どこの世界でも女子高生が進路に迷っておる、第7話。そりゃそうだよな、「3年間限定のJKという特権」とまひるも言っていたが、そんなわずかな時間で自分の人生を左右する決定をしなきゃいけないなら、そりゃ大変だよ。
前回のトンチキ話でどこに行っちゃうのかと不安だった今作だが、幸い今回は無事に4人の物語へと戻ってきた。そして「4人」という人数を活かすための良き方策として今回はこれを2−2に分けるというシナリオラインになっている。しかもこれまでとはちょっと違う、「まひるーめい」「花音―キウイ」というペアリング。いわば「登校組&不登校組」という分け方になるが、そこで無理やりリンクを繋いだとしても、やっぱり四者四様。膝を突き合わせて話をすれば、そりゃぁ違いも浮き彫りになるわけで。
まずは扱いの軽かった「まひるーめい」組の話から。こちらは進路希望調査票に真っ当に希望先を書くタイプの「普通の」高校生。特にめいについてはエスカレーター式の進学校らしく、大学もそのまま専門学校みたいなところで繰り上がり、夢はプロのピアニストで迷いも一切ない。同じ黒髪お嬢キャラの安和すばるさんが親を誤魔化すために演劇の学校に通わされているのとごっちゃになりがちだが、今期蠢く大量の「進路に悩む女子高生」の中では高坂麗奈さんと同じくらいに迷いがない人物。もちろん、その進路を決めてくれたのは「推し」の花音。彼女にもらった力を武器に、めいは音楽の道に真剣だ。
そこまで英才教育でもないし、自分の才能に自信が持てないまひるは流石にまだちょっと迷い気味。そりゃあんだけ褒めてもらえば自分の絵にも自信や愛着は湧くが、絵の道なんてのは音楽同様に茨の道であることは「ブルーピリオド」読んでなくても知ってること。自分みたいな半端な気持ちで芸の道に進めるものかと躊躇いはある。しかし、無茶をやるのも若者の特権だ。ひとまず現状の進路希望として、まひるは美大を選択した。
他方、「普通の」ルートにこれまで乗れなかったにもかかわらず、先行きの透明性ではダントツなのが我らがブレーン・キウイさん。元々お利口な彼女のこと、たまたま性に合わずに学校という集団社会からはドロップアウトしてしまったが、それが即社会からの逸脱にはならないのである。きちんと資格を取れば大学には進めるし、彼女には自分の手でその進路を定めるだけの先見の明がある(あと悩む時間もいっぱいある)。多分同世代の女子高生の中でも一番堅実に、そして一番真剣に進路を考えていたのがキウイさん。VTuber活動だけでも食っていけそうな気もするのだが、それを選ばないあたりが彼女の彼女たる所以なのであろう。まぁ、そんな彼女にもまだまだ「社会ってムズい」わけだが……あそこで積極的に「社会にチャレンジ」しようとしたその意気だけでも、キウイは前に進めている。
そうしてキウイが予想以上に堅実な人生設計を描けていることを初めて知り、思い切り焦っちゃうのが桃香さんということになる。「あれ、この4人ってもっとちゃらんぽらんで先の見通しがたってない仲間だと思ってたのに……」と思ったかどうかは分からないが、一番年上のくせに全く先の見通しが立っておらず、登録者10万人を掲げてはみたもののそれこそ勢いだけの話。達成したら次に何が起こるかも分からないし、そもそも「目標なんかねぇ」と言い放ってしまっている時点で完全に迷子。まー、それこそ動画配信からの歌い手ルートなんてもんは現代社会ならそれなりに現実的に狙えるルートなのだろうが……多分桃香は過去との決別が目的でJELEEをやっていただろうし、その先に本当の自分の夢があるかどうかも分からないのだ。まさか一番進路に悩むのがJKの権利喪失者だったとは。
焦った桃香は「とにかく目先に目標を」ってんでキウイの尻を追いかけて免許合宿へと転がり込む。当然、「通勤通学に使いたい」というキウイのような具体的な目的など何もない状態だ。そんな状態での免許になんの意味があるかは不安だったが、ありがたいことに合宿所の二人部屋、キウイさんととっくり話をする機会が得られたおかげで、なんとか自分の立ち位置に多少の目鼻をつけることくらいはできた。さらに合宿には変な改造おねーさん・小春さんも登場し、「普通なんてことは誰も決められないだろ」とケロッとした顔。色んな人生を覗き見すれば、自分の悩みもちっぽけに見えるし、先行きの不透明さだって当たり前だと思えてくる。これがいいことか悪いことかは分からないが、「行き先不明」もひとまずそれでよし。無事に免許は取れたのですし。
もちろん、そんな宙ぶらりんで終わってしまっては座りが悪い。「足元だけじゃなくて行きたい方向を」という「目標づくりの目標」を手に入れた桃香のところに、羅針盤のように表示されるのはまひるのLINE。まひるが呼んでくれるのなら、ひとまず今はその方向へ進んでみようじゃないか。まひるは桃香によって道を拓かれた。今度はまひるが、桃香の背中から行き先を教えてくれている。靴跡と足跡、2つ並んだ線は海へと続き、その行き先は波間に消え、まだ誰にも行方は分からない。それでも、若い2人は「隣に一緒に歩いてくれている人がいる」という、それだけで充分なのだろう。
……以前自転車の2人乗りで物議を醸したアニメ作品はあったが……2人乗りでちゃんと刑事罰受ける作品は初めてだな……。
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