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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 ただただ涙、第4話。理不尽はどこからでもやってくる。しかし、そんなときにどう立ち向かうか。周りにどんな人がいてくれるか。人生って、そこが大事なんだろうな。

 いじめの問題である。これまで本作で「いじめ」という文脈が出てきたなら、それは零の問題だった。幼い頃はその波乱に満ちた人生のせいで周りの人間と折り合いをつけるのが難しかった零。彼はあらゆる場所で、あらゆる意味で孤立し、そんな自分をただ黙って受け入れてきた。その結果出来上がったのが現在の零の人格なわけだが、彼は基本的に救われる手段がなかったために、自分を守る形で途方も無い強さを手に入れ、現在に至っている。

 しかし、それが本当に普通の女子中学生であるひなたちゃんだったらどうなってしまうか。それはもう、今回零が見た通りである。いじめという問題は、もちろん無くなる方がいいに決まっているが、個人的には一種の病気みたいなもんだと思っている。対処療法はあるかもしれないし、事前の予防策もきっとあるのだろうが、それでも起こるときにはどうしようもなく、そこには理由も何も無い。ただの現象としてそこにあるようなもの。全てのコミュニティで起こり得るかどうかは知らないが、少なくとも現代日本の「学校」という空間において、その発生を完全に消し去ることはできないのではなかろうか。そんな理不尽に巻き込まれたとき、その渦中にいる人間は一体何を考えるべきなのか。

 ひなたちゃんの事件の顛末は、彼女の正義感ゆえの悲劇であるせいでより辛辣な物語になっている。これまた定番の流れではあるのだが、「いじめの伝染」は立ち位置が目に見える形で落ちていくので精神的なダメージが大きい。最初にいじめられていた友達は転校してしまっているため、もはやひなちゃんと慰め合うこともできないし、すがる場所もなくなっている。そして、ひなたははっきりと行動をおこし、その心の強さを示した上で、呼応するようにいじめはその度合いを増し、彼女に直接的な形で降りかかるようになってしまったという。彼女は強い部分もあるがまだまだ幼い。そうまでして自分に降りかかる問題に真正面から立ち向かえるほどの強さは無い。こうして被害者側が沈み込んでいくことで、いじめは泥沼化してしまうわけだ。

 幸か不幸か、今回のことはいじめの比較的初期の段階で発覚した。ひなたに矛先が向き始めてからそこまで時間は経っていないので、まだリカバリーは困難ではないだろう。もちろんひなた1人では難しい問題かもしれないが、ここで彼女に「恩」を与えられた男の子が一人。しかも彼自身もいじめについては多大な共感を有するときている。高校生が中学生のいじめ問題にどれほど関われるかは定かでないが、少なくとも「頼れる男の子」として、なんらかの支えにはなれるのではなかろうか。これまで散々世話になりっぱなしだった川本家に恩を返す最大のチャンス。零ちゃん、ここは男を見せて欲しい。

 それにしても……本当に今回は素晴らしい映像だった。重たい問題だし、これまでになかった内容を取り扱うために制作スタッフも相当力を入れてきたのだろう。シャフトらしさを活かしながらも実に入念なコンテワーク、そして見事な作画で細やかな心情描写が綴られていく。個人的に打ちのめされたシーンをいくつかあげてみると、例えば序盤に零たちが街中を駆け抜けるシーンの背景の演出なんかは羽海野デザインの柔らかさと淡さをそのまま活かし、色彩だけを動かして走っているシーンの躍動感を出すという面白い技法が取られている。こういう大胆な画が作れるのは、これまで散々抽象的な事物を画面に組み上げ続けてきたシャフトならではの演出ではなかろうか。同様に力の入った作り込みには、ひなちゃんが零の袖を握った時に零が激情を唸らせるシーンもあげられる。キャラクターのデザインまでそれまでとは全く違うテイストになっており、一歩間違えれば違和感が先に立つ結果になりかねないが、シナリオ運び(零の感情の高ぶり)と見事にマッチして迫力のあるカットになっている。

 また、クライマックスとなる川本家の食卓シーンは本当に微に入り細を穿つ徹底したイラストレーションと最大限のモーションが組み合わさった今期一番の見どころである。じいちゃんの大演説も見事であったが、その後の「家族」を示すための一連のカットでは、例えば必死に立ち上がるモモのモーション、ちゃぶ台につく時のあかりさんの手足の運びなど、本当に生き生きとした描写のおかげで川本家の食卓が生気に満ちた様子がありありと伝わってくる。くしゃくしゃになったひなたやモモの泣き顔も、素朴な感情を伝える羽海野テイストが最大限に活かされた見事なものだった。本当に力の入った、恵まれた作品である。

 こうして描かれた川本家の「家庭」のイデア。途方にくれた迷い犬の零を拾ってくれた時のように、今回ひなたを救ってくれるのは、やっぱり優しい家族のみんななのである。理解のあるじいちゃんはこの家の教育が、これまでの生活が全て「善なるもの」であり、ひなたちゃんが正しい行いをしたのだということを問答無用で伝えてくれるし、落ち込んだひなちゃんを優しく包み込むあかりさんの無条件の愛が本当に胸にしみる。今回はボロボロ泣かされてしまったわけだが、なぜか一番涙が止まらなかったのは玄関を開けて迎え入れてくれたあかりさんのシーンである。あのシーン、玄関のドアを開けたのはひなちゃんじゃないんだよね。もう、あかりさんがずっと家の中で待っていて、ひなちゃんが帰ってきた気配で待ちきれなくて中から迎え入れているのだ。全てを包み込む慈母のような人である。

 あとはねぇ……モモのガチ泣きが本当の幼児の泣き声なんだよな……久野ちゃん……。今回は川本三姉妹の中の人3人が各自ベストの仕事を見せてくれていて、大沢事務所ファンとしてはたまらんものがあるのよね。ちなみに、いじめられて転校したのが西明日香だったり、いじめの主犯格が悠木碧だったり、更にそのいじめを見て見ぬ振りをした諸悪の根源とも言える担任の先生が……などなど、あまりにも中の人密度の濃い回でもあった。ご本人も怒りに打ち震えながらのアフレコだったとのことで、役者業ってのも時には因果なものだと思わずにはいられません。「ハチクロ」の梨花さんといい、羽海野作品ではやたらと心労の重なる配役が多いですな。羽海野かあさんに何かお詫びしてもらうといいと思う。

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