ヲイ、紫龍、オイ、第96話。いや、そりゃまぁ誰も死んだとは思ってなかったけどさ。せめて一輝みたいにちゃんと「どっかに行ってた」アピールくらいはしろよ。単に瓦礫の中で気絶してただけなのかよ。黄金聖闘士ほぼ全員生存やないか。
なるべく簡単にまとめるなら、「元気玉展開」。青銅軍団が星矢の遺志を受け継いで戦いを挑むも圧倒的な力の差によって敗れ去り、地球は一時、サターンの手に落ちる。しかし、最後の希望は若い聖闘士に託されることになり、アテナの計らいで全世界の残された小宇宙が全て光牙の下へ。悲喜こもごもの全てを肩に背負い、残されたペガサスが、単身最後の戦いに挑む。まぁ、予定調和的な展開なのだが、「全ての小宇宙を一手に引き受ける」=「人と人を繋ぐΩの究極形」っていう図式は綺麗な流れだと思う。前回の星矢との問答の末、「昴のために覚醒したΩを昴に向けて使うことは出来ない」っていう結論になっていたわけだが、その矛先をこっそりすり替えて、「とにかく人がみんなで手を繋げば強いんだ」っていう理屈にしてしまえば、後は勢い任せで昴をぶん殴る事も可能になるだろう。ま、実際はサターンの中の残された昴を説得し、鉄拳制裁で目覚めさせるっていう展開になるのだろうが、そのあたりの下準備もエデンがやってくれたので、次回は綺麗に最終回を迎えることが出来るのではなかろうか。……最終回なんだなぁ。やっぱり考えたくないのだが……次の朝に待ち構えてる力士がドヤ顔でアピールしてくるから嫌でも認識してしまうよなぁ。
さておき、そんな分かりやすい展開だったのだから本来ならあんまり語るべきことも無さそうなのだが、色々とネタ要素も多いのが不思議なところ。冒頭、星矢が最後の一撃を見舞いながらも倒れ、「君たちにアテナを託す」というアイオロスの至言を残して散っていったところは素直にグッと来るシーン。ほぼ生身の状態で打ち果てたはずなのにその後に射手座聖衣がオブジェモードで残されたのはかなり違和感があるのだが、やっぱり「聖闘士が散った後に聖衣だけが残される」っていうシチュエーションはいつ見ても切ないし恰好いいものである。しかし、そんなことはサターン様の知ったことではないようで、「残された黄金聖衣を飴細工のようにたたき割る」という前代未聞の暴挙に出ている。酷い。聖闘士の高みであるはずの黄金聖衣がここまでぞんざいに扱われた例は過去に無い。元々ボロボロになっていたとはいえ、あまりに脆すぎてなんか悲しくなった。それだけサターンが強いってことなのだろうが……聖衣くらいそっとしておいてもいいじゃないのよ。
もちろん、そんなサターンの暴挙に若い世代が黙っているはずがない。前回のワンサイドゲームを忘れたわけじゃなかろうが、再び立ち上がって最後の晴れ舞台に挑むことになる。これまでなかなか出番が無かった6人、最後に何か「サブ主人公」らしい活躍を見せてくれるかと思ったら、何と全員が最大必殺技を突然開眼させてたたき込むという流れに。「ライオネットバーストフレイムボンバー」とか「廬山千龍覇」とか、なんかよく分からないけど多分強いんだろう。けど、この場で一回限りの必殺技として炸裂させちゃうのはどうなんだよ。もっといい見せ場あったろうに。それに龍峰、千龍覇ってなんだ。お前の親父さんでさえフィニッシュホールドが百なのに、勢いでそれを越えるな。あとロックシンガー、お前なんなんだ。そこで歌うな。そこでマイク持つな。せっかく良いシーンだったはずなのに、完全にネタ画像になってしまったやないか。ちなみに栄斗さんは、この後の「全員の小宇宙を届ける」シーンでも妙にイキったジャケット姿(普段着)になってて妙に浮いてる感じがたまらなかった。次週、平和になった地球で彼は音楽活動を続けることになるのでしょうかね。
