「ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される」 5→6
今作の教訓:しっかり語学をやってないと犯罪者扱いされる。
なんか、当初想定してたのとは全然違う方向に進んだのでちょっと面白かった作品。いや、ベースはなろうなんだよ。タイトルにそう書いてあるんだから。王子からの無償の愛とか、それを受けてなお残るヒロインの圧倒的自己肯定感の低さとか、なろうテンプレ部分に辟易する要素は残しつつも、今作はそうしたテンプレについて、「説明することを目指している」というか、最初から設定ありきで脳死の展開を作るのではなく、「なんでそんななろうみたいな状態になってしまったのか」を物語のベースに敷いて描こうという様子が伺えた。ちゃんと必要な要素として描いてくれるなら、別になろうベースは悪ではないのである。
とはいえ私もなろうの全てを知っているわけではないので、比較するとしたら手近ななろうアニメになる。そして興味深い対比があったのは直近で放送された「完璧聖女」。あちらもなろうベースはかなり似通った構造だったのだが、例えば「主人公が有能であるが故に虐げられる」という設定に対し、「完璧聖女」は「そんな悪いことやってた奴は単にバカだからぶっ殺していいよね!」という方向性で勧善懲悪の爽快感を目指し(こちらの方がなろうの典型ではある)、今作では「そんだけ虐げられてるってことは何か深刻な裏事情があるんやろなぁ」ってんでいじめの裏側の解明を主軸に置いた。「主人公に愛すべき姉妹がいる」というのも(反転しているが)共通部分であり、「完璧聖女」では「姉を溺愛する妹が本国で頑張り続けたもんだから両面作戦で悪を討伐できた」となり、今作では「姉の死」をどんでん返しのギミックとして盛り込むことでサスペンス要素を刺激することになった。
終わってみれば八方丸くおさまる暖かいファミリードラマが残っており、あれだけ悪役然としていたマリーの両親についても、単なる胸糞で終わらない結末が与えられたところにもどこかこだわりが感じられて嫌いじゃない部分だ。まぁ、原作はまだ未完らしいので、「こんだけ綺麗に収まったのにこっから先は何をするつもりだよ……」というのは気になるところだが、多分この作者はちゃんとお話を考えて作れる人。この先にも何かしら痛快な物語があるのかもしれない。アニメ単体で評価すれば、1クールで綺麗に起承転結がまとまっていて御伽話としては良いものだ。映像部分についてもそこまで突き抜ける要素はなかったが、終始安定していて悪印象は抱かなかった。最初に目を引いた「赤髪に補色の緑で縁取りをする」という映像表現についても、最終的に「赤髪」という要素が物語の鍵になることを考えれば際立て方にも意味があったし。
あとはいつも通りに中の人の話。みにゃみがしっかり生き残ってキーパーソンとして活躍してくれたのは良かったっすね。そして主人公・マリーを演じた本村玲奈、「前橋ウィッチーズ」の時とは全然違う印象でこっちの方がずっと良い仕事ぶりだった。こういうトーンの若手はね、今後もちゃんとニーズがあると思いますよ。
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