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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 さとわちゃんのおっぱい、第10話。高まって高まったところでの温泉回、ベストな配置だと思います。来栖もかなりのもんだとお見受けしたが、それでもさとわちゃんに勝てないという。風呂場で互いの胸を確認する女子はネッシーと同じ架空の存在である、なんて話を聞いたことがありますが、ネッシーと同じで、いると信じていた方が幸せなこともあるのです。

 さておき、そんなおっぱいが緩衝材になっているが一応厳しいお話である。部活ものには必ず付いて回る、「どうしたって下手なやつはいるけど」問題。これが北宇治高校吹奏楽部なら単に容赦無くBチームに回されるだけなのだが、残念ながら箏曲部にはそんな人員的余裕はない。人数が明確に決まっているわけでもないのかもしれないが、それでも全員で手を取り合って、前へ進むのが美しい姿であり、部活漫画の王道なのだ。北宇治のあの容赦なさすぎる態度がちょっと特殊なだけなのだ。

 こうして実力に差をつけられる役割を任されたのは、三馬鹿の1人、水原光太君。今までは「三馬鹿」として一絡げで呼んでいたせいでぶっちゃけ名前もろくに覚えてなかったしキャラの差すら認識してなかった面々だが、今回ついに箏曲部全体の実力を測る段になり、個人としての性能が浮き彫りになった。多分一番まともにできているのが黒髪の実康。もともと気にしぃな性格っぽいが、三馬鹿の中ではおそらくまとめ役。今回も光太の失踪を受けて「自分がもっとフォローできていたら」としょんぼり顔。チカの周りに集まる人間って、基本的に素直でいいやつばっかり。そして残り1人は体型のおかげで前からそこそこキャラが立っていたデブ、堺。彼は箏を爪弾くタッチで悩んでいたようだが、合宿でブレイクスルーしたことで光太にさらに負い目を与えてしまうことになった。

 とはいえ、こうして集団で同じことをするのだから実力に差があるのは至極当然のこと。めげてしまうのも当たり前だし、なんとか乗り越えなきゃいけないのも社会の摂理。ここでくじけて逃げ出すわけじゃなく、ちゃんと「できないなりに戦う」という姿勢が取れるあたり、やっぱり三馬鹿はバカだけど偉いんだ。結成時がゴタゴタしていただけで、今となっては箏曲部の部員って、モチベーションも高いし割といいメンツだよね。来栖も過去の自分の所業を思い出してなのか、人間関係の破綻を見るだけでわんわん泣きそうになるし。女子部員の立ち位置として、さとわちゃんとの二面体制は実はすごくいい位置どりなのかも。いつの間にか教える側に回ってるあたりも如才無いよなぁ。

 そして、今回一番変化が見られたのは、なんと顧問である。以前から「こいつ、悪いやつ? 良いやつ?」と悩ましい態度を取っていたわけだが、覚醒した武蔵を前にして多少姿勢を変化させ、「真面目に全国を目指す部活」の顧問らしい行動を取り始めた。どうやら彼にも彼なりの過去があるようだ。お飾りではなく、実際に指導も可能な人材のようなのだが……さて、一体どんな人物なのだろうか。流石に箏の業界人だったらさとわちゃんが知ってる気がするので、何か他の楽器をやってたとかいうパターンかしら。実は顧問が滝昇、っていうのが部員覚醒のためには一番手っ取り早いルートだが……(そしてジャンプ漫画だと割とありそう)。

 そうそう、そういえばチカもなんか覚醒し始めてるんだった。やはりじいちゃんの寵愛を受けて育った箏の申し子。なんとさとわちゃんの演奏を「見取った」だけで実力が一気に上がるというチート臭い性能を披露。まぁ、これまで頑張ってきたんだし、主人公なんだから多少はね? これですぐに武蔵を追い抜いたら部長の面子が保てなくなりそうだけど、多分この二人だとあんまりそういうこと気にしなくて良さそうだよな。

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 来栖までここまでデレるの?! 第9話。なんやねん、最終的に出てくる女性キャラが全部可愛いアニメやないか。いいなぁ高校生の部活!!

