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最近のアニメや声優、Magicに対する個人的な鬱憤を晴らすためのメモ程度のブログ。
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 「誰かにならなきゃ、駄目ですか?」、第12話。動き出した世界。主人公・小糸侑がついに自らの意志で立ち上がり、最大の敵である七海燈子へと挑む。この高揚感はまさに少年漫画のバトル展開と同じものだ。克己の物語、そして、挑戦の物語。

 もう、今回はただ黙って観ていたいお話。「気が付けば息も出来ない」は今回そこかしこに漏れ出た「固唾を呑む」シーンでの各キャラクターの気持ちの代弁でもあろうが、何よりも我々視聴者の気持ちを表しているかのようである。最大のクライマックスとなった侑の部屋のシーンでは、まるで我々の忍耐を試すかのように、無音のままで2人の交流が進んでいく。音は無く、動きも最小限。聖像、イコンのように描かれる2人の関係性。そんな中で必死に回り続ける扇風機は、まるで侑の心拍を肩代わりするかのようである。

 すべての元凶はこよみだ。彼女の書いた脚本のセリフ1つ1つが、すべて七海燈子の心臓を抉っていく。これをいきなり書き上げてしまったこよみの作家としてのセンス、観察者としての力量は恐るべきものだ。そして、慣れない演劇の練習の中で少しずつキャラクターを作っていこうとする他の面々に対し、すでに入り込みすぎて戻ってこられなくなった燈子。あまりにも的確に彼女のパーソナリティを反映しすぎたため、燈子は役の感情から抜け出られなくなってしまった。もともと「仮面を付け替えて役を演じ続ける」というのは彼女の人生そのものであり、そこに更に「演じる」ことを求められたら、現実と非現実が、自己と他者が、区別できなくなってしまったのだろう。はたから見れば「凄まじく入り込んだ名演」であろうが、その異様さに気付けるのは一定距離まで燈子に近づくことができた2人だけ。沙弥香と侑だ。

 「燈子の様子がおかしい」という事態を受け、2人のとった対応は真逆のものだった。沙弥香の場合、燈子が一体何にショックを受け、どんな変調をきたしたのかもすべて理解している。その上で、「荒療治だが燈子が変わるチャンスかもしれない」と突き放す処置を選んだ。姉の幻影に囚われ続けるのはよくないと思っていたわけで、そこに外部からのノイズが混じり、燈子が現状に疑問を持つことは現状打破の第一歩だと考えたわけだ。だからこそ、侑には特に何も教えず、「全てをあるがままに」と様子見する選択をした。これはこれで、燈子の理解者、もしくは保護者としてありえる判断だ。

 しかし侑は違った。彼女の場合、燈子が「姉の幻影」に囚われているという事実を受け止めてから日が浅い。あの日の河川敷、打ちのめされてしまった燈子の発言から、尋常ならざる真実があるということには気づいたが、それをどのように扱うべきかは流石に決めかねていたはずだ。しかし、侑はそうして迷いを持ち、揺れ始めた燈子を放っておくのはよくないことだと判断した。あの七海燈子が揺れている。あの、弱くて危うい燈子が迷っている。そんな状況に手を伸ばそうと思ってしまったのは、やはり侑自身も燈子によって変えられた証なのだろう。迷いを決意に、今こそ姉の亡霊を打ち破るための一撃を。そんな願いを込めて、弱った燈子を受け止める。

 しかし、すんでのところでその一歩にまでは至らなかった。燈子が揺れて、弱さを吐き出したことは間違いない。自分の正しさに疑問を持ち、救いを求めているのは間違いない。しかし、姉の幻影を失った燈子は空っぽになるだけ。残念ながら、侑はその中身を埋めるためのものを持ち合わせていない。喉元まで出かかった「好きなのに」という言葉を持ち出す勇気がない。どうしたって、これまでの燈子の気持ちを考えれば、その言葉がもたらす影響力をコントロールする自信がないのだ。ここにきて、侑がこれまでの人生で「自分」と向き合ってこなかったことのツケが回ってきてしまったのである。

 燈子は「私の嫌いなものを好きにならないでくれ」と切に訴える。それに対し、侑は「先輩だって」と反論する。「先輩だって、私の好きなものを嫌いにならないで」。駅でひとりごちたその言葉も真実であろうが、もしかしたら、「先輩だって」の奥には、「先輩だって、私の嫌いなものを好きだというくせに」という思いもあったのかもしれない。あそこで声が出せなかった自分。未だ燈子との関係性に欺瞞を挟んでしまう自分。そんなものが、侑にはどうしても許せないのだろう。

 一歩引いた視点、自他への無頓着。これまでの人生で培われた「小糸侑」は、いよいよ終わりを告げる時が来たのかもしれない。なんとか燈子を変えるため、そして、自分自身が変わるため。侑の最後の戦いが始まるのだ。

 

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