「妃教育から逃げたい私」 4→5
意外に思われるかもしれないが、評価は上がっている。なんなら、今期アニメの中なら上位帯に入っていたかもしれない(まぁ、50分以上の候補があるので上位といっても25本あるが)。
「お前なろうアレルギーじゃねぇの?」と言われたらそうだし、「作画しょぼくなかった?」と言われても全くもってその通りのアニメだったのだが……でも、「まぁ、そんなこと気にしなくてもいいやん?」という結論に。なんかね、身の丈にあってるというか、こういうアニメはあって然るべきというか……悪感情を抱く理由がなくなっちゃったんですよね。私がなろう作品を毛嫌いする最大の理由はストーリーテリングの際の思考の放棄、何も考えずにただテンプレだけを繋ぎ合わせた粗雑なモザイクのような完成形に何一つ作品性を見出せないからなのだが、今作については「古き良きジュブナイルを描きたい」という意識がちゃんとみて取れた。別に目新しくもない、斬新でも新鮮でも奇抜でもないし、陳腐ではある。でも、怠惰ではない。ちゃんと描きたいお話があって、身の丈にあった尺と身の丈にあった道具立てで、身の丈にあった物語が完結した。それを退屈と思う人もいるだろうが、この作品自体の存在価値を否定するものではない。例えるなら、桃太郎やシンデレラが今更1クールアニメになったとて「中身知ってるし、新鮮さなんてないし」ってんで視聴しない人も多々あるだろうが、それが桃太郎やシンデレラがつまらないことに直結はしない。おそらく現代においても童話の絵本は売れ続けているだろうし、届くべきところにアジャストした物語が届けばいいのだ。
嫌々ながらもなろう作品に接し続けてきて分かってはいるが、なろうの中にだって色々な作品がある。世間一般でいうなろうのターゲット層に届けるためのチートとザマァの物語が大半を占めているからどうしてもこういう作品には目が行きにくいが、別にチートもザマァもなしに、ちょっとしたお伽話やラブコメを書きたいと思っている人だってちゃんといるのだ。今作においても「サバサバ系のアタクシ」の文脈は根底にある気はするが、それをことさらに振りかざすわけではなく、あくまでもどこかの童話で見たことがあるような「おてんば姫のドタバタ騒動」というコメディの範疇で描いており、なんなら小学生だってすんなり読める内容になっている。今作で惜しかった点があるとするならば、一部のオタクにしか届かない深夜アニメの体裁をとってしまったことであり、これがもし昭和の時代のテレビから金曜18:30に流れていたら、普通に楽しめるご家庭も多かったんじゃなかろうか。
そう考えると、別に作画が省エネなのもマイナス要素にはならない。ほんとに昭和テイストを狙ったんじゃないかと思えるユルいキャラデザは余計な期待も警戒も抱かずに済むし、最初から省エネでやっているおかげか、そこから大きく崩れてみっともない動画が出てくるなんてこともなかったので制作側もきっちり責任は果たしている。最終的にレティが可愛く見えるかどうかは個人の感性によるが、少なくとも1キャラくらいは「ちょっと面白いな」とか「なんか共感できるわー」みたいなキャラには出会えるんじゃなかろうか。ぼかぁ、こういうなろうだったらアニメ化して紹介してもらえるのも悪くないと思っちゃいましたね。
一応蛇足をつけておくと、大きく好感度に貢献してくれたのはもちろんレティ役の白石晴香。やっぱ姫だよなー、どっかハズれた姫だよなー。彼女が強かに脱走しながらも少しずつ初恋を育んで最終的にチョロいくらいのゴールに辿り着く全体図がとてもハッピーでありがたい。ここまで悪人も事件も何も無くて成立するお伽話、疲れた現代人には案外必要なのかもしれませんよ。
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