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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 ○「狼と香辛料Ⅱ」 6→7

 シリーズ1期で私のラノベ観を良い意味で裏切ってくれたこの作品。今回も、非常に安定した完成度でもって、その評価を維持してくれた。近年のアニメの流れ、ラノベ原作の流れをみるにつけ、こういう方向性での特徴付けが成功している作品というのは、非常に希有な存在である。

 実を言うと原作はまだ1巻しか読んでいないので何とも言えないのだが、この作品がうまく言っている理由の1つは、まず原作にあると思われる。ロレンスとホロの二人旅というベースを敷き、その中で商取引という「スパイス」を加えながら、恋愛、経済、文化などを描いていく。経済に関する側面については完全に素人なのでコメントは控えるが、あまりくどくなりすぎず、適度な説明を加え、それを小説的な面白さへ還元させる方向性は間違っていないと思う(これがベストなのかどうかは分からないが)。そして、そうした「商人目線」を同じ性質のままで2人(1人と1匹?)の恋愛観にスライドさせて描くのが、この作品の最大のセールスポイントだ。終始「攻防戦」の様相を持つ2人の掛け合いは、文字で読んでも台詞として聴いても充分面白いものであると思う。

 しかし、このアニメの場合、そうした原作におんぶにだっこというわけにはいかない。アニメは動かさなければ意味がないのだし、いくら会話劇として完成度が高くても、それをアニメに転換した時にいくらでもつまらなくなる可能性はある。

 この作品の打開の仕方は、非常に正々堂々としたものである。ちょうど同時期に放送されている「化物語」と対比してみると面白いが、あちらも会話劇の面白さを主眼に置いた小説原作作品であるが、あまりに会話の比重が重いために、画面作りの方はある意味「放棄」してしまっている。シャフトの新房だからこそ出来る裏技と言ってしまってもいいかもしれない。もし、この「狼と香辛料」をシャフトが作ったらどうなるかを想像してみるのも面白いだろう。

 そして、高橋丈夫監督はそんな奇策を用いずに、真っ向から物語の画作りに挑んでいる。宿屋での2人の会話は文化的背景を色濃く反映した薄暗い中のしっとりとした進行だし、馬車の上での無駄話も延々揺れる馬車を描くことでその全てを表す。ちょっとでも油断すれば、それはただのラジオドラマに堕してしまう危険性をはらんだ無謀な挑戦である。まっとうなだけに、逃げ道は用意されていないのだ。

 しかし、これが成立しているのだ。薄暗い宿も、のどかな田園の一本道も、賑やかな祭りの広場も、そこにあるべきものが明確に描かれ、そこであるべき会話を描くことが、この「狼と香辛料」の世界を描く最大の武器であった。もちろん、その世界の限りない「小ささ」を意識したコンテ演出は見事なもので、会話の緩急、感情の機微、関係性の調整などなど、内面的な要素をあくまで外面的な「日常」に切り出していく。この方向性で一本の作品として成立するためには、骨子のある原作と、それを十全に理解した演出家が必須である。この作品は、全てのスタッフに恵まれていた。

 最後はもちろんキャストの話。上述のような構成のおかげで、この作品は小清水亜美、福山潤コンビを褒める以外にはないのだが、こうして長い間2人の関係を聴いていると、不思議な安心感に苦笑いするしかない。「咲」とこれが終わったら一段落かなぁ。個人的にはあけのんボイスの魔女おねーさんにもうちょっと活躍してほしかったかな。

 何はともあれ、お疲れ様でした。3期も(あるなら)楽しみにしています。

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 商人が求めるべきものとは何かを問われる、原点回帰の最終話。「金だけが人生じゃない」といえば聞こえはいいが、それは金の価値を知らない人間の戯言。求め続けた先に、11人の持つ「価値観」の答えがある。

 暴動渦巻く北の町。エーブとロレンスはそれでも目の前に迫る巨万の富へと確実に歩を進める。前回までにロレンスが察知した「何か」について、ホロも当然うっすら感じ取ってはいた。しかし、それを隠すことにしていたロレンスの本音は、ホロの想像する以上にセンチメンタルなものであった。この商売は、成功しても別れ、失敗しても別れ。それならば、いっそ根底からひっくり返して無かったことにしてしまえないか。連れのそんな情けない思惑に、ホロは激高する。ロレンスも、だからこそ本心を伝えたくなかった。伝えてしまったことで、最後の道も閉ざされてしまった。

