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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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第3位 

’10「刀語」 ‘11「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」 ’12「黄昏乙女×アムネジア」 ’13「有頂天家族」 ’14「月刊少女野崎くん」 ‘15「えとたま」 ‘16RE:ゼロから始める異世界生活」 ‘17「3月のライオン(第2シーズン)」 ‘18「ひそねとまそたん」 ‘19BEASTARS」 ‘20「無能なナナ」 ‘21「小林さんちのメイドラゴンS」

’22「メイドインアビス 烈日の黄金郷」

 先にバラしておくと、今シーズンのベスト3は全て原作ありのアニメになった。別に珍しい事態ではないのだが、過去に遡ると2019年以来となる。なんとなくの感覚でしかないが、「鬼滅」フィーバー以降、ジャンプアニメを代表とし、「ちゃんとした原作をちゃんとしたアニメにすればウケる」という当たり前すぎる認識が業界にも伝播しているような気がしている。そして、そんな「ちゃんとしたアニメ」の代表例の1つとなったのが、こちらのメイドインアビスである。キネマシトラスが第1期時点でガッツリとその基盤を作り上げ、衝撃の劇場版、そしてさらなる衝撃のこの第2期へと、着実にパスを繋いできた。まるでゴレンジャーハリケーンのように、そのお鉢が回れば回るほどに破壊力は着実に増している。

 クレジットこそ「2期」だが、どちらかというとこの作品においては「第六層」と言い切ってしまって良いのかもしれない。考えてみりゃ1クール目では「穴の上→第四層」を全部やってるわけで、同じ長さで扱ったのが第六層のみというのだから、そりゃぁ密度もゴリゴリである。より混沌を増し、およそ生き物がまともな形で描かれなくなった成れ果ての村。そのあまりに珍奇な風景がさも当たり前のように描かれ、そこでリコたちが出会うあらゆる「新しいもの」が異質さをそのままに、それでいてどこか当たり前に息づいているかのような不思議な感覚。すでに人間性が失われてしまった彼らの様子を見つつ、回想アニメを挟むことで「いかにして奈落が人を失わせていくか」というドキュメンタリーが残酷な形でしれっと描かれる。そこに残されたのは絶望と慚愧の物語のみだが、リコ、レグ、ナナチがそこを訪れ、新たな希望を灯して去っていく。リコたちの行き先は「下へ、下へ」のはずなのに、不思議と向上も救済も同時に存在しているという奇妙な現象。これを許すのがアビスのアビスたる所以。

 こうした現実感の乏しい世界に色をつけたのが製作陣であり、息を吹き込んだのがキャスト陣。レギュラーの面々は言わずもがなだが、やはり今期を支えたのはファプタ役・久野美咲、それに平田広明、寺崎裕香、斎賀みつきという「過去」の面々(あと、マアアさん)。本当に皆に愛され、尽くされた作品であった。3期もいつかきっと作られるのだろうが……いつになるのか、そして、どんな物語になるのか。

 


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<アニメソング部門>

 人とカラオケにいく機会がめっきりなくなってしまい、ここ数年トーンダウンしちゃってます、アニソン部門。あと、実はリモート環境が増えて移動に使う時間が減ったっていうのも大きな問題の1つで、気に入ったアニソンってだいたい移動中の電車内とかで聞いてることが多くて、去年はあんまり必要としなかったのよね。家の中でわざわざ腰を据えて音楽を聴こうと思うタイミングって少ないじゃないですか。


