終わったね……最終回。原作と同時に最終回を迎える作品っていうのは、愛されているので成功する気がします。ソースはARIAととらドラ。
ラストとは言っても放送的にはまだ2話残されているし、それと同じように、唯たちの生活はまだまだ続いていく。20話における明確な「終わり」とは対照的に、今回はそうした「続く」ことを意識させるような最終回となっていた。視聴時も、20話ではボロボロ泣いたけど今回は要所要所でうるっと来るくらいで泣くには到らず。露骨に「泣かせ」に来てもおかしくない話数だけに、この演出は作り手側の信念が感じられます。あくまで「けいおん」に必要なのはゆる〜い日常風景であって、劇的なドラマではないのですな。
卒業式の最中もどうでもいいことで盛り上がる面々。寄せ書きやら伝言ゲームやら、本当にどうでもいいんですよ。「流石軽音部だね、ギリギリで生きてる感じ」とは純の言だが、彼女たちに限ってギリギリってことはないよ。卒業しようがすまいが、一向に変わりゃしません。そのためか、さわちゃんやらあずにゃんやら、周りの人間ばかりが感極まって彼女たちを眩しく見ているような気さえしてきます。確かに卒業式って、送り出される側はいまいち実感が湧かないまま終わっちゃう気がするなぁ。
最も端的に実感を与えてくれたのは、なんと言っても梓の涙。文化祭でも、受験のときでも見ることが出来なかった貴重な泣き顔は、やはりこのときのために。それまで必死で気をはって唯たちを送りだそうとしていた梓だったが、ほんの些細なやりとりの中で気持ちが決壊し、ポロポロと胸中があふれ出す。一瞬の心の揺れだったが、それだけにどうしようもないくらい本当の気持ち。それを笑って受け止めて、おおらかにいつも通りのテンションで接してくれる諸先輩方の大きさがありがたい。背伸びしていつも心配ばかりしていた奇妙な関係性も、今日をもっておしまい。随分時間はかかったが、ようやく余計な気を遣わない、素直な先輩後輩の関係になれたような気がする。最後の最後に送った言葉が「上手くないですね」とは、何と良くできた後輩だろう。
クライマックスとなるのは梓のためだけに演奏する、「放課後ティータイム」のラストライブ。映像も、中身も、ごくごく普通の、ある意味「味気ない」ライブ風景ではあるのだが、このスケールの小ささこそが彼女たちが到達出来た最後の一歩。今までのライブはあくまでイベントの一部でしかなかったが、今回はたった1人の観客のために歌えた、最も目的のはっきりした演目。凡庸で、ありきたりで、だからこそ伝わりやすい歌詞に、梓は遠慮無く泣き、笑うことが出来た。本当の意味で、最高のライブでした。
ラストシーンは「ふわふわ時間」のイントロで締め。「ふわふわ」は1期の最終回でも流れていた曲で、このオーバーラップは明らかにアニメ的な演出として狙ったものだろう。そのまま曲に乗せてエンディングっていうのもアリだった気もするのだが、この作品の場合はきちんと通常エンディングを流すんだな。ま、そのへんのメリハリもありっちゃありかな。晴れやかなままで、いつも通りに。それが、「けいおん」の世界なのです。
蛇足と分かりつつ、中の人の話をさせておくれ。今回もクラスメイトの描写が実に細かくて、最後の最後まで3年2組の色んな側面が見えたんですけど、序盤に律に寄せ書き渡してた人、なんか中の人が微妙だったよね。せっかくの最終回で突然ああいうのが入ってきたのは何だったのか……な。
今週の1枚。歌ってるカットとかでも良かったんだけど、なんだか妙に印象に残ったので、みんなで並んで唯を見守る暖かい笑顔で。部員全員を心配するお母さんのような安心感があります。中の人的にいうと、餃子の皮のように包んでくれますよ。
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