「妹さえいればいい。」 4→5
ボドゲさえあればいい。いや、マジでそういうアニメだったな。AT-Xとか見てると特にそう感じるんだけど、昨今のアニメ・声優業界はことに「アナログゲーム」と称してボドゲを推している気がする。まぁ、アニメ好きのオタク層って潜在的にはボドゲとの相性がいいのは間違い無いのだけども。唯一の問題は、一緒にプレイする友達がいないってことで……(プレイできる環境にしがみついている僕は幸せ者です)。
さておき、1話目で「うわっ、しょうもなっ」って思った妹要素は本当に、マジで、圧倒的に、どこをどう取っても必要なかった。主人公の「妹好き」属性は本当に口だけというか、うわべだけというか、言ってるだけで実感を伴っておらず(伴っても困るけども)、なんでこんなタイトルにしたんだろうと首をかしげるばかり。挙句最終回では「主人公の妹好きは昔姉属性の女性からフられたことがきっかけだった」というとんでもない消去法の真実が明かされ、ますます妹である必要性が薄くなるという。まー、「はがない」作者の2本目の代表作ということで、発表時にできるだけインパクトのあるタイトルが欲しかったのかもしれないが、やっぱり本質を示すならもうちょっと別なタイトルでよかったんじゃないかと。
で、そんな妹要素を無視して改めてタイトルをつけるとすると……なんだろ、「ボードゲームのすすめ」とか「ラノベ作家の実情」とかかな……(ますます売れないタイトルになってしまった)。なるほど、これは確かに斬新ではある。延々ボドゲのルールを説明し、小説っていうか半ばリプレイみたいな内容で展開していく作品。我々のようなボドゲファンからすると、どんな形であれプレイ人口を増やす可能性がある窓口ができるのは喜ばしいことです。やっているゲームもそこそこのメジャー度で入門者にもとっかかりやすいもの、癖が強いがいかにも楽しそうなものなど、ちゃんと作者が好きで描いているであろうことが分かるので実感もこもっている。「ラノベ作家」というキャラクターたちの掘り下げのためにボドゲという道具を使うというのもありそうでなかった設定で、ゲームをしているうちに少しずつ人間関係が掘り下げられていくあたりはなかなかうまいと思った。あとはまぁ、作者の実体験に基づく良いんだか悪いんだかよくわからないリアリティな。別に「はがない」のアニメは失敗していないのだからあの辺だけは一応フィクションといえばフィクションだろうが……多分、原作者の周りにはそういう奴らも多いんだろうなぁ。
こうしてなんとも珍妙な「半分実録みたいなラノベ作家ルポ」に、さらに強烈なキャラとしてエロやらなんやらをばらまく完全フィクションの女の子を混ぜ込むことで、しっかりと「いかにもそれ臭いラノベ」にちゃんと仕上がっているあたりがまた絶妙。単なるルポでは元来のラノベ読者を惹きつけることは難しいが、本作はちゃんと「面倒な人間関係でごちゃごちゃやるラブコメもの」としても成立しており、阿漕な女の子のキャラだけでもそれなりに売り込める。すごくざっくりまとめると「悔しいがカニ公もにゃーさんも割と可愛い」ということである。我ながらちょろいオタクである。いや、でもおっぱいが大きくて稼ぎが良くて、デフォルトが全裸で問答無用で主人公ラブを隠さずに下ネタのみで発情トークを続ける金元寿子声の女の子なんて、そりゃ可愛いに決まっているだろう(最後のが特に重要)。しかもストーリーを追ってみればこれがちゃんと主人公と相思相愛で絶妙な距離感を演出していることがわかったり、その甲斐甲斐しさにはキュンキュンするに決まっている。さすがに今作のエンディングはカニ公とくっつくエンドでいいんだよね? 千尋きゅんも可愛いことは可愛いけど、さすがにそっちエンドにするのはカニファンから刺されても文句言えないぞ。
アニメーションとしては、どうしてもキャラデザがのっぺりしているのであんまりピンとこない画面も多かったのだが、例によって大沼さんらしいデザイン性に富む構成でテンポも良かったし、全裸派調査やらオープニングの多用やら、色々と小ネタ回しにも余念がなかったので退屈することもない。この辺りは流石としか言いようがない。本当に「ただダラダラするだけのアニメ」になりかねない作品だったので、よくもこれだけ刺激を維持しながら1クールを成立させたものだと思う。まぁ、あくまでも奇策の部類なので、受け付けない人もいるかもしれないけど。わたしゃもともと大沼さんの狙う方向性が好きな人間ですのでね。
中の人については……やっぱりカニ派。というかひーちゃんにとにかく隠語を言わせまくるというだけで今作は価値があった。アフレコ現場で荒ぶるひーちゃん、そしてそれをやんわり見守るクマちゃん。良い景色だ……。
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