 というわけで、以前あった「カラオケで一番練習した曲」部門は省略してノミネート曲を列挙していくが、まずは「単に歌が好き」部門。アニソンシンガーってのは少ないパイを奪い合うジャンルだが、こんだけ大量に見てるとやっぱり「最近ちょいちょい見かけるな」っていう名前も「誰やこいつ」っていう名前もあって、例えば直近で気になったのはフィロソフィーのダンス、「熱風は流転する」(あやかしトライアングル OP)や、DIALOGUE+の「僕らが愚かだなんて誰が言った」(骸骨騎士様、異世界へお出掛け中ED)。そんで名前も初めて聞いた、という枠ならカノエラナの「ヨトギバナシ」(虚構推理 Season2 OP)。この辺の路線はまだタイアップというだけでアニメ要素があんまり無いのは残念だが、こういう活動を続けているともっとアニメに寄り添うチャンスもありそう。タイアップなのかどうかよくわからんが、新しいアニソンで塗り替えてやろうという意気込みを感じるのは「アイウエ」(うる星やつら 第1期OP)。2期オープニングの「アイワナムチュー」も合わせてそうだが、どうしたってあの古のオープニングのイメージがちらつきそうな部分をキャッチーな新曲と映像で吹き飛ばそうという頑張りが見える。
 個人的な趣味趣向のせいであんまり男性ボーカルは扱ってなかった気がするのだが、今期は結構男性ボーカルでも気になるアーティストがおり、例えばめいちゃんの「ラナ」(エスタブライフ グレートエスケープ OP)。めいちゃんはその後もちょいちょい名前を見かけるけど、割と好みの音質。他にも伊東歌詞太郎は遭遇率が上がっており、個人的には「ひなたの国」(夜は猫といっしょ ED)が好き。直近で変なインパクトがあったのは「くらえ!テレパシー」(トモちゃんは女の子! OP)のマハラージャン。どういう音楽ジャンルなんだろう。
 多分動画配信サイトからの流れなのだろうが、MV風というか、画面に歌詞の文字を盛り込んだ演出が一気に増えたのが今年だった気がしており、代表的なところでは「堕天」(よふかしのうた OP)は気に入って毎回楽しみに見ていた映像。アニメのオープニングで、こうして曲中にブレイクを大胆に入れてくる構造って珍しいよね。他にも勢い任せで無駄に格好いい「Dance In The Game」(ようこそ実力至上主義の教室へ 2nd Season OP)もそうだし、「」(モブサイコ100  OP)も文字の演出がよく効いている。歌い手のMVといえば「チクタクボーイ」(5億年ボタン【公式】 ED)のMVがとても好きです。
 無駄にインパクトの強かった部門をピックアップしていくと、知り合いから「長すぎていっつも気になるねん」という理不尽なツッコミを受けた「MYSTERIOUS」(後宮の烏 OP)。いや確かに長いけども。このねっちょり感が持ち味じゃないですか。年度初頭に話題を攫ったのは「チキチキバンバン」(パリピ孔明OP)。これも何度もリピートしたなぁ。4月時点で「もう、これグランプリで受賞できそうじゃね?」って思ってたくらいにはインパクトのでかい映像と音のコラボである。同じタイミングで並び立つインパクトを与えてくれたのは「恋はエクスプロージョン」(恋は世界征服のあとで OP)。歴史的にも模範的な田村ゆかりの使い方である。なお、かのゆるゆり事件以来、久しぶりに安元爆撃が行われた楽曲としても歴史に残せるのである。公式が安元すんな。そうそう、インパクトで言えばやっぱり「KICK BACK」(チェンソーマン OP)はあげておくべきでしょうね。エンディングも話題になることが多かったが、わたしゃ1回観た程度であんま印象が残らんかったな。あ、あとは当然「冥途の子守唄」(アキバ冥途戦争 ED)。頼むからサトリナ仕事選んで(いいぞもっとやれ)。
 映像の印象が強い部門も軽く触れておくと、やっぱり話題性で言えば「扉を開けてベルを鳴らそう」(ヤマノススメNext Summit ED)。このクオリティの1人作画で週替わりとか、マジで意味のわからんことやりすぎや。映像と歌唱の噛み合い方だと「どきどきアイデアをよろしく」(Do It Yourself OP)も飛ばせず毎週観ちゃってた映像だね。やっぱオープニングってこういうワイワイ系の賑やかが王道。
 あとは最後までエントリーを悩んだ最終候補部門で、まずはお約束の話題作から「花の塔」(リコリス・リコイル ED)。この曲、中毒性の高さがうまいこと説明できないのが不思議なんだよな。いい映像だよなぁ。中毒性が説明しやすいのは「恋愛脳」(Engage Kiss ED)かな。個人的にナナヲアカリは刺さりやすい体質です。刺さる音といえば「HOLLOW HUNGER」(オーバーロードⅣ OP)の野放図なメロディラインも狂おしいほどに好き。オバロの楽曲、今んとこハズレ無いんだよな。直近で変に刺さっちゃったのは「escalate」(NieR:Automata Ver1.1a OP)。まぁ、いつも通りのAimerさんと言えばそれまでだけども、やっぱり後を引く。
 万感の思いのこもる楽曲なら、「人なんだ」(うたわれるもの 二人の白皇 OP)に積み重なった歴史の重み。それに一番不安定で不定形なはずのアニメに「かたち」(メイドインアビス 烈日の黄金郷)というタイトルをつけちゃう残忍さ。かたちになってる。そしてもちろん「青春コンプレックス」(ぼっち・ざ・ろっく! OP)。すべての伝説はここに幕が開ける。エンディングも甲乙つけ難いが、私個人としては「Distortion!!」が一番好きですね。最初の1曲で印象に残ってるってのもあるけど、やっぱ僕は生まれながらにしてドラムを応援したい星の下に生まれたみたいです。ころころしたキャラの映像も初見が一番衝撃だったしね。

 ほんでまだ3曲あるんですわ。

 

 


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<キャラクター部門・女性キャラ>

 もう列挙するだけでも面倒なので正直1年分の総ざらえができてない気もしますが、端折り気味でも頑張りましょう、女性キャラクター部門でございます。

 結局この部門のリストは、「各々の作品のヒロイン勢で誰が1番好き?」みたいな話になりがちで、たとえばLiella!なら死ぬまで嵐千砂都(ラブライブ!ス―パースター!!)ちゃん推しだよ、とか、群雄割拠の異世界ヒロインだけど最終的にやっぱり藤宮さん(異世界おじさん)でよくない? とか、そういうことを延々書いていくだけになりがち。なんとか少しでも関連項目をまとめて書き上げられないもんだろうか。