 武蔵修行回。分かりきっていたことではあるが、やっぱり今回出向いた高校は武蔵が受験でも失敗したところだった。お勉強でも挫折し、さらに箏曲部の演奏でも実力の差を叩きつけられ。去年の大会ですでに味わっていたはずの屈辱だが、それでも半端に夢を抱いてしまったからこそ、改めてその現実が重くのしかかる。さとわちゃんですら戦慄していたのだから、半端に理解できてしまう武蔵レベルの人間が正面からその音を叩きつけられて、無事で済むわけもないのである。無念の武蔵はぶっ壊れ、ダウナーモードでチカもイライラ。

 このまま「現実と理想の差」を見せつけられた状態を解決できるような人間はいないはずだった。もっともそうした状況を打破してくれそうなチカが、意外にも「武蔵との人間関係」というハードルにつまづいてしまってなんだか調子が狂っている様子。三馬鹿は当然そんな状況をどうにかできる素養もないだろうし、なまじ実力があるからこそ、さとわちゃんもこの状況にかけるべき言葉が見当たらない。武蔵のみっともないスランプはそのまま泥沼化するかと思われた。

 しかし、意外にもその解決に寄与したのは2人の人物。まずは顧問。あいつ、本当に適当なだけかと思ったら、意外と教え子のことは冷静に観察しているようで、武蔵に対して「客観的に自分がどうなっているのかを教える」と言う役割を果たした。先生自身がどんなつもりで武蔵にあんなことを言ったのかは定かでないが、やはり教師たるもの、途方に暮れる学生を見て無視するわけにもいかないということだろうか。

 そして、なんとか動かなきゃいけないと抗う武蔵の背中を押した人物が来栖だったのである。もともと人間関係の機微を分析して対処するスキルに長けた女である。これまではそれが「悪い方にこじれさせる」という悪魔の能力として機能していたわけだが、生まれ変わったデレモードの来栖はまっすぐに武蔵のスランプを打破する方向性で人間関係を解きほぐす。文句なしで今回のベストアクターである。意外と頼りになる人間が揃ってきたよな、この部活。

 まぁ、何をどう言ったところで実力差は埋まりっこないのだろうが、それでも頑張ってみたいという気持ちに火がついたのは大きな前進だ。どこかでみたことがある構図だと思ったけど、最近だったら「風が強く吹いている」と同じ「最弱からの克己」のお話なんだな。アオタケの面々は少しずつ個性を活かしたトレーニングで全国レベルまで成長したが、さて、こちらはどうなるものやら。

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 今期ベストヒロインやんけ、第8話。憑き物が落ちたさとわちゃん、どんどん可愛くなっててほんとにずるい。まっすぐにツンデレでまっすぐな才能に恵まれてる女の子、どこを取っても最強。

 何が恐ろしいって、そんなさとわちゃんを中心に、今回一気に女の子が増えて賑やかになったところである。来栖のやつはこれまでの言動が気に入らないからあんまり馴染んで欲しくないなぁ、と思ってたんだが、なんとわずか1話で過去の罪状にきっちりけじめをつけてくるという予想外のムーブを見せた。いや、確かに本人も言う通りにそんなんで許されるような話でもなかったはずだが、それをやられたら面と向かって文句も言えなくなっちゃうじゃん。もともと繊細な感受性を持ち合わせていた子のようだし、真正面から受け止める相手さえいてくれれば部員としては良い人員だったのかも。そして、単に素行を改めるだけなら理解もできるのだが……なんか、やたらとさとわちゃんと距離が近い……。いや、そりゃお世話になったしね。野郎だらけの部室の中で唯一の同性に近づくのは自然なんだけどね。さとわちゃんが天然ジゴロに見えてくるのが怖いんだよね。

 かてて加えて、そんなさとわちゃん目当てで現れたよその学校の典型的なお嬢様。彼女もさとわちゃんの才能に人生を狂わされた1人であり、あからさまに百合百合しいムーブでお姉様を攻め立てる。しっかりと癇に障るところを突いてくる佐倉さんボイスやくしゃっとすぐに崩れる顔のデザインなんかもいい塩梅で、今後目標になるであろう「強豪校」のトップとも思えないフランクな扱いのキャラである。ちなみに隣にいるお付きの子は高坂麗奈さん(CVが)。なんか、やっぱりこの空間にはどっちかって言うと吹奏楽の才能が集まってきている気がする……(三馬鹿の中にトロンボーンがうまそうな奴もいる)。

