最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
「観たい映画がいっぱいあるな!」って思ったんですよ。んで、劇場でまず最初に何を見るか考えた結果……これになりました。アニメじゃない! 特撮でもない! ほんとのことさ。まぁほら、過去には「人狼ゲーム」の劇場感想あげてしまったので、アニメじゃないものの記事立てるのもあんまり抵抗無くなったし。いいじゃない、普段あんまり観ないジャンルを観に行っても。
まず、なぜこれを真っ先に観に行ったのかから触れておこう。単なる自分語りなので、万一映画の感想が見たいという酔狂な人は下のとこまで飛ばしていただこう。 ぶっちゃけ、原作小説は未読だったりする。私が読んだのは、コミック版だ。今作に触れた最大の理由は、私がコミック版の作画担当・熊倉隆敏氏のファンだからである。この名前を聞いてどれくらいピンと来る人がいるかも怪しいところであるが、アニメ視聴者的な説明をすると、過去にアニメ化された「もっけ」という漫画の作者である。私は当時「もっけ」がとても気に入り、アニメ放送後に原作コミックを全て揃えた。そしてその後にこの人の漫画が出たらおいかけることにしているのだ。ただ、残念ながら次にスタートした「ネクログ」は4巻で終了してしまった。打ち切られたのかどうかはよくわからないが……作品の内容を見るに、もうちょっとやりたいことはあったんだろうなぁ、という印象で残念無念。 そして、確か1年ほど前だっただろうか。この「12人の死にたい子どもたち」というショッキングなタイトルが書店で目に入ったのである。「おっ、熊倉さん、仕事してたんやん」と思い迷わず購入。当時2巻まで発売されていたのだが、これがもう、最高に面白い。特に、漫画版を読んだことがある人ならご存知かもしれないが、2巻のラストの展開が想像を絶する引きの強さなのである。もう、こんなん見せられたら「早く3巻を! 早く完結を!」と身悶えしてしまうこと請け合いだ。折悪しく、私が見つけたのは2巻の発売直後のことだったため、3巻の発売まで1年近くも待たされることになった。その間に冲方丁による原作小説を読むという方法もあったのだが、せっかく熊倉さんの再構築してくれた「面白い漫画」が途中で止まっているのに、そのオチの部分を別な媒体で知ってしまうのは勿体無い気がして、グッと1年耐えていたのである。そしてめでたく最終3巻が先日発売され、そのままグイッと最後まで。久しぶりに「いやあ面白かった」と放心できる作品だったのですよ。多分原作小説の時点で充分面白いのだろうけど、やっぱり熊倉さんの作劇が肌に合っており、漫画で読めたことがプラスに働いたんじゃないかな。 そんな作品が間も無く実写映画になるという情報が当然入ってくる。「どう考えてもこの作品を実写映画で出来るわけないやろ」とは思いつつ、興味半分怖さ半分。せっかく素敵な読書体験をさせてもらったのだから、いっそこのまま行けるところまで行ってみよう。たまたま視聴が封切り日になったが、まぁ、これも巡り合わせである。「実写になって面白いわけない」と最初から決めてかかれば、それより下にいくことはないという消極的な姿勢もありましたがね。さて、そんなドキドキ体験でしたが結果はどうなったかというと……。
<以下、ネタバレを含む感想になる可能性が高いです。今作については、未読の人は充分気をつけたほうがいいでしょう>
うん、個人的には悪くない出来だったと思いますわ。2時間という尺で「出来るわけがない」というのは事実だったのだろうけど、脚本の構成はかなりまとまっていたと思う。70点くらいの出来にはなってるんじゃなかろうか。まぁ、すでに「原作を知ってる人間の目線」からの感想でしかないので、本当にゼロの状態から観に行った人にどのくらいこの作品の良さが伝わるかはわからないけども……「原作を既に知っている人間が、動いているリアル世界での今作を楽しむ」という楽しみ方なら、これはなかなか良い出来だ。 まずは素直によかった点をピックアップしていこう。