 商会にホロを受け渡し、ロレンスとエーブの最終決戦が始まる。「嘘はついていないが真実は何も語っていなかった」エーブと、その思惑を悟りながら、彼女の本心を見極めたいロレンス。この作品にしては珍しく切った張ったの攻防になり、エーブはすれ違う自分の「価値観」でロレンスを組み伏す。稼いで、儲けて、その先に何があるのか。商人の道に限界は見えず、教会への復讐にもリスクはついて回る。危ない橋を渡り続けるエーブの人生を、ロレンスは見透かしながらも問いかける。

 エーブの目に映るのは、自分を不幸にした者たちと同じ、商人としての果て無き探求。ロレンスに対しても、「それを求める以外にない」と断言し、最終的には「期待している」という言葉を残して力で金をもぎ取って消えたことになる。彼女の信念に正義があるのかどうかは問題ではなく、あくまで求めること自体に彼女の未来が見える。ロレンスの口を封じず、宿の念書を置いていったところに、彼女に残された懊悩が伺える。

 結局、ロレンスはそんな彼女の姿に反発を覚えながらも、1つの真実を得ることができた。「望んでも手に入らないものがあるが、望まなければ何も手に入らない」。どれだけ危険な目に遭おうとひたすらに自分の目指すものを求め続けるエーブの姿勢を見習い、ロレンスは今できる最大限でホロを求めた。賢狼には我慢ならないその選択も、狡猾な商人の手管で先回りされてしまってはどうしようもない。大馬鹿者の行商人と、それに「惚れるのが怖い」小さな神の旅路は、再びの出発を見たのである。

 エーブという「対立図式」を持ち込むことによって、ロレンスとホロの仲を掘り下げたエピソードの幕。前回の黄鉄鉱編でも一応の答えは出していたと思うのだが、今回の取引では、ロレンスが自分の大望とホロをはかりにかけることになった。こうして書いてみると非常に俗っぽい「金か女か」の選択なのだが、そこに「金を求めることに疑問を抱きつつも、ひたすら突き進む商人」であるエーブを対比させることで、1つのラブストーリーとしての結末をすっきりと見せることに成功している。

 某孤独なグルメサラリーマンばりのアームロックを見せたロレンスの武闘派っぷりは意外だったが、やはりこの作品の場合、そうした立ち回りより、後半のホロとの対峙の方が見どころである。この手のヒロインに叩かれるヘタレ主人公というのはよくある構図だろうが、まさか一撃目が平手でなくてナックルというのはなかなか見られない光景だ。尻尾を逆立て、渾身の一撃を見舞うホロは、本当に怒っていたのだろうし、本当に悲しかったのだろう。しかし、それ以上に、ロレンスの本気に応える必要があったからこその拳だったのだ。2人の関係はもはや金がどうこうとか、旅がどうこういうレベルではなくなっており、新たな旅の中では、2度と今回のような確執は起こらないに違いない。

 ラストシーンでは教会の鐘が高らかに鳴り響く中を、2人が手を取り合いながら商会から出てくるという非常に象徴的な「門出」の演出で幕を閉じている。金色の光に包まれた巨大な船も、2人の新たな「船出」を示す非常に明確なメッセージといえるだろう。

 毎週追いかけていく中で、「どうせ2人して揉めてるけど最後にはよりを戻して旅を続けるエンドだろ」というのは分かっている。それでも、2人の微妙な関係性にやきもきさせられながら引き込まれるのは、ひとえにその描写が真摯だからだ。今回も、ロレンスはこれまでのようにヘタレた考えこそもっているものの、序盤のホロへの告白、エーブとの対峙、そして迷い無いホロ救出の算段にホロとの直接対決と、1度たりとも迷ったり、困ったりしていない。彼は彼なりの成長を経て、今の関係性を見つけ出しているのである。ホロも、そんなロレンスの変化があるからこそ、完全に上に立つことが出来ずに、あんな愛らしい姿を見せてくれるのである。