 まぁ冗談はさておき、そんなさとわちゃんを中心にしているおかげで部の雰囲気も良くなる一方。チカがイケメンスタイルを維持しながらも箏に関しては恐ろしいまでにストイックなのはこれまででわかっていたことだが、そんなチカやさとわの熱心さに感化され、他の部員連中も今や箏を弾くのが楽しくてしょうがないようだ。自宅で練習しているというチカに対して「羨ましい」という反応が帰ってくるなんて、数ヶ月前には想像もできなかったことである。自分たちの目標を持ち、積極的に練習ができるようになった箏曲部。このまま行けば本当にすっきりとしたさわやか青春部活ものになってもおかしくない。

 ただ、やはりトラブルのタネはなくならないわけでして。次の問題発生ポイントは部長の武蔵ってことになるんだろうか。彼が昨年の大会でどんな経験をしたかはおよそ想像できるが、どうやらそんなわかりやすいトラウマに加えて、何かもう1つ面倒臭い爆弾も抱えているようである。ここまで必死に引っ張ってきた部長がここでつまづくのは、何だかいたたまれない。まぁ、彼がつまづいたところで、残りの部員がどうにでもしてくれるっていう安心感はあるんだけどね。

 

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 まーた種﨑敦美(演じるキャラ)の才能が他人の人生を狂わせとる、第7話。なんでこんなにも魔性の才能を持ってることが多いんでしょうかね。スレイベガの呪いじゃあるまいか。

 1話でわかる、鳳月さとわができるまで。これまでのお話だけでも色々と面倒な要素は垣間見えていたわけだが、ようやく家庭事情まで踏み込んだ真相が語られることになった。どこをどう拾っても胸糞悪い話で、今作の場合はチカの家庭についても同様だったので、どうにも「家族愛」のお話には繋がりにくいようである。まぁ、落として上げることでわかりやすいカタルシスが得られるわけで、学校の部活内で「上げる」必要がある場合、どうしたって「落とす」のは家庭パートの役目になってしまう。チカの場合はじいちゃんがいい人だったという救いはあったが、今回のさとわのお話の場合、家庭内に一切救いがないのがやるせない。一応いい話風にまとまってはいるが、彼女が自宅に帰れば孤立無援の状態であることには変わりないわけだし、さとわが破門になったことで鳳月の家も衰退の一途をたどることになるだろう。もともとお母ちゃんだって優しくていい人だったはずなのに、社会の現状や心ない親戚の言葉で少しずつ精神を蝕まれ、あんな残念な姿になってしまったというのが本当にやるせない。さとわさんが真の意味で救われる時は訪れるのであろうか。

 こうして家族が抱える大きな問題ってのは普通なら余人が立入れるものではないはずなのだが、そこにズケズケと入り込むチカのデリカシーの無さがさとわにとって大きな救いとなっているのは良い構図である。チカは粗野ではあるが思いやりのある子として描かれており、押し入ったさとわ宅でのモーションは「ほれてまうやろ!」というわかりやすいイケメンムーヴ。これはもう、さとわさんも救われるしかないでしょうよ。最近は本当にコロコロと色々な表情を見せてくれるようになっているし、この2人については互いに傷ついた部分を支え合って良い関係を続けて欲しいものである。

 そして前回食い込んできたもう1つの胸糞要素だった来栖。今作は「悪人はシンプルに悪人」なので来栖もそっちサイドのキャラなのかと思ったが、あれだけクソみたいなことやってた割には「実は本人も昔傷ついてた時代があったんや」という免罪符からの救済展開へと移行。「そんなんで許されるのも釈然としねぇなぁ」とも思うが、そんな彼女でも救いの手を差し伸べられるのが部長の人格ってことなのだろう。考えてみりゃ武蔵がこうして露骨に感情をむき出しにしたのって序盤のチカとの関わり以来であり、彼が他人に対して常に一定以上の思いやりと誠意を持っていることが確認できる。来栖の趣味が最低だったのは間違い無いのだが、相手が悪かったというか、相手がよかったというか。無事に今回は2人の女の子が救済される話でしたとさ。

 これで来週以降は来栖もなに食わぬ顔で部活に参加してんのかな。まぁ、少しでも画面が華やかになるならそれも悪くない。

 

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 箏、ええなぁ、第4話。普段聴くことがないような文化に触れられるってのはこういう「変な部活アニメ」の良いところですわね。