脚本の構成については、おそらく原作のセリフだけをずらっと並べても余裕で2時間なんて消し飛ぶような作品なのだが、削れるところを全力で削ぎ落としながらも、作品の持つ「閉鎖空間内での思考劇」というテイストをギリギリ維持できるバランスになっている。メインとなるシンジロウのロジック展開はかなり大味になっており、ラストで答え合わせをする時なんかもちょっと超人的に発想が飛びすぎているきらいがあるのだが、まぁ、この尺ならしょうがないだろう。少なくとも「ちゃんと全員の見た光景から証拠を拾って、パズルを継ぎ合わせてますよ」というメッセージは伝えられているのだ。ロケ地の病院の構造上、どう考えても無茶な行動パターンになってるけどそこもしょうがない。自販機でペットボトル買うくだりがかなり無理臭くなってるんだけど、まぁ、原作時点でもちょっと変な部分ではあったからなぁ。あれだけ狭い空間に10人以上がひしめいて、互いにすれ違い続けるコントみたいな展開が不自然に見えてしまうのはどうしようもないな。 個人的に興味深かったのは、各々が動機を語っていくくだりが院内調査などの作業と並行して行われ、そのために2〜3人のグループに分かれた状態で個々のエピソードが開示されていくという構成。1人1人の「動機」に対して全員がリアクションを取っていたら膨大な時間が必要になるが、例えばセイゴとケンイチのようにキーとなる組み合わせを取り出し、二者の間の対話にしてしまえば、エッセンスだけを抜き出して時間が短縮できる。まぁ、おかげで対話の場所がかなり忙しなくなり、どう考えてもノブオを突き落とすくだりが無茶になってしまったりはするが……そのあたりのディティールはご愛敬だろう。「全体の中の1人」から「2、3人の関係性」になるおかげで見やすくなっている部分もあり、タカヒロの病状なんかは全員でうだうだ言うよりもアンリさんがズバッと切り捨ててくれたほうが本人もわかりやすかったはず。そうした細かい部分できちんと1人1人のキャラを損なわず、最低限の要素を保持してくれたのはありがたいところ。 そして非常に根源的な話だが、12人のキャストが、割としっかりしている。声優以外の俳優女優についてはさっぱり分からない私目線での話になるが、こんな無茶苦茶な状況設定のドラマであるにも関わらず12人がそれぞれに達者で、演技がドラマを阻害することがない。強いて難をあげるならタカヒロの吃音の表現がさすがに辛かったことが挙げられるが、まぁ、もしかしたら「真に迫った吃音の表現」ってのは突き詰めるのも問題があるのかもしれないし。……原作でそこまで「吃音」っていう描き方になってなかった気がするんだが、もうちょっと「薬による倦怠感」の方向でごまかせなかったかな。でもまぁ、本当に演技で気になったのはそこくらい。あとはシンジロウ役の人も、メイコ役の人も、鬼気迫る仕事ぶりを見せてくれていて素直に感心。最初「キツッ」って思ったミツエも時間が経つごとにどんどん魅力的に見えていったのも不思議なものだ。個人的には橋本環奈が特別扱いされてるのが鼻についたってのはあるんだけども……そこはしょうがないところなのかなぁ。下手ではないがこのメンバーの中だと演者としては霞むので、作品作りを徹底するなら、もうちょい出番削ってもよかった気がする。最後の挙手のシーン、ハシカンを長写しする意味はないんだよ。あのシーンでリョウコはそこまで重要なポジションじゃないから。 他にも色々と演出に見るべき点は多く、パンフレットを読んで「なるほど」と思ったのは「せっかくの閉鎖空間なのだから世界はきちんと閉じる」という認識も作品世界の閉塞感を出すよい演出方向だ。確かに、セイゴの親御さんなんかは画面に出せば理解はしやすくなるだろうが、そこをあえて描かずに全て「子どもたち」の対話のみで表現したのは面白い。どうしたって「画」としての変化をつけたくなるところだろうが、安易に逃げずに演者の力を信じてまっすぐに勝負できているのはお見事。シンジロウ、ノブオ、アンリ、メイコあたりの1枚で画になる役者さんは強いね。ケンイチも原作で読んだ時の3割増しくらい鬱陶しく感じて笑ってしまったが、あれって原作と違ってドラマだとモノローグが入れられないからなんだな。