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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 完全なる調和と脱却、第13話。長きに渡った物語に1つの結末を与える、とても重要な1話になった。

 毎回様々な点で印象深い本作だが、今回はストレートなドラマ性と演出でもって、久しぶりにわんわん泣かされました。個人的な生い立ちのせいで、「母親」という要素に本当に弱いのですが、今回は「有馬公生の母親」としてでなく、一人の人間である有馬早希という人間が最大限にクローズアップされ、彼女の「愛の悲しみ」に満ちた人生が詳らかにされた。そうだよなぁ、前にも言っていたことだけど、息子を不幸にしたい母親なんているわけがないよなぁ。

 これまで物語の特性上、公生を主軸として考えた「指導者としての有馬早希」という見方しか出来なかったのだが、それだって当然一面的な物の見方でしかない。彼女には彼女の人生があり、彼女だけの幸せがある。それを考えずに、彼女が公生にしてきた仕打ちだけを見て判断してしまうことは、非常に浅薄な物の見方であると痛感させられる。有馬早希は母親である。彼女は人生を賭して、命を削って公生に「何かを残さなければ」という強い執念だけで生き続けた。心を鬼にし、ヒューマンメトロノームとしての公生を形作ることで、自分の人生の証を息子に残そうとした。それは、彼女のエゴからなる妄念などではなく、あくまで自分が失われた後の息子を最大限に想った結果である。考えてみれば、残りの人生が限られていると分かった状況下で、幼い息子を独り残していかなければならない母親の心情どれほどのものなのか、私には想像も出来ない。圧倒的な無力感と焦燥感から自暴自棄になってもおかしくない。ただ残された時間で慈愛を注ぐことのみを糧とすることも出来ただろう。精一杯の愛情を注ぎ、息子にわずかばかりの思い出を刻むこと。それも1つの愛情であり、ほんの一時の「愛の喜び」ではある。しかし彼女はそれを良しとしなかった。彼女の選択は、自分の亡き後にも息子が生きていける未来を作ること。そのために、残された自分の時間を全て注ぎ込むこと。息子には辛い思いをさせるだろう。憎まれもするだろう。それでも、わずかな時間での成長を望むのならば、彼女は「愛の悲しみ」を選ぶしかなかった。息子を殴打し、初めて自分に反抗した時、彼女は笑っていた。その一歩が、「自分を必要としない」新しい公生の一歩であると信じることが出来たからだ。あまりに壮絶で、あまりに苦しい決断である。有馬早希とは、それが出来る人間だったのだ。

 今回、作中では早希の顔の描写がこれまでとは全く違っている。なかなか「目」を見せることなく、真意のくみ取れないブラックボックス、「公生の心の闇」として描かれてきた早希であったが、今回は全編を通じて「目」の描写がなされ、はっきりと血の通った人間、公生の思う「闇」ではない1人の人間としての有馬早希が描かれている。一緒にピアノを弾くときの柔和な笑顔、病床に伏して末期の悔恨を漏らす表情、どれもこれも、彼女が生き、死んでいくまでの人生の重みを表すものである。公生の想う「母親」にも表情が生まれ、息子がようやく母親の思いを受け止め、それを理解して乗り越える過程が余すことなく刻まれていく。公生にとって、今は亡き母親へ言葉を託す唯一の方法は、ピアノを演奏することである。闇を打ち払い、自己の内部から湧き出る音を奏でることによって、彼はついに母親を知り、母親の先へ進むことが出来た。じっと付き従っていた「影」も今は無く、公生は早希の望んだ一人の人間、一人の演奏家としての道を歩み始める。今回作中では「さよなら」が、全て異なる情感でもって3回繰り返されている。追想、達成、そして別離。有馬早希の精神は、こうして無事に息子を完成させたのであった。

 物語は次の段階へと進んでいく。「演奏家」有馬公生が完成し、次なるステップは人間としての有馬公生ということになるだろうか。彼を取り巻く2人の女性。椿は、次第に自分の届き得ないところにまで登っていく公生にどうしようもない不安を覚える。ぎゅっと噛みしめた彼女の唇には、彼女には解決出来そうにない困難の大きさがうかがい知れる。

 そして宮園かをり。コンクールは意外な結果で成功に終わったが、彼女の身に起こったことには、まだ解決策は見えていない。公生の宿命といえる「失うことの進歩」。その因縁は、新たな出会いにも避けられず付きまとうものになるのだろうか。

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