 原作エピソードは多分12期を通して4本は消化された。しかし、原作はまだまだ残っているはずだ。このままのクオリティで、さらに続きが見られることを期待したい。

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○「グインサーガ」 5→4

 放送中に原作者が急逝するという不思議な縁が付いてしまった作品。未完の大長編が原作ということで完結させることが出来ないのは分かっていたのだが、そんな中での2クールにどういう結末を与えるのか、という部分が焦点となった。

 大筋を俯瞰すると、作品としてのクオリティは低くない。サテライトの製作で画面はきれいだったし、見せるべきアクションシーンや、監督自ら「最も気を遣う場面」と語ってた騎馬を含めた合戦シーンなどは、最新技術とのかみ合わせも良く、非常に手堅い印象だ。いかにもファンタジックな筋立てと、非常にリアルで生臭い印象の政戦の切り替えなども、特に違和感を感じることなく1つの筋立てとして描かれている。おそらく「原作に忠実なアニメ」として見るならば、それなりの評価を受けてしかるべきものなのではなかろうか。

 しかし、最終的に2クールという短い尺のアニメ作品である、という評価軸も忘れてはならない。最も勿体ないと思ったのは、鬼神のごとき強さを誇るグインのヒロイック・ファンタジーとしての側面が非常に薄かった部分。ノスフェラス編での大立ち回りは見応えがあったが、その後は、どちらかというと「アルドナリス・サーガ」とか「アムネリス・サーガ」というタイトルの方がふさわしいような美男美女の物語になってしまい、グイン一行の影が完全に薄れてしまった。別にどこに焦点を当てた物語でも面白ければいいのだが、作中でちょいちょいリンダとレムス、そしてイシュトバーンの近況などが挟まれるため、どうしてもグイン一行が物語の中心である、という意識が抜けなかった。悲劇のヒロインアムネリスが個人的には一番のお気に入りなのだが、彼女もグイン一行の視点から見れば完全に戦敵であり、憎むべき対象だ。戦争に正義は無いとはいうものの、出来れば肩入れする視点というものをはっきりしてもらわないことには、のめり込んで見るのも難しい。

 最終的にはレムスが王位につくところで物語は一時閉幕となる。尺の長さを考えればベストのまとめ方だとは思うのだが、パロの双子の前に立ちこめる暗雲や、イシュトヴァーンとグインの関係、そしてなんと言ってもアムネリスの女細腕奮闘記など、まだまだ気になる要素はてんこ盛り。改めて、きちんとした続きを見せて欲しいものである。

 今作は実に贅沢なキャストの使い方をしているのだが、個人的にたまらんかったのはアムネリス殿下の中の人だろうか。渡辺明乃はあまり女性らしい役をやる機会がないのだが、今回は男勝りの戦姫のポジションから、転げに転げてナリスに籠絡されるまでを描かれるので、すっかり乙女な側面ばかりが目立つようになった。なかなかレアな声が聞こえてきて面白かったです。「コードギアス」でヴィレッタを演じていた時には「扇だけはない」と断言していた明乃だが、今作のナリスはアリなのだろうか。そしてシリアスは久しぶりだと語っていた堀内賢雄。やっぱりすごい人なのは間違いない。でも、男性キャラのトップはやっぱりアストリアスだな。誰がどこから見てもヘタレの中のヘタレ。まこっつラブ。

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○「Phantom Requiem for the Phantom」 6→6

 非常に親切かつ分かりやすい、真下作品とは思えないぐらい素直なシナリオのラブストーリー……だったはずなのだが……どうしたらいい? 私は何をどう判断したらいい? まさかのラスト数分。世界は思い切りぶん投げられてしまった。