 今期は今ひとつ響くアニメがない中、堅実に作品が形作られているのが分かるこちらの作品。本当に「部活もの」のテンプレ以外の何物でもないのだが、1つ1つのパーツが丁寧に進行しているため、少しずつ愛着が湧いてくるという良い作品作りである。作画部分もドラマパートも悪くないのだが、何よりも「箏」という独自の武器がきっちり見せ場として機能しているのが良い。前回「龍星群」の音源がわずかながらも初披露されたわけだが、今回は改めてそれを箏曲部の面々で弾いたバージョンにつながっていく。重量感のある箏の音色が、単体でどのような破壊力を持つのか、そして合奏しようとした時に、古典楽器であるがゆえにどんな難しさを孕んでいるのか。そうした部分の説得力が「音の力」によってなされているのは非常に好感が持てる部分。

 あとはまぁ、いよいよメインヒロインもデレてきたな、と。さとわさん、登場時からキャラのわかりやすい美人さんだったのでヒロイン力はそこそこ高かったんですが、今回ついに弱みを見せ、部員と馴染んでポンコツ成分も披露できるようになったので、ようやくエンジンがかかってきた感がある。「楽器演奏が超絶うまい種﨑敦美キャラ」というだけで私のガードを突き抜けてくる要素にはなっているんですが、あちら(どちら?)とはまた違った方向からの打撃力がたかそうなので今後の伸びに期待したい。

 

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 爽やかに、そしてちょっと切なく、大団円だよ、最終話。これが見たかった。ここまで見られた、それだけでありがとう。

 最終10区の戦いを描いたラストシーン。もう、残されたものはほとんどないのだ。ただ見たいものだけを見せてくれる「仕上げの一歩」としての最終回。もちろん、ハイジの走りにつながったのはカケルという大きな存在があってこそ。彼の走りに光を見たハイジが立ち上がったからこそ、寛政大はここまでたどり着くことができたのだから。結果としても藤岡を打ち破る大金星を勝ち取り、カケルはこれ以上ない結果を残した。未来を象徴し、来年以降のメンバーを支えていく、それがカケルなのだ。

 そして、そんなカケルの姿を眩しそうに見ていたハイジの最後の走り。彼の「最後」にはいくつかの意味がある。今年の駅伝はこれで終わり。第10区の走者なのだから当たり前だが、彼の走りで幕を閉じるのは4年生の面々全員でもある。シード権が取れても取れなくても、来年はいないメンバーにとって、ハイジのラストランは人生最後の「駅伝」の締めくくりだった。そして東体大にとっても、彼の走りは終わりを告げる存在となった。誰も不誠実な者などいない。参加者全員がそれぞれに全力でぶつかったのだ。それでも勝負事には結果が付いて回る。何もかもをなげうった覚悟の勝利、ハイジはシード権を勝ち取り、東体大は敗れた。数字に残るその結果は、それぞれにどんな意味をもたらしたのだろうか。

 そして、ゴール間際で訪れた、彼の「最後」。その意味に気がついたのは、この時点では本人とカケルだけ。これまでのつながりがあればこそ、カケルにはハイジの表情の意味も全てがわかった。あまりにも無情なその「音」の意味、あまりにも容赦ないその表情の訳を。それでも、ハイジの顔には一切の後悔はない。ここまでチームを引っ張り、約束通りの景色を皆に届けた。ハイジの走りは、ここでついに完成を見たのである。なんの後悔があるものか。

 それぞれにつないだたすきは、次の年へと続いていく。それぞれの人生が、そしてそれぞれの駅伝が続いていく。まだまだ若い彼らにはたくさんの困難が待っていることだろう。それでも、たすきをつないだ仲間の存在があり、たすきをつないだ自分の力がある。どんなに風が強くても、そこに向かって突き抜ける信念に、偽りはないのだ。走ることの、意味があるのだ。

 

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 風が、吹いているなぁ、第22話。そういえばここまでタイトルのことを考える機会ってあんまりなかったな。本当はもっと色々と意味があったんだろうけど、今回はダイレクトにカケルに、風。追い風向かい風、色々あるよ。

 Aパートはキングのターン。ここまで、ぶっちゃけメンバーの中でも一番影が薄く、キャラも捉えどころがなかったキング。しかし、ここにきて自らの内面と対話する段にいたり、彼が何故こんなにも地味で、わかりにくく、そして寂しかったのかが浮かび上がる。「大学四年間」と言っても人それぞれ、色々な過ごし方があるだろう。それこそ本当に充実した「学生」だった人もいるだろうし、ああすればよかったと後悔する人間もいる。思えば長い人生のたった4年間、大した長さでも無いのだが、それでも高校生までの型にはまった生活から脱却した初めての「社会」は、色々なことを教えてくれるし、色々なことで悩みもする。

