煮詰める煮詰まる、第23話。二局の対峙、どちらも命がけで。
冒頭、レゴシはサブタイトルに示唆されているように昆虫食にチャレンジする。正直、ゴウヒンの意図はいまいち分からんし、ここまでの「肉座禅」みたいな精神性の問題だと思うので今更昆虫を食べること自体に大きな意味があるとは思えないのだが、レゴシにとってはかなりショッキングな体験となったようだ。この世界でも昆虫食は「ゲテモノ」として忌避されているのか、それとも「肉食」の一部とみなされて禁忌になっているのか。まぁ、その両方という感じはするが、レゴシは肉を食べることに対して通常の肉食獣以上に抵抗を示しており、肉座禅やらなんやらを乗り越え、捕食衝動を抑え込むことに成功していた。そこに上書きするように「肉」を入れ込むことは、おそらく「知らなければ考える意味がない」ってことなんだろうと思う。肉食は良くない、と口で言うのは簡単だし、それはそれで正しいのだろうが、では実際に食べた側の言い分をフラットに聞くにはどうすればいいのか? というところで、「じゃぁ実際に食べてみればいい」という考え方にたどり着く。しかしここまで来て裏で流通してる肉を本当に食べちゃったらそれもどうなんだろう、ってんで、折衷案としての昆虫である。
ぶっちゃけ、レゴシの妄想の中の蛾の言い分はあまりに利己的なものだ。この場合の「己」っていうのはレゴシ自身なわけだが(彼の妄想だからね)、結局、現実世界でもしばしば議論される「食べられる動物がかわいそう」に対する「だから感謝して食べようね」という誤謬。いや、私は別にそれでいいと思ってるけど、論点がずれてるのは間違いないのだよ。「食べるからには責任を持って」という言い方は、食べないことを議論の外に置いてしまっているわけだから、そこであーだこーだ言うのは、この世界においても肉食の議論とは分けて考えるべきなのだが……まぁ、レゴシの内側で納得があるならそれでいいのかしら。とりあえず、新しい体験をすることでレゴシはまた別なステージへと動くのである。童貞は維持したままだけどいろんなもんを失ってる奴だ。
転じて、これまたステージの選択を迫られているのはルイさんである。ほんと、今回のお話は徹底して「イブキさん可愛い回」だったわけだが……まさかここまでしてもらって、いきなり梯子を外すことになるとは思わなんだ。皮肉なもので、お互いに虚勢を張って付き合っていた関係性から一歩進み、イブキもルイも、本音が見え隠れするようになってきた。それはそれで喜ばしいことなのだが、おかげでルイが自分の弱さをこぼし、イブキの強さを認めたからこそ、自分がシシ組にいてはいけないという結論にいたる。イブキからすれば寝耳に水なのだが、信頼できる「ボス」の決断だからこそ、それを邪魔してしまうのも違う気がする。互いを思い合っているからこそ、そのゴールの違いが明確に見えてしまったすれ違い。ルイは自分の人生とシシ組の未来で、前者を取りたいと申し出た。あとはイブキさんがそんなボスの人生を優先するのか、シシ組の未来を守りたいのかの選択。イブキさん、多分非情にはなりきれないだろうからなぁ……。
ルイ先輩を待ちながら、いよいよ開始されるリズVSレゴシの世紀の一戦。レゴシの仕上がりがふわふわしているのに対し、狂えるくま吉くんことリズのコンディションは万全。もう、自分が「悪いクマ」であることに抵抗もなくなってきたのだろうか。飛んで火にいるピナくんを返り討ちにし、待った無しのデスマッチへ。……いや、多分ピナくん死んでない気がするんだけどね。あそこでわざわざ殺すのは、リズがテムを食べた理由と全く違う動機が必要になるから無理がある気がする。
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