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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 ポンポさんに行っっっったゾ〜〜〜〜〜〜。正直、原作は読んだこともないし、だいぶ上映回数が減ってきてて調整するの面倒くさかったから行こうかどうか迷っていた作品だったのだが……行ってよかった。なんだこれ、超面白いじゃん。みんな教えてくれよ! なんで話題になってねぇんだよ!

 

 

<以降一応ネタバレ注意だけど、ネタってなんだろう>

 




 

 いやぁ、嬉しい誤算でした。まさかこんな楽しい作品だったとは思ってなかったんですよ。いや、監督が平尾さんだからある程度のリターンはあるだろうくらいの期待はあったんだけど、これ、すごく楽しいじゃない。すごく意義があるじゃない。なんで俺の情報網はこういう作品の話が入ってこないんだろう(目ぇつぶってるからじゃないですかね?)。そりゃま、直近で周りで騒がれてたのは「スタァライト」なので、それと比べると色々と違うわけだが……あっちが大砲の弾を5、6発もらって死ぬほど悶絶し続ける映画だとするなら、こちらはマシンガンの弾を絶えずパララララと浴び続けるような映画。小気味良く続く知の快楽にグイグイ飲める。作中でジーンが飲みまくるペプシと同じくらいには。是非視聴時にはペプシ&ドーナッツ。

 筋立てだけだったらとっても単純なので特に語る部分は無くて、ざっくりまとめると「情熱はあるけど自信も機会もなかった若者に、敏腕プロデューサーのポンポさんが目をつけ、最大まで才能を引き出し大成功させる」というサクセスストーリー。本当にシンプル。もう一面として新人女優がデビューしてアカデミー賞(ニャカデミー賞)を取るまでのお話でもあるが、まぁ、そっちはあくまでサブコンテンツかな。とにかく「好きなものには止まらない男のお話だよ」というので、主人公・ジーンの暗く滾った情熱が少しずつ形になり、最後に花開くまでをとても気持ちよく描いている。作中には基本的に「悪人」が登場しないのも心理的ストレスの軽い部分で、最後にどったんばったんする部分もあくまで敵は「ジーンの心」であるため、物作りを志す人間の孤独な戦いの果てにカタルシスが待っている。「何かを生み出したい」という夢を持ったことがある人間なら、きっとこのジーンの物語にはグッとくるものがあるはずだ。私の場合にはもちろん映画なんて作ったことはないし(高校時代に文化祭でドラマなら作ったけど)、動画編集なんてのもほとんどやったことはないのだが、ジーンが立ち向かうべきあまりにも膨大で壮大な「編集」という作業の絶望的なハードルは、まるで我が事のようにのしかかってくるのである。

 「映画制作がテーマの映画」ってのはあまり観たことがないのだが、近いところだと劇場版の「SHIROBAKO」がそうだったか。ただ、あちらは総合職としてのみゃーもりの制作進行を追いかける話で、こちらはがっつり監督としてのクリエイティブに絞ってお話が展開していく。脚本は全てポンポさんが担当しているし、いうたらほとんど図面は引いてくれている状態なので、ジーンに任されるのは本当に「編集」のみ。そして、この「編集」というのがドラマ作りでどれだけ大変なことであるか……。こんだけアニメ作品を観ていれば流石に「編集って大変な仕事なんだよなぁ」というのは理解しているつもりではあるのだが、やはりこうして実際の仕事(?)として見せられると切迫感が違う。中盤、ジーンがああでもないこうでもないとひたすらにシーンの可能性を探り、無限の可能性の渦に飲まれていくシーンは圧巻だ。本当に「正解なんてない」世界で、自分1人の責任だけで「これが最善の形です」と誰かにものを見せられるのか。少なくとも私にはそんな度胸も技術も無いよ。多くの人間が関わり、多くの人間の明日を左右する映画制作という現場。その壮絶な苦労と、それを乗り越えた時の代え難い達成感がひしひしと伝わってくる。

 そして、そんな真っ当な「成功譚」を描いているというのは、今作においてはそこまで重要な要素では無い。今作最大の見どころは、何と言っても「映画の中で映画を作る」という二重構造にある。奇しくも、上で触れた「スタァライト」は「映画の中で(アニメの中で)舞台をやる」という二重構造の作品。「舞台性」をアニメ作品の中で表現するなんてのは無茶な話だろ、と思っていたところにあんなものを繰り出されたもんだからびっくりしてひっくり返ってしまったわけだ。そしてこちらはさらに事態は深刻になり、なんと「映画で映画」である。もちろん、そんな重なりは偶然の産物として無視して「他のものづくり映画と同じように淡々とドキュメンタリーに仕上げるよ」というだけでも作品としては成立しただろう。しかしそれじゃぁ面白く無い。せっかくの映画なんだから、「その中で映画を描く意味」を付加してみたい。そして、その自由度はジーンが思い描いた編集の極地以上に無限の可能性にあふれた世界なのだ。それを考え、創り、編み出すのが、監督の平尾隆之氏のお仕事。もう、とんでもないプレッシャーだったでしょうね。

