「艦隊これくしょん -艦これ-」 4→3
結局初見で持った印象が良くも悪くも、いや、悪くも悪くも最後まで続いただけの作品である。先に断っておくなら、「まぁ、原作ファンは楽しかったのかもしれないね」の一言に尽きる。
今作の売りはいったい何だったのだろうか。CGでもって女の子を海面滑走させる戦闘シーンなのか、それともいちゃこらする女の子を愛でることなのか、ヘンテコ女の子キャラが格安大量販売されたハーレム状態を楽しむことだったのか。おそらく原作ファンからしたらその全てがYESになるのだと思われるが、何も分からない状態から入った新規視聴者層にはことごとくポカーン状態である。ぶっちゃけ私が理解しようという努力を怠った部分はあるのだが、その努力する気力を起こさせなかったのは、アニメ製作スタッフ側の責任だと思っている。
努力を妨げた最大の要因は、何と言っても世界観がさっぱり分からなかったことにある。新番チェックの私の文言を抜粋すると「彼女たちは人なのだろうか。これまでの人生は、そのへんの女の子と同じように蝶よ花よと育てられた普通の女の子なのか? それとも、生まれながらに戦うことを宿命づけられた忌まわしい機械の申し子なのか。その辺の設定が分からない」という文句があるのだが、これ、最後の最後まで何一つ解決されてないんですよ。結局何となく艦むす学院(仮)があって、そこにはず〜〜っと外の世界を知らずに待機してきた大和がいたりする。艦むすたちは、まるで史実に引っ張られるように轟沈したり、出撃したりすることに恐怖を感じていたが、「史実」ってあの世界で何なのかが分からない。提督という存在が最後まで明らかにされず、誰がどのような目的で彼女達を突き動かしているのかが分からず、対するヘンテコ化け物娘たちも戦う理由など分かるわけがない。ないない尽くしで、各方面から「理解しよう」という気持ちを挫いてくる設定である。目的も何も無い「戦争の残骸」に、何のドラマがあるというのか。
結局、「既にある理解」を前提とした物語は初見組には敷居が高い。「原作さえ知っていれば」というアニメはいつの時代もあるもので、私なんかは「ダンガンロンパ」を見ていて「原作ファンには割と面白いけど知らん人はどうなんだろう」とハラハラしていたものだが、今作の場合、「ロンパ」のように尺の関係で説明不足になっているわけではないし、いくらでも新規の客層に訴えかける作品作りは出来たはずなのだ。それをせずに、「出来上がった世界」が前提のお話を進められてしまっては、そりゃ私のような新規組はリタイアするしかない。「作品が悪かった」のでないならば、「相手が悪かった」のである。
そして、これまた新番チェックで既に懸念していたことではあるが、結局地獄の多重キャストの効果はデメリットとなってしまっていた。「こんなにたくさんの演じ分けが!」と楽しんで観ることももちろんできたと思うのだが、その前提条件として、演じ分けられたキャラがそれぞれ「違う」ことを理解しなければならない。担当した声優はそれぞれ優れたスキルを持っており、「違うキャラだ」と思えば充分それが伝わったのだろうが。残念ながら私の脳内にはまだ「違うキャラ」がストックされていない状態なのだ。そんな状態では、巷でいうところの「駄目絶対音感」というやつは足枷にしかならず、根底に流れる「同じ声」ばかりを聞き取り、識別がどんどん困難になっていく。頑張って覚えようとしても「高いあやねる」と「低いあやねる」になるくらいが精一杯だし、島風と那珂は「浮かれたあやねる」だ。何故識別まで至らないかといえば、殆どのキャラはそこまで根本的に物語に絡んでこないので、識別する必要性が無いためだ。それなら余計なキャラを増やさずにもっと絞って話作りをすればいいのに、と思うのだが、まぁ、それが出来ないのは原作ファン向けの都合なのだろう。本当にどうしようもないのだ。そして、1キャラに割かれる時間が少ないということは、どんどん描写が形骸化することにも繋がる。私が認識出来た唯一といって良いキャラが百合バウムコンビ(大井・北上)なのだが、あの2人は(というか大井は)本当に「出てきてレズを叫ぶ機械」である。その裏に愛情もなければ情念もない。そんな百合は無理矢理押し込まなくてもいいじゃない。そこにかける時間を、もっとメインキャラに注いであげればよかったじゃない。それが出来ずにどんどん拡散していったのが、今作が「つまらなく」なった最大の原因なのじゃなかろうか。こうして見ると、キャラの絞り方、お話の作り方は「ガールフレンド(仮)」がよっぽど穏当で良かった気がする。
以上が、大まかにまとめると「俺に分からないからおもんない」という結論です。まぁ、余計なゲームやらずにすむからいいんだけどね……。あ、でも曲は良かったよ。特にOPの海色はAKINO史上でもかなり上位のヒット曲だと思う。
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