 正直、キングの懊悩はなんだかわかる気がする。「大学生活にはきっと何か特別なものがあるはずだ」という漠然とした期待は、おそらく社会が作り上げた幻想。そこになんの根拠もないし、待っていて降ってくるキャンパスライフなんてものは高が知れている。それに気づいた時には手遅れなんてパターンも多く、キングはそれを理解した時には、すでにすっかり自分の殻が出来上がってしまっていた。別に目に見えて引きこもってたわけじゃない。人並みの付き合い、人並みの単位、人並みの就職活動。与えられたレールには従ったはず。しかし、そんな生活は自分が望んでやっていたわけじゃない。でも、それを他人にバカにされるのも腹が立つ。どうしようもないプライドと、どうしようもない焦燥感。そんなものに挟まれた日常に、背中はどうしても丸まってしまう。

 キングとハイジの関係性もなんだか妙なもんだ。キングの「俺は一番の親友じゃないだろう」というなんとも物寂しい独白は、自分から何かを成そうとしない者特有の諦め。知り合いはいる、友達もいる。でも特別な親友はいない。そんな現実を気にしてないそぶりをすることで、ますます視界は狭くなっていく。ただ一心に一つの目標に向かっていけるハイジなんて、キングからしたら最も羨ましく、最も忌むべきものだったのだろう。それでも、今となってはそのハイジの差し伸べてくれた手が、どれだけかけがえのないものなのかがわかる。最初に出会った時にはそっと触れることしかできなかったその手は、今や自分を「あるべき場所」に引き上げてくれる。きっと今なら、グッとその手を握り返すことができるに違いない。「走ることで自分と向き合う」なんて言葉はなんとも陳腐だが、キングの場合、ハイジに映る自分をみて、ようやくそこに「本当」を見つけられたのだ。こうしてみると、「特別になりたい物語」ってのは、日常のそこかしこに潜んでいるものなのだろう。

 そうしてキングがつないだたすきが、いよいよカケルに渡る。もう、ここからは何もいらないだろう。キングの必死の激走からたすきが渡った時の、明らかに「次元が変わった」ことがわかる疾風のような走り。それをみた王子は素直に「嫌になりますね」といつも通りの憎まれ口。それくらいに、カケルの走りはここにきて研ぎ澄まされた。前を走る藤岡がライバルとして機能しているからか。否、前に見えているのは自分の背中。過去に走ってきたどの自分よりも、今のカケルは速く走れる。そこには自分がいて、仲間がいて。努力では埋められない才能というものがあるなら、それは「努力した才能」だけなのだ。

 風が、強く吹いている。

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 それぞれの戦い、第21話。節目を迎える大学4年生、人生は泣いても笑っても、変化を続けていくのだ。今回のメインはユキとニコチャン。チームでも年長の2人のここまで道行きは、随分対照的なものだった。

 ユキは走るのが嫌いな男だった。王子と違って産まれながらの能力には恵まれ、その理知的な洞察力でもって、おそらくこれまで文武に渡りやろうと思ったことはそつなくこなせるタイプだったのだろう。自分は強い、自分は優れているということをこれまでの人生でしっかりと認識し、それをフル活用しながら生きてきたはずだ。しかし人生はそれだけで全てうまく行くわけでもなく、決して嫌いではなかったはずの家族との軋轢により、彼の大学生活は決して望んだ形ばかりではない。親元を離れて転がり込んだアオタケで、そこそこ理想的に、そこそこ自堕落に、なんだか淀んだ中での4年間だったのではなかろうか。