 男性部門に倣って、まずは真っ当な主人公からリストアップしてみよう。何故か私は「傍で頑張ってる子の方が可愛くない?」みたいな傾向があり、たとえば「Engage Kiss」ではメインヒロインのキサラももちろん可愛いけど、不憫枠に傾きがちな一途な元カノのアヤノさん推しだったりします。「金装のヴェルメイユ」で圧倒的エロさのヴェルメイさんを差し置いて「エロ妄想幼馴染最高やろがい」ってんでリリアちゃんばかり見てしまうのは全く同じ現象ですよね。おかげで主人公がなかなか選びにくく、選ぶとなるとクセの強い連中ばかりが集まってくる。たとえば和平なごみ嬢(アキバ冥途戦争)なら流石に主人公でもエントリーさせざるを得ない。とんとことんで1人選べって言われたら、まぁなごみになるよね。他にも阿波連れいな(阿波連さんははかれない)も主人公の勝ちってことでいいかな。ここのカップルは2人して存在感があるわ。他にもクオン(うたわれるもの 二人の白皇)さん、まめだ(うちの師匠はしっぽがない)さん、柳寿雪(後宮の烏)さん、禍原デス美(恋は世界征服の後で)さん、棟梨ひより(ビルディバイド)ちゃん、エリアーナ・ベルンシュタイン(虫かぶり姫)様、etc. etc....。なんや、割と普通にメインヒロインが応援できてる作品も多かったわ。ちなみに「水星の魔女」みたいな作品だと「そりゃメインヒロイン推しでもあるが、他にも気になる子がいっぱい……」ってあわあわするので困る。でも流石にトータルでの一押しはスレッタ・マーキュリーさんってことでいいのかなぁ。多分、史上唯一「たぬきが2匹ヒロイン部門でエントリーした年」になる気がする。

 少しずつサブにずらしていくと、たとえば緒山みはりちゃん(お兄ちゃんはおしまい!)はキャリさんボイスをフル回転させつつ、「マッドなサイエンティストでしっかり者だけど最終的にお兄ちゃん溺愛」という救いようのなさが高得点だし、リコはん(まちカドまぞく 2丁目)はボイスの際立ちもありつつ、完璧な立ち位置で作品をぐるんぐるんかき回してくれた台風の目。今年度のヒロイン、タヌキとかキツネがやたら多いな?(そうでもねぇよ)。純正の可愛らしさなら他にもリリィ(万聖街)あたりも良いですし、変な声ばっかり並べたいならマルテースちゃん(エスタブライフ グレートエスケープ)とかプリマスちゃん(便利屋斎藤さん、異世界に行く)あたりもいい脇役だ。

 常に主人公サイドを盛り立ててくれるライバルキャラも愛着が湧きやすいポジションで、たとえば矢薙ソニアちゃん(ヒーラー・ガール)なんてのはツンなふりしてデレしかなかったりするし、クールキャラを気取って実は作中屈指のギャグメイカーである夜帷/フィオナさん(SPY×FAMILY)も強烈なキャラ。そして最後までトップ選出候補に残り続けた南雲杏奈(もういっぽん!)や、最終的にお前が主人公か!と思うほどのぷりん/須理出未来さん(Do It Yourself!!)もこの枠。悪口と見せかけた照れ隠しのやつら多すぎんよ〜。どうにも私はこの手のキャラが大好きすぎるようだな。南暁月さん(継母の連れ子が元カノだった)は……ちょっと違うかな? でもキャラの強烈さは同じかも。

 あと、なんか知らんけど歳をとると娘くらいの歳のロリっこに対する目線が変わってきてしまうようで、桜樹八重花ちゃん(組長娘と世話係)とか海坂ミリちゃん(Buddy Daddies)とか、雪平一果ちゃん(であいもん)とかを見てると、なんか泣きたくなる感情までが同居してくる。病気かもしれないので、YESロリーター、NOタッチの精神を大切にしていきたいですね。

 そういや今期は「クッソムカつく悪役部門」ってのがあんまりエントリーされていなかったのだけど、思い出してみるとたとえばラナー様(オーバーロードⅣ)なんて結構インパクトのでかい悪役(?)でしたよね。あの子、作中で一番幸せになっちゃいけないはずなのに幸せなのずるいよな? あと敵キャラっていうと……えっと、ヴィペールさん(BIRDIE WING)とか……。急にキャラの器のサイズが超圧縮されたな? あ、そうだ真っ当なバトルの敵キャラとして見応えがあったレディ・ナガン(僕のヒーローアカデミア)は良いですよ。悲運の敵将、あとCVが種さん。