 個人的には「.hack/Roots」以来となった真下作品。相変わらずの真下演出も健在だったが、今回は原作ゲームありきのシナリオを丁寧に守ってくれたためか、きちんとメリハリの付いたストーリーラインで真下さんの持ち味である余韻と音響による世界観を充分に堪能することが出来た。エレン、キャルといったヒロイン勢も魅力的だったし、何より「撃つこと」の意味がきちんと最後まで与えられ、単なる雰囲気ガンアクションに終わらないのが良かった。「NOIR」にしろ「MADRAX」にしろ、毎週確実に人が死んでいくのでちょっと気を抜くと「人が殺されること」がどんどん記号的に意味をそがれていってしまうのだが、3人の殺し屋の精神性を描いていく物語の中で、きちんと「殺すこと」「殺されること」の意味が強調され、さらに回を重ねるごとに変質していくために、捻りの少ないベタなストーリーラインでも毎週楽しむことが出来た。特にラストのサイスマスターの語りは象徴的で、同じ冷徹な「殺すこと」でも、アインの中ではきちんとその意味が変質して、自分のために人を撃つことが出来るようになったことが明確に示されている。このあたりをきちんと時間を割いて描いてくれたのはあまり真下監督っぽくはないのだが、サイスマスターの複雑怪奇な人となりを説明するのにはベターな選択だったと言えるだろう。

 この手の作品では女性キャラの存在感に押されて空気になりがちな怜二も、最後まできちんと人間として、そしてファントムとして機能することが出来たのも見るべき点。人からファントムへ、ファントムからかりそめの人へ。そして最終話では再びのファントムへ。殺すことに悩み、殺されることすら望んだ男の真心の物語も、充分説得力のあるラインに仕上がっていたのではなかろうか。このあたりの地味ながらも含蓄に富んだ画面作りは、やはり真下監督ならではといった貫禄がある。

 で、最終話だ。……どうしよう。「そうしたかった意味」は分からないではない。「ファントムであったこと」の結末として、あのエンディングを持ってきたいという制作陣の気持ちも分からないではない。エレン1人を残し、エレンにだけ「気付かせず」に終わし、その後に残された本物の「惨劇」をイメージの中だけにとどめることで、さらに悲壮さを強調するという演出意図もあるだろう。だが、やはり2クールに渡って2人の来し方を見守ってきた視聴者にとって、あのエンディングは苦しい。最後の最後で、真下耕一は視聴者にこれまで通りの「課題」を突きつけた。「あとはお前らが考えなければいけない」と。うーむ。本当にこの人の作品作りは疲れる。

 でもまぁ、それでも好きなものは好きです。次回作にも期待しています。

 最後は当然キャストの話。今作は皆勤賞の久川綾が割と早めに退場し、メインヒロインである高垣彩陽と沢城の共演が実に素晴らしい。エレンの内に秘めた難解な人間性がきちんと表示されていたのは、ミュージックレインきっての実力はである彩陽の面目躍如であるし、「この数年で何が起こってしまったんだ」でお馴染みのキャルを演じた沢城は言わずもがな。キャルを代表するツールである時計を見ると(聴くと)、どうしても「NOIR」を思い出すのは致し方ないところだ。やっぱり真下さんは音の使い方がうまいんだよな。

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 全ての始まりとなった、因縁の対決が幕を開けた第11話。これが見たいがために続いてきた物語。全ての努力が、ここに結集する。

 とはいえ、序盤はまず、野球をすること自体がなかなかうまくいかない。手に血豆を作るほどに努力をしてきた小梅だったが、その隠れた努力は、今のところ親には伝わっていなかったらしい。視聴者の大半は思ったろうが、こないだの騒動(9話)のあと、親父さんの誤解は解けてなかったのかよ。高原との関係性を否定するだけじゃ親父さんは納得しない気がするんだけどなぁ。とにかく寝耳に水の親父さんは、勘当を言い渡して娘を突き放した。ただ、あの様子だとラストの球場に応援にくるフラグは立ちまくってる気がするけど。

 そして、さらに問題だったのは小笠原家。こちらは娘を軟禁状態にしてしまうという強硬手段に出たわけだが、晶子大好きな運転手松坂さんの努力のおかげで、見知らぬ民家の塀に大穴を開けつつも何とか突破。「この時代から、やっぱり持病と言えば癪なんだなぁ」とか、「柔道有段者の書生はやっぱり九州男児なんだなぁ」とか、ベタベタっぷりに苦笑いしか出てこない。ストーリーに余計な引っかかりを残す必要はないので、このあたりはシンプルイズベストですかね。シーツをつなげて窓から逃走を図るのもお約束中のお約束だなぁ。晶子の部屋は暖炉もあったので煙突ってのもありだとは思うけど。