 そこに風穴をあけたのがハイジやニコチャンだった。必死の抵抗も虚しく少しずつ走ることを強制されていった日々。自分と同じようにそつなく賢い人生を送っていると思っていたニコチャンが少しずつ走ることに取り込まれていく中、結局走るのが楽しいなんてことは特に感じず、気づけばハイジに大役を任されこんな位置に。「そこそこできる自分」の姿に満足はしていたが、それでも前日の神童の姿を見せられれば、自分はやはり無力で、弱い存在なのだという事実を叩きつけられたかのよう。負けのない自分の人生に、そこで終わるという選択しかないのはどこか癪だったのではないだろうか。やるからにはちゃんと周りを黙らせる結果を出す。自分の強さを見せてやる、そんな走りが、ユキのモチベーションになったはずだ。そしてくだりの6区。予想以上のスピードと、それをコントロールしきる胆力を併せ持ったユキはやはり強かった。その強さは存分に周りにも知らしめることができたし、チームの順位を大きく上げて貢献。文句のない結果だ。しかし、ユキが見ていたのは全く別な景色。カケルが試合で見ているであろう「美しい世界」。どこまでいっても自分には届かない、最高速度の世界。負けを認め、卒業を認め、ユキは改めて、次のステップへと進むことができる。きっと、今回の経験で垣間見えた「美しい世界」を探しながらの人生になるのだろう。

 たすきを受けたニコチャンは、走るのが好きな男だった。高校時代まではそれなりに走れていたはずだが、成長期を超え、自分の体格というどうしようもない要素によって走る道を絶たれてしまった遣る瀬無い過去。他の道を探すなり、長距離にしがみつくなり、覚悟を決めた生き方はいくつもあるだろうが、ほとんどの人間は、やっぱりそこまで強くはないのだ。別にいいやと匙を投げ、妥協した人生の象徴たるタバコをくわえる日々。別にそれでも、大学生活は問題なく続いていく。

 しかし、やはりそこに現れたのはハイジだった。自分は弱いと目を伏せるハイジだったが、故障を乗り越え、逆境の中でも湧き上がる闘志を抑えられない彼の姿を見て、ニコチャンは過去の弱い自分を見せつけられるような気持ちになったのだろう。根底にある「好き」は変わらない。だからこそハイジに感化され、少しずつ走り始めることになったのだ。できることには限界もある。それでも、好きならば続けていけることもある。そんな自分の気持ちがハイジの役に立ったのだから、この1年間は決して無駄ではなかった。

 ニコチャンも、これを最後に走ることをやめようという気持ちはユキと一緒だ。今の自分の実力では続けていく意味は薄いこともわかっている。人生の節目で一つの理想を成し遂げたことで、ニコチャンは思い残すことなく、次の夢へと渡っていくことができるのだろう。彼にとっての「美しい世界」は、思い出の中でも色褪せないものになったはずだ。

 2人の男が結果を出した。残されたのは8、9、10区だけだ。そしてこの8区には、まだキングという曲者が残っていたりするのだ。彼のドラマはどんなものになるのか、と思ったら……なんとまぁ、同区の走者にあの榊がいようとは……。キングはキングで、苦しい戦いになりそうだなぁ……。そしてカケルの前に立ちはだかる藤岡。こちらもバチバチの頂上決戦が見られるだろう。待った無しのクライマックスだ。

 

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 言葉もない、第20話。ひたすらに涙、涙のお話である。こうして示される強さ、そして走るということ。もう、この1話だけでも作品の全てが詰まっていると言っても過言ではないだろう。

 神童の力走に対する残りのメンバーの姿勢が、それぞれの思いを表している。個人的に一番強かったな、と思うのはユキである。おそらく一番辛かったのは彼だったろう。目の前にあんな様子の神童をずっと置いて、それでも黙って送り出さなければいけない状況。何度も何度も、神童の手を取って「やっぱりやめよう」と言いたい衝動に駆られたはずだ。ユキだけの判断だったならば、「何もそんな無茶までして走る必要なんてないだろう」と合理的に判断して止めていたかもしれない。しかし、残りの8人の顔がよぎればこそ、神童を止めることなどできなかった。そして何より、目の前の男が一番走りたいと願い、その強い想いを邪魔することなどできないことを理解していたのだ。神童の強さの裏に隠れた、ユキの強さにも賞賛を送りたい。もちろん、朝の段階で神童のことがわかっていたメンバーは全員が同じ気持ちを抱えていたであろうことも。一番仲のいいムサなんて本当に大変だっただろうに。

 そしてこのタイミングで明かされるハイジの胸中。まぁ、今となっては始まりがなんだったかなんて些細な問題だ。すでに全員が走り始めた後であり、そのことを後悔している者など誰もいない。あとは、結果を出すだけだ。

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関西在住の、アニメを見ることを生業にしてるニート。必死で好きな声優を12人まで絞ったら以下のようになった。
大原さやか 桑島法子
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