 というわけで最後はベスト3……と行きたいところだが、最終選考まで残った他のキャラをここで一気に紹介。今年1年、ずっと可愛かった。分け合う美味しさを焼き付けるヒロイン、芙羽ここね/キュアスパイシー(デリシャスパーティプリキュア)だ! やっぱり僕はここねちゃん推しでした。視聴前はらんらんでカタいと思ってただけに意外。まぁ、やっぱり名前をあげとかないと消化不良だよね、錦木千束さん(リコリス・リコイル)だ! リコリコ、典型的な「嫌いじゃないけど突出したところがない作品」なので要素が拾いにくくて不憫。全ての悲しみを背負いきった英雄、ヴエコ(メイドインアビス 烈日の黄金郷)だ! ほんとに彼女の生き様は切なくて、優しくてねぇ……そりゃ泣くよ。しょうがないよ。萌えとかあざとさという概念を吹き飛ばした異次元存在、キャロル・オールストン嬢(トモちゃんは女の子!)だ! ほんと、何をどうやったらあんなド畜生な女の子をデザインすることができるんでしょうね。メインカップルがベタすぎるアニメのサブで出していいキャラじゃねぇだろ。毒の名を冠するからこそ、沁み渡れば命に関わる、トキシッコ・ダナー(不徳のギルド)だ! 不徳は各ヒロインが本当に鎬を削ったが、やはり最後に勝つのはトキシッコなんだよ、旦那。私の魂はリズム隊に縛られ続ける、伊地知虹夏ちゃん(ぼっち・ざ・ろっく!)だ! そう、私は喜多ちゃんよりも虹夏派。やっぱり苦労性のリーダーを応援したくなるし、虹夏には必殺の一撃「自販機前」があるので。ドラマー少女はみんな幸せになってほしいんだ。そして最後の最後までなんとかトップ3に捩じ込めないかと悩み続けたヒロイン、朝井アキラちゃん(よふかしのうた)だ! もう、世界一正しい花守ゆみりボイスの使い方なんですよ。こんな幼馴染がいるのに、コウくんったら吸血鬼に憧れやがる……。そっと隣に立っているだけの幼馴染ヒロインとしては史上最強。早く、朝が来ないかな。

 さぁ、残り3名!

 

 


第3位
‘10 「会長はメイド様!」より「鮎沢美咲」
‘11 「47都道府犬」より「愛知犬」
’12 「しろくまカフェ」より「笹子さん」
’13 「サムライフラメンコ」より「真野まり」
’14 「デンキ街の本屋さん」より「先生」
’15 「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」より「ヘスティア」
’16 「響け!ユーフォニアム2」より「吉川優子」
‘17 「ヘボット!」より「ナグリ・ドツーキ女王」
‘18 「SSSS.GRIDMAN」より「新条アカネ」
’19 「バビロン」より「曲世愛」
‘20 「メジャーセカンド2」より「沢弥生」
‘21 「不滅のあなたへ」より「ハヤセ」
’22 「シャインポスト」より「青天国春」

 「シャインポスト」からは絶対に誰か一人は上がってくるだろうという予感はありました。問題はそれがTINGSの誰になるか。個人的な好みで言うたら理王なんですよね。「持たざる者の悲哀」を描いたシナリオ上の立ち位置もバッチリ好みに合い、単体なら多分理王推し。ただ、異質なメンバーたちを飲み込むお嬢の存在感も強烈で、乗り越えた試練を思えば杏夏だってランキング入りしてもおかしくない人材。紅葉だけちょっと出番が足りなかったが、世界の全てを見ていた雪音だって、そこいらのアイドルアニメなら充分トップを取れるはずだ。

 しかし、残念ながら「シャインポスト」という作品自体が、青天国春というたった1体の怪物を中心に回っていたのは認めざるを得ない事実。単体で可愛いキャラ、好きなキャラはいるが、いちアニメファンとして、アニメの土台となり、そこから全てが始まったキャラクターの大きさを無視するわけにはいかないのだ。すべては青天国春のための物語。人類が、たった1人のアイドルに立ち向かうための物語。それが形成された時点で、春は神なのである。

 まぁ、アイドルアニメっつってこの構造が出来上がった時点でもう勝ちよね。完全に方法論としては少年漫画のそれなのに、TINGSの5人は最終的に立派な「アイドル」へと上り詰めている。倒さなければいけないラスボスをその内に秘め、「倒し、乗り越える」ことこそが最終的な融和を生み出す。そんなドロドロの坩堝を生み出した化け物をここで取り上げないわけにはいかないのだ。史上初の「怖くて見てらんない系アイドル」、刮目して見よ。

 


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○「推しの子」 7

 正直なところを話すと、来週以降のこの作品をあまり観たくないとまで思いました。ここから、1話目のインパクトを超えることは不可能じゃないかと、そう思えるくらいの1話目だったもんで。

 一応弁明しておくと、まずもって「1話目が1時間半」というとんでもねぇ形態は、正直他作品と比較できる域を超えてるので平等に評価のしようがないです。下手な劇場版よりも長い時間やってるわけで、そりゃ破壊力が増大する(可能性が高い)わけで。「尺が長い」という武器は、今作に限っては思いっきりプラスに振り切りました。そこんところは多少割り引いて考えないとフェアじゃないな、とは思うけど……ただ、初回で1時間半やって、こんだけの結果が出せる作品ってのはほとんど無いとは思いますが。

