立つ鳥あとを濁さぬ第23話。受験が終わったあとに何をするのかと思えば、この構成で1話やるとは……
受験が終わって卒業式を待つばかりの高校3年生。暇と言えば暇だけど、春からのことを考えれば忙しい。学生なのに学生じゃないほんのわずかな微妙な時期の微妙な空気を凝縮した1本です。ただ、果たして自分がこの時期に何をしてたのか全く覚えていないので、共感出来るような出来ないような微妙な雰囲気で視聴しておりました。たしか卒業式が合格発表の日と同じだったから何をするにも上の空だったんだよなー。
何の目的もなく集まった4人がやるべきことは何か、と問われれば、まず最初にやることは「お茶」。今回のエピソードだけでもムギはオウムの様に「お茶にする?」という台詞を繰り返していたけど、本当にこの子らはお茶を飲む。この「お茶を飲む」という行為自体が彼女たちの「グダグダすること」の体現であり、「放課後ティータイム」というバンド名の由来でもある。今回はサブタイトルが「放課後」であり、そこに「ティータイム」の要素はないのだが、その代わりに延々お茶を飲み続けることで「ティータイム」な要素を押し出し続けている。
部室で聞くチャイム、他の生徒が授業を受けている中で飲むお茶。全てがイレギュラーで、ジワジワと身体に染み渡る「変化」の予兆。唯は「最後のお茶」の事実にギリギリまで気付いてなかったようだが、他の面々は「最後」という要素には意識的で、色々と「もう出来ないこと」を片付け始める。律は教室の机を片付け、和も引き継ぎのために生徒会室を片付けている。売店のパンなんてよく分からない目標も達成できたし、かなり遅い段階になったが「部室の掃除」という重要な役目も思いつくことが出来た。これで思い残すことは……
というところで思いついた、最後の録音。「片付けること」とは対極に位置する「残すこと」が、彼女たちの部室での最後の仕事。会話も含めたあらゆる事象を「放課後」の「ティータイム」を経て残す。そんなワンシーンが、過去のライブの全てを総括して1本のテープに。このテープが1期からアイキャッチでお世話になっていた「アレ」というのも感慨深く、これまで3クールの間放送されてきたこの作品が、まるで今回録音したテープの様な彼女たちの思い出の記録であることを思わせる。彼女たちが卒業すれば、我々視聴者が見ていた1本のアニメ作品も、3年間過ごしてきた学園生活も、同じく1つの思い出になってしまう。何とも示唆的で、切ない因子ではないか。
「残すこと」「演奏すること」に焦点が当たったおかげで、「失われるもの」についての悲しさは全面に押し出されなかった今回。梓の気持ちにも前回整理がついたので、終始ほわっとした、いかにもこの作品らしい1話となった。一番余韻を残すカットはチャイムを聞きながら各人のアップで繋ぐ「放課後だー」のシーンだろうが、それだってごくごく静かな「終わり」。これが次回に待ち受ける最終回のための、嵐の前の静けさだとすると……恐ろしい構成だ。
今週の1枚。「人生の無駄遣い……かな」は流石にどうかと思いましたけど。敢えて選ばせてもらったのは、何気ないオフショットでもスティックを離さないドラム好きのワンカット。今リズム刻んでた? 完全に無意識だったわ。
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