 そしていよいよ試合が始まる。「スタミナに不安を残したエースピッチャーが試合前に肩も作らず、息を切らせて球場に駆け込んできて大丈夫なのか」とかは気になるけど(前日は夜中にタオルピッチングしてたけど)、細かい演出から、彼女たちの準備が万端であることが伺える。個人的に一番感じ入ったのは、胡蝶が試合前に風向きを確認していたカット。基本基本。さらに乃枝の入れ知恵で審判を味方に付けたり、相手がなめてかかっているところにつけいったりと、出来ることは最大限にやっている。前回試合をしたときに達成できなかった「3つ目のアウト」がとれただけでも、その成長は感じ取ることが出来るだろう。そして初回の3得点。足で稼げる胡蝶はまだしも、雪やタマまで出塁出来たのは出来すぎの感すらある。ただ、あまりにうまく行きすぎてしまったおかげで、朝香中が覚醒するのも早い。「魔球」の存在を見抜かれ、一巡回ったがために配球のパターンだって今まで通りにはいかない。強豪相手に「なめられている」ことを逆手に取ったリードの展開。「おお振り」でいうと桐青戦みたいな展開か。「おお振り」の三橋はストレートを中盤まで封印していたので戦えたが、今のところ晶子に秘策はない。手持ちをほとんど見せてしまった櫻花會には、残りの5回は苦しい展開になりそうだ。

 1つ気になるのは、結局晶子の投げている「魔球」とは何なのかという部分。朝香中のメンバーによると「手元でちょっと沈む」らしいが、モーションからしてカーブのような捻りではない気がする。変化量の少ないスライダーの亜種か、ひょっとしたらサイドスローからのシンカーか。みんなしてサード方向に引っかけてたし、案外シンカーなのかもしれない。だとしたらすげぇな。 

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 「絶望」と「極限」がしのぎを削る第12話。ウーア、ファクトリーといった過去の遺物を1つずつ踏み台にし、最後にアルファルドが目指すのはやはり自分の名前を奪った者、カナン。シャムが、アルファルドが、そしてマリアが、カナンという1人の少女の内実を解体していく。

 前回までの展開で最後にどうもってくるのかと不安だったが、この作品のタイトルは「CANAAN」。同じ名を持つ2人の人物が、最後に「カナン(希望の地)」を巡ってお互いの想いをぶつけ合うクライマックスが待ち構えていた。これまで主人公としてはいまいち存在感を発揮できていなかったカナンだったが、今回のエピソードを通じて、あらゆる角度からその全貌を丸裸にされている。

 アルファルドによって明かされる「絶望」という名前の意味。シャムによって理想の兵士を目指したアルファルドの前に「戦場であってはならないもの」と言われる「絶望」が現れた。シャムの畏敬と、アルファルドの挫折。カナンがもたらしたのは、決意の果てのシャムの死。そして、そこから因果は巡り巡って、ウーアの感染者、ユンユンの村、数々のボナー、そしてサンタナ、ハッコー、みな「カナンが現れたが故に」命を落とした。アルファルドが用意した最後の舞台、「忌殺列車」で過去の亡霊はカナンを責め立てる。シャムが殺されたあの日の情景に「絶望」たるカナンの目は曇り、真実を映さない。その隙を突いて、アルファルドは再びの光であるマリアを、「絶望」のために死地へと送り込む。

 アルファルドが望むのは、歪んだ形の征服欲と、怒りのみに動機づけられた純粋な復讐。怒りを貯め、コントロールして、それを笑うと彼女は語る。対するカナンは、ただそこにある光をただ純粋に求めるだけ。純粋であるが故に、マリアを悩ませ、アルファルドを燃やし続けてきた。「あなたのせい」の一言に、カナンは思い悩む。カナンの想いに答えは出ない。それでも、アルファルドの突きつけた「結末」に抗うために、彼女は戦うしかない。全てを理解したマリアの最後の選択は、それでもなお「カナン」に生きることを選ばせた。全てを理解し、愛する者の存在が、カナンには必要なのだ。

 

