○劇場総集編「ぼっち・ざ・ろっく！ Re：」

　ここんとこやたらと劇場に出没しています、僕です。とりあえずこれを観たことで想定してたタイトルは一段落なんですが……細かいタイトルでちょっと気になっているものもあるので、もしかしたら来週もまだ劇場に行くかもしれません。めんどくなったら終わるかもしれません。１回2000円のお高い娯楽、どこまで散財する気が起きるか、お財布に相談だ。

 

＜一応折り返しておくけど、ネタバレも何も、総集編です＞

 

　というわけで、総集編でした。深夜アニメの劇場版勃興期（？）には結構な数が作られた気がする「本放送の総集編バージョンを劇場で流してもう１回稼ぐ」という方法、結局そこまでニーズがなかったのか、「テレビで観たやつじゃん」という当たり前の感想しか出てこなくてファンも飽きたのか、ここ最近はあまり観ない商法になっていた。むしろ本放送前に先行上映とか、そういう形式が増えてる印象はあるよね。そんな中、久しぶりにガチで「総集編」である。流石に本放送を全部覚えてるわけじゃないので追加シーンがあったかどうかはよく分かってないのだが、少なくとも視聴中に明確に「テレビで無かったシーンだ！」っていう驚きは特になく、アニメ前半部分を綺麗にまとめただけのものである。

　「まとめただけのもの」という表現をしてしまうと「あんまり面白くなかったのだな。テレビで観た人間は行かなくてもいいか」と思われるかもしれないが……それはちょっと勿体無いかな。いや、「テレビ版と同じだからわざわざ観なくてもいい」という意見ももちろん正しいので、そこまで積極的におすすめするもんでもないし、昨今のアニメ映画で稀によくある劇場での衝撃みたいな要素はほとんどないのだが、それでも、やっぱり元から完成度の高い作品を劇場でもう１回観られるだけでも充分存在意義はあったと思ってる。むしろ「元が良すぎるから劇場で放映してもそこまで特別感が出ないのがな……」みたいな贅沢な悩みすらあるのだけど。

　前半は８話までの内容を切り貼りしてまとめた内容で、８話トータルざっくり200分くらいの尺を100分弱にギュッとまとめているので、そりゃもう圧縮されてはいる。ただ、もちろん単に切って切ってで詰めるだけでなくてより印象的な見えが展開できるように構成も考えられていて、いきなり冒頭部分にあの印象的な「自販機」のシーンを持ってきたことで、今回の総集編が（というかぼざろという作品が）後藤ひとりという１人の少女の成長譚であることがきちんと示されているのがなかなか上手い。今回のシーン構成は本当に「ぼっちと周りの人たち」という関わり合いに焦点を置いており、削ぎ落とした部分も多いが、かなりエッジが効いて絞られた作品回しが機能している。普通に考えたら半分以下にまで時間が圧縮されたら単なるパッチワークになりそうなところを、そこまで窮屈な印象も出さずにまとめ上げた構成力は確かに「劇場総集編」の名に相応しい完成度だと思う。まー、ユルいおふざけ要素が優先的に削られてしまうので、ギャグの方を積極的に摂取したい人には物足りない部分もあったかもしれないが。

　当然、わざわざ劇場まで観に行ったんだから単に「もう１回観られた」という以上のご褒美はほしいもので、それがしっかり感じられたのは劇場ならではの音響の効果。今回は印象的なライブシーンとしてオーディション・きくりとの路上ライブ、そしてファーストライブと３回の演奏シーンが入ってくるのだが、そのどれもが１度と言わず何度も見返したシーンであるにも関わらず、音の見せ方のおかげでまた新鮮な衝撃があった。ファーストライブのギターヒーロー覚醒シーンとか、多分放送時にも泣いてるんだけど今回もちょっと泣いちゃったからね。あのシーンは本当に格好いいし、迸るギターサウンドが際立つことで破壊力も増している。また、個人的にそっちよりもさらに印象的だったのはきくりとの路上ライブの方で、こちらは本放送ではそこまで気にしてなかったんだけど、改めて劇場サウンドで聴いたら想像以上にきくりのベースが効いてることが分かって、その存在感に心奪われてしまった。やっぱバンドアニメは演奏シーンが映えてなんぼですわ。

　というわけで「全部知ってた」は前提としつつも、ちゃんと行った甲斐がある作品に仕上がっててよかったです。前編で８話まで進めたってことは、後編ではもっと密度の濃い何かがあることに期待したいですね。

　追伸：「前のバンドの方向性に嫌気がさしてやめた」っていう山田、考えてみりゃガルクラの桃香と立ち位置一緒なんだな。何でこんなに人徳に差があるんでしょうね？

 
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