 原作未読。「かぐや様」の作者が原作、「クズの本懐」の横槍メンゴが作画、そして各種漫画賞などで話題になっていたこともあって気にはなっていたのだが、まぁほら、なんか軽そうな題材だな、と思っていたので積極的に触れることもなく、アニメ化が決定したあとは「ほなアニメでええかぁ」ってんで意識的に避けていた。そして、その回避のおかげでアニメ1話目が最大のフィードバックをもたらした。まさかこんな作品だとは思ってなかったんで。いや、「どんな作品か」ってのは1話目を見終わった後でも受け止めかねている部分はあるのだが。

 私のように初見で触れる視聴者もいることを考えると、この「初回1時間半」という業界を揺るがす大チャレンジは大きな意味があったと言えるだろう。おそらく最初の30分だけでも文句なく作品としては成立するだろうし、今回やったところを3話分割で放送してもそこそこの話題性はあったとは思うのだが、やはり3話まで見てもらうハードルってのは現代社会では相当に高いものだ。「1話目」にあたる内容ってのは、言うてしまえば「今死んだら推しの子に生まれ変われる」というネットミームを取り上げた一発ネタにしか見えないわけで、面白おかしくもあるが、ぶっちゃけ「キモい」。キモオタ根性に慣れてしまっている人間ならそこで視聴をストップする理由にはなるまいが、「ハイハイ、キモいオタクの妄想劇場ね。アイドルアニメでもあるだろうし、キモいだけだからパスパス」となってもおかしくはない。

 しかし、(私はこの後の展開がどうなるか知らんが)今作はそんな単発ネタだけで終わらせるような作品ではなかった。いや、作者が何を思って連載をスタートさせたかは分からんし、マジで思いつきで「推しの子に生まれ変わる」シチュエーションがやりたかっただけの可能性もあるが、あれよあれよと展開するストーリーはそんなネタの範疇から軽々と飛び出し、あまりに多方面に刺激をばら撒いている。90分の放送の中だけでも、永遠のアイドル・アイの物語があり、その娘として生まれ変わって生きる意味を与えられたルビーの物語があり、最終的には復讐鬼と化したアクアの物語がある(社長の奥さんの物語だってある)。マジで下手な劇場アニメなんかよりもミッチミチに激動のドラマが詰まっており、私なんぞラストで号泣してしまった。開始30分の「キモすぎるオタクの妄想スタート」から一気にここまで駆け抜ける90分。これはもう、戦略的大勝利であろう。まぁ、だからこそこの先を見るのが怖くもあるのだが……。

 これだけの大勝負に挑んで勝ちをもぎ取ったスタッフには賞賛の言葉以外出てこない。制作は最近振るわないイメージがついて回っていた動画工房。しかし、そんな動画工房が「わたてん」を作り上げた平牧大輔とがっちりタッグを組み、どでかい看板をぶち上げた。作画にかけたカロリーが凄まじいというのもあるが、1カット1カットの演出力でこの「キモくて壮絶な」作品世界を1つ1つ根付かせ、説得力を増大させる。個人的に打ちのめされたのは、最初にキービジュを見た時に「どないやねん」と思ったアイ一家の抱える目の中の星の扱い。どう足掻いても違和感の出る妙なデコレーションにしかなってないやろ、と思って見始めたのに、あの星を駆使した演出が実に多彩で、星を見せるだけであらゆる情報を伝えてやろうとしているかのようである。使える要素は全て表現のためのツールとして機能させ、90分という「盛りすぎの時間」をさらに濃密にさせる。これだけの内容を90分で回し切ったのは神業である。こんだけのことを1話目でやってくれたのだから、残りの話数も責任もってやってくれるってこと……だよねぇ!

 繰り返しになるが、もうここから先を観たくないという気持ちは来週まで怖々と抱え続けるだろう。何しろ原作は未完なわけで、どう足掻いてもこのアニメは満点の最終回を持ち得ない。それなら、To Be Continuedが一番綺麗(?)だったこの1話目だけでやめといたらいいんじゃないかと、「そういう劇場アニメだったのだ」と思えばいいんじゃないかと。チキンな私はそう思うのです。……そういうわけにもいかないんだろうけどね。覚悟を持って、今作スタッフがどこに辿り着くのかは見届けていきましょうね。みんな、がんばろ。

 最後に蛇足でしかない中の人の話。当たり前だけど、これだけの作品だとキャスティングも一分の隙もないわね。1話目のMVPが高橋李依だったことは議論の余地はなかろうが、ルビー役の子がド新人というのもびっくりである。こんだけ重要な役に引っ張り上げられたというのは、キャスティング側の期待の表れなんじゃなかろうか。まぁ、作中の言葉を借りれば「業界全体の投資」なのかもしれないけど。1話目の幼児期は、転生慣れ(???)してるゆーみんにうまいこと引っ張ってもらったし、今後の展開も楽しみである。あと渋くいい味出してたのは社長の嫁さん役のLynn。1話でこんだけ印象が変わる役どころを、あくまで主役連中を食わない範囲でのプランでしっかり盛り立てる。バイプレイヤー声優(?)の面目躍如である。

 