 あまりに多面的で、これまでのエピソードで積み重ねてきた様々な感情、想い、意志が重なり合う最終決戦。アルファルドの目的意識は純然たる復讐であり、悪意である。対するカナンの目的は、「護ること」。しかし、この「護る」ものが光であるマリアなのか、それとも不安定な自分自身なのか。まだそこのところに結論が出ていないように思える。「光」の本当の大切さを知ったときに、「絶望」たる彼女は「極限」を乗り越えることが出来るのか。文句なしの大盛り上がりで持ってきた次回。最終回が楽しみで仕方ない。

 今回も相変わらず素晴らしい演出で全く退屈させない仕上がり。満を持してのアルファルドとの直接対決は型にはまらずにエキサイティングなアクションシーンに仕上がっているし、今回はそれに加えて1人コミカルに動き回るユンユンの動きも見栄えがする。過去の亡霊がフィードバックするカナン視点の使い方や押し引きを重視しためまぐるしいカメラワークのおかげで、本来なら狭苦しいはずの列車の中の風景が、これまでのどのシーンよりも広々と、大きな動きを盛り上げている。前回に負けず劣らず、見事な一本でした。さぁ、このまま次週まで駆け抜けろ。 

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 私の心のずっと奥の方を刺激し続けていた憎いあん畜生の名前が「石見ロボ」だったことが一番の事件な12話。作者自画像だったんかい! 勝手にワイプロボなんて名前で呼んでてごめん! ってことは、ひだまり荘の屋根の上にすんでいる緑色のあいつとか、「まほらば」のオープニングで踊り狂っていたあいつとか、そういうのと同じ類の物の怪だったわけですね! なるほどなぁ。エコポイント集めてるのかぁ。俄然、原作コミックが欲しくなってきました。あのロボットが描いてる漫画だったら面白いにちがいねぇ。

 とまぁ、ワイプとアイキャッチなんて本編に一切関係ないところに衝撃を受けるくらいなので、本編の方は何とも微妙な視聴感。前回までの「何となくローテンションなお話」は今回も引きずっており、フリマ会場で過去話で盛り上がったり、和気藹々と語らう風新の面子を見て疎外感を覚えるカナ。この子はなんでこんなにネガティブ思考なのだろうか。確かに祖母を亡くして間もないのだから精神的に弱くなっていても仕方ない部分はあるが、あんなにお気楽な風新のメンバーを見て、まだ疎外感を覚えるというのはどうにも納得いかない。それとも、世にあふれている他の長屋もののキャラクターが無神経すぎるだけなのだろうか……でも、いまさら「自分は風新の一員になれていない」なんて言ったら、他のメンバーが怒りそうだけどなぁ。

 そしてそんなカナの沈んだ気持ちを吹き飛ばしてくれるのは、名も告げずに野菜を売るだけ売っていったマリモ姉さん。色々と問題のある人だという前情報はあったわけだが、実際には問題があるとかいうレベルじゃない。せっかく運んできた野菜を全て投げ売り、道でたまたまぶつかった幼女をさも当然のように扱き使うという破天荒さ。カナは最終的にその自由な人柄にあこがれすら抱いていたようだが、普通の人間ならば初対面の時点であまり関わりたくないと思うだろう。カナが度の過ぎたお人好しであることが、奇跡的に今回の出会いにつながったわけだ。

 そして、「ヤシの実の歌」を「楽しい旅」と喩える彼女の奇妙な感性のおかげで、カナはようやく何かを吹っ切ることが出来たらしい。シナリオラインは支離滅裂なのでそのあたりの心情は追いにくいが、この期に及んで風新面子や美華ではなく、面識の無かった第三者に意識改革の役割を任せるあたりが、このアニメの不思議なところである。普通のドラマ作りなら、これまで培った友情や家族愛によってカナの悩みが解消するように持って行くと思うのだが……このままカナが吹っ切れてしまったら、風新の面々は彼女が悩んでいたことにすら気付かずに終わってしまう。それでいいのだろうか? そして、カナは「私はまだ旅の途中」と開き直ったわけだが、それってつまり「風新の営業所は自分が落ち着くべきところではない」ってことなんだろうか。それだと色々問題があるよなぁ。

 何とも釈然としないドラマの続くこの作品も、次回が最終回。一体どんな「オチ」を用意してくれるのだろうか。そして、ワイプロボ改め石見ロボは、最後にどんな金言を聞かせてくれるのだろうか。「コノ ダイコンヤクシャ メ」 

