「リトルバスターズ!」 4→3
初回放送で抱いた疑問が、そのまま最終回まで持ち越された作品。その疑問をどのように形にしたらいいのかはよく分からないのだが、一言でいうと、「これ、なに?」である。結局、何がしたいアニメなのかがさっぱり分からないまま、シリーズが終わってしまった。いや、細かいポイントでの目的意識は分かる。「ここで感動させたい」「ここで泣かせたい」というのは分かる。ただ、それってあまり分かっていい部分でもないんだけども。そして、そんな小さな「いい話を見せたい」がとりとめもなく集まって出来上がった2クール。素材の欠片はポロポロとこぼれているものの、1つのシリーズとしてこれをまとめる要素とは何だったのか、それがどうにも理解しかねる。
一応、原作ゲームをやっていたそれなりのファンを捕まえて「なぁ、リトバスっていつ面白くなるの?」と聞いたら、「いや、あれは本気でやろうと思ったら10クールでも足りないくらいだから」という答えが返ってきた。うん、なんか質問の答えになってない気がするのだが、その答えをそのままで解釈すると、「つまりアニメは面白くならないよ」と、そう言っていたのだろうか。聞いた相手が悪かった気もするのだが(普段からあまり日本語が通じないタイプの困った奴だから)、それでも、このアニメは原作ファンでも何か悩ましげな顔色がうかがえる気がするのだ。「これじゃ本来の良さは伝わらない」と思っている部分もあったのかもしれない。だとしたら、原作を全く知らない私は、楽しみようが無いではないか。
個人的に一番気になったのは、やはり総合的な目的意識の希薄さである。1話目の時点から、作中で「リトルバスターズ」と言われている面々が何故集まり、何故仲良くしているのかが分からなかった。別に幼なじみなら幼なじみというので構わないが、それならばもっと友情を前面に出した描写が強くないと世界が分からない。全編通じて主な流れはリキが女の子にちょっかいを出すことで女の子がグループとの関わりを持つようになり、それが必ず悲しいお話になり、何とかして解決すると最終的に仲間になるというもの。つまり、後続の面子になればなるほど、「悲しいお話」で友情タッグを結ぶ経過が見られるのに、初期メンバーにはそれが無い。合間でちょこちょこ過去の話が語られることもあるが、基本的には主人公リキの一人語り形式であり、彼はナルコレプシーと独特な価値観のせいで、なんだか視点人物として取り入れにくい。彼の目線から見ると誰もがヒーローに見えるし、誰もが悲劇の主人公になる。「ここがベース」という基準点が見えず、どこからが基盤でどこからがお話なのかが分かりにくい。
そして、「お話」をまとめるための軸が見えない。困っている人がいたら助けてあげるというリキの性根は立派なものだろうが、基本的に彼は非力で、頼りない人間だ。そんな彼が拠り所としているのが緑川ボイスの恭介というキャラだが、アニメを見ていても、この男の魅力が全く伝わらない。単に偉そうな物言いで、頓狂なことを言うだけの変人である。そこにカリスマ性が見えず、リキが彼に依存する理由が分からない。もちろん説明はある程度されているが、恭介が単体で活動して存在感を示すことが無いので、うわべだけのものに見えてしまう。そんな彼が突然提案した「野球チームを作ろう」が、物語の主軸たり得るわけがないのである。周りを囲むキャラも、男はアホだし、女の子はデザインのせいもあってか、やたらイメージが被る。途中から完全にモチベーションを失ったことも理由だろうが、最後までキャラの名前や特徴を覚えられずに終わってしまった。
結局、ギャルゲエロゲは苦手なので、この作品が全く受け入れられずに終わっても「まぁ、そんなもんかな」とは思うのだが、ほとほと不思議なのは「CLANNAD」は直撃したってことなのですよ。2作を並べて見ると、非常に乱暴なまとめだが、ヒロイン勢の配置なんかは割と似ているし、悲劇の質も似たようなものだったはず。それでも「CLANNAD」は見入ってしまったのは、京アニの力ももちろん大きかろうが、やはり岡崎&渚という明確な中心線が見えやすく、加えて朋也のキャラが親しみやすいものだったおかげだろう。やはり、リキの受け身体質では、ここまで散逸的なシナリオをまとめるだけの求心力はない。そういえば恋愛要素っていう分かりやすい中軸もこのリトバスにはないんだよなぁ。これで本当に10クールかかるのだとしたら、作中では一体何を掘りさげているのだろう。お化けみたいな二重人格ぎみの少女の生い立ちとか、謎の国でロケットを飛ばす突飛な天才幼女の奮戦とかなのか。見ていてもあんまり盛り上がらなかったのは、どれもこれもあっさりしすぎていたせいであり、ひょっとしたらがっつりゲームで掘り込んだら面白い話なのかもしれない。まぁ、他のギャルゲー同様、プレイしたいとは思わないが。
放送前に何かと話題になっていたし、よく聞くタイトルだったので過剰に期待した向きはあるかもしれないが、何を期待してものれんに腕押しで、何も返ってこない作品だったので本当に拍子抜けして終わった、というのが今作の結論。周りを取り囲むガジェットに良い物は転がっているのだが、それだけでは流石に評価がプラスに転じることはない。まぁ、「ゲームをプレイした人のための商品」だったと思って、諦めるしかない。たまにそういう作品もあるからね、元々参加権自体が与えられていなかったのだろう。
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