最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
○「悪の華」 4 さぁ、凄いのが出てきた。巷ですっかり話題になっていたので、覚悟を決めての視聴。原作は未読なので作品情報はほぼ皆無の状態。この作品をどのように受け取るかで、今後のアニメ視聴にも大きな影響が出そうな問題作である。 まず、第一印象であるが、世間での有象無象の意見を見てしまった後だったためか、思ったよりもネガティブな印象は無かった。どうも騒ぎ立てる声ばかりが大きいので悪印象がほとんどだったのだが、やはりそうした発信者は悪意を多分に含んだ情報を出しているのは事実だろう。そこかしこに散らばるキャプチャ画像は「ひどく見える」部分が多く、実際に動画として流れてみると、ほとんどのシーンについてはそこまで「キツい」ものではない。もちろん、なんの事前情報も無しにこれをぶつけられたら「なんじゃいこりゃ!」となって拒絶する気持ちも当然理解出来るので、自分がそういう立場だったらどうなっていたかは分からないのだが。まぁ、原作を知らないのもある意味助かっている部分なのかもしれない。 今作の特徴は、とにかく「全編ロトスコープ撮影」というその1点である。このことについての長所と短所を、1話目の段階で判断出来る部分だけでも検討してみよう。まず、長所であるが、やはり「実写取り込みからの書き出し」ということで、問答無用のリアルさがあげられる。普段のアニメでは背景がどうこうとかモーションがどうこうというのが話題になるわけだが、今作の場合にはリアルもなにも、実写なのだから「現実への近さ」は疑いようもない。キャラクターのモーションだってそのまま人が演じたものを使っているわけで、そりゃ「リアル」になるのは当たり前の話である。こうして産みだされた画面は、既存のアニメの尺度では測ることが出来ないものであろう。何しろコンテ担当も演出担当もクレジットが無いのだから。「リアルさ」の超越によって普通のアニメでは実現出来ないレベルの画面が産みだされ、たとえばクラスメイト全員が一斉に起立、着席するシーンなどでは、1人1人が全て違うモーションで動くことを許すし、紙に何かを記入するシーンでは、紙がぺらりとめくれる細かい動きにまでアニメが「ついていっている」。登校シーンでたくさんの生徒たちが自由に動くシーンなども、まさに「実写さながら」である。こうした画面が産みだせるのは、当然ロトスコープならではの結果といえるだろう。そして、普段の画面が「リアル」に寄ればこそ、主人公の心中に芽吹いた「悪の華」は唯一のアニメ的存在となり、その存在感を際だたせることとなる。原作を知らないので推測でしかないが、このまま中学生の男女の心情に切り込む作品になるのだとしたら、この拭いようのない「リアル」は武器になると思われる。 ただし、やはり反面でアニメとのかみ合わせの悪さ、新しいものへの拒絶心が強いのも事実である。「実写に近いからすげぇ」と手放しで褒めるのだったら、そこにアニメの存在意義はない。「じゃぁ実写でやれよ」と言われておしまいである。もちろん、今作の場合は「実写とアニメに折り合いを付けて、アニメの良い部分は使っていこう」というのが意気込みとなっているわけだが、現時点においては、未だ食い合わせの悪さによる短所の方が目立っている、というのが正直な感想である。 「アニメで描く」ことの利点というのは、制作過程において必然的に産みだされる「捨象すること」「誇張すること」そのものである。横文字で書くとデフォルメ、ということになるが、現実にあることないことから描きたいことだけをピックアップし、それを際だたせるのがアニメや漫画に共通する特徴だ。今回のロトスコープの場合、そうした「捨象」の度合いがどうしても低くなり、画面に乗せられた情報量は多くなる。すると、せっかくアニメにして「掘り込むこと」が可能になったはずなのに、その集約性は弱いものになってしまう。 具体的に映像的な部分で見てみると、詳しくは知らないのでこれも推測になるが、ロトスコープによる映像処理は、おそらく「動いた部分」をアニメーションとして反映するというデジタル的な処理が大きいと思われる。登下校時の生徒たちを遠景から撮ったカットなどに分かりやすいが、遠くに映る学生たちの顔は、最初のっぺらぼうであり、近づいて動きが認識出来るレベルになると、まず目と口が表れ、次にディティールが分かるようになり、口元の動きが見える。遠くにいる人間は、表情の情報が捨象されるのだ。現実の「見え」を反映すればこれは「リアル」でこそあるが、結局、そこに情報を載せることが出来ない。主人公が憧れの女子生徒を遠くから見守るカットでも、対象の女性は遠くにいるため、彼女の目線が何を見て、その顔が何を語っているのかが伝わらない。普通のアニメならば、この状況にいくつでも意味を載せることが出来るはずなのだ。残念ながら、ロトスコープ製の「リアル」にはそれが出来ない(もしくはしていない)。動きと認識されないような細かいモーションも画面上に表れず、アニメでお馴染みのリップシンクなども少なくなるので、どこで誰がしゃべっているのかが分かりにくい、なんていう端的なデメリットもあるし、流石に動画処理にも限界があるのだろう、どうしてもコマ送りのように動きが飛び飛びで処理されるのも見た目に分かりやすい難点だろう。 1話目で全てを判断するのは早計だろうし、まだ監督ら制作陣の意図は汲みきれないのでしばらく様子見になると思うが、現時点に於いては、ロトスコープという思い切った手法を採用したことによって産みだされたプラスの要素は、アニメーションという媒体が元々持っていたメリットを損なっている部分が多く、こちらの目が慣れていないこともあり、まだまだネガティブな部分の方が目立っている。総合すると「やや不可」である。もちろん、わざわざこのようなとんでもないスタイルを採用しているのだから、その利点を活かすような見せ方ががこれからどんどん広がっていく可能性もあるわけで、新しい物好きとしては何とかそうした萌芽を見つけられるよう、じっくりとこの「実験」には付き合いたいと思っている。しかし、どうしっても既存のアニメに慣れてしまうと、退屈な部分が多いのは事実です。どうしたってカット数が少なくなるし、焦点が定めにくいのでダラダラと間延びすることになっちゃうんだよなぁ。あと、完全に個人的な事情を付け加えると、主人公の中の人があかんのがね……事務所を見る限り、少なくとも声優ではないよなぁ。 PR |
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