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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 久しぶりの劇場作品。このご時世、映画館に行くのも若干の罪悪感が伴いますが、今作に関しては知人から「絶対に観てくれ」と勧められたのでいかないわけにもいかず、確認したら現時点で1日1回上映。いつ終わってしまうかも分からない状態だったので、多少の無理は承知での視聴と相成った。以前からちょいちょい噂は耳にしていたのだけど、さて、純正の「中国アニメ」は、一体どんなものが出てくるものやら。

 

<以下、今更だけど一応ネタバレ……とかそんなに無いかな>

 




 いやぁ、心地よいですね。今作を漢字1文字で表すなら「快」である。観ていてとても気持ちの良い映像が次々に流れ込んでくる。まずもって映像作品としての完成度が非常に高い。筋立て自体は王道ストーリーであり、一応、人間と妖精の共存関係というテーマ、そして文明と自然との衝突なんかを考えると「もののけ姫」あたりは近いと言えなくもないが、まぁこじつけだな。異形が人とわかり合うための物語は、とてもたくさんあるのでその類型の1つと言ってしまえばそれまでのお話だ。しかし、それが劇場作品の一本として小利口にまとまっているわけでもない。パンフレットなんてすでに売り切れてて買えなかったのでネットで情報を確認するしかなかったのだが、これってもともと中国ではシリーズアニメとして複数のお話が作られてる「シリーズアニメ」の劇場版って立ち位置なのね。観ていて「これ、シリーズ化して色んなお話が観たいなぁ」と思っていたら、実際にそれがあると知って現時点でとても気になっています。

 さて、映像部分の「快」について、どこから湧き上がるものなのかというのを考えなければいけない。正直、「中国の映画」という事前情報だけを聞いているとどうしてもバイアスがかかるというか、勝手に見方を固めてしまう部分があって、「今作は日本の作品とどのあたりが違うかな?」という余計なことを考える。そもそもこの考え自体が間違っていて、私は日本のアニメならば掃いて捨てるほど観ているが、中国産のアニメーションはほとんど観たことがない。そんな状態で「これが日本のアニメ・こっちが中国のアニメ」と区切っていくことはあまりにも雑なカテゴライズになる。あくまでも、私が観た「羅小黒戦記の特徴」でしかないわけだが……それでも、やはり日本のアニメとの違いについては考えたくなるし、逆に共通する部分についても考えたくなる。

 以下は大きく適当な論を2つ吐くが、まず1つ、今作の映像は、やはりジャパニメーションから生み出された流れの中にある。アニメ大国といえば日本、そしてアメリカであるが、今作の作画ベースにあるものは間違いなく日本のアニメ、それもいわゆる萌えアニメと呼ばれる深夜アニメの流れの中にある映像デザインである。我々オタクが愛してやまない「可愛い」を突き詰めたデザイン性は、きっとこの作品を作ったクリエイターたちの中に息づいており、彼らは日本のアニメを愛してくれているに違いない信じられる。

 その上での適当な論の2つ目、今作の映像表現は、現在の日本のクリエイターには作るのは難しい。何か1つの要素で表されるわけではないのだが、今作の画作りは、やはり日本のアニメーションの慣習からは外れたところにあり、今の日本の監督陣は、相当意図して枠を「外して」いかないとこのような作劇にはならない。日本国内で近い作品作りを成し得る人材がいるとするなら、難しいところだけど、五十嵐卓哉とか、あといしづかあつこくらいかなぁ、ありそうなところは。とにかく、画に乗せる情報の取捨選択が抜群にうまく、純粋に「動いている画を観て楽しむ」というアニメーションの根源を思い出させてくれるものになっている。そういう意味では、今作はもしかしたらディズニー作品に近い部分があるのかもしれない。キャラクターのちょっとした動き・仕草だけでその世界を動かし、軽妙に見せるコミカル世界。多分、日本で「アニメ映画を作ってくれ」と言われてこれだけのものをぬけぬけと出せる胆力があるクリエイターは少ないし、おそらくそれを通すプロデューサーがもっと少ない。どうしたって何か「仕込み」たくなるし、頭でっかちなものになりがちだ。

 「快」だの「軽妙」だのと言われても何のことやらよく分からないと思うが、残念ながら専門知識がないのでこの「快」を具体的に説明するのがとても難しい。何とかパーツを切り取っていくと、これまた大きく分けて2つの要素があり、1つはもちろん、動画部分の繊細さだ。「萌えアニメ」の作画デザインを踏襲していると言った通り、本作はキャラデザの線の数が少なく、シンプルに動きを見せられる要素が多い。CGベースでよりリアルに、繊細に、複雑に作っていく現代アニメの潮流とは真逆のものだ(もちろん本作でもCG要素は重要だが)。しかし、そうしたシンプルな線だからこそそこにリアリティや心地よさを生み出すのは神経を使う作業になっているだろう。個人的にお気に入りなのは、中盤まで多かったシャオヘイの猫フォームでのすべてのモーションだ。なんかね、とにかくもう、猫なんですよ。猫ってのは不思議な生き物で、独特のフォルムが生み出すそのシャープさが魅力である一方、どこまでも丸っこく、もふもふでもある。このしなやかさと丸さの共存があまりに見事で、あんだけ丸っこいシンプルなデザインなのに、そこに間違いなく生身の猫の動きがある。ちょっと跳ねるだけでも、ちょっと転がるだけでも、全部可愛い。あの猫の動きだけでも、今作のこだわりは成就している。

