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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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<以下の文章は、放送当時に執筆されたものである>
 
○第22話「華と月」
 脚本・国井桂  絵コンテ・藤原良二  演出・星野真  作画監督・日高真由美


 <あらすじ>
 地獄少女の運命に思い悩むゆずきだが、時間は待ってくれない。高校受験も近付き、放課後には三者面談があることを先生に告げられる。だが、ゆずきは面談のことをすっかり失念していた。両親は学校に来てくれないし、提出したはずの進路希望調査票も、何故か教師の手元から無くなっていた。様々な将来の夢を語るクラスメイト達と違って、ゆずきは志望校すらまだ決まっていない。自分は将来何がやりたいのか、自分は子供の頃何になりたかったのか。思い描く未来も見えず、幼い頃の記憶も蘇らない。ゆずきには、過去も未来も見えてこない。実りの無い面談を終えて帰路につこうとするゆずきを、四藁が心配そうに見送る。「あんな運命を突きつけられちゃ、明るい夢なんて思い描けない。夢や未来なんて一番残酷な話だ」と同情するも、「いずれ自分で決めなきゃいけない時が来る」とも語る。
 
 両親との唯一の接点である携帯電話に目を落として「お母さん」と呟くゆずき。彼女の回りには、三者面談を終えて親子で戯れる生徒で溢れている。自分の親は一体どこに行ったのか。ゆずきの意識は、そこで途切れた。目を覚ましたのは保健室のベッドの上。つぐみには貧血の診断を受け、「もう大丈夫だから帰れ」と言われるが、ゆずきは以前も抱いた悩みをつぐみに打ち明ける。「私は地獄少女になんてなりたくない」と。しかし、つぐみは「誰かを苦しめた人間が流された時にホッとした。違う? あなたの心の一部は地獄に魅せられている」と指摘する。ショックを受けたゆずきは、ただ項垂れて保健室を後にする。ゆずきのいなくなった保健室では、三藁がつぐみに語りかける。「あの子も気付き始めているんだ。自分が何者かを」「本当のことを知った時にどうなるか、あんたに救って欲しいんだ」と。しかし、つぐみは振り返ること無く「自分を救えるのは自分だけ」と切り捨てる。
 
 傷心の帰路で、ゆずきはある家のたき火の煙に巻かれる。家の主の名は美園純香(すみか)。話を聞くと、純香はゆずきの中学の卒業生で、今は名門大学の女子大生であるという。進路のことで悩んでいると相談を持ちかけたゆずきに、純香は快く進路相談に乗ることを約束してくれる。穏やかな物腰の純香に惹かれるゆずきだったが、彼女のたき火の中に1枚の写真を見つけて首を傾げる。そこには、純香がそっくりな女性と写っていた。「双子の妹よ。似てないでしょう」。純香は慌ててそれを取りあげると、再び火にくべて燃やしてしまう。
 
 純香と双子の妹である結香(ゆうか)は、顔は似ていたが性格は全然違った。成績優秀、現役女子大生の純香に対し、結香の仕事はモデル。この度、ドラマ出演の仕事も決まり、今ノリに乗っている新人女優だ。ある夜、結香はマネージャーがわりのボーイフレンドである勝人と一緒に帰宅し、自宅の前で抱擁をする。姉の純香は、そんな様子を窓の奥から睨み付けて唇を噛む。ゆずきの頭に、あの鈴の音が響く。純香に地獄通信の気配がする。ゆずきは進路相談を口実に、御園家を再び訪れる。そこでまったく雰囲気の違う妹、結香と遭遇し、結香と勝人、そして純香の間にあるただならぬ関係を感じ取る。結香と勝人は恋人同士。しかし、それを見る純香の様子には鬼気迫るものがある。
 
