一言でいうなら、小夜子無双な第22話。散らかり放題だった伏線が、人物関係が、そして感情が連なりはじめ、一気に物語が引き締まっていく。
メデューサを止めるためにアトラスにあるゼウスへと突撃をかける國子とモモコ。立ちはだかるのは美邦様のために全てを投げ出す覚悟の小夜子。科学者であり、執務役であり、そして母親でもある彼女の執念はすさまじく、2度目の対峙となるモモコをメス地獄で撃破し、どう考えてもはるか先を駆け上がっているはずの國子に超高速で追いついて叩き臥せる。最終的には美邦と涼子の会見の立会人となり、自らが最後の障壁であると悟ると、母のぬくもりを残してその身を散らせた。はっきり言って、この作品に登場したどのキャラクターよりも勇ましく、潔い退場であった。
そんな小夜子を中心に、様々な感情が巡る。これまで完全にモブキャラとしか思ってなかった涼子様取り巻き野郎ズの中に小夜子の弟がいることが判明。野郎ズの中で内乱が発生し、これまで完全に小夜子の操り人形だと思われていた意志が遅ればせながら動き始める。確かに小夜子の脱走劇とかもあったけど……もう色んなことが有りすぎてすっかり忘れてたわ。当然、桜井(キャラの名前が分からないので中の人の名前で勘弁)が涼子を裏切ろうとしたきっかけのシーンなぞ覚えているはずもなく、正直「いや、今そんなことを言われても」という状態なのだが、涼子の下卑た発想はいかにも、といった印象ではある。
そして、そんな涼子もいよいよその正体を現す。前回までは唯一世界を救うためのよりどころだったはずの「ゼウス」。なんとその顕現した姿が涼子である。インターフェースとしての実体の保持というのがどのレベルで行われているのかはよく分からないが、少なくともこれまでの突拍子も無い気まぐれの動機付けは一気に解決した。涼子が一個人ではなく、あくまでアトラスのセントラルコンピューター(の化身)であるとするなら、総理の任や日本の趨勢、そしてメデューサという矮小なシステムに興味を示さずに鷹揚な態度であったことは納得できる。アトラスというシステム自体は涼子もいうように地脈などの多数の要素で構成された「楽園」であるからゼウスだけで成立するかどうかは微妙であるが、その全てを理解し、破綻しないギリギリのラインを見切り、その上で「大きすぎる世界を細かくしよう」という意志は、突拍子も無いが理には適っている。アトラスがあればいいのだったら「世界」には興味も無かろうし、核の冬にも、炭素経済の破綻にも影響は被らないというわけだ。まぁ、結局「鳴瀬涼子ってどんな存在なの?」っていうのが一番気がかりな点ではあるけど。
そしてアトラスランクAAAの競演。ミーコと小夜子の意志、そしてそれらが培った自らの不遇を克服するため、自らの意志で世界の崩壊を選択する美邦。愚かしい決断であるのは間違いないが、幼い美邦にここでクールな判断を要求するのは無茶というものだろう。今彼女の中にあるものは、小夜子とミーコに対する無念のみである。対して、ゼウスと美邦という世界の敵を前に、最後の抵抗に出る國子。しかし、唯一の救いと思われていたゼウスに裏切られ、窮地に立たされた主人公は今のところ頼りない。そして、全く分からない状態になっているのが、国仁。まぁ、次回を待ちます。ようやく全てのパーツがつながっていく実感がわく展開になり、来週以降は目が離せません。
今回は加えて作画、動画の状態が良好で、ちょっと癖のある画風ながらもモモコVS小夜子、涼子VS國子などのアクションシーンはけれん味たっぷりの美味しい画面。村田絵に無理に似せろとは言わないので、こうしてきちんと統制の取れた画面でいい物を見せてくれるなら毎回不満もないのだが。気になって調べてみたら、今回作監の小林利充氏という方は、お気に入りだったufotable作品にも大きく関わっていたクリエイターのようだ。何か馴染みがあると思った。
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