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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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「新世界より」 4→5

 なかなかしんどい作品であった。正直言って、前半の盛り上がらなさはちょっとフォローのしようがない。いや、ひょっとしてちゃんと観たら面白くなっていたのかもしれないが、「さっぱり分からん」という状態を維持して見続けるのは苦行にも近かった(だからこそ横目で見てたんだけどさ)。それでも切らずに見続けていたのは何故なのか自分でもよく分かってないのだが、序盤のあのストイックな構成に、何か良からぬ物を感じ取っていたのかもしれない。

 話が盛り上がってきたのは、後半も後半、悪鬼の存在が明らかになったあたりからだろう。それまでは分からなかった「世界を壊すもの」がようやく姿を現し、それと戦うために人類がボロボロになって挑む様は、悲壮感が漂っていて目を引くものだった。しかし、そこまで到達するまでの布石は、今考えてもあまり手筋の良いものとは言えなかっただろう。最序盤に何が起こっているのか分からないのは仕方ない。いくらなんでも小説媒体で説明していた全ての事象をアニメで事細かに追いかけるのは不可能だろうし、いくらか謎めいた雰囲気を残しつつ進行するというのは、おそらく原作でも同じセッティングだろうからだ。しかし、それは分かった上で、アニメとして「観たい」と思わせる出来だったかは怪しい。分からない設定、分からない世界の中で、更に主人公の早季たちにも分からない出来事が起こってしまえば、誰の目線で「この世界の標準」を判断したら良いのかが分からない。この「客観視の喪失」は1話視聴の時点で懸念していたことなのだが、結局そこにヘルプが入らないまま序盤は進行し続けていたため、おそらくモチベーションが維持出来ずにリタイヤした人間も多いのではないか。かくいう私も、中盤で「もう、これいいかな」と思っていたものである。

 しかし、作中時間で数年の時間をかけて、1人、また1人と早季の周りから仲間達が減っていき、ついに残ったのが覚だけになり、ようやく準備が整う。最大の謎、全人学級の闇を抱えたまま消失した瞬が世界を動かす鍵の1つとなり、真理亜と守は世界の外側から、脅威の発端を産みだした。全てが早季の周りのパーツとして整い、世界の仕組みと、既に万全の状態で包囲された人類の絶望的な状況が明らかとなる。この「世界の広さ」については、流石に準備が大変だっただけに、大きなインパクトになっていたと思う。あまりそこまでの説明が上手くいっていなかったので、これも完全に納得するまでは多少の時間を要するものであるが、1つ1つの設定の意図を考えていって「なるほど」と納得するプロセスは決して不愉快なものではない。むしろ、それまでのもやもやが一気に解消するので後半数話の印象だけでも前半の苦行がいくらか報われた気分になる。どこかで観た監督のインタビューでは「前半部分は意図的に分かりにくく」みたいなことが書かれており、「流石に無茶が過ぎるやろ」とは思ったものだが、苦労が大きければその分の見返りも大きく感じるもの。溜めて溜めてはき出した目論見が上手くいっていれば、これは許容出来たと言っていいだろう(まぁ、「お腹がすいてると何を食べても美味い」みたいな騙され方な気もするが)。

 こうして全ての構図が理解出来てから観ると、なるほどこの作品に独特なホラーのテイストは割と癖があって面白い。呪力による脅威なので人が死ぬときはばんばん死ぬし、グロいシーンなんかも割とあからさまに出てきたりするのだが、それよりもインパクトが大きいのは、古き良き日本のホラーテイスト、「暗闇には何が潜んでいるか分からない」というじっとりとした怖さだろう。何しろ敵のラスボス、野狐丸自体は別に襲ってきても怖くない存在なのだ。それが「何か得体の知れないこと」を考えていて「気付いたら詰んでる」という絶望感が怖い。「抗いようがないのに、見えない」という感覚が、恐怖を的確に刺激してくれる。おそらく、真面目に観ていなかった前半戦でも似たような演出はなされていたのだろう。こういうテイストがやりたかったんだなぁ、ということが、最後の最後でようやく理解することが出来た。

 全体的に観ると、キャラクターデザインは独特だが、そこまでパッとするものでもないし、もちろんバトルが派手だとか、モーションがぬるぬるだとか、そういう売りの作品ではない。しかし、こうした「アニメにするのがかなり難しい作品」を正面から処理し、(おそらく)原作で最も観るべき部分であるホラーの要素をちゃんと活かし切れたのだから、アニメとしては合格レベルだったと見てよいのではなかろうか。少なくとも、見終わった後に「最初からちゃんと見ないと駄目かな」とちょっと反省させられたのは事実である。

 ちなみに中の人については、これが種田梨沙の最大級の看板作品ということになるだろうから、彼女を推しておくのが一番分かりやすい。ま、ぶっちゃけ早季ってそこまでどえらい仕事をしたわけじゃないから、かなり出ずっぱりのメインヒロインなのに印象は薄いんだけどね。どっちかというとずっと語り部をやり続けて最後に全部持っていった遠藤綾の印象の方が強い。個人的にはダントツでよかったのは野狐丸役の浪川御大。こういうキャラで面白い仕事が出来るんだなぁ、としみじみ。芸歴は無駄じゃないぜ。


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