○映画「仮面ライダー×スーパー戦隊 超スーパーヒーロー大戦」

　観てきましたよ。この春は足繁く劇場に通ってる気がしますね。まだ観たいものが残ってるんだけど、どうしたもんかね。とりあえず、早く観た方がテレビシリーズを観るときにもストレスにならないだろうと思い、早めを心がけての視聴です。「スーパーヒーロー大戦」を銘打った作品は「Ｚ」以来なので４年ぶり。けっこう久しぶりだけど……さて、どんなものが出てくるやら。

 

 

 

（以下、一応ネタバレ要素ありなので未視聴注意）

 

　一言でまとめるなら、劇中でエムが言っていた台詞がしっくりくるのでそれを引用しよう。「もう、滅茶苦茶だよ！」。ホント、何がなにやら……。お祭り騒ぎの作品なのは間違いないのだが、一体どこからつまめばいいのかも分からないカオス極まる作品になってます。かなり目先がとっ散らかってるので、自分なりの目的をしっかり定めて観に行かないと振り回される可能性が高い。「お祭りだから」というと聞こえはいいんだけど、大作らしい軸の作り方になっていないので、お子さんは見る時に視点をどう定めていいか決めるのが大変なんじゃないでしょうかね。

　いらんとは思うが確認しておくと、私の専門（？）は戦隊の方です。ライダーは去年の「ゴースト」からリアルタイムで通して観るようになった程度で、それ以前については昭和ライダーは一切知らないし、平成も「電王」「ディケイド」「Ｗ」だけ東映チャンネルで観た程度。だから、基本的には戦隊のコラボを期待するタイプの人間なんだが……どうしても「スーパー戦隊１９９」のダイナミックなコラボと比較してしまうので、最近の「ヒーロー大戦」は物足りなさを感じてしまうなぁ。ゴーカイジャーから入った人間の恐ろしく贅沢な見方ではあるんだが……今回、戦隊サイドで登場したレジェンドは一番古くて陣さん（ビートバスター）なのよね。あとは八雲とアムでしょ、陣さんだってこないだ「キュウレンジャー」に出演したばっかだし、ほとんどレジェンドに遡ってない。ライダー側は緑の人が比較的古くて「龍騎」からの登場らしいのだが、残念ながらそこは知らないので、やっぱり大して遡ってないんだ。もうちょっと特別感が欲しいところだよなぁ。こうして考えると、イマジンっていう特殊な存在のおかげでオリジナルキャストが超人気俳優になってしまってもメインキャラが使える電王って便利だよな。

 

　基本的には「そこまで特別感がないなぁ」というのが全体的な印象。また、エグゼイドからの繋ぎもあって「ゲームの世界」ってのが今回のメインフィールドなんだけど、それをＯＫにしちゃうと何をやってもいいことになっちゃうから設定として承服しかねる部分がある。たとえば今回ウッチーがゲストとして登場してくれたんだけど、あくまで「ゲーム世界の空蝉丸」なので、レジェンドが共演したカウントにしていいのか微妙。本当に「スーパー戦隊の先輩が来てくれた！」っていうなら盛り上がるはずなんだけど、設定上、あのウッチーは本物じゃないんだ。おかげで、せっかく出てきてくれたのにウッチーらしさをほとんど見せることなく、随分あっさりとした出演。ウッチーファンはがっかりだ。オリジナルキャストでガッツリ「らしさ」を見せてくれたのはゴライダーに選ばれた４人くらいなので、あんまり過去作に対するオマージュは無いのよねぇ。そりゃ、八雲が翼を呼ぼうとして陣さんにヒットするくだりとかは笑うけどさ。陣さんが黄色枠でエントリーしたらイエローバスターの立つ瀬が無いよな。

　結局、レジェンド要素はゴライダーがせいぜいで、残りの部分はお飾り程度。せめてゲーム中のトーナメントをもう少し詳しく見せるとかすれば盛り上がりもあったはずなのだが、何故か噛ませになったダイレンジャーとか、割と寂しい登場。なんとつい最近まで現役だったはずのジュウオウジャーすらキャスト出演がほとんど無いってのは寂しすぎる（１回しか登場しなかったゴーストに比べたらまだマシだけどさ）。そして、意外だったのは更にキュウレンジャーの登場シーンも少なかったこと。トータルでみると、圧倒的にエグゼイドのお話だったんだよなぁ。幸いエグゼイドは観ているから視聴モチベーションは下がらなかったが、キュウレンジャー目当てだったらかなり落ちてたんじゃないかな。ラッキーとエムの３度目の初対面（？！）なんかもあったのに、ラッキーはラストバトルでのフタゴキュータマまで見せ場らしい見せ場もないんだ。バランス悪くない？

　バランスの悪さは、ドラマの大部分をエグゼイドの「医療ドラマ」につぎ込んだため。そういう意味ではエグゼイドファンにはありがたい脚本とも言えるのかも。エムも活躍してるが、それよりも何よりもヒイロだな。今回の映画、トータルで見たら主人公はヒイロだろう。２役やってるし、オリジナルフォームまであったし。彼の医者としての生き様を見せるお話としてはなかなかよかった。まぁ、その分闇医者とかが割を食ってるんだけども。予告で監察医復活ってのを見てすげぇ楽しみにしてたんだけど（キリヤファンなので）、まさかあれしか出番がないとは……カムバック監察医。カムバックグラサン。

　エグゼイドチームからはヒイロがメイン（あとポッピーも大活躍）、そして意外や意外、キュウレンジャーチームからはなんとナーガがメインで活躍することに。どういう選出規準だったんだろう。テレビシリーズでは９人が割と満遍なく活躍しているキュウレンジャーだが、ここに来てあからさまに「ナーガ回」と言えるエピソードがなんと劇場版で。これ、多分テレビシリーズでやらなきゃいけないくだりだよね。ナーガが少しずつ感情を勉強していく上で、彼の涙は大きなターニングポイントになると思うのだが……劇場でやってよかったのかなぁ。バランスは彼の活躍をちゃんと見てくれてたんでしょうかね。

　そして、ヒイロ、ナーガときて、最後に大活躍したのは……アム！！　うん、ここだけはこの映画によくやったと言いたい。圧倒的アム映画。ポッピーを除けばメインヒロインは確実にアム。おい、セラはどこにいった。冒頭、見慣れない格好で倒れてるアムや、治療台の上でしどけない姿を披露しているアムが抜群にエロく、もう、序盤のクライマックスはアムのうなじだったと言っても過言ではない。しょうがない、それで満足しようか。いや、なんでここまでアム推しだったのかはさっぱり分からないのだが……。「とぼけたキャラに見えて実は思慮深くて洞察力もある」っていうアムのキャラがフルに発揮されていて、下手したらテレビシリーズのどの回よりもアムのアクションにも力が入っていて最高でした。他のジュウオウメンバーが全然登場しないのは悩ましいが、ジュウオウファンはアム要素を補完するためにもチェックしといた方が良いかも。それにしても、レントゲンに映ってた耳、あれはどういう原理なんでしょうね。

　まとめると「どうにもとっ散らかってる割に、あんまりシリーズ全体を俯瞰した要素も無いのでいまいち売りが見えにくい」というのが不満な結果になった。まぁ、個々の要素だけを見ていけばそれなりに楽しくはあるのだが……。オススメするなら、エグゼイドファン、特にヒイロファン、あとはナーガファンとアムファンには観てもらいたい、っていうくらいかなぁ。