というわけで、近所の劇場で開催された謎の上映会に行って参りました。劇場にファンが集まって、ライブでもねーのにツアーの編集された映像を見るのってどうやねん、とは思ったのですが、なかなかどうして、見応えはありましたよ。
Sphere絡みのイベントだし、それなりにお客は入ってるのかと思ったのだが、実際は日に2回回しということもあってか、客入りはまばら。劇場もせいぜい1/3程度が埋まっているくらいで、イベントとしてどの程度のニーズがあったのかはよく分からない。ただまぁ、この企画自体、あんまり大々的に宣伝を打っていなかったような気もするので、もう少し色んなところで売り込めば客も入った気もする。個人的にはあまり窮屈にならずにのんびり見られたから良かったけどね。
ライブの映像を劇場のスクリーンで見るのはなかなかよろしい。音響も充実しているのでライブの臨場感が出るし、1人1人の顔がきっちり見られる大画面の方が、わざわざ現地に行けなかった人間が見る意味があるからだ。また、今回は3D映像ってこともあって、ライブに行く代償行為としては求められる最高レベルのものではなかろうか。
当方3Dシアターは初体験で、眼鏡on眼鏡になるのは窮屈だと聞いていたので心配だったのだが、そうした部分での不満はほとんど無かった。想像以上に3D技術ってのは進歩しているんだなぁ、というのが率直な感想である。ただ、「とびだスフィア〜」とはいうものの、実際はどちらかというと画面に奥行きを与えることで3D化している感じなので、「飛び出してくる」っていうのとはちょっと違うだろうか。画面上で一番飛び出してたのは観客が振ってるサイリュームだったし。せっかく奥行きが出てステージパフォーマンスが映えるはずなのに、全体的に引き気味の映像が多かったのはちょっと残念。4人全員を画面に入れる必要があるし、ステージ全体の映像も必要なのは分かるのだが、折角の3Dなんだから、細かいアクションが分かりやすいように寄り気味の映像を多めにして欲しかったというのは贅沢な注文だろうか。
とはいうものの、やっぱりライブっていいもんです。当方、この世界に入ったきっかけがUNDER17だったということもあり、ライブの持ち味であるコール&レスポンスの妙味っていうのがものすごく刺さりやすい。正直言ってSphereの面々のステージパフォーマンスがそこまで上手いというわけではないと思うのだが、それでも若さを全面に押し出したエネルギッシュな歌と踊りのおかげで、どうしたって飛びたくなってしまう。次に関西に来たときには絶対に会場に行きたい。そして、こうして外聞を気にせず応援したくなっている自分は韓流アイドルやAKBを応援してる人間と同じ人種なのだなぁ、と思うと、ちょっと寂しくもなる。好きなものは好きなんだから(ry
改めてライブという舞台上のSphereを見て思うのは、やはりこの4人は、華があるということ。「声優ユニット」なんてふざけた存在はこれまでも数多存在してたわけだが、個人個人が役者としての活動をしている関係上、どうしたってメンバー間に差異が生じてしまい、メインとサブに別れてしまったり、何人か空気の様なメンバーが出るのが常である。しかし、Sphereの場合はそれが無い。4人がそれぞれ一流のパフォーマーとして成立しており、1人1人に見せ場が存在している。どの側面から見ても、4人が最低限の仕事をこなすことが出来るユニットというのは、考えてみれば実に贅沢な集まりではないか。
1人ずつ見ていくと、最年少の寿美菜子は、メンバー全員が評する通りに振り付けの完成度が高い。歌唱力も高いレベルで安定しており、若手のくせにバンドで言ったらベースみたいな立ち位置だ。彼女の守る基本線を維持しつつ膨らませるのが、このユニットの起点であるようにも見える。
寿の上に重ねて全てを増幅させるのが、戸松遥の役割。立ち位置は端になることが多い戸松だが、広がりを見せる4人のフォーメーションを考えたとき、一番端は一番大きなモーションを要求される。その位置で、歌唱、声量、そして振り付けと、とにかくはっちゃけてエネルギーを弾き出す、そんな役割に見える。映像中でも既に名物となった「戸松ジャンプ」は健在であったし、会場特典として流された武道館ライブの映像では、真っ赤な衣装で他のメンバーがスカートだったのに、一人だけパンツルックだったのがやたらおかしかった。飛びすぎると、見えちゃうからなんでしょうかね。
熱心なファンからは異論も出るかもしれないが、4人の中でやや異質なスタンスを持つのが、豊崎愛生ではなかろうか。他の3人が比較的近い声質を持つ中で、豊崎だけは、1人ちょっと違ったカテゴリの声音を持っている。そして、その性質ゆえ、やや声量が弱い(もちろん歌唱時の話であって、役者としては決してそんなことはない)。ただ、この「弱く聞こえる音域」というのはバランスを考えたときに不可欠なものであって、4人が全く同じ方向性でまとまってしまっては、わざわざユニットとして活動する意味が無くなってしまう。「声の多層性」を持たせる上で豊崎は替えの効かないポジションであり、それがよく分かるのは、コーラスやデュエットなどの混声パート。「風をあつめて」のようなコーラスが活きる曲目だと、彼女の声が実に良いアクセントになるのである。
そしてこうした個性的な4人を飲み込んでまとめ上げるのが、リーダーの高垣彩陽というわけだ。個々の歌唱スキルが充分に高い4人であるが、その中でも飛び抜けた彩陽の歌唱があるからこそ、思い切り歌って踊れるという部分はあるだろう。常にメンバーの中心にいるリーダーの存在感は、タスクが複雑になるライブとなると、より一層際立つのである。一番小さい身体で一生懸命に振りをこなすがんばりも実に印象的で、そのエネルギッシュな部分を最大の武器としているSphereというユニットを象徴する存在と言える。堂に入ったトークパートでのしきりなんかも流石(まぁ、この辺はメンバー全員が信じられないくらいの舞台度胸を持ってるんですが)。
やっぱり、ライブ映像を見ると会場に行きたくなるし、飛びたくなる。やっぱり「すぱのばっ!」と決めたときの会場との一体感はそこにいなければ味わえないものだろうし、1から10まで全速力で駆け抜けるライブのテンションは、映像では伝わりきらない部分があるだろう。「今のSphere」にしか出来ないこともあるだろうし、是非とも次の機会は狙いたいところである。……まぁ、競争率は高いんだろうけどね。
多分、今回上映されたツアーのソフトが出たら買うことになるんでしょう。それだけの価値はあると思いますよ。
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