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○「ワールドダイスター」 6

 まーたアイドルアニメかと思ったらまさかの舞台役者アニメだった。まんま「大スター」とは思い切ったネーミングをつけてくれたもんだが……これまた狙ってるダサさだろうから面白いといえば面白い。ちなみにイントネーションは普通に「大スター」と同じようです。普通に考えたらこの字面だけだともっと英語チックな発音だと思うよな。カジキイエローの「フードマイスター!」と同じ。

 さて、舞台アニメといえば、そりゃもう高い高い壁が何層にもそびえ立っているのはご承知の通り。今作の舞台は東京・浅草だが、同じ東京下町で畳屋の爺さんに育てられた歌劇の少女が主人公のアニメは見事な作品だったし、下町といえばスカイツリーだが、ちょっと足を伸ばせば東京タワーをポジションゼロに叩き込んだ舞台少女が未だきらめきを発信し続けている。舞台役者をテーマにするということは、少なくともこの2本と比較されることを覚悟しなければならないということ。はっきり言って、「無理ゲー」である。しかしまぁ、先人たち(特に後者)が異常なだけで、後発組がそんな無茶に倣う必要はない。できる範囲でやれる「いいアニメ」はあるはず。正直評点をどうするかはギリギリまで悩んだが、1話目はそこかしこから「何か風穴を開けてやろう」という気概が感じ取れたので、期待をこめてこの点数で勝負だ。

 正直、1話目の引きはそこまでではない。「大演劇時代」というゴールドロジャーが何も置いてきてない感じの時代は引き笑いくらいしか出てこないが、思い返せばバンドリだって「大バンド時代」だし、もっとよく考えてみれば聖翔音楽学園があるあの世界だってレヴューにどの程度の意味があるのかはよくわかっていない。とにかく舞台が超大事な次元がここに生まれたのだから納得するしかない。そして、そんな憧れの舞台を目指す主人公の少女が何かしらのポテンシャルを秘めているのも、「主人公だから当たり前」と言われたら間違い無いので、これまたしばらくは様子見だ。なかなか「舞台で凄まじいものを見せつけるのだ」という事象をアニメで表現するのが大変で、1話目ではドイツ人少女と主人公の2人の舞台テクニックが披露されたわけだが、ことドイツ人の方はだいたいがオーディエンスの説明台詞で処理されてしまったため、画面を見ていて「こいつすげぇな」とはなかなか思えない。「舞台役者がすごい時代になったんだぞ」という世界観の説得力は今一つ。ここで何か炸裂するものがなければ、おそらくは有象無象のアイドルアニメなんかに飲まれて「フツーの作品」で終わってしまうことだろう。

 一応、「舞台演劇をやってる時だけは特別なんです」という説得力を増す方策として、演技中だけモーションの質が変わるという演出になっており、細かい技術は分からんがモーションキャプチャーなのか、それとも動画処理になにかエフェクトがかかっているのか、普段よりも「生身に近い」動きが見えるようになっている(八戸の駅で親友が動いた時もそうだった)。また、作画全般はちゃんとキャラを描き切ってやろうという頑張りも見えるし、この手のアニメでは必須条件となった「とにかくクドいくらいに描き込まれた目」のデザインもばっちりだ。あとはほんとに脚本と、文字通り「舞台の演出」次第。個性的な役者は色々出てくるようなので、その辺のキャラで賑やかさが出せればチャンスもあるんじゃなかろうか。

 そして、個人的にはたった1つ、主人公の親友ポジの青髪の今後の挙動が一番の注目ポイントだ。正直、この手の作品の主人公ってのは基本的に真っ直ぐキャラでブレないのでそこまで意外性はない(青天国春くらいまでいけば別だが)。となると脇でそんな怪物を支える「嫁」ポジションが非常に大事になってきて、愛城華恋には神楽ひかりが、そして渡辺さらさには奈良田愛がいたのだ。そして今作でも、どうやら鍵を握りそうななんとも気になるお友達。しかも主人公が石見舞菜香なのに対し、青髪は長谷川育美。もう、ぶつける気満々の配置だろう(エンディングの映像とかでも明らかだけども)。果たして、ひかりになるのか、愛になるのか、はたまためぐっちゃんになるのか。関係性を、関係性を見せてくれ!

 ちなみにこちらの舞台にも佐々木李子がおり、当然のように森なな子もいる。こんなもん、実写版の舞台やるしかないやんけ。

 

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○「THE MARGINAL SERVICE」 5

 宮野が胡散臭いミキシンに引きずり込まれた秘密基地で、杉田・中村・下野が待ち構えてたらそりゃ笑っちまうだろ。いきなり中の人の話で恐縮だが、こればかりはしょうがない。狙いすぎだ。マフィア梶田がいないことが奇跡に思えるくらいだ。

 クソダサオリジナルアニメ。よりにもよって「タイバニ2」と同じタイミングでこれが地上波放送されることになってしまったのは因果を感じてしまうが、「タイバニ」の時点ですげぇ世俗に塗れてて胡散臭いってのに、その雰囲気をさらに何倍も胡散臭く、チープにしたようなコンセプトの作品である。ちょっとイカした路線を狙っていた「HIGH CARD」が終わってこれが始まったことで、なんとなく「春だなぁ」という気持ちになったり、ならなかったり。「クソダサアニメ」は春の季語。

