このラスト、このラスト! 最終話。何かもう、色々と大変だ、ビビッと来るわ。ゾワッとするわ。久しぶりに大きなものを投げつけられた気がします。これは面白いラストだなぁ。
いきなりの「二年後」にたまげるが、考えてみりゃ、このくらいの時間は必要なんだよな。ラビットフットの加入から量子コンピュータの精緻化まで、そんなにほいほいと話が進むわけもない。前回までのあの事件でヨルムンガンドは片鱗を見せ、正面を切ってココの邪魔をする人間がいなくなったのは間違いないが、そこから更に2年という時を経て、ココの計画はようやく完成に至った。「化け物を超えて神にまでなった女」は、まるで天の頂きから下界を睥睨するかのような大仰なバルコニーチェアを設け、そこに一人座っていた。4つの椅子が囲むように設置されていたのは、彼女と同じ神の座にある3人の協力者、Dr.マイアミ、バブリーン、ラビットフットの4人で世界を囲む意味があったのだろうか。ひょっとしたらカレンさんも巻き込んで麻雀をやるための場所だったのかもしれないけど。とにかく、最後のロケットの打ち上げをもって、世界を統べる「ヨルムンガンド」が完成した。
誰がなんと言おうと彼女の計画は遂行されるわけだが、その際にただ1つ残っていた計画の残滓は、見解の相違から彼女の下を去ったヨナのことだ。実に都合のいい男、キャスパーに拾われていたヨナは、ココがキャスパーに全てを打ち明ける会合の席にもついてきており、2年前の別れについても考える機会を与えた。世界が荒廃し、見る見るヨナの望まぬ姿に変貌していく中で、武器商人の権化たるキャスパーの下で働くことは、ヨナにはもう不可能だった。ココとの再会をきっかけにキャスパーと決別し、ヨナは一人彷徨い歩く。そして、そんなヨナの感情を一人くみ取って手をさしのべたのは、やはりココだった。思想は決して完全に一致はしない。相変わらず世界の見え方は違うだろう。しかし、ヨナはココの手を取った。世界でもっともイカれた女と笑いあった。この物語は、そこで幕を閉じるのである。
結局、最後の最後まで焦点となるのは「ココとヨナの関係性」である。前回の決別が至極納得いく流れだっただけに、今回最終的にココとヨナが復縁するのは本来ならば唐突すぎるはずなのだが、この作品はそうしたタイトなシナリオ面でも、全て画によるメッセージで紡いでしまっているのが素晴らしい。ココには何一つ変化は無いので、重要なのはヨナの心情なわけだが、その変化は、無表情なヨナからでもきちんと確認出来る。メッセージ性が強く表れる部分といえば、なんと言ってもこの作品の真骨頂である「悪い顔」である。台詞は上滑りし、どこまで本心かも分からない武器商人達の「顔」は、何よりも真実を語ってくれる。
今回一番面白かったのは、そうしたあれこれが濃密に詰め込まれたココとキャスパーの兄妹の会話パートだろう。ヨルムンガンドの真実を話したココと、それを受けて顔色1つ変えないキャスパー。それどころか、キャスパーは「更なる機会だ!」とばかりに快哉を叫ぶ。ココはそんな兄を見てもいつも通りの笑みを浮かべただけだが、兄のキャスパーはそれを見て「驚いているようだね」と看破する。ココの予期していた反応と違ったということだ。既存の権益、方策が封じられようとも、武器商人は武器を売り続ける。キャスパーは才も機会も、そして精神も併せ持った生粋の武器商人だった。そして、このキャスパーの宣言を聞くココの表情は、これまで見せたこともないほどに歪み、憎悪を隠そうともしないものである。これまで数々の「悪い顔」を見せてきたココだったが、このシーンの顔はこれまでのどんなマスクよりも恐ろしいものである。何故彼女があんな恐ろしい表情を見せたのか。最初はそれが分からなかったが、「ヨナとの復縁」というゴールを考えれば、自ずと答えは見えてくる。結局、兄であるとか、同僚であるとかいう以前に、ココは武器商人が嫌いなのだ。否、正確には、武器商人が作ってきたこの世界が大嫌いなのだ。それは既にヨナに説明していた部分であるが、ヨナが「大好きだ」と語った世界が、ココは嫌いだった。ヨルムンガンドによってその世界は生まれ変わるはずだったのだが、そこには眉1つ動かさない実の兄がいた。だからこそ、彼女はそんなキャスパーに対して憎悪をむき出しにした。「変わらない世界」「既存のあり方」に対して、彼女は敵意を露わにした。
時を同じくして、ヨナは全てを諦め、キャスパーの下を去った。どこまでも戦火を広げていくキャスパーには耐えられず、ヨナは一人で歩き出した。元々、彼は「武器商人が嫌いだ」と繰り返し述懐しているわけで、「平和で幸せな世界」を信じる彼にとって、キャスパーの存在は既に許容範囲を超えていた。そして、気付けば武器を投げ捨てることすら出来なくなっている、変わってしまった自分も同様である。「武器を憎みながらも武器を捨てられないヨナ」は、「武器を売りながらも、武器を憎み続けるココ」と、全く同じだったというわけだ。ココは以前「君は私に似ている」とヨナに言ったことがあったが、今回のエピソードでは、ヨナの挫折と、ココの悲願が、全く同じ形で結実するという、非常に奇妙な円環を成していたのである。
ヨナはココの下へ戻った。イカれた上司、相棒と一緒に、「恥の世紀」への可能性に賭けることにした。この後の世界が一体どうなったのか、それは誰にも分からないが、少なくとも、ココが迷うことは無いだろうし、ヨナが迷いを抱くことも、もう無いだろう。それがこの物語のゴールである。
これだけの内容が、少ない台詞と、限られた時間の中で1つ1つ組み上げられていく今回のコンテ構成は、相変わらずの元永慶太郎監督の仕事である。よくもまぁ、ここまでキツい仕事をこなしたものだと感服する。最終話ってことでがっつりと画にも力がこもっていたし、残念だった1期ラストのことを思うと、やはり最後の最後にきちっと決まるように構成が出来ていたんだな、ということを認識させられる。いい締め方でした。とりあえず、プレイム君が無事だってことがちゃんと分かったのがすごく良かった。あと、最終回で一番萌えるキャラがチェキータさんっていうのが意外すぎた。どんだけ可愛いんだあのおばちゃん。そしてラストのエンディングテーマがかの香織っていう。意外すぎてびびったわ。
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