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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 ゴールに向かってカウントダウン、第10話。ついに全ての刀が出揃い、一気にクライマックス! ……と行かないところが、本当にこの作品らしいところで。

 10本目の刀、「誠刀・銓」。これまでおかしな刀も多数登場し、最近では「刀ってなんだろう」という哲学のレベルにまで行っていた気がするのだが、ついに、実際に存在論にまで発展することになった。ここに来てこの流れというのは、本当に原作者の底意地の悪さというか、何事も無下に片付けられないお人好しの部分が垣間見える設定である。今回の目的は、これまで少しずつ少しずつ溜まっていた澱のような「うやむや」を、さらなる「うやむや」で丸め込んでしまうこと。はっきり言えば、反則行為だ。

 普通のバトルものとして見た時、今回の展開ほどつまらない話も無いだろう。刀の持ち主である彼我木輪廻とはほとんど戦っていないし、途中でとがめが「勝つ」方法を思いついた、といつものように奇策を巡らせるようなそぶりを見せたにも関わらず、その後に出てきた結論は「相手が戦わないつもりなら、自分も戦わなければ勝ちと同等の結果となる」という訳の分からないもの。はっきり言って、屁理屈を通り越した詭弁でしかない。とがめと彼我木は得心がいったような顔をしているが、読者も世間も、こんな話で納得出来るはずもない。実際、彼我木ととがめの問答シーンでは、いつの間にやら七花が画面から消えている。彼がいたら、「訳が分からない」ことが第三者の視点からも明らかになってしまうからではなかったか。

 そう、今回は本当に訳が分からない。しかし、「訳が分からない」のは、この作品を「月に1本ずつ刀を集めていくバトルもの」として見た場合の意見である。12話で完結する1つのシリーズアニメとして見た場合、今回のテーマは前述の通りに「うやむやの解消」だ。そして、その解消手段が、さらなる「うやむや」なのである。そもそも、ここまでの話で限界ギリギリとはいえ一応現実レベルで話を進めていた今作において、「仙人」という存在自体がまずイレギュラーだ。作中で一切説明がなかったが、姿形を変える彼我木のデザインや、彼がもたらした幻影の数々、そして銓の効果に到るまで、どれもこれも全てがファンタジー。極論してしまえば、全てが夢幻であってもおかしくはなく、彼我木という存在自体も、「おのが姿を写す鏡」という機能さえ成立していれば、あとは個人として存在する必要も無い。実際、全てが片付いて袂に銓を忍ばせたとがめたちが百刑場を後にしてから、とがめが必死に掘った穴は綺麗さっぱり消え失せている。今回流れた全てのバトル、苦役は、銓の効果であったとも考えられるのだ。こうして「自分と向き合う」という行為自体を刀の属性としてあたえ、その延長線上に彼我木輪廻という実在しない人格を形成する。そうすることで、一切バトル要素が存在しない、単なる「内省」という行為を一つの「刀探し」エピソードに変形させているのである。この解題の仕方は、本当にしたたかだ。

 「内省」というテーマが決まれば、後は描くのは容易い。奇策士とがめが振り返るべきは、過去の自分の原点。家族を失ったあの日の凄絶な思い出と本気で向き合う機会を得て、これによって動乱に飲み込まれてしまった父親の存在にようやく片を付けることが出来た。そして、そんな父の背後に迫っていた虚刀流という存在についても、「四季崎の刀の一本であった」といういかにもなネタを回収することで、一応の決着を見ている。彼女が集めるのは刀。そして、刀を集めるのは刀であった。全てが「刀」に収束する、いかにもこの作品らしい落としどころではないか。

 そして、今回のメインネタといっていいだろう、七花の内省。鑢七花というキャラクターは、最近になってだんだんくだけてきてはいるものの、やはりその内実を探りづらい、謎の多い人物である。「何のために戦うか」という大命題はもちろんのことだが、勝つこと、負けること、戦うこと、守ること、そうした全ての行動について、彼は自らの意志を優先させない。そんな彼の最奥をえぐるための手段が、今回の「敗戦相手との対峙」であろう。

 汽口慚愧との対峙は、まだシンプルだ。彼女ははっきりと自らの口で自分が伝えるべきことを語っており、「刀が使えないのは呪いではないか」というファクターをあぶり出した。鑢七実との対峙は、七花にとって一番重たいテーマであったが、「あくまで刀でしかない」「刀は刀を使えない」という彼女のメッセージは、最終的に「刀の使い手」の存在をあぶり出す。そして、最も根深く七花の奥に眠っていた存在、敦賀迷彩との邂逅により、七花はようやく、本当の意味で「使い手」の存在に気付くのである。「私を殺してまでして、何のために戦うのか」との迷彩の問いに対し、存外あっさりとした七花の答えは、「とがめのため」と。