 「顔は似ているけど全然違うの」と語る純香。「でも、妹さんも同じ大学なんですよね」とゆずきが尋ねると、その受験が替え玉だったことまで打ち明けた。妹は自分のように成績は良くないが、社交性と華がある。二人の外見上の違いは、純香の脇腹にある奇妙な形のアザだけだというのに。ある日、酔っぱらった結香は交通事故にあってしまった。幸い命に別状もなく、跡の残るような怪我もなかったが、骨にひびが入り、数日の入院が必要になった。「大事な撮影があるのに寝てなんかいられない」という結香を勝人と純香で何とかなだめるが、結香は「何のために同じ顔に生まれたのよ」と純香を睨み付け、メイクを施して純香を替え玉に仕立て上げる。いきなりのモデルの仕事に戸惑う純香だったが、事情を知った勝人の手引きもあって、なんとか替え玉の仕事をこなしていく。初めての役者としての仕事も無事に終えて、次第に「結香」としての自分にも充実感を覚える。自宅療養中の結香は、華々しい仕事を片付けていく身代わりの純香を苦々しく見ているだけ。姉への苛立ちは次第に募り、道でたまたますれ違ったゆずきは、そんな結香からも、あの鈴の音を聞いてしまう。
 
 決定的な出来事は、純香の暴走から始まった。結香の身代わりとしての仕事をこなせるようになった純香は、妹の振りをして恋人の勝人と夜を共にする。そして、その事実は結香も知ることになる。怪我の完治した結香は、何食わぬ顔で今まで通りに出勤しようとする純香に対し、「これは私が築き上げてきたものだ。あんたは私の影でしかない」と言い放つ。二人の外見は、もう他人からは区別がつかない状態になっていた。そしてその夜、『彼女』は地獄通信で藁人形を手にする。慌てて制止しようと二人の家に駆けつけたゆずきだったが、まったく同じ外見の二人を前に、ただ立ち尽くすしかない。同日、『彼女』は勝人に選択を迫り、「君とはやっていけない」と振られてしまう。別れを告げられたその場所で、糸は解かれた。
 
 『もう1人』は地獄へ流され、モデルの『美園結香』が1人残された。それがどちらなのかは、もう本人にしか分からない。
 
 
 <解説>
 今回のエピソードには、重要な2つの要素が含まれている。1つずつ見ていこう。
 
 1つはもちろん、メインプロットのリドル・ストーリーである。途中から次第に同化していった双子の姉妹、果たして地獄に流したのがどちらで、流されたのがどちらなのか。放送後に「誰が流して誰が流されたのか分からない」というのは、当然のことながらシリーズ初である(まぁ、流した奴の名前が分からない場合は結構あったけど)。これはこれでなかなか面白い試みであると思う。すでに70本以上のエピソードが紡がれた「地獄少女」というシリーズの中で、まだやっていないパターンは何だろう、と考えた上での苦心の作であることは伺える。
 
 で、答えはどっちなのだろうか。3度の視聴を繰り返した結果得られた結論は、「分からない」である。多分、「どっちなんでしょうね、分かりませんね」というのが製作側の意図だろうから、これは「分からない」が正解なのだろう。作中の演出も、徹底的に「分からないこと」を意識して作られている。例えば地獄通信のアクセス画面では名前の記入欄だけが逆光で飛ばされているので見えないし、御丁寧にラストシーンの蝋燭の名前も、糸偏の右側のつくりの部分が歪んでいて見えないようになっている。そして、ちょっと反則をしてやろうと思ってアクセスした公式ページのキャスト紹介欄も、見事にお茶を濁している。まぁ、ここで明記されていないということは、やはり「分からない」で構わないということだと思う。
 