 そして、彼の狙った「映画と映画のクロスオーバー」というデザインは、面白いほどに綺麗に決まっている。「スタァライト」のように観念的な部分に救いようの無い深みを見出してズブズブと沈みこませる必要はない。あくまでも「90分のフィルムの中に、とにかく心地よい映画体験を」ということが大前提。「女優が綺麗に描ければ映画は成功」らしいが、「画面を楽しく観続けられればアニメ映画は成功」じゃなかろうか。最初に目を引くのは色々と趣向を凝らしたシーンの切り替え技法で、とにかく普通にはカットを繋がない。作中でジーンが苦戦したように、きっと今作も相当尺の問題には悩まされたはずだ。何しろ作る前から「絶対に90分で終わらなければいけない」ことが確定している。その中でどのようにしてドラマの全てを盛り込むか。それこそジーンの言葉を借りるなら、「切って切って切って切って」である。しかし、そこに「切った」ことを意識させてはダメ。あくまでも視聴者が流れを追えるだけの素材を提供しつつ、極限まで「つなぎ」を能率化して秒単位で要素を切り落としていく。そんな病的なまでのこだわりが、本作のシーケンスのつなぎを非常にエキサイティングなものにしている。中盤以降に語られた「映画の存在意義」を知ってから改めて見直せば、もしかしたら最初の方のつなぎにも色々と新しい意味を見いだせるかもしれない。まさに綱渡りで渡り切った即死級の90分。これを渡り切った采配にはそれだけで拍手だ。

 そして、実際にジーンが映画を撮り始めてからは、今度は「ポンポさん」と「MEISTER」という2つの次元の異なる映画が少しずつ混ざり合い、2つの世界がコラージュのようにちぎれ、つながりあって別な絵を見せていく。この切り貼りも、2本分の存在感を1本分の時間で見せるための技法の1つでもあるが、こうして世界をつなげることで「抜けている1本分」が物足りなくなるわけではなく、「2倍の密度」を持たせることに成功している。まるで現実のように芝居の世界を作り出す名優のマーティンと、俳優でもなんでもなくて必死に自分の人生を生きようとするジーン。その2つの人生の重なりは、言葉を尽くさずとも映画と「映画の中の映画」の世界を語ってくれる。ちゃんと視聴中に「このMEISTERっていう映画も観てみたいなぁ」と思っちゃったのだから、そりゃ作り手側の勝ちだろう。相補的に2つの世界の魅力を増幅し合うデザインは本当によく考えられている。

 あとはまぁ、アニメとしてのけれん味を忘れずに、ポンポさんはちゃんと可愛く描けているし、前述のように「悪人のいない世界」でのそれぞれのキャラクターの生き様がみていて気持ちいい。この映画をみたら、そりゃもうどっかにいく時には思い切りドアを開け放って「来ったゾ〜〜〜〜!」と言いたくなること請け合いだ。あと個人的に忘れられないのは受付の赤メガネのおねーさん。彼女なんだったん。かわいい。こうして2つの層をシームレスに行ったり来たりする映画なので、そうなってくるとさらにもう1つの層、「現実」への干渉も当然考えなければいけなくなり、例えばナタリー役の子が決してうまくはないという事実も、普段なら「なんやねんこれ」と思っちゃいそうだが、今作の場合には「そこにナタリーがいるならしょうがないよなぁ」と納得してしまうことになる。ジーン役の人も声優は初挑戦だったらしいのだが、こちらは割といい具合にハマってた気がしますね。周りのベテラン勢にガッチガチに固めてもらえてるし、仕事はしやすかったんじゃないかな。

 今作も1回観ただけじゃ掘りきれないだけの要素が詰まった良い作品だと思います。その上で、ちゃんと1回目を観た時点での満足度も高いのがとても良いですね。ラストシーンでのカウント90が決まった瞬間にスタンディングオベーションしたくなっちゃったもの。こういう「映画でしか出来ない作品」が出てくると、アニメ映画ももっと盛り上がると思うんだけどなぁ。とりあえず原作漫画は読もうと思います。

 

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