 ただ、ダサいだのチープだのと散々な言葉を並べてみたが、ひょっとしたらこのダサさは悪いダサさじゃないかもしれないという若干の期待を持っている。だって、どう見ても「格好いいものを作ろうと思ったのに壊滅的なセンスでダサくなった」やつじゃぁないでしょ。いくらなんでもこのデザイン性は「あえてダサいものを作ろうと狙ってダサさに振り切った見せ方をしたい」という制作意図を感じる。変身(?)後の衣装もそうだし、虎の子のロケットランチャーの様子や、怪人変身後のフォルム、あとは全体的な作画の調子なんかも、あえて一時代前のレトロというか時代遅れというか、そういう空気を狙って作っているはずだ。ニュアンスはだいぶ違うが、かつて昭和特撮もののオマージュを狙った「コンクリートレボルティオ」があったが、あそこまでデザインを振り切らず、「普通のアニメに見えないこともない」ギリギリのラインでダサレトロを攻めている。そんな印象の作品。

 まぁ、勝手にこちらが期待しているだけで本当にショボいだけなのかもしれないが、マジでそうだったら本当にこの世に生まれてきた意味が分からない作品になってしまうので、今後、この独自の空気を活かす方向性で際立っていくことを期待しようじゃないか。……逆にマジでなんもなかった場合の衝撃の方がでかくて面白い可能性すらあるが……。ちなみに宮野・森川・ミキシン・杉田・中村・下野というやりすぎキャスティングの中の紅一点を任されたのが名塚佳織である。かもさんならこれくらいの現場はまるっと飲み込めるという信頼感がある。杉田の2、3匹くらいなら素手で勝てるだろう(どちらへの信頼なのかは謎)。

 

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○「事情を知らない転校生がグイグイくる。」 4

 Twitter漫画とかでありそうな、ひとネタで作るシチュエーションコメディ。一応連載はガンガンらしいですが、あんまり商業誌っぽくないユルい絵柄だなぁ。どっかで見た絵だと思ったら「賭ケグルイ(仮)」の人か。

 最近多い「1話目でやりたいこと全部やっちゃった気がするんだけど、こっからなにすんの?」系作品。「いじめがあったクラスに転校生が来て、その転校生が天真爛漫すぎていじめの空気が読めず、かわいそうなヒロインを助けてあげるヒーローになる」という展開。やりたいことはすごくわかるが、1話目でそういう展開しかなかったのだから、やりたいことは全部やりきってるんじゃなかろうか。このネタを今後何度転がされても「先週見たわ」にしかならない気がするんだが。

 映像については、キャラの髪の毛のグラデーションが随分特徴的だなぁ、くらいの印象で、元絵がユルすぎるので流石に可もなく不可もない。なんか変な絵のスタジオなんだが、どうやら「サインポスト」という社名になってるけどもとはぴえろ系列の会社だとか、かつてクソアニメを色々と提供してくれたアームスの系列だとか、あんまり良い印象は受けないところ。ついでに言うと監督の名前も確認したら真っ先に「DYNAMIC CHORD」という名前が飛び出してきて色々楽しくなってきた。

 まぁ、過去の履歴なんてもんはあくまで参考でしかないので、この作品の評価はこの作品のみでしなきゃいけないわけだけど、個人的にどうにも及び腰なのは、そもそも「いじめ」というテーマ自体があんまり見たいものではないから。フィクションの中で扱う分には別に構わないのだが、それを最終的にギャグ漫画の一部にしてしまうというのが生理的に受け付けない。主人公のキャラが成立するのはクラスにいじめがある前提の上のみなわけで、それを「ただあるもの」と受け入れないと成立しない。女子高生どうしの「いじめ」とかだと色々と打算や思惑があってのものなのでドラマとして消化しやすいのだが、このくらいの歳の小学生のいじめって、本当に理屈もなく、ただDNAに刷り込まれた行為としてやってるようにしか見えないので本当にタチが悪いのである。主人公のムーブも、どうにも「俺、何かやっちゃいました?」の亜種のように見えてきてしまうし、あんまり相性は良くなさそう。ヒロインの声は可愛い(結論)。

 

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○「デッドマウント・デスプレイ」 5

 もうこのタイトルが言いたかっただけちゃうんか、と思わないでもないが、よく考えればこれはこれで意味はわかんねぇな。

 いわゆる(?)逆転生作品。こうしてみると転生と逆転生ってどっちの方がオリジンなんだろう。「異世界から変なものが来る」方が起源としては古そうな気もするんだよな。真面目になろうやファンタジーを研究してる人はその辺の歴史認識とかちゃんと作れてるんでしょうかね。