 ただ、個人的な見解としては、流したのは姉の純香の方、流されたのは妹の結香の方ではないかと思っている。確定的な証拠は何も無いのだが、やはり物語の流れ的にそちらの方が自然なのだ。具体的には、結香の怪我が完治して仕事に出る役割を変わるように迫るシーンで、結香(まだこの時点では違いが分かる)が純香の胸ぐらを掴み、「あんたはただの私の影なんだから!」と叫んではり倒すシーンがある。その後結香は勝ち誇ったように冷笑を浮かべて仕事に出るのだ。そして次のカットではバーで1人飲みながら地獄通信にアクセスする『どちらか』(便宜上、これを「依頼者」、もう片方を「被害者」と呼ぼう)のシーンに繋がるのだ。この流れだと、依頼者となるのが純香の方が自然である。また、長年結香に連れ添ってきた恋人の勝人が、一晩間違いを犯したくらいでコロッと純香側に寝返るのもちょっと不自然な感じもするし、振られるならばやはり純香の方がいいだろう。まぁ、これはあくまで「男は実直」という前提に基づいた場合だけれど。勝人は薄々取り替えに感付いて寝てしまったようにも見えるので、手のかかる粗野な結香から成績優秀、本の話題で盛り上がれる純香に乗り換えたくなったという可能性もあるのだ。
 
 他にも、地獄送りの船の上で、「被害者」は「夢を追いかけちゃいけないっていうの? 私は私で居たかっただけなのに!」と訴えている。この「被害者」の言う「私」とは、仮にどちらのパターンでも「モデル、女優としての結香」のことを指す。地獄流しの動機は純香の方は「新たに気付いた自分の可能性を追及したい」で、結香の場合は「今まで自分が築き上げてきた地位を奪われたくない」なのだから、どちらも守りたいのは「モデル業をやる自分の地位」だ。この「モデル業」という地位を「私で居たかった」という言葉で主張するのは、どちらかと言えば長年努力してきた結香の方だろう。まぁ、これも「どちらともとれる文脈」なので判断材料にはならないけれども。
 
 当然のことながら「結香側の伏線としてとれる要素」もいくつか存在しており、例えば別れ際の勝人の台詞は、「もう無理だ、君とはやっていけない、別れよう」である。「ていく」は継続相であり、自然な文脈という意味では「これまでずっとつき合ってきたが」というニュアンスが強い。一夜の間違いを犯しただけの相手に対して「もうやっていけない」はちょっと違和感がある。また、「依頼者」は「振られた側」であることが確定している。事後の始末を考えた時に、もし「依頼者」が純香であった場合、妹の失踪と、自分が妹の身代わりとしてモデルに転身したことを、事情を知る勝人に納得させなければいけない。これが結香であったら、単に「振られた自分」はモデル業を続け、勝人の「乗り換えた」純香が謎の失踪を告げたことにしてしまえばいい。アザの件があるので、純香が結香のふりをして勝人をごまかし続けるのは不可能だろう。
 
 物的な証拠としては、結香が胸ぐらを掴んだシーンで弾けとんだ真珠のネックレスというのもある。この時点で2人はまったく同じ格好をしていたので、結香はネックレスを所持し、純香は失ったことになる。しかし、ラストシーンでカメラを向けられた「依頼者」はそれらしきネックレスを身に着けている。これは結香サイドの伏線ともとれる。もちろんこれも後から買い直せるので何の証拠にもならないんだけど。ラストシーンでカメラを下に持っていき、「アザの有無を確認させることで正体が分かる演出か」と思ったら結局脇腹だけ見えない衣装だった、というカットがなかなか嫌らしくて面白かった。
 
