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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 言葉も無い、第9話。もう、終始心の臓を鷲づかみにされているかのような切迫感。絶望感。分かっていたことだけども……。

 今回はもう、ただただ黙って見守るしかないお話だ。何が苦しいって、それぞれの言い分はいちいち分かるってことなんだよ。これまでずっと見てきたから、助六が言いたいことはとても良く分かる。彼の信念も、彼の先見も、全てがまっとうな熱意から来るものだし、表出のしかたが不器用ではあるものの、それをなんとかして協会のお偉方にも伝えてほしいという思いはある。しかし、今回正面衝突してしまった八雲師匠の言い分もまた分かる。「落語とは口伝である」ってのは今回言われるまで気付かなかった視点で、「落語を守ることは人の和を守ること」っていう論旨も、落語という文化を守る上で重要な考え方なのだろう。もちろんそれ以外の伝達方法もあるだろうし、その理屈が「変えてはならない」という戒めには直結しないことも分かるのだが、「信頼感と共感から始めろ」という師匠の信念も、伝えるべき落語の姿の1つなのだ。お互いに決して馬鹿なわけではない。冷静な状態で膝を突き合わせ、人格批判とはっきり分けて話し合う場があれば、ひょっとしたら円満な解決方法もあったのかもしれない。世の中には酒を飲みながらやっちゃいけない話ってのはいくつもあるもので、そのうち1つが、「真剣な議論」ということだ。

 勢いが先んじたために、助六の持つ八雲への憧れは落語の伝統論の前にかき消え、あっという間の破門。あまりにも時期が悪すぎたせいで、助六の転落劇は必要以上に無残なものに見えてしまった。師匠の方も、おそらく酒の席での勢いだったという負い目は残っていると思うのだが、そこにまた正論をぶつけられると、さらに意固地になってしまう。ほんのちょっとボタンを掛け違えた関係性なのに、一度固まってしまったらもう戻ることが出来ない。二人の間で翻弄される菊さんには、どうしようもないことなのだ。

 そして、みよ吉という女の人生が、この不幸な転落劇に噛み合ってしまった。菊比古に「裏切られた」みよ吉と、落語に「裏切られた」助六。2人の間に横たわる負の連帯感。そこで二人が慰め合うことを、誰が責められるというのか。二人とも、失ったものがあまりにも根深すぎるのだ。特に今回は、わざわざはっきりと別れを言いにきた菊比古と、桜吹雪の中で大見得を切るみよ吉のシーンが鮮烈すぎた。ここでも菊さんを突き動かすのは「正論」。分かっていることでも、人間にはどうしようもないことがある。それは酒の席の感情論だったり、男女の関係性だったり。一度離れてしまったみよ吉は、もう菊比古と同じものを見ることは出来ない。いや、結局二人は、一度だって同じものは見ていなかったのかもしれない。今回は冒頭パートにもあった「隅田川の川面」が何度も映し出される。たゆたう水、流れを止められない川、そして此岸と彼岸を隔てる流れ。人にはどうしようもない力によって、みよ吉と菊比古が隔たり、助六は落語と隔たる。彼岸の2人は、互いにみっともない姿で支え合うしかなく。

 そして、そんな2人の不幸に、渦中の菊さんも傷ついている。ずっと信じてきた「自分のための落語」だったが、そのゴールにあるのは、ずっと先を歩き続けてきた憎らしい兄弟子の背中だったはずなのだ。それがいつの間にか失われ、一切望まない姿で自分の目の前に転がっている。彼もまた、「裏切られてしまった」人間なのだ。「落語だけは続けてくれ」と必死に訴える菊さんだったが、助六の答えは「よく分からない」というどうしようもないもの。それも仕方ない。彼は「復讐」すべき落語に取り付く、その拠り所を失ってしまったのだから。高座に上がることすら出来ず、八雲の名前を継げなければ、初代助六の無念を晴らすことは出来ない。自分の芸を受け入れてくれない業界では、彼の目指す新しい時代は訪れない。もう、彼が落語をやる理由は無くなってしまったのだ。それが、「客のための落語」を選んだ彼の末路である。しかし、彼の戦いが無駄でないと一番信じたいのは菊さんだ。助六の意志を、今後の落語業界に何とか繋いでいかねばならないのだ。これからの人生に、菊さんは2人分の落語を背負い込むことになるのだろうなぁ。

 そうなんだよ、この作品のタイトルは、「心中」なんだよ……。

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