 結局、まとめてしまえば今回のエピソードは七花にこの一言を言わせるためだけに存在していた。内省の果てにたどり着いたのはたった1つの「目的」。この「目的」という言葉もとがめ達の問答の中で再三登場するフレーズだが、本来最も重要であるタームを軽々しく女性2人の問答の中で引き出し、あてどない方向に転がしてしまうあたり、作劇の底意地の悪さが伺えよう。表面をなぞると本当に馬鹿馬鹿しいことしか論じていないキャラクターたちは、一歩引いて俯瞰することで、きちんきちんとこの作品のゴールに向けて、切るべきものを切り捨て、拾うべき因子を丁寧に拾いながら歩いているだけなのである。本当に憎たらしい。

 これだけ面倒な脚本、アニメにするのはさらなる艱難辛苦を乗り越えなければならない。今回のコンテを担当したのは小松田大全という名前のクリエイターだが、相変わらず無茶な脚本を相手に四苦八苦しているのが伺える。最終的にとられた方策は、監督の元永慶太郎の大筋の流れに沿った、「画面はのせるだけ」という方針だったか。無駄に長い問答のシーンは、本当に動きが無い。今回は特に彼我木の問答が頭を悩ませるものとなっていたので、おそらくこれに徒に画面までいじり始めると、おそらく作品としての収拾がつかなくなっていただろう。皮肉なものだが、動きを捨象して構成するという判断は正解だったと思われる。もちろん、ただ画を止めて諦めるわけではなく、1枚1枚の画のインパクトは重視しており、個人的に気に入ったのは、否定姫と右衛門左衛門の会話のシーン。いつも通りにお行儀よく座っていた否定姫はいつの間にか床に寝そべって天井裏の右衛門左衛門と会話をしており、間をつなぐカットを用意していない。一体どういうことだろう、と考えてみると、この「寝そべった否定姫」は、天井裏の右衛門左衛門から見た時に、きちんと全体像が捉えられるアングルに変化しているのである。今回、右衛門左衛門は初めて「笑みを浮かべる」というアクションをとった。2人の関係性に、主君と臣下という関係以外の、もっと濃密なものを感じさせる。物語の収束に向かって、この2人の関係性も少しずつあからさまに、そして密接に進んでいるのだ。

 また、彼我木の作り出したファンタジー世界の造形も、ベタな部分はありながらもなかなか含蓄に富む。「書き割りで描かれた世界が割れる」というクライマックスの演出は、個人的な思い出から言うと「妄想代理人」の最終話と被る。どちらも逃避先を用意された『向き合いたくない現実』の打破のメタファーとなっており、今回は七花が彼我木の投げかけた問答に対する答えを導き出したことを端的に表すカットとなっている。他にも、彼我木が抱える酒瓶(?)の中がとがめの掘り続けた穴と繋がっていたのは彼我木ととがめの関係性を分かりやすく示しているし、そもそも彼我木のデザイン自体、アクロバティックな「概念の複合」をビジュアル化するという難度の高い造形の産物である。まぁ、期待していたこなゆきの活躍がみられなかったのは残念だったけど……

 そして、そんなややこしい問答回だからこそ、数少ないバトルの見せ場の力の入れ方がすごい。ただ、何故か今回は彼我木とのバトルではなく、回想シーンの慚愧とのバトルの方がものすごかったけど。あの短いシーンにどれだけの労力を傾けたのだろう。劇場版と見紛うものすごい迫力だった。「動きでだって見せられるんだぜ!」という製作スタッフの維持の表れか。

 とにかく色々と見どころ、悩みどころの多い今回。最後にやっぱり中の人の話で締めよう。ゲストキャラクター彼我木輪廻役は、なんか久し振りに聞いた気がする伊東みやこ。「しずくちゃん」「キョロちゃん」とひたすら人外のイメージであるが、やっぱり今回もファンタジー生物という名の異物としての存在感が濃すぎる。面白い造形だったが、ちょっと気になったのは笑い声ですかね。やっぱり「ケ」音で笑うのは人として難しすぎるよ。過去に「ケケケ」でちゃんと笑えたキャラクターって、ステカセキング(CV・二又一成)しか浮かびません。

 その他、とがめ、否定姫、七実、慚愧、迷彩などのオールスター出演も今回の見どころ。やっぱりこうしてみると重要なキャラクターは全部女性なんだよなぁ……とがめは今回あんまりしゃべってなかったからちょっと不満だったんだけど、ラストのいちゃいちゃシーンで全部持っていった気がします。まぁ、本当に最後に持っていったのはエンディングテーマを歌った否定姫だった気もしますけど。作詞が畑亜貴、作曲が伊藤真澄のゴールデンコンビ。本当に「容赦無い」曲になりますよね。これってアルバム収録とかされないもんかなぁ。

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