 さて、メインプロットについての話はこれくらいで、以下は、もう1つの重要なファクターに触れる。それは、冒頭で注目されたゆずきの出生を巡る謎である。これまでも「両親の姿が見えない」という明確な謎はあったが、今回はそんなゆずきの未来への意識も、そして過去の記憶すらないという事実が明かされた。単なる記憶喪失などではなく、三者面談を忘れていたことや、希望調査票が消失していたこと(もちろん、そもそも存在しなかった可能性も含めて)など、ゆずきの「現在」以外のファクターは完全に謎に包まれている。そして、分からないということは「無い」可能性もある。つぐみと三藁の会話では輪入道が「自分が何者なのか気付き始めているんだ」と言い、一目蓮が「本当のことを知った時にどうなるか」と心配している。つまり、三藁はゆずきが何者なのかを知っているわけだ。どうにも普通の人間ではないのは確定のようである。前回のエピソードであいが突きつけた「本当の地獄は人の中にある」という文言がゆずきの中に根付いており、つぐみも、実際に見てはいないはずなのにゆずきの「地獄への思い」を指摘している。前話ラストの「ゆずきの笑み」を「心の弛み」と指摘したが、これは弛みなどではなく、「回帰」なのかもしれない。
 
 ゆずきの正体をサポートする伏線をいくつか拾ってみる。まず、直接的なのはゆずきが失神する前に見た、巨大な桜の木の映像。そして進路相談の最中に、必死に過去を思い出そうとして響いてきた「タスケテ」という弱々しい声。今のところこれらを統合するうまい答えは提示出来ないが、どうやら「眠っている過去」があるのは間違いなさそうだ。また、今回のメインプロットのラストであいが語って聞かせた口上、「人と己はあわせた鏡、光と影の行き着く先は、遠いその先、無限の地獄」というフレーズも気になるところ。今回に限って言えばもちろん結香と純香のことなのだが、これをあいとゆずきの関係に転写するのは流石に穿った見方だろうか。もう1つの興味深い事象を、重箱の隅ながらあげておこう。それは、2話のレビューで触れたオープニングの映像。ゆずきは「過去の記憶が無い」のだが、オープニング冒頭で、我々は毎週「幼かったころのゆずき」を見ているのである。もちろん単なるイメージ映像であると言われればそれまでだが、こうした謎の出生を持つゆずきについて、わざわざ意味も無く幼年期の映像を導入するだろうか。ちょっと気になるところである。
 
 今回はこんなところかな? 一応他にも雑感としては、「ゆずきは四藁と随分仲良くなったなぁ」とか。前話でも普通に骨女と話をしていたし、今回は帰ろうとしたゆずきに輪入道が笑顔で「今帰りかい」と声をかけている。ゆずきの側からしたら地獄少女と繋がりを持つ四藁連中とは会話なんかしたくないだろうにな。そして、今回もきくりが「きくりの夢は立派な地獄少女になることだー!」と息巻いているのだが、それを聞いた骨女は「それはあんたの決めることじゃないよ」とどこかで聞いたような台詞で返している。それに対するきくりの反応は「黙れホネー!」。22話目というと「二籠」では「憧憬」という紅林拓真編のプロローグが始まっており、きくりの悪さも絶好調だった時期なのだが、今期は最後まできくりはこの立ち位置のままなのだろうか。
 
 今回のエピソードは、飛び抜けて上質というほどでもないが、プロットも明確で見やすい話数、だったのだが……本当にね、耳障りでね。おかげで再視聴のモチベーションが上がらずに大変だった。美園純香、結香役が実に見事な棒だったのだ。こいつアイドルか何かだな。一応声優の経験もあるらしいのだが……ふざけるなと言いたい。特に今回は純香と結香の演じ分けが重要な回で、この2人の話し方が次第に統合されていく様子が演技からも見せられれば面白い回になったのに、最初から最後まで演じ分けとかいう以前の問題だったので話にならなかった。実に勿体無い。役者次第でいくらでも完成度が変わるのですよ。ついでにちょい役のカメラマンに「コスプレ格闘家」として有名になってきた「長島☆自演乙☆雄一郎」が名前をクレジットしている。まぁ、こういうお遊びはダメージも少ないから少しくらいはいいけど。アフレコスタジオにもちゃんとセーラー服で来てくれたらしく、共演者は「物凄くガタイのいいセーラー服が出てきたので戦慄した」とのコメントを残している。まぁ、ガンガレ。

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