何考えてるかわからない状態で行動だけみたら、そりゃ鬱陶しくも見えるわ。 さて、ここまでが良かった点だが、次は気になった点についても書いておかねばならないだろう。「尺の短さ」についてはどうしようもない問題なのでそれはなるべく割り引いて考えるようにして、むしろ短さをうまく処理したと褒めたい部分の方が多かったのだが、そうして「おっ、この部分はこんな風にまとめたのか! 面白い!」という感想は、ラスト20分くらいでちょっと揺らいでしまった。正直、最後のまとめ方はあまり好きではない。具体的にはノブオの帰還後、シンジロウの推理が展開され、場がしっちゃかめっちゃかになって挙手に至る流れ。それまでのエビデンスが少ないのでシンジロウの推理が超絶展開になるのはしょうがないのだが、その後、シンジロウが「集いを中止したい」と言い出す流れがどうしても弱くなってしまう。例えば例のコミック2巻ラストの「マイがぶっこむ爆弾」の部分が、今作ではかなり後に回され、シンジロウはあまりダメージを受けない。あそこで思い切りショックを叩き込まれるからこそシンジロウの中でもパラダイムシフトが起こるわけで、それがなくて「暴れ出したアンリが間違ってる気がするから中止を訴える」だけだと弱いんだ。それだとやっぱり単なる感情論でしかなくて、多数決の原理が単に「アンリをねじ伏せる暴力」に見えてしまう。 10人がそれぞれに集いをやめようと挙手をする展開は、それぞれの「死の概念」が密接に絡み合い、非常にロジカルに解きほぐされるべき部分である。誰かの死は誰かの生存理由になり、誰かの重大事が別な誰かに一笑に付される。そんなチグハグな「集い」の中で、それぞれが全員を見つつ「死」を「生」に転じる。その混沌とした中に見出されるロジカルなつながりこそが、本作の最大の眼目だと思うのだ。そこについての詰めが弱く、「ただ全員が挙手をする」という画の力だけで最後を走り抜けようとした部分は、なんとも勿体無いように思うのである。幾度となく「尺が足りないから」とは書いているが、あそこの挙手シーンはかなりの時間を割いているので、あそこで必要以上に溜めない選択ができれば、もう少し「最後の絡み」に時間が割けたように思う。 同様に、ラストの「12人全員の登場時とラストの顔の対比を繰り返す」という演出も、必要なかったと思っている。かなり時間がかかった割に、あんまりメッセージ性がないんだ。最後に全員がプラス方向へと転じたことは描写すべき要素であろうが、そこに「最初の顔」はあまり必要ない。それぞれに登場したときの事情も違うし、マイのように別に見た目に変わらないやつもいる。最後は全員が三々五々に散る描写だけでも、「続いていく生」の存在は示すことができるだろう。「この場所に来て、みんな幸せになったんですよ」みたいなビフォーアフターは、本作の趣旨からすると蛇足にこそなれ、必要な要素だったとは思えない。彼らが集いの間で議論を重ね、最後に挙手をした。その密室の中の結論が全てで良かったのではないか。
まぁ、色々と思うところはあるが、大きくくくるとどれもこれも脚本をなんとか成立させようとした結果の成果であって弊害でもある。なかなか美味しいところだけを取ろうとするのも難しいだろうか。繰り返しになるが、これだけ動きに乏しく密度が濃い異様な作品を、これだけのクオリティで映像化してみせたことは、充分な功績だと思っています。 ただ最後に1つだけ。この作品のキャッチコピーとして「密室ゲーム」っていう売り方はどう考えてもおかしいやろ……ゲーム要素ないやん。よくあるデスゲーム関係にかこつけて興味を引こうっていうセールスなんだろうけど、そんなところで嘘つかないで、素直に今作の持つ特異性を売りにすれば良かったと思うよ。邦画の売り方って、なんか幼稚な匂いがすることが多いよなぁ。もしそれで「期待はずれ」とかいう評価が出てしまったら勿体無いことこの上ない。 結論:漫画版、いい作品だからみんな読もう(僕も原作小説読みますから)。
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