「刻刻」 6→6
毎週感想書いてたので特に追記することもない系の作品。いくらかマイナーな原作漫画が、こうして良質のアニメとして再生産されるのはどちらの業界にとっても良いことですよね。
本作は原作のアイディアがまず秀逸だったという部分からして面白くなることが保証されていたわけだが、単にアイディア一本の作品なんてことはない。多分似たような「アイディアの勝負」という意味では例えば「寄生獣」とか「亜人」なんてのも似たような路線になると思うのだが、それぞれにアニメになった時の印象がずいぶん違うことからも、アニメ化ってのは簡単な作業ではないということがわかるだろう。「亜人」のようにエキセントリックな画面作りで本当に「アニメオリジナル」にしてしまうというのもありだが、今作はクドいキャラクターデザインをそこそこ見やすいようにアニメ的なリビルドを施しつつ、原作の持つこってりしたクドい背景描写なんかも残しての映像化。CGもフル活用しているが、例えば「静止した世界での水滴」であるとか、システマティックな部分で活用することで止界の異質さを際立てているのが興味深い。カヌリニに代表される異端存在だけをCGで切り取れば、よりいっそう止界の特異さが際立つというわけだ。
それに加えて「止めるものは止める」というはっきりとした意思を持った作劇により、この世界ではむしろ異質である「動くもの」の存在を引き立てるという演出方向も面白い。画面にしろ、音にしろ、アニメにするからには常に何かが「動いて」いないと不安になってしまうものだが、本作はやはり「止まる」ことこそが最大のオリジナリティであるので、そこが一番見えやすくなるよう、恐れずに「止めていく」演出はやろうと思ってもなかなか徹底できるものではないだろう。ラスボス佐河の「動かない恐怖」なんかも相まって、今作最大の見どころはしっかりアニメーションの中で機能していたように思う。ジェノススタジオはまだまだ新鋭の制作会社だが、きちんと統一した意志でもってシリーズを統括できていたのではなかろうか。今後もこちらの方面でのアニメ産業への進出は注目である。
最後は当然中の人。今作を支えた人間は何人か候補が上がるが、作品独自の魅力を見出すならば「渋いおっさん連中」の活躍に注目したい。例えばじいさん役の山路さんは今作では座長と呼ぶにふさわしい活躍であるし、後半一気に存在感が増した迫さん役のよっちん、親父役の辻谷さん、そして佐河の不気味さが最後までブレなかった郷田ほづみの怪演などなど。やはりおっさんが格好いいアニメは良いアニメ。そして、本来の意味での座長としてこれらおっさん軍団に彩りを添えた安済知佳の圧倒的入れ込み具合。やっぱりちかぺは「降ろす」タイプの役者なので、物語がクライマックスに近づくにつれてどんどん熱量が増す。最終回の樹里の絶望の広がり方とか、中の人の精神状態も心配になるくらいだった。ちゃんと作品が終わった後で止界から出てこられたことを祈っています。
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