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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 菊さんの優等生的な立ち居振る舞いってのは不自由な生き方よなぁ、第10話。それでも師匠はそんな息子の姿を見て救われながら逝ったのだから、孝行な息子ではあったよ。

 時代が進む。前回で助六・みよ吉の問題は一旦置いておいて、助六の失踪によって心を痛める八雲師匠の話に。まさか、というかやはり、というか、初代助六は八雲師匠との浅からぬ因縁を抱えていた。それも、菊比古と助六の関係性をどこかに匂わせるような因縁だ。菊さんは相方に「八雲はお前さんが継ぐんだ」と勧めるほどだったし、2人は互いの落語を認め合う関係性だったから良かったが、初代助六の場合、八雲は単にやっかみから襲名を妨げ、いわば卑怯な手段で横から掠めとってしまった形。そりゃぁ因縁という以外に言葉がない。これまで親父として立派な背中を見せてきた八雲が初めて吐露した、人間としての「汚い」部分。若かりし頃の八雲が人道に外れたことをしでかしたのは事実であるし、その後の初代助六の人生を考えれば、彼はその「弟子」に恨まれ、復讐されても文句を言えない立場にある。しかし、2代目の助六はそんなことはしなかった。あくまで芸を磨き、純粋に腕でもって八雲の名を奪い取ろうと勝負を挑んできた形だ。そして、そんな「息子」に対して、八雲はまたしても頑なになってしまった。過去の過ちについては悔いているにも関わらず、そんな過去の醜い自分の姿を責められているようで、息子に対してますます意固地になってしまう。彼のそんな心残りは、助六が失踪したことでずっと彼を苦しめ続けることになったのだろう。菊さんはそんな「父親」の姿を見て、本来なら助六のことを恨みがましくも思ったのかもしれないが、そこで出てきたのは師匠を労う感謝の言葉だった。それが菊さんなりの優しさ、彼なりの孝行なのだ。

 菊さんの心遣いも分かってあげてほしい。確かに八雲師匠はひどいことをしたし、許し難い部分は間違い無くあるはず。それでも、菊比古が「子別れ」を聞きながらつぶやいていた通りに、芸については敬われるだけのものを持っており、誰にも真似出来ないものをちゃんと身につけている。最初のうちは意地だけで簒奪した八雲の名だったのかもしれないが、悔い改めた後、八雲はしっかりと名前のために戦い、励み、今の地位を確立するに到ったのである。その努力については、誰も責めることは出来ない。彼の噺家としての矜恃は最後の高座にも表れており、既に思わしくなかった身体がどれだけ彼を苦しめていても、なんとしても高座を降りず、最後まで仕事をやりきってから力尽きた。彼の強さは、間違いなく本物だったのだ。だからこそ、菊さんもついていくことが出来た。

 そうして父親を失った菊比古は「本当に独り」になったという。彼の孤独を示す出番前の一コマの空虚な様子。そして、その「独り」という表現が単なる寂しさや空しさだけではなく、オンリーワンとなり、自分の芸を磨き上げて辿り付いた粋であることを表す「死神」の一席。これまで今作では数々の演目が語られてきたが、今回の「死神」は飛び抜けて気迫のこもったものに仕上がっていた。親代わりだった師匠の死の直後にこの演目をぶち上げるだけでもとんでもない胆力であるが、それこそが菊比古の弔辞だったのだろう。師匠の真似ではない、誰のものでもない「菊比古の落語」がそこにあると、世間に、師匠に、自分に見せつける一席。そこには「独り」になった自分の姿を見つめるもう一人の菊比古が存在しており、見て、語っているにも関わらず「菊比古の落語」でしかない。画面の切り替えはあたかも2人の人間が別々に高座を演じているかのように構図を変えずに切り替わり、菊比古の落語がどれほどまでに内面にえぐりこんでいるかが描かれている。私も個人的に圓生の「死神」はトラウマになるくらいに印象深い一席だったが、この菊比古の高座も、そんな落語の歴史に名を刻む一本になったのではなかろうか。

 別離を経て得られた純化と完成。これで菊比古の芸の道はひとまず落ち着いたといってよさそうだ。休みをもらい、いよいよ全ての清算に向かう菊比古。この時代、連絡先も分からない失踪者の足跡を追いかけるのは大変な苦労があったと思うのだが、それでも落語さえあれば引き寄せられてしまうのは皮肉な縁。辿り付いた場末のそば屋で、菊比古は聞き覚えのある「野ざらし」を耳にする。そこに刻まれているのは間違いなく、助六の血なのだろう。

 このお話も、結末が近いなぁ。

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