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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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「アンデッドガール・マーダーファルス」 6→6

 正直、最後の最後まで評価に悩んだ作品。何を軸に評すればいいのか、どんな手つきで触れればいいものか。色々と懊悩があったのだが、とりあえず現時点においては未来への希望に価値を認めて結果を出すことにした。

 評価に悩んだのは、プラスの要素とマイナスの要素の次元がズレており、同じ板の上で良し悪しを定めるのが難しかったためである。先にマイナス要素から触れていくと、これはまぁ、非常に分かりやすい「ミステリアニメの絶対難題」である。過去にもミステリを題材としたアニメは多数作られており、「金田一」や「コナン」はもちろんのこと、最近でも「虚構推理」あたりが代表選手だろう。エンタメに振り切れたコナン映画みたいなものは別枠になるだろうが、直近の「虚構推理」などで分かりやすいのは、「アニメという媒体はミステリと絶望的に相性が悪い」という事実。ミステリが最も重視するロジックを解きほぐそうとすると、アニメはほぼ機能を停止する。どれだけ画面を小手先で弄ろうとも、ただ事実を事実として伝えることが最善である「解決」に関しては、アニメがどれだけ頑張っても文字媒体での「解り」やすさには敵わない。きちんとミステリの魅力を伝えようと原作に真摯であればあるほどに、アニメとしての魅力を発揮するのが難しくなっていくのである。

 ぶっちゃけ、今作もその悩みからは抜け出せていない。1つ目の吸血鬼の事件での「ひたすら証拠集め」「淡々とロジックで限定」のくだりなどどうしたって退屈に見えてしまうし、最後の人狼の事件、構造はえげつないくらいにアクロバティックなことをやっており、執拗な舞台設定と綱渡りのような解法とその披露は、おそらく原作ではさぞ気持ちの良いパートなのだろうと想像できる。しかし、アニメで鴉夜が淡々と解説しているパートはあまりにもスピードが早すぎて、驚愕の事実があれよあれよと降り注ぐテンポは(少なくとも私には)受け止めきれず、その味わいの大半が耳の外を流れ落ちてしまうような印象があった。何度でも自由意志で文字を読み返せる小説媒体だからこそ可能な密度(難度)は、アニメ化というメディアの転換に耐えられるものではない。

 こればかりは作品がどうこうとか、スタッフがどうこういう問題ではないので現時点で解決策は完成していない。ただ、そうした難点を認めつつ、おそらく今作のスタッフはそんな当たり前のことは重々理解しており、できる範囲でなんとか脱却しようと最善を尽くしてくれていることが伝わってくるのである。前人未到の高いハードルも、稀代のエンタメ作家・畠山守の手に渡ればいくらか光明が差した感がある。幸いにして、本作はミステリとしての強度はガチガチに固いのだが、それに加えてちゃんと「キャラもの」「ゲテモノ」としての側面にも魅力があり、アニメでは「珍獣大集合の化け物ミステリ」という側面を強めに打ち出し、とにかく画面での楽しさを提供しようとしている。こればかりは本当に感覚的なものでしかないのだが、この「つまらない画面になりがちなパート」をどこまで装飾で誤魔化すかというのは脚本との連携、そして画面構成のセンスのバランスがものをいう部分で、ちょっとでも画面に「気持ちいいな」と思える要素が混ざり込めば「退屈さ」は大きく低減できる。やはり畠山さんはその辺りが上手い。

 個人的に注目したいのは画面の色彩の使い方で、どの事件も基本的に解決に関わるシーンに夜が多いせいで無闇に暗くなってしまうはずなのだが、そこは虚仮脅しも含め、何かしらの賑やかさを感じさせる画面を意識的に作り上げている。最終章ならカーミラ戦あたりが分かりやすいだろうか。「ゾン100」における極彩色の血の描写につながるものでもあるが、とにかく「使える色」を積極的に見せることで、じっとりと地味なシーンとの対比も狙ってメリハリを作っている。普段の描写から「闇と光」の演出に常に気を配っているからこそ、「ケ」のシーンと「ハレ」のシーンの差別化ができているとでも言おうか。本来原作にはなかったであろうアニメ独自の盛り上がりを生み出すことに成功しているように思えたのだ。

 この方向性がミステリアニメにおけるベストアンサーなのかどうかはよく分からない。そもそも畠山さんらの演出力だよりな部分が多いし、難しい画面を全力で成立させにいったラパントラックの組織力による部分もあるだろう(こちらの作品も回を増すごとに作監の数がとんでもないことになっていく)。しかし、こうして常に「アニメでどうしたらいいか」を考えてくれるクリエイターがいれば、この先にまだまだ明るい可能性が見える気がするのである。

 ちなみに毎度の蛇足で中の人に触れておくが、中の人もやたら豪華な作品だったね。MVPは当然ともよ……といつもの私なら書いてるところだが、今作については津軽役・八代拓がベストだったと思っている。津軽ってめちゃくちゃ難しい役だったと思うのよね。「鬼」の側面、「噺家」の側面、そして「主人公」の側面。相反するイメージの連携を成立させて魅力を発揮させた彼の仕事がなかったら、この無茶苦茶世界がぶっ壊れてた可能性もある。いいキャラになったなぁ。

 

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