結局、6人中4人は「壁役」というあまり扱いの良くないポジションだけでおしまい。残り2人こそが今回の主役。光牙はもちろんだが、エデンはこれまで時間をかけて昴との関係性を築いてきた苦労があるので、ここで多少なりとも報われないと可哀想だろう。仲間4人によって道を繋ぎ、最後に2人がコンビネーションをたたき込むという配置だったが、その作戦自体は「お前らのやり口は知っている!」と意気込むサターンに粉砕されてしまう。しょうがない、戦いがワンパターンなのは事実だからな。でもそれは光牙たちが悪いんじゃなくて原作者に文句を言ってくれよな。しかし、4人が倒れたあともエデンたちだけはなんとか奮戦し、結果的にはサターンに最終奥義を使わせるまでにはなったのである。エデンさんは光牙に全てを委ねる前に「神の孤独」について一言コメントを残しており、彼の思いの下には、かつて「神の力」に振り回され、自分を見失って滅んでいった父親の姿が確認出来る。昴の中に不可解な神の力を感じながらも黙って見守ってきたのは、新たなマルスを産みださないよう、神だと分かっていても極力「友人として」接しようと努めた結果だったのだろう。エデンは1期のころの頼りないお坊ちゃんからちゃんと成長していたのだなぁ。
しかし、そんな努力も水の泡。結局全ての人間の時間は停止し、光牙はもちろん、アテナやパラス、元パラサイトのタイタンさん、平気で復活してきちゃった紫龍・フドウ・貴鬼の3人組や、前々回颯爽と登場した邪武さんに至るまで、あらゆる人間が時間を止めた。訪れた静寂の中で悦に入るサターン様は、満足げではあるがどこか寂しそうにも見える。ちゃんと「胸の痛み」と独り言で言ってしまっているあたり、既に昴復活のフラグはびしびし立てられているのである。完全に沈黙した人類であるが、やはり最後はアテナの力。神による抑圧に辛うじて抗えたのはやはり神だったのだろうか。沙織さんの呼びかけに応じて、世界中の聖闘士が残った力を最後の希望として光牙に送り込む。よく見るとどさくさに紛れて行方不明だったインテグラさんもいる。パラドクスの亡骸からは小宇宙は出ていなかったので、多分彼女は本当に死んじゃったんだろうなぁ。あと、ついでに聖闘士じゃないのにタイタンさんやラキまで小宇宙を送っているのも気になる部分。ラキでもいいんだったら聖闘士じゃなくて世界中の全人類から力をもらえばいいと思うんだけど、残りの人類には沙織さんの言葉は届かなかったのかな。かてて加えて、「全人類の時は止めたわー」とサターン様が満足している中、平気で帰還する一輝兄さん。どうやらアイガイオンさんが最後の情けで異次元転移から守ってくれたらしい。やっぱり彼はいい人だった。一輝も彼の気持ちをちゃんと分かっているようで、「お前が興味を持った人間って奴の力を見せてやるよ」とまんざらでもない様子。まぁ、一輝だけだったらΩなんかなくても単体でサターンくらい倒せる気もするけども。時間停止効かない時点で完全に一輝の方が上やん。サターンの奥義発動のタイミングで地球上にいなかったから時間停止の影響を受けなかったのかな。もしこれで永遠に時間が止まりっぱなしだと、この後の一輝はすげぇ寂しい人生を送ることに。怖い。
とにかく、そんなフェニックスな小宇宙も含めた全ての力を受け止め、ついに光牙が最終Ω聖衣に進化。最後の戦いが始まるわけである。光牙のところにたくさんの小宇宙が駆けつけ(?)たわけだが、最初に飛び込んできたのが檄先生だったのがちょっと微笑ましかった(更にイチさんが続いたのも笑った)。さぁ、後はこの作品の2年間の集大成を黙って見守るだけである。多分、すげぇ普通の最終回だと思うぞ!
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