○「機動戦士ガンダムAGE」 4
今期注目作の1つ。今までに無いコンセプトで「イナズマイレブン」の生みの親が作り出した、子供向けの「イナズマガンダム」である。いや、多分アホ必殺技とかは炸裂しないと思うけど。
個人的に、まず企画自体は何の問題もなくアリである。個人的に熱心なガンダムファンじゃないってのも理由かもしれないが、そもそも「こんなもんガンダムでやる必要ねぇだろ!」という批判については的外れも甚だしいとは思う。それをいうなら、既に10年単位で過去に遡って突っ込まねばならないのだから。既に「SEED」や「00」がある程度認知されている時点で、ガンダムは「何をやってもいい」フィールドになってしまっているのだ。ファーストを起点としたトミノ・ファンタジーをガンダムのオリジンとするなら、描いている戦争の姿や理想化されたガンダムの存在価値なんかは、むしろ今作は原点に近い制作理念を持っているとすら言えるかもしれない。ことさらに「子供向け」という方向性を振りかざして免罪符としている点は頂けない部分かもしれないが、セールスを考えた時に、サンライズとしては一度やってみたかった方向性なのは間違い無いだろうし、これで再びガンダムが「子供の憧れ」に回帰し、新たな時代を刻み始めるのなら、それはそれで面白い試みなのではなかろうか。
そんなわけでシナリオ面は非常に分かりやすい進行が最優先されており、戦争に挑む際の小難しい理念理屈については全面カット。現状、敵対勢力は「悪魔」「モンスター」と例えられる謎の異世界生命体。どっちかってーとガンダムよりもマクロスに近い設定な気もするが、善悪の2極構図が分かりやすいので、1話目から余計なことを考えずに済む。ガンダムの存在自体も、「伝説の天使」という何ともこっぱずかしく分かりやすいもので、ある意味現世におけるガンダムの理想像と重なるとも言える。あれだけ頑張って「等身大ガンダム」を再現しようとする日本人の姿は、肖像画と母の遺言を元にガンダムを作り上げようとするフリットと大差ない精神性である。まぁ、冨野がターンエーでガンダムを「黒歴史」として埋めちゃったのとは真反対の方向性だけどね。
あとは直感的なバトル要素が燃え上がり、ガンダムが「格好良い正義のロボット」として立ち上がることに成功すれば、新たなガンダム・サーガとしては準備万端。天才少年技師の手により、白い天使が人類を救う希望に仕立て上げられる。うむ、実に分かり良いじゃないか。
ただ、子供向けを意識しすぎたためか、やっぱりシナリオがどこか釈然とせず、これまでのガンダム観のまま見続けるのはちょっと辛いのも事実。1話の細かい突っ込みとしては、例えばフリットはあの若さで軍に出入りして兵器開発に協力する、いわゆる「天才少年」なわけだが、そんな彼が必死になって学校の先生に「UEが来るんだ! 人類は滅亡する!」とキバヤシじみたことを訴えているのはいかにも不自然。本当にヤバいと思ってるなら、頼りにならない学校の先生なんかに食ってかかるのではなく、近くにいる軍関係者に正式に報告すりゃいいものを。演出面で「フリットだけが気づいている危機感」をアピールしたい、という制作側の意図は分かるのだが、冷静な目で見るとやっぱり冷める。
また、戦闘シーンのカタルシスもなんだか味気ない。記念すべき初陣となったガンダムVS敵モビルスーツだが、ビームナイフで突貫したガンダムの初勝利が、全然盛り上がらない。あと、ナイフがあるのを知ってたはずなのに「何か武器はないのか……」って言って地面に落ちてるライフルを拾う描写も意味不明。いや、効かないの見てたやん。せっかくお話をシンプルにして分かりやすい戦闘シチュエーションを作り上げたのだから、もう少しバトル方面でけれん味のある戦いを見せてくれれば良かったのだが。
ま、まだ1話目だし、過去のガンダムと比べても、いっそ清々しく先入観無しで見られるのは私を含めたライト層からすればありがたい設定と言えるかもしれない。新しい血を入れることで生まれ変わった新時代のガンダム、じっくり見守らせてもらいましょう。
ちなみに、過去のガンダムとの接点は一切無いだろうと思われるのだが(まぁ、ハロはいるけど)、この世界には1つだけ、過去の作品と妙な接点があるのだ。それは、フリットのおふくろさんの名前が「マリナ」であるということ(そして声が恒松あゆみであるということ)。うん? マリナ姫、こんなとこで何してますのん? ひょっとしてそいつ、刹那との子供?! じゃぁ、お前がガンダムだ。
PR