひたすら己がアイデンティティのせめぎ合いに苦しみ、大願であった優一郎との再会がかなったものの、そこにはわだかまりがたくさんたくさん残っている。吸血鬼サイドの唯一の良心(?)と思われていた本作ナンバー2ヒロインであるクルル閣下に至っては最終話で櫻井の反逆にあい、小さな身体ではどうすることも出来ずに打ち倒されてしまっている。足下には大量の死骸、誰も救われない恐ろしい結末であった。
もちろん、こうした鬱々としたシナリオラインが悪いというわけではない。「進撃の巨人」との比較は前期にもやっていたかもしれないが、こうしてただ絶望を描くというお話も充分に存在意義があるもので、そこに必ずしも「希望への復帰」が求められるわけではない。駄目なものは駄目、そのまま沈んでハイおしまい、という展開だって立派な物語である。ただ、それが少年ジャンプ系列に位置する少年漫画にあって良いかどうかは定かではないが……。そして、少なくともアニメの結末としてはもやもやが残ったままであるのはいただけない。「バッドエンド」ではなく「バッドエンド?」なのは駄目だ。出来ることなら、もう少し据わりの良いラストシーンを迎えたかったものだが……まぁ、原作が未完なのだからしょうがなかったんだろうなぁ。
シナリオ構成には多くの不満があるものの、個人的に今作最大のセールスポイントは映像面にあると思っているので、そのあたりについては相変わらずのクオリティで非常に良いものだった。鬱々とした世界の鬱々としたビジュアル。容赦無い殺害描写もきっちりと描かれており、世界観にマッチした映像美術は「単に鬱々してるだけ」で終わらせないだけのものになっている。2期に入ってからは派手なバトルシーンも増えたので、独特のエフェクトで描かれる鬼呪装備の数々なんかも見どころだ。まぁ、ラスト前に出てきた謎の鉄串虐殺マシーンは流石に笑うけども。百戦錬磨の兵士たちが単なる棒きれに次々殺されていくシーンはかなりシュールだった。最終的に「セラフ」が覚醒するわけだが、その天使から生み出されたのがエルドラージみたいな化け物で、本体セラフじゃなくてウギンみたいになってるのも笑った。結局、軍が行っていたセラフの実験ってのはなんだったんでしょうね。よく分からないままだったのはやっぱり心残りだ。
トータルすると、全体構成としては首を捻る部分は多々あれど、まぁ、独自のうま味はちゃんと維持していたのでイーブン、といったところ。是非とも、いつの日かこの続きが出てきて今度こそ「すっきりした」解決を見せてほしいものである。
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