ずっと触っていたいくらいサラサラの第21話。サラサラヘアーで敢えてデコ。それが部長の心意気。さらして恥ずかしいデコなど、捨ててしまえい! 今回は写真写りも一番良くて、現実の美人さんが誰なのかがはっきりしたな。
前回のライブでは心おきなく泣かせてもらったわけですが、今回は一転、どこをどう転んでも泣きようがないし、普通に考えたらあり得ない構成で、これもまた「けいおん」ワールド(作中で唯は泣いてますがね)。何しろ「卒業アルバムの撮影のために女の子が髪型で悩む」というだけで1話が終わるのだ。この何も無い日常の感覚、たまらないものがあります。
そして、そんな「どうでもよさ」を骨の髄まで堪能できるように練られた構成の妙が今回も冴え渡っている。個人的に一番ドキドキしたのは、ムギが最初に唯の髪をとかして、結んであげるシーン。ブラシをあてて少しずつ少しずつ唯の髪をまとめていくのだが、はっきり言うと、このシーンが「めちゃめちゃ長い」。単に髪をとかして結ぶ、それだけのシーンなのだから、ものの数秒でサッと描いてしまえばいいカットのはずなのだが、唯の表情の微細な変化を交えながら、実にたっぷりとこの「どうでもいい」カットが時間を使っている。普通の作品なら、このようなコンテ割りは恐ろしくて出来ないだろう。だれてしまうのは間違いないし、そんなことをする意味は無いからだ。しかし、この作品はそれに「意味がある」のだ。「髪型を探求する」という今回のテーマが浮き彫りになるのも勿論大切な要素だが、何より、ムギと唯という2人の関係性が、この長い長いカットに自然に表れる。他人の髪をいじるのが好きな娘ってのはいるもんだが、特にムギはメンバーの髪をいじったり、スキンシップをとるのが大好きな子。そして唯はそんなムギに全幅の信頼を置いて、あれだけの時間をなすがままにされている。今まであまり明示的に示されてこなかったムギ→唯というインタラクションが、このカットでまざまざと現れるのである。
他にも、今回はやたらと長めに割られた余韻含みのカット割りが多く、例えば梓が部室に駆け込んで微妙に表情を変えるシーン。こちらは不安と期待の入り交じった梓の心情の妙をその細かい表情に表すため。また、今回のクライマックスとなった唯の散髪シーンも、無駄にスペクタクルな構図とタイミングでドラマ性を高めている。もちろん、いざうっかりミスをしてしまうシーンは間抜けな唯の顔のアップであっさりと片付けてしまうのもこの作品ならでは。あり得ない間尺の配分の仕方に、この作品の本気が見て取れる。
さて、その他のファクターもきちんと見ていこう。まず、前回の切なさからの引きでいうなら、すっかり「ふぬけ」てしまった梓の細かい仕種がいちいち切なくなる。冒頭で魂が抜けたようになっているのは笑えるレベルではあるのだが、「卒業」という言葉にちょっと息を詰まらせてみせたり、教室で戯れる4人の姿を見て少し寂しそうな表情を見せたり。残されるものの辛さっていうのもあるんですよね。受験まで部室に居てくれる先輩達に素直に喜びを表していたものの、それって結局別れの先延ばしでしかないからなぁ。来年は1人で軽音部を支えることになるんでしょうか。そういや、もう練習する曲もないのに唯は登下校時にちゃんとギー太を持ってるんだね。ひょっとしたら梓の練習に付き合ってあげているのかもしれないな。
そして、そんな先輩達はようやく進路を決定させる。ムギは私大で確定。特に目的意識もない唯律コンビは、単に「ムギが行くから」という理由だけで同じ大学を志すことに。……大丈夫かいな。学力もそうだけど、私立は学費がねぇ……ま、みんな長女だし、家庭もそれなりに裕福みたいだからいいんだけどね。そんな適当な動機で進学希望って親御さんは納得してくれるんだろうか。
そして、そんな3人の様子を見て推薦枠をわざわざ蹴ってしまった澪。気持ちは分かるが、その選択が後の人生に与える影響は……いや、いいのか。大学なんて入ってみてから何をするかだし、志も無く適当に進学したところで結果は一緒だ。どんな形であれモチベーションがあがるならそれはそれでありなのかもしれない。今後とも4人仲良くやって下さい。翌年になれば梓も来るかも知れないしね。
そうそう、レギュラー面子の中では、多分和が別な大学に進学することになるんだろうけど、今回の和はなにげにひどい子だったな。「留めるものはありませんか」の唯の問いかけにクリップを差し出す時点でいじめっ子かと思うくらいなのに、更にツインテに結った唯に「こういう犬見たことある」との発言。友達相手にイヌって。ナチュラルボーン毒舌吐きか。ちなみにその後の唯の「犬……犬、犬って……」っていう台詞がやたらお気に入り。普段がフラフラしているだけに、弱ったり困ったりしてる時に唯が発するマジでやばそうな時の声が好きです。今回は髪切ったあととかフード被って登校してる時とか、この「情けない唯」が堪能できたので楽しかったです。必死に唯を慰めようとして撃沈していく他の面々とか、なんだかよく分からないテンションが無闇にはまってました。
そして、やっぱり髪型と言えば「おかしーし」の名言を残した部長さんですよね。今回は「きっぱり出せ! きっぱり」という名言を残しております。そして、律のカチューシャの位置を一発で決められるのが澪で、そんな澪の緊張をおさえるために「深呼吸しろ」という適切なアドバイスが出来るのが律。やっぱりこの2人が別な大学に行くっていう選択肢は無いな。ちなみに落ち込んだ唯に対してモンブランの栗という実に分かりやすいフォローを差し出したのも律ちゃんなんだぜ! 相変わらず人の気持ちを考えて動ける子だ。そんなわけだから、当然今週の1枚はきっぱり出してるところだ。
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