 そのほか、大迫力の戦闘シーンはおそらくドラゴンボールあたりの超絶ダイナミックバトルを参考にしている気がするが、こちらも細かい部分に気が利いており、特に妖精たちが何の前振りもなく次々と見せる異能の数々が、すべて絵だけで何が起こっているのかが理解できるのが楽しい。ムゲンの金属操作なんて、何が起こっているのかを説明しようと思ったら結構手間だと思うのだが、序盤のシャオヘイとのやりとりだけで、その全容が理解できた上で、細かい金属板の動きのすべてに意思が宿っていて愉快なのである。動画ってのは時間と金でいくらでも枚数を増やせるし、トレーニング次第で技術は身につくものだろうが、しっかりと意思を持って「楽しませる」動画が作れているというのは、間違いなく今作の強みだ。

 そして2つ目の「快」のパーツは、上でもちょっと触れた情報の取捨選択の部分である。今作はとにかく、セリフで説明する要素が少ない。日本のアニメ映画ではちょっと信じられないくらいのもので、序盤なんてフーシーが最初にしゃべり始めるまで結構な時間があるし、能力について、生い立ちについて、世界について、それぞれ大した説明もない。それぞれのキャラも自分の気持ちをいちいち声に出して言うことが少なく、イカダ上でのシャオヘイとムゲンのやりとりのように、ただその振る舞いだけでドラマが繋がっていく。この「わざわざ言わない、わざわざ見せない」という情報の切り落とし方がまた絶妙で、余計な物を入れずに純粋に画面の動きだけを楽しむのに一役買っている。個人的に好きだったのはしつこいくらいに繰り返されるシャオヘイとムゲンの追いかけっこ。天丼が過ぎて「もう逃げなくてもええやろ!」と思っちゃいそうなもんなのに、いちいちシャオヘイが逃げて、次のカットではぐるぐる巻きになってるとやっぱり笑ってしまう。カット割りのテンポが本当によくて、サクサク進んでくれるからこその「快」だ。日本のアニメ映画を観ていると「尺が足りないからどうしても駆け足になっちゃうよね」みたいな感想を書くことが多いのだが、本作は説明がほとんどないにも関わらず、筆が足りていないという印象が全くない。まるでリズムネタのようで、これこそが文字通りの「トントン拍子」なのかもしれない。あと、最初に肉を焼いてムゲンが「なんて鳥だ?」をやった後に、またなんかを焼いて特に画面に映すでもなく2人がベッって何か吐いてる音だけ聞こえてくるところなんかもすごい好き。この短時間で「キャラ芸」が定着してんのすごい。

 他にも、世界観の広がりの中で気になる要素はいっぱいある。多分「シリーズで観たいなぁ」って思ったのは突然出てきたナタ(車輪の子)がやたらキャラ立ってて「こいつ、出番これだけなのにキャラ濃すぎない?」って思ったからだし、エンディングで流れる謎の面子ですら「この子らの能力はどんなだろうなぁ」と思わせてくれる。いや、余計な広がりなどなくても、ずっとスクーターの前かごで律儀にヘルメット被ってるシャオヘイ観てるだけでも楽しいんだけどさ。

 最後に蛇足として、中国的世界観ってやっぱり面白いな、っていうのもプラス要素としてあるかもしれない。現在放送中の「魔道祖師」の感想でもちょっと触れたけど、やっぱり中国人が持っているチャイナ・ファンタジー要素って、日本人にもなぜかやたらと根付いてるのに、真正面から描きにくかったところなのよね。最強の術を使いこなす導師が、その傍らでスマホも使うし、水濡れスマホのせいで電子決済できなくて食い逃げもする。こういう時代も空想もぐるっと飲み込んで1つの世界に落とし込めちゃう器のでかさみたいなものは憧れるところがあるなぁ。まぁ、もちろん日本のアニメを他の国の人が観たら同じように感じるのかもしれないけどね。妖精たちの能力がしれっと「木火土金水」の五行思想になってて、「木」のフーシーが「金」のシャオヘイに打ち負かされてるあたりが自然に描かれてるのも、多分日本の作品だったらいちいち説明するところなんだろうけど、さらっと描かれてて「あぁ〜」ってなるのよね。

 いやぁ、とにかく楽しい体験だったのは間違いないです。正直、ソフト化されたら欲しいかもしれない。ビジュアルブックとかでキャラ絵とか世界設定をのんびり眺めるだけでも楽しそう(エンディングで出てきた1枚画シリーズの塗りが好き)。ぜひ、どこかの働きかけで関連作品が日本でも全部観られるといいな。できればこのキャストの吹き替え版で。

 

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