その動きはトキ! みたいな戦闘、第7話。やたらコマ送りで残像を残したスロー演出が多かったんですが、あれは今回の敵の持つ独特の重量感を出したかったがための演出だったのか、それとも単なる尺稼ぎだったのか。過去に「天空戦記シュラト」の紙芝居演出で衝撃を受けた経験がある身としては、ああいう演出を見るとそれだけで胆が冷えます。
前回、前々回と急に物語が動いたために「一気に加速するか?」と思われた本作だったが、今回は多少ブレーキがかかった感。一応犬がしゃべることが確定して色々と意味深なことを漏らし始めてはいるのだが、大体どの「謎」もこれまで通りのお話で、特に新規で得られた情報もなく、思わせぶりが単純に降り積もっただけの状態である。ギモーブ店長や先生が怪しいのは相変わらずだしなぁ。
今回現れた新しい要素としては、犬の語る「願う者」の存在がある。彼が店主を務めていたという「願いを叶える店」の話や、常に「等価交換を対価として求める設定」などはモロにCLAMP作品「×××HOLiC」の侑子さんのお店であり、彼女も数々のあやかしに対峙して夢幻のごとき客を相手にしていたことがシンクロしているのだが、このBLOODという世界にまで侑子さんや四月一日が乱入してくることはあるんだろうか。犬の声が四月一日と同じっていうのは……気にしすぎ? 監督も制作も一緒だから、コラボレーションが無いとは言い切れないんだよねぇ。単に、個人的に侑子さんの活躍が見たいっていうだけなんだけどさ。
そして、今回はここ2週の鬱憤を晴らすかのように、三宅健太のいい声で「古き者」がしゃべるしゃべる。突如のどかな田園風景に出現したビシャモンとアシュラマンのコンパチクリーチャーは、ズシンズシンとあたりを破壊して周りながら、小夜の無知を笑い、小夜の父の愚かさをなじった。どうも、簡単にまとめるなら「小夜は何も知らずに親父にいいように利用されてるだけなんだよ。その刀も御神刀でもなんでもないよ」ということらしいのだが、刀振り回しながらしゃべるからなかなか会話が繋がらない。腕が8本もある上にあんだけの重量級なんだから、本気を出せば小娘など一撃だったと思うのだが、散々焦らした上で調子に乗って、なんだかあっさり負けてしまった。2週前の川澄ボイスの方がまだ張り合いがあったなぁ。
ただ、少しずつ言葉が通じるようになった「古きもの」の理知性を象徴するように、今回の奴はついに「人間の顔」まで手に入れてしまっている。もう、そこらを歩いている普通の人間との区別が付かないレベルとなっており、「古き者も言葉をききます」と言った小夜の懸念がダイレクトに成長していることが分かる。このままの調子でいけば、普通に会話をしている先生やギモーブ店長が「古き者」でも何の不思議もないわけだ。もちろん、親父さんも。こういう進化って、思い返せば最後に渚カヲルを用意したエヴァの構成に似てるかも。
ギモーブ店長が持ち出す謎のお菓子「ギモーブ」。ネットで調べるとちょっと変わり種のマシュマロみたいなもんらしいが、店長さんは「唇に近いところ」の感触に似ているという。どういうことなんだろう。舌? でもマシュマロだったらもう少し柔らかいところだから、「唇」っていう答えの方がしっくりくるんだけど。何にせよ、「舌」が答えだとしたら、人体では数少ない、筋肉の塊が皮膚に守られず露出した「肉」の象徴が舌であろうし、「唇」が正解だとしたら、唇の赤はこの作品のテーマである「血」の色がそのまま出たもの。どっちにしろ、あまり気持ちの良いイメージではなさそう。
怪物退治を済ませた小夜は、血だまりの中の「真っ赤な自分」を見て倒錯した感情を覚え、彼岸へと旅立ちそうな様子だった。「血」という連綿と受け継がれたこの作品のテーマは、最終的に小夜やこの世界にどんな姿を与えることになるのだろうか。
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