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○「GA 芸術科アートデザインクラス」 5→5

 原作が好きすぎるせいで、視聴に際しての自分の姿勢がいまいち決めきれなかった今作。大好きなのでけなしたくないが、好きなおかげで見る側としてのハードルも上がってしまう。下手なオリジナル展開なんかをやられたらそれだけで腹を立てる「原作厨」になってしまう恐れもあったし、かといって原作そのままべったりでは+αの付加価値がないのでやっぱり「原作でいいじゃん」と言ってしまう。改めて考えると、やはり原作付きアニメというのはそれだけで苦しい戦いを強いられることになってしまうわけか。

 で、色々と葛藤しながらの視聴であるが、おおよその感想は、毎週書いてきた通りのことである。その無理難題としかいえない桜井演出により、物語の密度は極限まで圧縮され、「賑やかさ」が際立つ反面、内容の理解は著しく阻害されてしまっている。原作を知らない人間に対するサービスは、失敗と断じてしまってもいいレベルだろう。

 勝手な判断をするならば、この「GA」という作品の売りは、きゆづきさとこの持ち味である淡い色彩感覚と、それを壊さずに成立しているキャラクターのデザイン、そして専門学校の独特の空気を活かしたネタ作りにある。時として一般性に欠けるネタをアニメの流れの中に埋め込む際には、普通に考えれば2通りの手法があるだろう。1つは、分かりやすく画面上で解題して、適切な説明を加えること。1つは、その「わかりにくさ」も1つの味であると判断し、余計な装飾を施さず原作遵守で構築すること。ご存じの通り、このアニメは後者の選択をしている。1話ではアイドマの法則のネタなんかがそうだったし、最終話では背景部分でノダとトモカネが何気なく野獣派調(フォービズム)なんて言葉を使ったりしている。こうした部分は知らない人には全く「意味のない」パーツになってしまうわけだが、あえて説明を付すことで原作の流れを壊すことを忌避した結果、このような敷居の高さが現れてしまっている。

 以上のような原因と結果があるので、「説明不足」については一概に悪いこととは言えない。しかし、「説明不足」と「テンポの速さ」が足し合わさることによって、よりいっそう理解に負荷がかかったのはやはりいただけなかった。どこまでの要請があったのかはしらないが、どうせ原作を全て消化するわけでもなし、原作が完結しているのでもなし、少しゆとりを持って分かりやすい構成にして欲しかったとは思うのだ。もちろん、実際そうしたところで、今度は本当に「ただだらだらしているだけのアニメ」になってしまい、世にあふれる他の作品との差別化を図りにくくなった可能性もあるわけだが。

 しかしまぁ、個人的には昨今の「萌え4コマ全盛」の流れの1つとして、この結果は非常に興味深いものだったとも思っている。「けいおん!」「ひだまりスケッチ」といった「成功者」を筆頭に、「かなめも」「ぽてまよ」、「先生のお時間」まで。十把一絡げでくくられるような媒体も、作り手の判断一つでがらりとその性格を変えていく。終わってみればこの「GA」もあまりに桜井的な仕上がりとなっており、ひょっとしたらここから入って「桜井弘明ファン」が増えたかもしれないのだ。もちろん、個人的には「GAファン」が増えてくれることの方が望ましいけれども。

 以下に愚痴を2つ。1つは、何故この作品の関連商品のリリースが出遅れているのか、という部分。オープンエンドが収録された歌集がようやく発売になり、DVDリリースはなんと11月から。これじゃ売り上げはあまり期待できないじゃないか。特に音楽関連はなかなか面白い素材が多いのに、売り時を逃したら最終的に「やっぱり空気作品だったんだな」みたいな評価になってしまいそうで残念。わざわざDVDのCMで戸松を起用しておきながら、何故か彼女の顔を映さないという奇妙なフィルムも不思議な存在。まぁ、戸松が出てきたからって売り上げがあがるもんでもないが……素猫の方がいいのかな?

