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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 真意定まらぬ腹の底、第10話。奇しくもクリスマスシーズンに合わせてのエピソードとなったが、如何せん、ハッピージングルベルとはならぬもの。

 前回の松永さんのエピソードは、どこか寂寥感のあるシリアスと救いようのないコメディのバランスが絶妙な、「こんな人もいるんだよ、将棋会館」というお話だったが、今回はコメディの要素が全部取っ払われ、単なる「他の会員」の紹介ではなく、将棋を続ける人生というものを零にフィードバックして、彼の人生観を掘り下げるお話になっている。もちろん「こんな人もいるんだよ、将棋会館」という意味合いもあるのだろうが、視聴者側からしても、あまり見たくなかった、心痛む話である。

 他者との対局に際して、相手サイドの情報を持ち込むのはやっぱり香子。前回の松永さんとの対戦の時は「彼女なりに零にはっぱをかけている部分もあるのかな?」と思ったが、今回の対安井戦においては、彼女の発言のほとんどは「零を苦しめる」意味しか持たず、流石にこれをエールと受け取るのは無理があるだろうか。ただ、彼女も100%悪意や妬みだけから零に絡んでいるわけではないのも間違いないはずで、今回の一件で悪意のみが浮き彫りになったのは、安井の人生を語る上で、どうしても「親子」という話題に触れざるを得なかったためだろう。離婚が決まり、望まずに離れ離れになるという安井家の父子。そして、距離的な隔たりは無かったはずなのに、気付けば心が隔たっていた幸田の家族。自分たちの問題に引き寄せて語ってしまえば、香子だってどうしても「毒のある」言い方になってしまうのだろう。どこかで零を責め立て続けながら、彼の行く末を生ぬるい熱を孕んだ視線で見守る香子。彼女は、零がどんな人生を送れば満足してくれるのだろうか。そして、零はそんな香子に対して、どのように接するのが正解なのか。疎ましいばかりの姉の存在でも、彼にとっては数少ない「繋がり」には違いない。毒ばかりの姉の言葉すら求めてしまうほど、彼の「家族」関係は限られ、切実なものである。

 前回の松永戦では「わざと負けたふりをしてあげる」という選択肢も一応は零の頭の中にあった(実際にはそれすらさせてもらえなかった)が、今回の対局では、彼は「負ける」ということを一切考えていない。姉の言葉に何を思ったかは分からないが、違う生き物を見るかのように恐れおののいた松永の生き方に対し、此度の安井の戦い方は、零にも理解出来るものであり、それだけに、絶対共感出来るものではなかったからだ。事前に先生との会話でちょっとおちゃらけた風に「生活がかかっているんですよ」と言っていた零。確かに経済的な問題もあるだろうが、彼が将棋を手放すことが出来ないのは、これまで歩んできた人生の歪みを正すことが出来ないため。それしか出来ない道を選び、それを選ぶために多くの人を傷つけてきたため。将棋が好きじゃないとは言っているが、彼の中には負けられない理由がたくさんある。

 それに対し、安井の将棋はひどくみっともない。そして、棋士の将棋がみっともないということは、彼の人生もあまりにみっともない。松永のような異次元の格好悪さでないだけに、安井の「醜さ」は一層際だち、零の感情を逆撫でする。零の目から見れば、安井だって零と同様に「大切なもの」を賭けた戦いだったはずなのに、安井は勝負に真剣になれない。勝てないことの理由を自分に求めず、勝負の厳しさを他者になすりつける。そうして生まれた結果から目を背け、ますますみっともない道を転がり落ちていく。残ったものは、零に向けられた理不尽な敵意のみだ。勝負となれば、当然そこに勝者と敗者がある。勝者は祝福され、敗者は痛みを知る。自明の摂理であるはずなのに、それを受け入れずにただ負けたという事実を理不尽に他者になすりつけるという行為を、零は認めることが出来ない。努力しなかったことを批難し、弱いことを唾棄する。

 彼が独り叫んだあの絶叫は、どこまでが彼の本心かは定かでない。彼は決して実力至上主義ではないだろうし、敗者を罵ったり、蔑む気も無いだろう。しかし、あの一戦に関しては、相手を呪わずにいられない。相手が自分を呪ったことに対し、それしか処理する方法が無いのだ。果たして、彼はこれまで「敗者の呪い」をどれくらい正面から受け止めたことがあるのだろうか。勝者と犠牲者という絶対的な構図と、それを受け入れられない敗者の傲慢を、どれほど身に感じてきただろうか。今回の一戦は、勝負の世界に常に付きまとうそんな理不尽を容赦無く叩きつけるお話。静謐な対局の構図は宮本さんによるコンテワーク。相変わらず、こういう突き放したような演出が印象的です。

 零は、今後も「他人の人生を呪い、他人に人生を呪われながら」戦い続ける道を選ぶのか。生きるというのは、やはり難しい。

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