最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
これの前に観に行った劇場作品は「夜は短し」だったので、奇しくも湯浅作品2連続ってことになりますね。立て続けに湯浅作品が封切りされたのは単なる偶然らしいのだけど、案外私と同じような日程になった人も多いんじゃなかろうか。ただ、「いつか観に行こう」と思って、ふと上映スケジュールを確認したら、最寄りの劇場でも日に2回しか上映されない状態になってたのは焦った。同劇場でやってる「夜は短し」の方は3回まわしだったんだけども……。あんまりお客さん入ってないんですかね。まぁ、なかなか話題にしにくい作品だったとは思うが……とりあえず、うまいタイミングで視聴できたのは幸いでした。
(以下、一応ネタバレとかそういうの注意)
さて、これもなかなか評価の難しい作品だが、総じての印象は「なんだか『みんなのうた』みたいな作品だな」というもの。何を言いたいのかはさっぱり分からないかもしれないが、例えば短い時間に詰め込んだ物語性と、とにかく印象づけることが勝負のエキセントリックな映像演出なんかが、一時は若手アニメーターの発掘場所とも言われていたNHKの「みんなのうた」の印象につながったのかもしれない。あとはまぁ、音楽性が非常に強く関わってくるフィルムなのは間違いないしね。 映像面から見ていくと、本作は間違いなく湯浅作品である。毎度のように人をおちょくったような崩しの多い作画、ぐにゃぐにゃと不定形だったり、パースを度外視してとにかく印象づけることを優先した自由闊達な映像変化は、安心の湯浅印。「夜は短し」でもその方向性は健在だったが、今回はファンタジー交じりでアクションの規模も量も段違いなので、ぐにゃんぐにゃんと不安定になりそうな湯浅劇場を嫌というほど味わうことが出来る。パンフにかかれていた情報だとフラッシュアニメーションというCGツールを使っているために形成されるテイストなのだそうだが、いわゆるCGの「硬質さ」とは無縁で、むしろ手書きアニメに求められるアナログな不安定さの延長線上にあるような歪みがこうして味わいになるのは実に面白い。 また、こうした映像面での特徴と切り離せないものだが、本作は音響との親和性の高さが抜群で、大きなミュージックビデオとしての魅力がある。端的に言えば「オープニングの入り方最高だろ」ってことになるんだけど、これまた湯浅監督がたまに見せてくれる奇っ怪な踊りのモーションが、まるで古き良きディズニー映画のような、「トムとジェリー」のような、人類不偏のダンサブルな楽しさを提供してくれる。一番良く現れているのは浜辺でルーが踊るパラソルダンシングのところだろうが、それ以外にも国夫のギタープレイがとんでもないポーズになっていたり、明確に「踊る」というアクションを取っていないキャラも、自然に音響に合わせてステップを踏むように飛び跳ねていることが多い。このキレの良さ、リズムの良さは、理屈抜きで「楽しい」映画を成立させる上で欠かせない要素になっていただろう。 そして、こうしたおおっぴらに「聞こえる」音以外にも細かい部分でやたらと音響にこだわっている印象があり、例えばカイが自宅を出て表通りに出る際に使われる狭くて暗い石の階段、あれをおりるときの足音が「トントントン」じゃなくて「トトン、トトン」と両足のリズムを意識した音になっている(もちろん映像もそうなっている)。普段、自分たちが「どうやって階段を下りているか」なんてあんまり考えるところじゃないし、そこにこだわる必要もなさそうなものだが、本作の場合、そうした細かい部分に「音の印象」を与えることで、作品全体を通じて視聴者に「音への意識」を植え付け、盛り上がるべきシーンでの音の働きを補強する働きがあるように思える。日本人が作る映像のデザインって、どうしても欧米の作品に比べて「音楽的なノリの良さ」みたいなものは淡泊になりがちな印象があり、「ここがダンスシーンだ」という風に意識すれば映像は作れるのだが、それ以外の部分ではおろそかになりがち。今作は、そうした弱みを見せず、全編を通じてのリズムみたいなものが徹底されている印象があった。 こうして見ると、やはり映像はオリジナリティに溢れているし、見ていて退屈する部分の無い愉快なアニメーションなのだが……ただ、どうにもとっ散らかってる印象はあったかな。誤解を恐れずに結論から書くと「シナリオがちぐはぐ」なところがどうしても気になった。基本となるラインは非常に分かりやすい。冴えない男子中学生が御陽気な人魚のルーと出会い、異種間コミュニケーションを通じて明るく前を向くことを覚え、一通り盛り上がったあとには異種族であるが故の軋轢から大問題が発生、一度はふさぎ込むも、そこからは一念発起で立ち上がり、最終的には種族の壁を越えた友情を築き、天変地異にも力強く立ち向かってハッピーエンド。うむ、取り立てて悩むようなところは無い筋立てだ。でも、なんか要素が切れ切れなんだ。例えば、個人的に一番良く分からなかったのはルーの父親の存在。突然「活け締め師範」として陸に上がって人々と交流していき、1つ目のクライマックスでは燃える巨人として人間どもの前に立ちはだかったりもするのだが、彼が元々何を考えており、なんで突然陸に上がってきたのかは一切説明が無い。