 そして愚痴の2つ目は、戸松繋がりからキャストの話へ。いや、ほとんど問題は無いんだ。特に美術部軍団の雰囲気や、沢城ダブルキャストによるトモカネ家の謎なんかは期待通りの出来だった。でもさ、やっぱりさ、そこは戸松に無理させる必要があったのかと。別に「能登を使え」ではなく、「戸松以外で良かったんじゃないか」と。裏声、早口、おっとり系という完全に矛盾した構造は、新人戸松でなくとも難度の高い演技なのは間違いない。それなら、最初から地声で「キサラギ風」なキャストを持ってくるべきだったのではないか。前から言ってるのは、アニメ化決定前から推していた明坂聡美とか。いや、聡美ならやはり佐藤聡美か。最終的にしゅが推しという、ワンパターンなオチです。 

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 最終回だというのに、いつもより際立って「続いていく日常」を喚起させる第12話。この日常が、GAだ。

 今回はAパートが「ナミコさんの欠席」でBパートが「闇鍋パーティー」。闇鍋エピソードは原作では唯一2週にわたって描かれた珍しいエピソードなので、出来れば1話たっぷり使ってやってほしかったのだが、それをぎゅぎゅっと半分にまとめちゃうあたりが、この作品の罪作りなところ。ナミコさんの欠席エピソードだって、本当はもう少し情緒のある、少し切ない話だったと思うのだが。

 実際、これまで何度も愚痴ってきた「詰め込みすぎの脚本」は、今回セーブするどころかいつもに増して際立っている。キャストの演技は本当に苦しそうなくらいの早口になっているし、加えて画面の前と後ろで違うことをやって同時にしゃべったりもするので、原作を知らない視聴者は完全置き去りモード。見ているうちにだんだん「デジキャラット」のことを思い出し始めるくらいなので、やはりこれが桜井節ということなのだろう。うーむ、忙しい。なんだかナミコさんが休んでいたのはほんの数分程度の間だけだったぞ。

 とはいえ、この2本を最終回に持ってきたのにはそれなりの理由があり、GAの特徴である賑やかさ、色彩の面白さ、そして美術絡みの悪ふざけなどの要素が非常に伝わりやすいのが、作中でも最も長い闇鍋エピソードなのだ。Aパートの欠席ネタは、そんな度の過ぎた賑やかさと、メンバーが1人欠けたことでどこか雰囲気の違う彼女たちの様子がきれいに対比するようにセッティングされている。ノダたちの言葉を借りるなら、ナミコさんのありがたみがよく分かる配置ということだ。

 こうした構成の工夫の甲斐あって、ラストエピソードとなった闇鍋会は非常に気持ちの良いテンポで進む。ただでさえ短い尺なのに「面白い顔だなー」なんて原作中の小さな台詞も全て詰め込み、極限まで盛り上がる晩餐の様子が高密度で描かれる。まくし立てる台詞のラッシュも、全て最後の力尽きた静けさの存在がいや増すために。「悪のりは計画的に」というノダの名台詞と、丁寧に全てを平らげて手を合わせるキョージュの対比が映える。

 そして、ラストは一応オリジナルで締めており、今回出番の無かった美術部軍団には闇鍋絡みで意味深な引きを、そして1年生には続いていく日常を意識させるラストカットを。美術部連中の闇鍋については、原作中であーさんが思い出話としてちょっとだけ口にしており、是非とも今後見てみたいパートである。トモカネ(兄)が本気を出したら命に関わりそうな具材も平気で引っ張り出しそうだし。あぁ、そういえばAパートでもオリジナル要素としてトモカネ兄妹の絡みが(片方は意識がない状態で)臭わせてあり、何とも奇妙な感じがした。原作だと本当に一切絡まないからなー。

 そして1クールのシリーズを締めくくるラストは、本当になんでもないただの会話。結局この作品が何を一番描きたかったのか、非常に示唆的なシーン選択であろう。個人的にはキョージュが「みんながいいなら」と判断をゆだねている台詞が非常に印象的で、原作を読んでも分かるが、孤高に見えるキョージュが、実は一番友情と和を尊ぶ乙女心の持ち主だったりするのだ。さりげない台詞選びがなかなか素敵でした。

 エンディングは今回初披露の曲と、素猫。ちまっこいキャラクターが寄り集まって1つの絵を描き上げることで幕を下ろすというのも、また非常に示唆的なシーン。ところで、キョージュが持ってたはさみみたいなものは一体何だったんだろう。 

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