 さておき、こちらの作品は「デュラララ」の成田良悟が原作という情報がオープニングで飛び込んできてちょっと気になった作品。ただ、作風や個性を感じさせるような要素はまだ出てきておらず、1話目はむしろ一発ネタのトリックプレイみたいな展開。正直、Aパートの勇者みたいなやつと髑髏王(?)のバトルシーンに関しては「作画で頑張ってるところを見せたいのかもしれんけど、流石に長すぎひんか?」とちょっと飽きており、それだけを理由に辛い採点をしてやろうかとすら思っていたのだが、Bパートで怒涛の展開を迎え、ラストのオチに至った時点で「あ、そゆこと?」と理解が追いついたために一応の動機は理解できた。なるほど、異世界パートであんだけ勇者(?)の戦いをしつこく描いていたのは、ある種叙述トリックみたいなものを強く印象付けるための方策の1つだったわけだね。まぁ、「そっちだったのか!」と衝撃を受けるというよりも、なんかぬるっと、「あ、俺が勝手に間違ってただけだ……」みたいな認識になっちゃったからあんまり鮮烈な驚きにならなかったのは残念だけども。

 というわけで、異世界ものとしてはどちらかというとモモンガ様の霊がついたような状態で展開するお話。流石にこっから単なる「現代チート」をやるとも思えないので、「殺人」というテーマをベースに何か血みどろの展開になるんじゃなかろうか(でないとタイトル詐欺だし)。主人公が多少の無双をするくらいは構わないし、1話目で登場したヒロイン(?)がここから生き返って活躍してくれるのならちょっと楽しそう。いや、生き返るかどうかは分からんけど。むしろ死にっぱなしで殺した本人が驚いてたけど。

 結局、人類には根源的な三大欲求というものがあり、その1つである「水瀬いのりボイスの女の子に殺されたい」に抗うわけにはいかない(2つ目は「上田麗奈ボイスの女の子に殺されたい」で、もう1つは各自明日まで考えといてください)。愉快な殺人いのすけに殺されたいので、ぜひ頑張って復活させてください。

 

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○「君は放課後インソムニア」 6

 1話目のサブタイトルが「能登星」だったもんだから「能登星!」って叫んだらマジで能登が登場してちょっと笑った。ほんでもうちょっと調べたらこのアニメの舞台が石川県でもっかい笑った。石川県、無駄にアニメでは人気があるの謎だ……生きてるうちに1回も足を踏み入れない人も多いだろうに……「石川は出られるけど入られへん!」。

 なんとも不思議な雰囲気を持った青春ストーリー。扱っているテーマは「よふかしのうた」に近い部分があるが、あれはまさに「夜」がテーマであり、夜の美しさ、楽しさや時に怪しさも含めて壮大なモチーフとして描かれているが、今作のメインは別に「夜」ではなく、あくまで「夜に寝られないこと」、つまりは不眠、インソムニアである。不眠というのはそれだけではネガティブなイメージになり、実際に主人公とヒロインはそんな不眠に悩まされてはいるのだが、いつしかその悩みは2人を繋ぐきっかけとなり、これまであんなにも億劫で怖かった夜が、ちょっとだけ楽しくもなる。吸血鬼などの超常も一切ないだろうし、あくまで「夜に向き合う『人』」をテーマにした作品だと考えるべきだろう。これはこれで面白い切り口だ。

 原作は「スピリッツ」掲載の漫画ということでさっぱり知らないが、合間のCMではなんと同時並行で実写映画まで作られていることが報じられているので、それなりに人気があり、クリエイターの興味をひけるだけの魅力を持った作品だと思っていいのだろうか。正直、アニメ1話目だけではなかなかつかみどころもなく、ライデンフィルムによる映像は悪くないのだが、「最高!」と叫ぶには色々と足りない部分も多いもどかしいライン。ラストシーンの「夜明け」の美しさなどは文句なしで加点要素なのだが、そこに至るまで、どうにも人物のモーションにカクついてしまう部分があるのが惜しいところ。いうて「中の上」くらいが妥当な評価だろうか。

 ただ……これも「カワイスギクライシス」と同じで、「共感高評価」みたいな部分があります。もしかしたら「よふかしのうた」の感想なんかでも書いてたかもしれないけど、私も幼い頃から不眠の気があり、この歳でも未だ不眠気味で苦労している。中高生時代とか、ほんとなら一番の成長期で、ぐっすりとストレスなく寝られて青春できれば楽しかろうが、そんな中での「寝られない」という状況への恐怖や焦りは今でも思い出してしまう。そうした身の上のせいもあり、今作における「不眠」への迫り方はどうにも他人事ではなく、メインの2人の境遇にはちょっと同情してしまうし、そこから発展する関係性というものには羨ましさと不思議な生々しさも感じる。寝られないという苦痛を若者特有の悩みに寄り添わせながらの作劇なら、通り一遍の青春ストーリーよりも私は楽しめてしまうようである。まぁ、今後どういう方向に転がってもおかしくないので単に1話目ボーナスというだけで終わってしまう可能性もあるが、それはそれでね。

 監督は名前で調べてもあまりデータが出てこないのでまだ若手で初の大役の様子だし、メインヒロインを演じているキャストも新人っぽい。不確定要素が全部プラスに向くことを願おう。

 

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