おそらく「ルーが上がってきたからそれにつられて」ってことなんだろうが、いざルーが助けを求めて泣き叫ぶまで、彼はルーに会おうともしていないし、関係を臭わせるような行動もせず、単に人間社会に溶け込んでエンジョイしただけ。彼にそうした行動が取れるのだとしたら、(相当長生きしているだろうと思われるので)もっと昔から人間社会で生活していてもおかしくなかったはずなのだ。もしそれが実現していれば、根強く残っていた人魚への不信感は解消されており、街の様子だって多少は変わっていたことだろう。何故、彼はふいに出てきて突然暴れるようなことになったのか。 キャラのモチベーションという意味では、メインヒロイン(?)の遊歩の存在もなんか釈然としないものがあった。冴えないカイにも何くれと世話を焼いてくれる良い子なのだと思っていたのだが、初めての人魚島での練習でカイに本当のことを指摘された時にはマジでスネてどっか行っちゃうような責任感に欠けるところがあるし、パークでの演奏後、「自分たちは求められていないんだ」とふさぎ込んだかと思ったら、次のシーンではカイを見つけて「みんなでインタビュー受けようよ」と前向きな姿勢を見せる。何だか感情の浮き沈みが急だし、一体何を目標にしているのかが分かりづらく、個々のシーンだけで見れば魅力的な言動も多いのだが、全体を見ると繋がりに欠ける部分が気になってしまう。 他にも、タコ婆とカイのじいさんは最後まで観ると結局やりたいことが一緒でキャラかぶってるやん、とか、遊歩のじいちゃん(会長)は結局いい奴として見せたかったのか、身勝手な大人として見せたかったのかが分からないとか、多くのキャラが出てくる割には、それぞれに与えられている役割が認識しづらいのである。まぁ、現実で考えればそれぞれの人間が1つの役割に収まるようなものではないのだから、はっきりとスタンスが分からないことはむしろ自然なことではあるのだが、2時間という限られた枠の中での物語では、もう少し旗幟を鮮明にして見やすいキャラ造形にしてもよかったのかな、という気はする。 そんな中で一番不安定だったのが、実はメインとなるはずのカイとルーの関係性である。カイがルーに対してどんな感情を持っていたのかが、非常に分かりにくいのだ。夜道で2人手を繋いで歩いたところなんかでは短期間で仲良くなったことが確認出来るのだが、何故、それまで内にこもりがちだったカイがルーとの出会いで姿勢を改めたのかが定かでない。今時の若いもんなら、進んで面倒ごとに巻き込まれないよう、怪しいものから距離を取る選択肢だってあったはずなのだが、カイはすぐにルーのことを受け入れ、まるで彼女の引きずられるかのように明るいキャラクターになっていく。この時の関係性が好奇心なのか、動物に対する愛情なのか、純粋な「愛」なのか。面倒なのは、彼がルーに手を引かれて深海の難破船に引き込まれるシーンでの「キス」の描写。普通に考えてあんな魚の化け物少女とのキスに特別な感情は持たない気がするのだが、カイはここで思い切り砕けてギャグテイスト強めの恍惚とした表情を見せる。この表情の意味が未だに分からないんだ。「憧れの女の子にキスされて嬉しい」ではないよなぁ……「死にそうになったところにマウストゥマウスで酸素が補給されて安堵した」でもないだろうし……。彼がルーに対してどの程度の「好意」を持っていたのかが実はほとんど描かれていないため、パークでルーが危険な目に遭ったあとにカイが背中を向けて逃げ出し、そのまま現実逃避するかのようにルーに顔を合わせなくなった展開もどこか腑に落ちないものがあったし、最終的に命を賭してまでルーを救いたくなるほどのモチベーションがあったのか、というのも首を傾げてしまうところ。本作はカイという少年が他者との交流の中でどのように成長していくかを描く部分が一番の主題だと思うのだが、その部分の作劇としては、あまり効率の良いストーリーにはなってなかったんじゃないかと思う。 他にも「おかげさまのたたり」って結局なんやねん、とか、「人魚にされた人間って幸せなのか、被害者なのか」とか、色々とふわっとした要素が多く、クライマックスとなる大レスキュー劇も盛り上がりとしては今ひとつ。多分その前のルーパパ大暴走シーンの方がクライマックス感あった。水位が上がり続ける中で延々人命救助するくだり、ちょっと長すぎた気がしますね。 トータルすると、映像面、音響面での独自性は文句無しで、2時間たっぷりの湯浅ワールドに浸るには良い作品だが、全体を穏当な「良い話」として見ようとすると、所々で違和感があり、考え始めるとなんかモヤッとする作品、ということ。あんまり難しい顔をせず、右脳パワー全開で視聴するのが良いのかもしれません。 PR |
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関西在住の、アニメを見ることを生業にしてるニート。必死で好きな声優を12人まで絞ったら以下のようになった。
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